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第3回本屋大賞 2位:サウスバウンド/奥田英朗

サウスバウンド
(あらすじ)
僕の名前は二郎。父の名前は一郎。誰が聞いても「変わってる」と言う。父が会社員だったことはない。物心ついたときからたいてい家にいる。父親とはそういうものだと思っていたら、小学生になって級友ができ、ほかの家はそうではないらしいことを知った。父はどうやら国が嫌いらしい。むかし、過激派とかいうのをやっていて、税金なんか払わない、無理して学校に行く必要などないとかよく言っている。家族でどこかの南の島に移住する計画を立てているようなのだが……。

answer.――― 73 点

型破りな父に翻弄される家族を「少年」の視点から描いた長編大傑作!とのことだが、……これ、主人公の配役を間違えたんじゃないだろうか?確かに元過激派でアナーキストの父親の発言&行動に、息子である「少年」が適格に迷惑被っていると思うが、だからって読者にはそれ自体が面白いわけではない。本作は前半と後半の二部構成となっているが、それぞれの部で核となる事件が起こる。前半は父親の元同志による内ゲバ殺人事件、後半は東京から沖縄は西表島へ舞台を移しての開発業者との闘争である。ただ、これらは少年もそこそこに関わっているものの、所詮は子どもだけに脇に徹せざるをえず、活劇らしい活劇とはならない。妙な大人(父親)のRiotを見守る、そんな様相だ。それだから結局、警察もヤクザも今現在恐れる伝説の闘士―――つまりは、少年の父親をストレートに主人公にすれば良かったじゃねえかと一読者として思ってしまう。「父親」の視点にこそ興味がある。何でかってこの親父、過激派のくせに「群れない」のだ。明らかに特殊だ、どういう視点を持っているのか非常に興味が湧いた。でも、あくまで本作はどこにでもいる「少年」の話だ。他作品を含めた雑感として、この著者はどうもあと一歩、己の作品へ貢献しようとしない。手前味噌の知識で誤魔化そうとする癖がある。『イン・ザ・プール』から始まった精神科医・伊良部シリーズも三作目で自らコケて、「もう書けません!」宣言した感があった。……まあ、「少年」の視点、その物語も決して悪かったわけではない。特に、前半部における不良中学生との「これからの人生を左右する」戦いは見物だった。期待しなければ、そこそこ楽しめるやや長過ぎる適当エンターテイメント作品。そんな認識をしておくのが良いだろう。

第3回本屋大賞 2位:サウスバウンド/奥田英朗

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 奥田英朗 本屋大賞

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文春文庫:イン・ザ・プール/奥田英朗

イン・ザ・プール
1.イン・ザ・プール
2.勃ちっ放し
3.コンパニオン
4.フレンズ
5.いてもたっても

answer.――― 80 点

色白のデブ医師(神経科)の元に訪れる患者たちの物語。Nirvanaのあのアルバムを思わせる表紙やプール依存症など患者の病名等からホラーを予感させるが、中身はコメディといっても差し支えがない内容になっている。それだから、患者たちの汗だくな焦燥を読んでそのオチを楽しむのが本作を読む前の心構えだ。第127回直木賞「候補」作になるなど評判も良く、精神科医・伊良部シリーズとしてシリーズ化。次作『空中ブランコ』で本作では「候補」に終わった直木賞を受賞し、著者とともに飛躍的に知名度を高めた。息の長い人気シリーズになるかと思われたが、次々作『町長選挙』で患者に渡邉恒雄、堀江貴文、黒木瞳を想起させる出版当時の時事ネタを取り込む下策を披露し、事実上のネタ切れを宣言。あっさりとシリーズの幕を閉じた。個人的には東野圭吾の『探偵ガリレオ』みたいな手軽に且つ、豆知識を挟んでくるシリーズと期待していただけに残念極まりない。本作のイチ押しは陰茎強直症(ずっと勃っちゃう病気)が出てくる、2章「勃ちっ放し」。……チンチン、大変よ!本作では「看板」看護婦マユミの存在感は希薄です。

文春文庫:イン・ザ・プール/奥田英朗 (2002)

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 奥田英朗

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