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第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

オロロ畑 (200x290)
(あらすじ)
超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村が、村おこしのため、倒産寸前の広告代理店と手を組んだ。彼らが計画した「作戦」とは!?

answer.――― 74 点
先頃、4回のノミネート&落選の末、ついに『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞した荻原浩のデビュー作が本作『オロロ畑でつかまえて』。その概要は、過疎/高齢化に悩む村人が広告代理店に勤める旧友(と思っている同級生)に村興しを頼み、UMA発見というイカサマなニュースを流す、というもの。広告代理店に就職していた自身の経歴を生かした題材で、序盤のコンドームのキャッチコピーへのプレゼン―――《我々の業界には『ラ』の音と濁音の入ったフレーズはヒットするという定説があります》は眉唾ながらに検証、そして、(……マジかよ)とのめり込ませる魅惑のリードとなっている。そこからいよいよ到着する過疎村、そのらしいカッペ演出は上々ながら、社の事情で渋々嫌々ながら村興しの依頼を受け、UMA発見!?とマスコミを巻き込む展開はあらすじに起こせばダイナミックに映るものの、実際は目を剥くような細かなアイディアは施されず、大味なのが残念なところ。本作は村興しではなく、中盤より投入される人生逆転賭けるアナウンサー(♀)の心境の変化が実質のメインと云える。結論としては「良」ではあるものの、他人に推すほどには弱い「優」ならずのデビュー作。それでもラスト、オロロ畑の真相はそれこそダイナミック(食うんかいっ!)で、著者のセンスを存分に感じられます。なお本作の後も、「ユニバーサル広告社」シリーズとして続編が刊行している模様。

第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 荻原浩 小説すばる新人賞

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第18回山本周五郎賞 受賞作:明日の記憶/荻原浩

明日の記憶
(あらすじ)
家庭も省みず仕事に生きる49歳、広告代理店のやり手営業マン、佐伯雅行。仕事においては大きなクライアントとの契約が決まり、プライベートにおいては娘の結婚が決まる、と順風満帆に見えた彼だが、めまい、幻覚といった不可解な体調不良……何より、ひどい物忘れに襲われる。妻・枝実子に促され、しぶしぶ忙しい仕事の合間を縫って病院を訪れ診察を受けた結果、医師から若年性アルツハイマー病という診断を下される。

answer.――― 77 点

アルツハイマーを題材にした小説は、人生で一度、必ず読んでおくべきだと思う。そして、追体験―――記憶を失うことの何が恐しいことなのか、記憶のある残された時間で何をすべきなのかを考え、自分にとっての最善を見い出しておく必要がある。かの渡辺‘spモード’謙の熱望により映画化も果たした本作「明日の記憶」。あらすじの通り、アルツハイマーと判明してからの主人公の恐怖、家族の戸惑いが基本のストーリーライン。生き甲斐であった職を追われ、信頼していた人に裏切られ、……の記憶とともに失っていく日常が胸を打つ。しかし、この手の話はストーリー的にはどれも大して差が無く、どう落とすのかが作家の腕の見せ所となる。その点で、本作は非常にベターな印象。必要以上に救いがあるわけでもなく、限りない絶望に陥ることもない。ラストシーンで妻に掛ける言葉はどれも絶望を内包しながらもひたすら優しい。そんなラストを迎えて分かることは、本作は「アルツハイマーとどう戦っていくのか?」ではなく、「アルツハイマーに罹ってしまったら?」と読者に問い掛ける作品だったことが分かる。おそらく、作者なりの<答え>が出ていながらぼやかしている印象を受けた。その辺、家族の心理がほぼ描かれていないあたりで判断出来ると思う。非常に読みやすく、イベントもよく起こるのでエンターテイメントの観点からもアルツハイマーを追体験する小説としてお薦め出来る。お約束だが、合い間合い間に、症状の進行を知らせるように壊れていく日記を挿し込んで来ることを付け加えておく。

第18回山本周五郎賞 受賞作:明日の記憶/荻原浩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 荻原浩 本屋大賞 山本周五郎賞

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