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このライトノベルがすごい!(2011年版) 10位:神様のメモ帳/杉井光

神様のメモ帳
(あらすじ)
「ただの探偵じゃない。ニート探偵だ」 路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる“ニート探偵”アリスはそう言った。高校一年の冬に僕と同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕むドラッグ“エンジェル・フィックス”―――すべての謎は、部屋にひきこもる少女探偵アリスの手によって解体されていく。僕の答えに、普段は不真面目なニートたちが事件解決へと動き出す!

answer.――― 66 点

昨今のライトノベルが掲げるマ-ケット的テーマに「大衆小説への接近」があると思うが、その接近方法をかなりアバウトに大別すると、私のなかでは「桜庭一樹」型、そして、「有川浩」型に別けられる。前者は「もはや」大衆小説であり、後者は「所詮」ライトノベルである。本作は残念ながら後者の型、所詮、と巷の高評価に期待し過ぎたのか、肩透かしを食らった一作。所詮、と批判的な響きを採用しているが、私の趣向と合致しないだけで、それが悪いという訳ではない。二つの型の差を分ける要因は、読者の想定にある。「桜庭一樹」型は筆力に物を言わせる型であり、ライトノベラーに大衆小説を読ませるのではなく、大衆小説の読者に大衆小説を読ませる、という至極真っ当な書き口を展開する。対して、本作が採った「有川浩」型は、ライトノベルの読者に大衆小説を読ませる―――キャラクターはそのままにストーリーを「大人」っぽくした話を綴る。「大人」っぽくする方法には専ら<死>、<病>、あるいは<記憶喪失>など主人公が身近なモノを喪失することを主題とする。本作では、高校に馴染めない主人公をこれまた社会に染まり切れない面々が集う『ラーメンはなまる』へと案内したヒロインが禁止薬物によって自殺未遂&植物人間になる悲劇と遭遇、その発端を探るべく主人公はニート探偵アリスへ協力云々。主題がラノベ読みたちには重いため、何かバッドエンドな感じで良い話ーサーに映るが、禁止薬物扱う事件の割に登場人物の行動、物語の展開が軽弾みで、この辺を「所詮」と見下げたくなる。ただ、読みやすいのは事実で、ライトノベル特有のキャラクター先行が活きているのも頷ける。要は、合うか合わないかに尽きる。私は×でした。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 10位:神様のメモ帳/杉井光

category: さ行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 60点 杉井光

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電撃文庫:さよならピアノソナタ/杉井光

さよならピアノソナタ
(あらすじ)
音楽評論家を父に持つ男子高校生桧川直巳と、音楽界から突然失踪した若き天才少女ピアニスト蛯沢真冬との出逢いから始まる、青春恋愛小説である。主人公たちがロックバンドを組んで活動する物語であり、また蛯沢真冬以外にも登場人物にクラシック音楽の関係者が多いこともあり、全編にわたって実在するロックとクラシックの様々な音楽が作品に関わってくる。

answer.――― 72 点

私のなかで作風の括りのひとつとして、<記号小説>という括りがある。それがどんなものなのかと云えば、既存の固有名詞で作品世界を演出する小説であり、クラシックからロックまでの実在する曲、アーティストとそのエピソード、楽器と機材、演奏法を含めた『音楽』が紹介される本作は、まさにそこに該当する。<記号小説>はストーリー内容そのものよりも、その<記号>のチョイスが成功の鍵を握る。さて、その結果は著者の代表作に挙げられる『神さまのメモ帳』と比して、その陰に隠れながらも譲らない人気を集めている事実が示してくれるように、成功といってまず間違いはないだろう。個人的に感心したのは、ロック分野で「攻めた」チョイスを避けたところ。その一例には、Iron Maidenを作中に取り上げたとして、その音楽には触れず、B級臭漂うジャケットについて言及した点を挙げよう。クラシックと違い、ロックは<It's mine!!>的意識が強いイタタタタタ……な人が世に蔓延っている。著者はそれをよく理解し、ほぼ音楽に触れず(触れる際は「具体的な」演奏技術を交える)、そこにまつわるエピソードの紹介に終始する。また、そこでも反発が生まれないよう細大配慮して保険さえかけている。上記のIron Maidenならば、ブルース・ディッキンソン(Vo.)加入後の主流のカタログではなく、1stと2ndという「敢えて」の外しっぷりだ。ロック好きならば著者の爆弾解体作業のような慎重な<記号>処理を堪能出来るだろう。クラシックに関してはそういう配慮が足らず、エピソードもパガニーニなど王道中の王道な逸話でやや拍子抜けだったのが残念……ながら、そこは逆に音楽に疎い読者ならばこそ楽しめる<記号>に溢れている証拠でもあるので、プラス査定にさえなるだろう。主人公はある日、天才ピアニスト美少女と出会うが、学校でのカノジョは何故かギターを……というストーリーラインは「所詮」ライトノベルで期待してはいけないが、『音楽』の紹介を主題にした<記号小説>として合格点な一作。楽しめるでしょう。

電撃文庫:さよならピアノソナタ/杉井光 (2007)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 杉井光

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第12回電撃小説大賞 銀賞:火目の巫女/杉井光

ブギーポップ
1.火中
2.火乗苑
3.火護の鐘
4.火摺り巡り
5.火渡の紅弓
6.火目の巫女
7.火刑

answer.――― 60 点

化生を討つ弓・火渡を授かるただ一人の火目=姫。伊月、佳乃、常和の三人の娘はそれぞれの事情を抱え、火目となるべく、宮中の火乗苑へと集められた。各所のレビューに飛んでみても、軒並み「鬱展開」と書いてある本作。実際に読んでみても、終盤に差し掛かる頃には確かに残りの頁数を逆算しながら、……これ、どう話を落とすんだ?となった。と言うのも、ぶっちゃけ、この書き方ならハッピーエンドを期待するからだ。終盤になってどう転んでもバッドエンドが確定(読者の中で)してしまっても、よもやよもや、まさかの逆転、作家の腕の見せ所!を待つ期待で頁をめくる―――が、結局は想像通りの着地点で、やっぱりU2、と。作中で提示される謎や登場人物が抱く疑問が機能していないから、逆転ハッピーエンド、作者の腕に期待してしまうワケですね。文体はやや簡素で平坦ながら、和な単語を散りばめ、日本の平安期を思わせる古風な舞台を演出。あとがきにも書いているように、作品の軸でもある《弓》についての知識がしっかり詰められている。楽しめるかは置いておいて、メインヒロイン・伊月の他の火目候補の才能への剥き出しの嫉妬は、「ここ、その辺のライトノベルとはちょっと違うだろ?オチャヤルヨ( ^^) _旦」と作者がアピールしているように思えて、ハニカミニダ。バッドエンドと書いたが、前を向く形で終えるので読後に不快感は残らないのは良い。

第12回電撃小説大賞 銀賞:火目の巫女/杉井光

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 杉井光

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