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第5回本屋大賞 7位:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

赤朽葉家
1.最後の神話の時代 一九五三年~一九七五年 赤朽葉万葉
2.巨と虚の時代 一九七九年~一九九八年 赤朽葉毛毬
3.殺人者 二〇〇〇年~未来 赤朽葉瞳子

answer.――― 79 点

読書中とその読了後に印象が全く変わる作品がある。『GOSICK』で一躍名を馳せた桜庭一樹、<ヴィクトリカちゃんブヒィィ>とその人気に気押されるように、相次いで各権威が「……受賞させちゃう?」と慄いたのが本作「赤朽葉家の伝説」。文学というジャンルにおいて評価されやすい事象のひとつに<時間の経過>を描くことが挙げられるが、本作では旧家である赤朽葉家を中心に戦後から現代までの五〇年余りを三部構成で描いている。作家にとって作中で時間を流すことは存外難しいもので、それが五〇年ともなると当たり前のように間延びしたり、ともすると逆に展開に突飛な印象を与えてしまうため、適当なバランス感覚―――割り切りを求められるのだが、そこは桜庭一樹。自慢の筆力で見事に対応している。しかしながら、その筆力で強引に「読まされた」のも事実。各所で諸手を挙げて礼賛される第一部に比べ、残りの二部は出てきたモグラを叩くように、手厳しい評価が並ぶ。それというのも、本作のエンターテイメント性が赤朽葉家同様、第一部からのヒロイン<赤朽葉‘未来が視える’万葉>に支えられているからだ。故に、赤朽葉万葉がフェードアウトしていくと、何を楽しんで読んでいたのか読者自身、見失ってしまう。ただ、桜庭一樹の筆力が高いために「何となく」読めてしまうのだ。この「何となく」の正体こそ<時間の経過>で、作中で時間が流れていると、読者は知らず読めてしまうのですよ、と。そうして、勢い込んで本を閉じると「……ん?第一部以外、あんま面白くなかったような?」という真実に気づく訳です。読了してみれば画竜点睛欠くものの、出来は十分。文学賞に受賞ないしノミネートされた事実についても考察出来る一冊。

第5回本屋大賞 7位:赤朽葉家の伝説/桜庭一樹

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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第5回本屋大賞 9位:私の男/桜庭一樹

私の男
1.2008年6月 花と、ふるいカメラ
2.2005年11月 美郎と、古い死体
3.2000年7月 淳悟と、あたらしい死体
4.2000年1月 花と、あたらしいカメラ
5.1996年3月 小町と、凪
6.1993年7月 花と、嵐 

answer.――― 73 点

諸々のレヴューサイトにて、「……気持ち悪い」と、かの海を前にしたラストシーン、惣流・アスカ・ラングレーばりの感想が並ぶ第138回直木賞受賞作「私の男」。その構成は章タイトルからも察せられる通り、各登場人物の視点に切り替わりながら現在から過去へと遡っていくもの。さて、本作はストーリーそれ自体を楽しもうとするよりも、ある種の耐性テストを受けるつもりで臨んだほうが良いかもしれない。なるほど、確かに気持ち悪い―――読んでいる最中、気持ち悪さが過(よ)ぎる。個人差はもちろんあるだろうが、この<気持ち悪さ>は本能に訴えてくるものだ。ここを興味深く(自身で)捉えるのが本作の醍醐味なのだと思う。逆に云えば、自身の反応に対して興味を持たないとやや平坦な展開で、凡庸な作品として片付けられてしまう。そんなテストな面を除いて、一小説として個人的に一番楽しめたのは、完全にエトセトラAで数えていた女が<視点>を携えて再登場した第5章。サプライズ的で、―――ぃよっ、待ってました!と心が湧いた。そう、実は本作、主要登場人物の視点よりも脇役、それもエトセトラな登場人物の視点から描かれるべきだったと思う。そっちのほうが「男」をより興味深く読者に捉えさせられたはずだ。ちなみに、禁忌を扱っている本作だが、目を背けたくなるような過激な描写は少ない、あるいは、無いので逆にご注意を。

第5回本屋大賞 9位:私の男/桜庭一樹

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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角川文庫:砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
1.砂糖菓子の弾丸とは、なかよくできない
2.砂糖菓子の弾丸と、ふたりぼっち
3.砂糖菓子の弾丸とは、もうあえない

answer.――― 71 点

桜庭一樹の名を一般文芸へと広げた出世作。その内容はライトノベルらしからぬ家庭内暴力を扱ったショッキングなもので、冒頭も冒頭、一頁目で主要登場人物である海野藻屑が死ぬことを明示されている。もっとも、本作が話題になったのは明らかに出版当時(2004年)、この内容で萌え絵を表紙にした典型的なライトノベル「だった」ことでの恩恵だろう。あるいは、オンラインゲーム隆盛による引きこもりからの家庭内暴力がクローズアップされ始めた当時の時代背景の後押しを受けた可能性もある。どの途、この手の題材が溢れている現在、当時と同じ衝撃を受けることは難しいだろう。砂糖菓子の弾丸、という奇妙な響きはそれこそ引きこもりの(主人公の)兄が嘘を風刺した言葉。作中にキメフレーズとして度々出てくるのだが、その度に肩をすくめたくなる「なんちゃって」感が漂う。個人的には上述の通り、時流を得た作品として捉えているために内容それ自体を評価は出来ないのだが、桜庭一樹という作家像を掴むのには興味深い作品だった。というのも、本作はマクロ的な視点で見れば実質、直木賞受賞作『私の男』の習作となっているからだ。桜庭一樹に対して、私はライトノベルと大衆小説を書き分けられる器用な印象を持っていたが、創作に対しては不器用で、存外、そのパターンは少ないのかもしれない。画像はライトノベルとして出版された萌え絵を配した富士見ミステリー文庫時ではなく、一般文芸作品として再出版された角川文庫のものを使用しています。

角川文庫:砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない/桜庭一樹 (2004)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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角川文庫:推定少女/桜庭一樹

推定少女
Ending Ⅰ 放浪
Ending Ⅱ 戦場
Ending Ⅲ 安全装置

answer.――― 50 点

作家に限らず、すべての創作家が創作に臨む上でまず手に入れなければならないものがある―――「確信」。本作にはそんな「確信」が無い。それは何も、エンディングが三つ用意してあるから言及している訳ではない。幾ら頁をめくっても、読んだ万人が印象に残る「決め」の場面が訪れないからだ。アドリブ的に書き進めた手探りの作品、本作にはそんな印象を終始抱いた。冒頭、父親を事故で射て逃亡するヒロインはダストシュートに逃げ込み、そこで拳銃を手に硬直した裸の女に「出会う」。ここまでは良い。著者自身もこの「起」に関しては狙って描いたことだろう。問題は、そこから先だ。二人は逃亡する、裸の女は記憶を失っているらしい、TVではUFOが墜落したという報道が流れる、ヒロインはふと精神病棟から逃げ出した患者の話を思い出す、また、拉致された女の事件を思い出す、……それらの内容はショッキング、ではある。しかし、いつまでもストーリーと結びつかない。まるで物語が進まないために、読者の注意を惹こうとその場その場のアイディアを挟んでいるかのように。思春期の不安を描いている、と各レヴューサイトはまとめているが、それは桜庭一樹の文章力に騙されているだけだ。拙い文章で本作と同じ内容が描かれたとき、きっと同じ感想にはならないだろう。ただただ、不安定な物語。それが本作である。本作はライトノベルとして2004年にファミ通文庫で出版された後、2008年に角川文庫でエンディングを追記して再出版された。画像はその角川文庫のものを使用。もっとも、たとえ桜庭一樹ファンであろうと、本作に関しては読む必要を感じないが。

角川文庫:推定少女/桜庭一樹 (2004)

category: さ行の作家

tag: OPEN 50点 桜庭一樹

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角川文庫:GOSICK ―ゴシック―/桜庭一樹

gosick,1
1.プロローグ 野兎を走らせろ!
2.金色の妖精
3.暗い晩餐
4.幽霊船 <QueenBerry号>
5.<野兎>と<猟犬>
6.ゲーム・セット
7.その手を、離さない
8.エピローグ 約束

answer.――― 71 点

レヴューを書くに当たって、私がまず始めにすることはamazonのレヴューのチェック、そして、相互リンクして頂いた方々のなかでその作品をレヴューした記事の有無をチェックすることである。そうして、もやもやとした己の感想を文字に起こしていく訳だが、本作においては、―――これだ、これが言いたかった!と膝を打ちたくなった一文を相互リンク【広げられた世界を歩く】にて見つけた。もはや、私はそれで本作を語る言葉を失った。そのレヴュー、その一文をまんま転載すれば良いじゃねえか、と結論付けた。本作のレヴューはその一文で事足りるのである。勿体ぶっても仕方ない、その一文を万雷の拍手を伴ってご登場願おう( ´∀`ノノ゙☆パチパチパチパチ!! 私の膝を打った一文、それは―――<ヴィクトリカちゃんブヒィィ>であった。そう、本作は深窓の令嬢であり、安楽椅子探偵ヴィクトリカ・ド・ブロワを愛でるための萌えノベルだった。推理小説の体こそ採用しているが、大したトリックも用意されていないのだから、そんなものはどうでもいいのだ。ヴィクトリカちゃんがいれば良い、それで満足だ。―――ヴィクトリカちゃんブヒィィ!―――ヴィクトリカちゃんブヒィィ!と頁をめくる度、我らは肥えた読豚として嬌声を挙げればいいのである。とりあえず、にとりさん、……ごめんなさいm(__)m 画像は富士見ミステリー文庫ではなく、角川文庫版を採用。

角川文庫:GOSICK ―ゴシック―/桜庭一樹 (2003)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜庭一樹

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