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第14回電撃小説大賞 金賞:君のための物語/水鏡希人

君のための物語
(あらすじ)
華やかさとも成功とも無縁で、幸福や繁栄は手に入らない対岸のもののように感じられる、そんなひとりぼっちの冬の寒い夜。ひょんなことから死にそうな目に遭った私を救ったのは、奇妙で不思議で美しい「彼」ことレーイだった。出会いと喪失を運んだ不思議な力、老婦人の昔日の想いが込められた手鏡と櫛、天使をも魅了する声を持つ女帝とも称された歌姫、そして「彼」を追う魔術師―私は彼にまつわる不思議な事件に巻き込まれ、そして―――「彼」と「私」をめぐる数奇な運命を綴った物語。

answer.――― 75 点

第14回電撃小説大賞の<本当の大賞>とささやかれている本作『君のための物語』。選考委員の間では、シャーロック・ホームズが引き合いに出されているが、個人的にはフィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』を彷彿させた。謎の麗人である「彼」を眺める「私」……といったやや俯瞰的な書き口が主たる要因だが、ホームズにせよ、ギャツビーにせよ、読み手に海外の作品を想起させることが、本作の異色性の現れだろう。さて、本作は【第一章】ですべてが物語れる。形式的には、ひとつの物語を短篇形式で紡いでいく―――ひとつの物語に帰結させる作品だが、【第一章】に入る前の何のことはない挿し絵にまで工夫があると誰が予想出来ただろう?作者か、イラストレーターか、はたまた、編集者か。良い仕事をしていると思う。【第二章】以降は、事実として【第一章】で迎えたクライマックスの余韻に過ぎない。それぞれ粒揃いの話だけに、逆に【第一章】、その完成度の高さに凄味を感じる。本作が大賞を受賞出来なかったのは終盤の必要性を感じない戦闘描写にもあるだろうが、一番の理由は文庫の方向性が変わりかねない可能性があったからじゃないだろうか?この方向に定めたとして、続く作家が現れないのでは意味が無い。実際、本作はやはり偶然の産物のようで、本作以降の作者の作品はどれもあらすじ、レビューを読むかぎり驚くほど迷走気味だ。それだけに、本作は一読の価値があると思う。10年後に本作が何と言われるのか。公式的にはさしてプッシュされていないが、ライトノベルの各レヴューサイトでは推されているので<隠れた名作>扱いされるんだろうね。という訳で、例に漏れず、ナマクラ!Reviewsでもお薦めです。

第14回電撃小説大賞 金賞:君のための物語/水鏡希人  【推薦】

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 水鏡希人 推薦

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