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第3回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バルタザールの遍歴/佐藤亜紀

バルタザールの遍歴
1.第一部 転落
2.第二部 転落の続き

―――そしてこの場所を変えるという問題は 私が私の魂と絶えず議論を交わしている問題のひとつなのだ。

Ch・ボードレール

answer.――― 84 点

新潮文庫イチ押し!の平野啓一郎関連のゴシップを持つ佐藤亜紀による「国際舞台にも通用する完璧な小説」と審査員に瞠目させたデビュー作。このような審査員からの絶賛を受ける小説は時代考証、文化考証が為され、インテリゲンチャの己さえ忘れかけている知識を甦らせた場合に多い。果たして、物語が閉じれば作者のあとがきに代わる<解説>にて、あの場面に出てくる紋章云々と語るに落ちてくれる。そんな件はともかく、本作はさして学の無いプロレタリア(あるいは、ボヘミアン)でも読み応えのある内容。概要とすれば、ナチス台頭のとき、ウィーンのある貴族の転落劇―――といったところなのだが、話の肝はある貴族とは双子であり、そして、ひとつの身体を共有していること。時に読者を惑わせる濃厚な筆致が素晴らしい。ファンタジー作品らしく、双子の肉体の共有以外にも、「夜回り」というファンタジックな仕掛けを用意して終盤をきっちり〆てくるのも巧みだ。文字量に比例して情報量も多いため、読了するのに高い集中力を要するのが難。ただ、錯綜する登場人物の整理をスムーズに行えれば、爽快なカタルシスをプレゼントしてくれる。そういう意味で、作者vs読者の構図が隠れている罪深い作品。

第3回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バルタザールの遍歴/佐藤亜紀

category: さ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 80点 佐藤亜紀

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