ナマクラ!Reviews

04/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./06

第19回山本周五郎賞 受賞作:安徳天皇漂海記/宇月原晴明

安徳天皇漂海記
第一部 東海漂泊
第二部 南海流離

answer.――― 64 点
ブログのコンセプトの都合上、《受賞作》、《ランクイン作》のために半ば強制的に目を通すことになる作品が出てくるわけだが、その中には当然、肌に合わない作家の作品も現れる。たとえば本屋大賞では目下、有川浩伊坂幸太郎あたりは食傷の上に手抜きも目立って個人的に「……もう、マジ勘弁!」な作家たちだが、その他にも、インテリゲンチャ&歴史ヲタクさえ感嘆する《知識》に唸らせられるものの、あたかも教科書や資料を読んでいる錯覚に陥る飯嶋和一あたりも「…………」とぐうの音も出ずに閉口してしまう。そして、この宇月原晴明である。選考委員より「この作者の頭の中は妄想に満ちている!」という激賞を受けて第11回日本ファンタジーノベル大賞《大賞》受賞作『信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』―――信長は両性具有で、これは遡れば!―――でデビューした逸材で、本作でも二部構成で《入水》という死に際の共通点から安徳天皇と祥興帝が海と時代を超えて「この作者の頭の中は妄想に満ちている!」顛末を描く。正直、勿体ぶった言い回しを多用する故に著者の妄想以前にそもそも何を描いているのか掴めず、……(」゚ロ゚)」カンツォーネ!と誤魔化し気味に頁をめくっていたが、第一部を引き継ぐ第二部の“ここだけの話”マルコ・ポーロの《視点》からは意図も透けて見始め、読みやすさは増す印象。だからといって、内容それ自体を《面白い》とは感じられないあたりは、著者の作風に私が「合わない」ということなのだろう。《歴史》を学んだ上でそこに著者のイッテQな妄想の入り込み具合を楽しむ、ある種、インテリゲンチャのための同人誌的作品。楽しむためには「素養」が要ります。

第19回山本周五郎賞 受賞作:安徳天皇漂海記/宇月原晴明

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 宇月原晴明 山本周五郎賞

[edit]

page top

第11回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス/宇月原晴明

信長
1.剣の揺藍
2.東洋からの客
3.天王覚醒
4.牛の王
5.海臨寺綺譚
6.アルトー襲撃
7.ダンス、ダンス、ダンス、ダンス!
8.桶狭間
9.原理の闘争
10.滅びの子
etc...

answer.――― 57 点

織田信長が両性具有だった―――という設定を軸に、信長生誕遙か以前、遙か彼方のローマ皇帝ヘリオガバルスとの繋がりを見い出すトンデモな展開は、選考委員をして「この作者の頭の中は妄想に満ちている」と燃え上がる本能寺に馳せ参じるが如く、やんややんやと満場一致で大賞作に!という選考過程を経たようだが、これは有り無しで云えば、時の首相、管直人第94代内閣総理大臣を支持する方向的に無しだ。著者に書き手としての力量が無い訳ではない。知識とそこからの飛躍は相対的に見ても申し分ないとは思う。ただ、トータルでのバランス、一作品として仕上げたときにそれが有用に働いているかは別の話。要は、著者にセンスを感じない。本作の場合、致命的な構成のミスに過去と現在、二つの時間軸をサンドイッチにする小説の手法「カットバック」が挙げられる。重なり合ってひとつの物語となるこの手法は、主に(進行する)現在の「謎」を過去が「解く」ことでカタルシスを得るのだが、本作は現在の謎―――信長とヘリオガバルスの繋がりが「この作者の頭の中は妄想に満ちている」ため、……んなこたぁどうでも良い!感が滲み出る。織田信長を扱った過去編が正統派に展開されているため、蛇に足があることが間違いだと是非とも気づいて欲しいものだが、著者のアクセル・ワールド(加速する妄想)は個性とも言うべき産物なので彼の作風を是とするか非とするかは結局、読者次第。私は野党に回りましたが、さて皆さんは如何に?ちなみに、織田信長が両性具有というアイディアが最も活きたのは、秀吉が信長に劣情を抱くほどに惚れている設定。本能寺の変後の黒田如水との件が分かり易い説得力を持っていた。


第11回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス/宇月原晴明

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 50点 宇月原晴明

[edit]

page top