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電撃文庫:アリソン/時雨沢恵一

アリソン
1.アリソンとヴィル
2.誘拐と放火と窃盗
3.残った者達
4.朝食のち出撃
5.ロクシェとスパイ
6.ワルターの戦い
7.これはこれで
8.二人のいる世界

answer.――― 64 点

今や電撃文庫の重鎮として電撃小説大賞の選考委員を務めている時雨沢恵一、その代表作『キノの旅』以外のシリーズ作品―――通称<アリソン>シリーズ。表題のヒロインが空軍のパイロットであったり、主人公(?)が射撃大会で入賞する腕前だったり、東西冷戦を思わせる二国が対立する世界観など、本作においても著者のガンマニア、軍事マニアから派生している設定が散見される。この辺の一本通った創作スタイルは<好きだから書いている>という作家の原点に思えて好感を抱く。しかし、肝心の作品の評価としては、可もなく不可もなく……と言ったところ。ファンならば之といった破綻もないために有難がれるかもしれないが、それこそ時雨沢恵一が書いた……というオプションを外して読んでしまえば、単にそつなくまとめられた地味な作品としか思えない。遡れば芥川龍之介に見られるように、短編では幾つもの快作を出せても、中・長編になると途端、その才能の底を見せつけてくれる作家がいるが、時雨沢恵一も本作を読むかぎりその一人と数えて良いようだ。読んで損というわけではないが、ファン向けのシリーズには違いない。ピックアップするなら前半戦の山場、空戦での“死んだふり"などは流石の演出かな。

電撃文庫:アリソン/時雨沢恵一 (2002)

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 時雨沢恵一

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電撃文庫:キノの旅 -the Beautiful World-/時雨沢恵一

キノの旅
世界は美しくなんかない。そしてそれ故に、美しい
―The world is not beautiful. Therefore,it is.―

answer.――― 75 点

喋る自動二輪エルメスにまたがり、早10余年……連作短篇の顕著な成功例として挙げられる『キノの旅 -the Beautiful World-』。著者である時雨沢恵一は電撃文庫躍進の功労者として、今や高畑京一郎と並ぶ未来の稼ぎ頭を算定する電撃小説大賞、その御意見番(選考委員)として君臨。当たり障りのないコメントで長期政権を狙う。そんな著者の現況報告はさて置いて、本作のレヴューをば。連作短篇の基となるのは、国から国への旅。主人公であるキノ(&エルメス)は滞在するその場所がどれも偏屈な体制、思想を持つことを知り、また、そこの住人、あるいは旅の途中で出会う人々と邂逅……そうして、概してシニカルなエンディングを迎えるというもの。著者自身が申告している通り、作品のモチーフは松本零士の代表作『銀河鉄道999』。本作は過去の名作漫画を違う主人公で、読みやすい文章で再構築したというのがセールスポイントに挙げられる。現在ではライトノベルの代名詞としても通用するミリオンセラーな本作が第6回電撃小説大賞において落選したという事実は巷で語られる有名な話。これは<面白い/つまらない>という単純なYES/NO評価だけでは、受賞出来ないということを暗に示している。キーワードは「連作短篇」―――当時、このスタイルの成功例が(シリーズ本編の番外編としてこそあれ)ライトノベルに無かったことが大きい。出版社にとって授賞はあくまでビジネス。ただ面白いだけでの出版、その失敗は許されない。昨今、『小説家になろう』などの小説投稿サイトからのデビューが目立つが、これはビジネスが確立してくれば必然的な流れで、業界を変えて例を挙げれば2000年前後の邦楽における「インディーズで一度売り出して、そこからメジャー・デビュー」の図式に見て取れる。リスクを背負うことなく、一定量の「売れる」確証。本作が選考から漏れ、『電撃hp』にて全編を一度掲載されたのも同じ理由だ。文化事業において、新しいことは避けられる。ワナビー諸氏には、その辺を理解した上で、―――The world is not beautiful. Therefore,it is.と、うそぶいて頂きたい。横道に逸れたが、ライトノベル初心者には手堅い一作。もはや、ライトノベルの古典とも云える位置に置かれる作品なので、後学のためにも読んで損は無い。また、著者のあとがきへの想いは業界随一だろうことも付け加えておく。個人的には、著者近影のほうが面白いけどね。

電撃文庫:キノの旅 -the Beautiful World-/時雨沢恵一 (2000)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 時雨沢恵一

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