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第15回山本周五郎賞 受賞作:パレード/吉田修一

パレード
(あらすじ)
都内の2LDKマンションに暮らは男女四人の若者達。「上辺だけの付き合い?私にはそれくらいが丁度いい」。それぞれが不安や焦燥感を抱えながらも、“本当の自分”を装うことで優しく怠惰に続く共同生活。そこに男娼をするサトルが加わり、徐々に小さな波紋が広がり始め……。

answer.――― 75 点
例によって吉田修一を認知したのは芥川賞受賞作『パーク・ライフ』からだったが、その前に書き下ろした本作がトントン拍子な「流れ」を呼び込んだと見るべきなのだろうから、著者にとって「最初」のブレイク・スルー的作品と云えるだろう。気になるその題材は、今や若者文化の象徴となっている「ルームシェア」。血の繋がりもない「5人」の若者の共同生活に潜む、《暗黙》の歪みを覗く形。先に部屋をシェアしていた「4人」に自称18歳の「5」人目(♂)が紛れ込んでくる序盤、そこから少年の正体を怪しみつつ、部屋に引きこもり続けるニートな美女を中心とした面々の「現在」な中盤は、丁寧に描いているだけに「……まさに」と頁をめくるのも億劫になる惰性な日常。視点切り替えの度、それぞれがそれぞれに対する言葉にしない《思い》を覗くのが醍醐味とはいえ、いささか停滞気味で、そのまま現在を伝える(残す)《純文学》の範疇の作品に終わるかと思えば、―――賛否両論となる終盤の着地は「……まさしく」エンターテイメント。吉田修一が「一」文学作家に終わらないクオリティを目撃することになる。個人的には、「ボルヴィック」という単語を日常で挿してきたところが流行的に映った。これは次作『パーク・ライフ』で「スターバックス」を取り扱った点と同じで、《若者文化》をドキュメントしている。文学作家の一つの「仕事(義務)」よね。

第15回山本周五郎賞 受賞作:パレード/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 山本周五郎賞

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第12回本屋大賞 6位:怒り/吉田修一

怒り (206x290)
(あらすじ)
殺人現場には、血文字「怒」が残されていた。事件から1年後の夏、物語は始まる。逃亡を続ける犯人・山神一也はどこにいるのか?

answer.――― 75 点
血文字で「怒」と残された未解決の殺人事件から1年―――漁港に暮らす親娘、ゲイの会社員、米兵によるレイプ未遂の体験を持つ少女とその少女に好意を持つ少年が、それぞれ目の前に現れた前歴不詳の男を信頼しつつも疑念を抱いていく様を、読み手は「誰が犯人なのか?」と合わせて楽しむ構図の本作。読売新聞に連載された背景も重なって、『悪人』@朝日新聞連載を連想してしまうが、実際、「登場人物を増やした」だけの兄弟作と云えるだろう。音楽のコード進行ではないが、いわゆる《構成》は雑多に見えても正しく機能する「数」は限られている。そのため一度「(己の)造り」を確立出来てしまえば、たとえ白紙の上に放り出されても、感覚という記憶を頼りに辿り着けてしまう。そうして、安定したエンターテイメントが成り立つが、その代償に(己のなかで)マンネリを招くのが《お約束》だ。勿論、書き手がマンネリを感じるならば、読み手も当然、「感じる」もの。文学畑の出自を持つ著者だけに、昨今の主流である《キャラクター》でも、《人》でもなく、《人間》で魅せてこそいるが、もう一度、この「信頼してるけど……」という疑念持つ《人間》観察&犯人捜しのセットで攻めるのは厳しい気がする。その意味で、終盤、犯人への「怒り」がブスッ……!と執り行われる場面は、手に入れた己の《構成》へさよならbyebyeしている感も。『悪人』Part 2を望む人にはその期待には応えられる出来です。ちなみに本作、お金儲けのためにわざわざ上下巻に分けられておりますので御注意を。

第12回本屋大賞 6位:怒り/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 本屋大賞

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第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

横道世之介
1.四月 桜
2.五月 ゴールデンウィーク
3.六月 梅雨
4.七月 海水浴
5.八月 帰省
6.九月 新学期
7.十月 十九歳
8.十一月 学祭
etc...

answer.――― 83 点

冒頭からしばし続くあまりにリアリティ溢れる上京してきた新大学生の「しょうもない」日常に、―――大学生必読の一冊!という謳い文句が脳内にこだましたが、途中、唐突に挟まれる謎の視点に「……邪魔するなよ!」と思ったのは私だけではあるまい。その謎の視点の正体は平凡極まりない主人公と関わった友人、知人たちの二十年後であり、そこで彼らの現在と、主人公への幾ばくかの当時の印象が添えられる。この辺りは文学畑出身である著者らしい構成で、同じ<人間>に対する評価の変遷―――つまりは時間軸を変えることで、登場人物自身の価値観の変遷を描きたかったのが伺える(そして価値観が変わっても、主人公は二人といない良い奴だったな、……という演出)。もっとも、文学のような<人間>への追究性は薄く、あくまで味付け程度の処理なために「それなら結局、……邪魔するなよ!」とも思ったのだが、とある登場人物の登場によってそんないつものイチャモンは彼方へと消えた。―――与謝野祥子、ここ一年読んできた二百冊近い本のヒロインのなかで彼女はBESTだ。マジで萌えた。表題をそれこそ「横道世之介」ではなく、「与謝野祥子」に改題すべきだとさえ思った。ついでに、彼女の視点で物語を編んでくれ!と未だ願って止まない。登場当初は侮蔑さえしていたのにいつの間にか惚れてしまっていた主人公のように、本作が本屋大賞にランクイン出来たのは間違いなく書店員もまた彼女にFalling In Loveしたからである。彼女の魅力については多く語るまい。読めば分かる、そして、シルヴィ・ヴァルタン宜しくIrrésistiblement(あなたのとりこ)だ。冒頭にも書いたが、主人公の時間の過ごし方は現在の大学生の生活そのまま。こうならないためにも、大学生は一度読んでおいて損は無いだろう。しかし兎にも角にも、本作の主役は―――与謝野祥子。きっと、読めば貴方も萌えられる。ちなみに、主人公の名前の由来は江戸時代の名作『好色一代男』からとのこと。己の無知をまた知りました。

第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 吉田修一 本屋大賞

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第5回本屋大賞 4位:悪人/吉田修一

悪人
(あらすじ)
保険外交員女性・石橋佳乃が土木作業員・清水祐一に殺された。清水は別の女性・馬込光代を連れ、逃避行をする。なぜ、事件が起きたのか?事件当初、容疑者は裕福な大学生・増尾圭吾だったが、拘束された増尾の供述と新たな証言者から、容疑の焦点は清水に絞られる事になる。

answer.――― 77 点

02年に『パレード』で第15回山本周五郎賞を受賞、同年に続く『パーク・ライフ』で第127回芥川賞を受賞といった「文学」出自の作家として離れ業とも云える華々しい受賞歴を持つ吉田修一が手掛けた本作「悪人」は朝日新聞で連載された長編作品。物語は、保険外交員の絞殺事件の犯人捜し、そして、その犯人の逃避行を軸に、《人間》を描いていく群像劇。一日一節を求められる新聞連載という形式から、etc...に数えられるような人物が視点人物になったりの忙しい視点切り替えに集中力を切らす難こそあれ、そんな群像劇故に文学作品特有の「1」対「1」の小さな世界で終わらないのが本作の魅力だ。この本屋大賞に選ばれたように、被害者、そして、容疑者が日常で装っていた「嘘」を描いていく展開は、誰が殺したのか?(実は……!)なミスリードを提示されているような錯覚に陥り、思わぬエンターテイメント感覚を得られる。しかし、そういう意味では【そんな彼を殺人に走らせたものは、一体何か―――。】という本作の紹介文は頂けないミスらしいミスと云えるだろう。ながらに、ともかくの《悪人》である。―――何が悪人なのか。―――誰が悪人なのか。本作は九州の地方都市を舞台に、市井の、実は多くがそうである、ワーキングプアを真摯に描いている。そして、抜け出せない現実に目を背ける登場人物たちが作る「嘘」を剥いでいく。その中で殺人が起こり、庇い、庇われ、好かれ、蔑まされ、騙され―――殴られ、裏切られる。殺人は衝動で起こり、その事件には必ず背景があることを本作は教えてくれる。個人的には、陰の主役とも云える被害者・石橋佳乃の振る舞い、周囲の言及に興味を惹かれたが、この辺は私が男だからかね?とりあえず、「文学」にノミネートされる作品ながら、大衆に支持される吉田修一に「天晴れ」。上下巻、合わせてのレヴューです。

第5回本屋大賞 4位:悪人/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 吉田修一 本屋大賞

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