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第12回山本周五郎賞 受賞作:エイジ/重松清

エイジ
(あらすじ)
ぼくはいつも思う。「キレる」っていう言葉、オトナが考えている意味は違うんじゃないか。通り魔事件が相次ぐ東京郊外のニュータウン。犯人はぼくの同級生。でもぼくの日常は事件にかまけているほど暇じゃなくて……。家族、友情、初恋に揺れる14歳、少年エイジの物語。

answer.――― 71 点
くそまみれの公衆便所、鼻をつんざくアンモニア。ジッパーおろし、たれ流しゃ真っ赤な血のしょんべん……「自分は中学生の時にこの本を読んで衝撃を受けました。まるで中学時代の自分が感じていることをそのまま本に書いたみたいで」と、長渕剛の名曲「英二」に乗せてamazonのとあるレヴューより抜粋させて頂いたが、本作の価値はこの抜粋が端的に表しているように思う。すなわち、思春期に読んで中二病を予防、あるいは早期に完治させるための服薬的作品である。物語は、連続通り魔の犯人が“目立たない”同級生と判明した衝撃と、そこから知らず膨らんでいく主人公の日常への抑えようのない苛立ち―――出版当時の合い言葉「キレる」をキーワードに展開していく。正味な話、「キレる少年」という時事的な社会問題へ切り込んだところに価値があった作品だと思うので、今読んだところで(……俺も普通じゃないのかもしれない!)という主人公が「鏡」となって、中二病へブレーキを掛ける効能しかないように思うのだが、それでも、そこは人情作家・重松清。「最近、父はよくぼくに昔の話をするようになった」など、父の過去を認めない、父を「父」としてしか認めない、子ども特有の視点をさらりと諸所に挿入。成熟した書き手の印象を与えてくる。地味ではあるが、良質で「平凡」な青春譚として紹介出来る一作。重松清作品を未読なら、本作をリトマス試験紙的に読んでみるのも良いかもしれない。

第12回山本周五郎賞 受賞作:エイジ/重松清

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 重松清 山本周五郎賞

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第3回本屋大賞 5位:その日のまえに/重松清

その日の前に
1.飛行機雲
2.朝日のあたる家
3.潮騒
4.ヒア・カムズ・ザ・サン
5.その日のまえに
6.その日
7.その日のあとで

answer.――― 69 点

まずは章タイトルをご覧あれ。5章「その日のまえに」、6章「その日」、7章「その日のあとで」とあるように、本作は「その日」をテーマにした物語。「その日」とは「死ぬ日」であり、「その日」を直接的に迎えるのは自分ではなく、友人、知人、そして、妻と云った面々。著者は現代の人情作家の第一人者・重松清。品のある文章は堅実で、派手さはないものの、実に「良い仕事をしてますねぇ~」とどこかのトレジャーハンター爺さんのように誉めたくなる作家だ。そんな作家が人生の終わりを描くのだから、―――思わず感涙!したかったところだが、どうやら読者の対象年齢が高めに設定されているため、いささか共感出来ない部分が目立った。原因は、ほとんどの登場人物に情念が無いからだ。「その日」を迎える面々は子どもから大人まで取り揃えているにもかかわらず、全員が<諦観>に入っている。リアリティがあるといえばそれまでだが、故にエンターテイメント的には退屈だ。著者もその辺を意識しているために、テーマの共通する短篇を並べて来たかと思わせて、終盤に繋げてくる連作短編という構成上の工夫を施しているが、これは小手先。失地回復までには到っていない。平均寿命から考えて、本作は人生の折り返し地点である四十路コーナーを廻ったあたりに手を出すのがベターだろう。個人的には、目次を開いたとき、サンドイッチ状になっている章タイトルのアイディア(……これ、意外に少ないのよね)に未開拓の可能性を見ました。

第3回本屋大賞 5位:その日のまえに/重松清

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 重松清 本屋大賞

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