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第17回小説すばる新人賞 受賞作:となり町戦争/三崎亜記

となり町戦争 (196x290)
(あらすじ)
広報で突然知らされた、『となり町との戦争のお知らせ』。とりあえず私が心配したのは職場までの通勤手段だったが、町は今までどおり平穏な様相を呈していた。戦時中だという意識を強めたのは、広報紙に掲載された戦死者数。やはり戦争は始まっていたのか。

answer.――― 67 点
三崎亜紀のデビュー作であり、「町」シリーズの第一弾作品。その概要は、ある日、隣町との戦争状態であることが通知されるも日常は異常なまでに変わり切らず、しかし戦死者が現れ、そして、主人公はスパイへの転身が命じられ……というもの。ざっくりと云えば、シュールな作品。シュルレアリスムを日本語訳すると「超現実主義」となるらしいが、この作品をシュールとするならば、超現実の意味も分かるというもの。超現実(戦争)の中に放り込まれた主人公を通し、読み手はそこに普段は内に隠れている己のセンチメンタルを見い出す。その意味での本作の個人的ハイライトは、主人公のパートナーである香西さんへの質問、その返答を挙げたい。「弟は、誰かに殺されたわけではなくって、戦争で死んでいったのですから」とする返答は、本作が《キャラクター》要らずの作品であることを象徴する超現実な台詞だ。故に、キャラクター有りき、娯楽性を求める人にはいささか厳しい作品なのは否定し難いところ。「戦争」下とはいえ、実際には何が起こっているわけでもない。本作を愉しむにはセンスが要ります。

第17回小説すばる新人賞 受賞作:となり町戦争/三崎亜記

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 三崎亜記 小説すばる新人賞 「町」シリーズ

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第4回本屋大賞 9位:失われた町/三崎亜記

失われた町
1.風待ちの丘
2.澪引きの海
3.鈍の月映え
4.終の響い
5.艫取りの呼び音
6.隔絶の光跡
7.壺中の希望

answer.――― 58 点

三〇年に一度、突然一つの町の住民が跡形もなく「消滅」する世界……大切な人を失った人々の思いは?「消滅」との戦いの行方は?―――なるあらすじと著者のデビュー作を知る人ならばピン!と察せられるだろう本作は、通称「町」シリーズの第二弾。シリーズと云っても、創作上のコンセプトが共通しているだけで、作中世界を共にしているわけではない。文学作品ならば宮本輝の「川」三部作、ライトノベルならば有川浩の「自衛隊」三部作のようなものだ。作家をアーティスト=一人の芸術家として捉えるなら、創作上でひとつのコンセプトを持つことは、著者の後の作風、思想の変遷を知る上で役立つことになるので個人的に大いに推奨したい創作スタイル。出版点数ばかり増えた昨今、作家は自己プロデュースが出来なければならない時代になったが、「作品」ではなく、「作家」としての<コンセプト>を持つ発想が作家業を続ける秘訣になると思うので、これから作家になる人は心に留めておいて欲しい。さて、話は逸れたが本作は一刀両断に値する駄作の類。町が消える、そこから派生する問題で、人々が何より思い悩むのは<哀しむ>ことを禁じられていること。そんな設定面を肯定的に取り上げるレヴューが散見出来るが、この手の人はライトノベルで同じ設定があったとして果たして同じ評価をするだろうか?何でライトノベルを引き合いに出すのかといえば、本作、非常に読みにくいからだ。序章に「エピローグ、そしてプロローグ」と置かれて物語が始まるが、読み進めたい!と思うフレーズがここで出ないのが厳しい。そこから造語が頻出し、SF活劇と思って読み進めれば、登場人物の心の触れ合いに力点を置こうとしていたりと、とにかく中途半端だ。本作を「面白い!」と感じた人は、それはある種のナルシズムによる錯覚なので注意して欲しい。本作、楽しむために理解力が要るのではなく、単純に<下手>なのだ。同じ設定を思い浮かべて文章を平易にし、それでライトノベルとしてリリースされていたら絶対に貴方は酷評する。読みにくいから面白い、そんな中二病に罹ってはいけない。余談だが、単行本における装丁の工夫はお洒落で、そこは〇を贈りたい。

第4回本屋大賞 9位:失われた町/三崎亜記

category: ま行の作家

tag: OPEN 50点 三崎亜記 「町」シリーズ

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