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角川スニーカー文庫:ロードス島伝説/水野良

ロードス島伝説
1.亡国の王子
2.天空の騎士
3.栄光の勇者
4.伝説の英雄
5.至高神の聖女

answer.――― 85 点

先にお断り……ナンバリングされている関係で上記に記載しているが、個人的にファンの後押しを受けて制作された第5巻「至高神の聖女」は本シリーズの外伝として扱うべき作品だと思っている。というのも、2000年前後を境に、水野良は<スケッチ>とも云えるラフな文章で物語を綴るようになってしまったからだ。『ザ・スニーカー』誌、その他にて連載していたものをひとまとめにし、ついに<2002年>に出版された第5巻はまさにソレを証明。章が進むごとに拙くなっていく文章は、一人の作家の死に行く様を見ているようでとても痛々しい。ロードス島伝説、全4巻。著者自身、あとがきにて一度断言しているこの事実が真実である。本シリーズは『ロードス島戦記』以前、前シリーズの中で謳われる<六英雄>の物語―――と見せ掛けて、著者のあとがきを信じれば、思いつきで登場させた主人公ナシェルがあれよあれよとタイトル通り<伝説>へと駆け上がっていくストーリー。人それぞれに英雄像はあると思うが、私は本作でその像を完成させた。私にとってのヒロイズムはすべてここに描かれている。このナシェルの前では、カエサルも光武帝(←逸話が全部本物だったら人類史上最高のカリスマだと思う。英雄の「手本」のない時代に、それ以上の姿を披露している点がマジで半端ない)、チンギス、豊臣秀吉、ましてや坂本龍馬なんぞ所詮、現実の人間でしかない。―――ナシェルとは何者なのか?それは各巻のサブタイトルがすべてを物語る。すなわち、「国を失った王子」が「一人の竜騎士」となり、「百の勇者を束ねる勇者」となり、そして、「すべての英雄を超える英雄」となる―――そこには何も残らない、伝説本来の本質がここに結ばれている。第4巻の終盤、風竜に乗り、各英雄に託す言葉はもはや啓示だ。ドワーフの王に生きる意味を与えた瞬間、とうとう感涙。ライトノベルで泣かされたよ、と自身を恥じた。外伝も二作あり、そちらも粒揃い。私の英雄像を掴みたいという奇特な方は必読です。

角川スニーカー文庫:ロードス島伝説/水野良 (1994~2002)

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 水野良

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角川スニーカー文庫:ロードス島戦記/水野良

ロードス島戦記
1.灰色の魔女
2.炎の魔神
3.火竜山の魔竜(上)
4.火竜山の魔竜(下)
5.王たちの聖戦
6.ロードスの聖騎士(上)
7.ロードスの聖騎士(下)

answer.――― 78 点

―――スニーカー文庫と言えば?これは90年代と00年代で間違いなく読者の答えが分かれる質問だろう。現在では現代を舞台にした学園モノ、アダルトゲームをノベライズ化した作品が主力を担っているスニーカー文庫だが、文庫設立当初しばらくはファンタジーの専門レーベルと見紛うほどに文庫のカラーはファンタジー一色に染まっていた。その直接的な原因が本作『ロードス島戦記』にあることに、まさか異論を挟む御仁はいらっしゃるまい。本編全7巻、足掛け5年(……あれ!?意外に短い!?)のこの大作は、エルフの耳を伸ばしたのは水野良―――という嘘のような「これ、ホンマでっせ!」なエピソードを持つように、現在に通じる他作品への影響も顕著で、ついに未完の超大作となることに帰結した栗本薫・著『グイン・サーガ』に並ぶ、日本のファンタジー作品の代表作のひとつに数えられる。そのストーリーは終わることのない戦争から「呪われた島」と呼ばれるロードス島を舞台に、村の戦士パーンが騎士となることを夢見て旅立つことから始まる。戦争を終わらせる……ただ騎士になることが目的だった血気盛んな少年が、いつしか芽生えたその想いを胸に、十余年の時を経て、“誰にも仕えない”自由騎士となる物語は圧巻の一言に尽きる。一登場人物を生まれから育ちまで絡めて、作中のすべての国に関わらせた構成は歴史を扱う作品のひとつの完成形だろう。第6巻以降、読者の評価も分かれる主人公の交代劇が起こるが、作中に流れる時間を演出する方法としては決して間違いではないと思う。……まあ、評価が割れるのは、パーンの人物造形がそれだけ成功しているからだろう。哀れ、不幸王(スパーク。第6巻、第7巻の主人公。次作シリーズ:新ロードス島戦記の主人公でもある)。採点はシリーズ全編を鑑みての配点だが、個別に評価するなら第2巻<炎の魔神>は筆力、構成ともに白眉の出来。著者の最高傑作に挙げても良いだろう。また、第1巻にのみクレジットされている原案・安田均がどこまで本シリーズの絵図を描いていたのか興味深いところで、それによって、私のなかで水野良という作家の評価が著しく変わることも付け加えておく。

角川スニーカー文庫:ロードス島戦記/水野良 (1989~1993)

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 水野良 三大ライトノベル

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第3回ラノベ好き書店員大賞 3位:グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ/水野良

グランクレスト戦記
1.契約
2.野心
3.災厄
4.戦旗
5.決断

answer.――― 67 点
実しやかに囁かれる噂はどこの業界にもあると思うが、たとえばライトノベル界隈ならば、ライトノベラーは一作家(につき)「1」シリーズしか追わない、というのがある。もちろん、例外は幾らでも見つかるだろう。がしかし、私はこれ、―――本当だと思う。それというのも、ライトノベルを「読む」時期に関係している。ライトノベルは《ティーンが読む》本だ。二十歳超えた、あるいは三十路超えた、ましてや四十路を超えた者のためのジャンルではない。ティーンが読む、つまりは《思春期に読む》本。これが意味するところは、《有限》だ。誰しも加齢とともに時間の進みを早く感じていると思うが、ティーンの三か月と二十歳以降の三か月は、同じ「三か月」でも体感がまるで違う。それだから、たとえば全10巻の足掛け「3」年の「1」シリーズは、実際は「3」年以上、ともすればその「倍」以上の月日を共にしてきたような錯覚を経て、著者を「思い出」へ葬り、「旧い」作家と見做してしまう。著者のイメージも固定され、そこから外れれば、……と、この通り、ライトノベラーが一作家(につき)「1」シリーズしか追わない理由は、ライトノベルを《思春期》に読むが故の特徴だと思う。さて、本作はかの『ロードス島戦記』の著者、水野良の新作ファンタジー。「聖印」を世界観の軸とした領土奪取&……!な本作は、雑感としてヒストリーな『ロードス島戦記』、キャラクターな『魔法戦士リウイ』の氏の代表シリーズの折衷的作風で、前者の水野良を望むファンも強烈な拒否反応の出にくい出来となっている。サクサクと進むファーストフードな展開はモダンで、その辺りも新旧の読み手を意識した著者の本作への意欲が伺えるが、……如何せん、新規開拓の魅力には乏しいかな、と。ファンタジーに求めるのは「未知」、あるいは圧倒的な筆で綴られた「既知」だと思う。本作にはそのどちらの要素も残念ながら「足りない」。それでも、腐っても「水野良」が垣間見えるのは間違いないので、ノスタルジーに駆られた方は手に取って損は無いでしょう。

第3回ラノベ好き書店員大賞 3位:グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ/水野良

category: ま行の作家

tag: OPEN 60点 水野良 ラノベ好き書店員大賞

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