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第2回本屋大賞 10位:そのときは彼によろしく/市川拓司

そのときは彼によろしく 
(あらすじ)
小さなアクアプランツ店「トラッシュ」を経営している主人公、遠山智史のもとに、ある夜、森川鈴音と名乗る美しい女性が現れる。彼女は智史に、行くあてがないからアルバイトとして雇って店に住ませてくれるよう頼む。智史は少し怪しく思ったものの、彼女に奇妙な懐かしさを感じたため断らなかった。二人の間にあった不思議な縁が、ぼくの人生を動かし始める。

answer.――― 78 点

大ヒット作『いま、会いにゆきます』の著者で知られる市川拓司。彼の出自はWeb小説であり、西暦2001年―――New Millenniumを迎えた記念とばかりに出版界が仕掛けた純愛ブーム、Web小説、Webブログの書籍化の流れの先鞭を担った作家の一人だ。本作は、前述の代表作に続くファンタジーを孕んだ恋愛モノ、その第2弾といった具合。さて、本作を読んで気づいたことを少々……村上春樹、村上龍。<W村上>と括られる二人は現代の文壇における最重要人物においていいと思うが、何故に最重要なのかと云えば、もちろん溢れるフォロワー、その作風の影響力ゆえである。本作はその<W村上>の片割れ、村上春樹の影響が色濃く見て取れる。村上春樹の作風と云えば、(私にとって)のっぺらぼう、顔のない登場人物たちの会話がまず思い浮かぶ。ストーリーを意識し始めた中期以降の作品はまだしも、文学作品として捉えられる前期―――まあ、文学関連の作品は人それぞれの捉え方があるので流すが、本作における市川拓司の登場人物たちの会話は所々にハルキ節である。そして、その会話に引き摺られるようにして、地の文もハルキスト仕様のものとなってくる。これが気に食わない。というのも、主人公は自らを凡庸と謳いながらも、斜とも違う構えを以って、物事を淡々と分析する序盤も序盤は、<市川拓司>の文章があるからだ。<コステロ眼鏡>なんて造語もあり、イメージ付けも上手い。しかし、いきなり時間軸を変えて、成人してからの文章は途端、頁数を稼ぐようなコストパフォーマンス意識した簡易な文章になり、謎のヒロインの登場でついにハルキ化。サボんなや!と一喝したくなる。もっとも、村上春樹の処女作『風の歌を聴け』でも披露される<絵>挿入まんまなオマージュもあり、著者自身も「自覚」自演しているのかもしれない。文章について言及が続いたが、ストーリー自体はHAPPY×HAPPYのハートフルなもので、後半、ビックリするようなファンタジー仕上げにこそなるが、読後感は非常に良い。前向きな村上春樹、そんな印象も抱く。個人的には、ゴミ描きの親友が「やっぱり、夢は叶うんだ!」と主人公の小さな成功を心から喜ぶ件が胸打たれました。内容は好みだっただけに、やっぱり、序盤の書き口で最後まで描き切って欲しかったな。

第2回本屋大賞 10位:そのときは彼によろしく/市川拓司

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 市川拓司 本屋大賞

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