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第6回本屋大賞 4位:テンペスト/池上永一

テンペスト
(あらすじ)
舞台は19世紀末の琉球王朝。誰よりも聡明な少女・真鶴は、女であるというだけで学問を修められないことを不公平に思っていたが、跡継ぎと目されていた兄の失踪を機に宦官・孫寧温と名乗り、性を偽って男として生きていくことを誓う。科試に合格した寧温は、王府の役人として、降りかかる難題を次々と解決し、最速の出世を遂げていく。

answer.――― 82 点

ウチナータイムで描かれる『パガージマヌパナス』でデビューして以来、郷土愛溢れる作家として名を馳せる池上永一が己のライフワークの集大成とばかりに上梓してきたのが本作『テンペスト』。琉球王朝の末期を題材にした単行本で全2巻、文庫本で全4巻の大作で、浅田次郎の「私はこの作品を書くために作家になった」という言質さえ取った氏の傑作『蒼穹の昴』に迫る、年に一作生まれるか否かの、ファンタジックにアレンジされた「傑作」琉球ヒストリア!―――と謳いたいところなのだが、大作だけに諸所で息切れするのが何とも残念な一作。それでも、序盤の己の運命に逆らい、「性」さえ捨てて、己が英才を発揮して成り上がっていく真鶴こと孫寧温(♂)の姿は痛快極まりない。王宮へ上がってみれば破綻している財政、その裏で執り行われる後宮の、官僚たちの利権争いに巻き込まれ、同時進行で外から問われる衰退著しい清朝、そして、新興する日本との苦渋の外交舵取りを任され、……なんて末期の王朝らしい押し寄せる《内憂外患》は出し惜しみが無く、思慕交錯するライバル、いつまでも芽の出ない仲間、優しい義兄とともにそれを解決していくカタルシスは圧巻の一言。しかしながら、上述の通り、著者の集大成の思いが強過ぎたのか、「後宮」「官僚」「宗教」「外交」「変態(敵)」「結婚」「etc...」と盛り過ぎて処理し切れず、序盤こそ(……どうなんだ、これ!?)と未知へと有用に働いていたファンタジーの要素は、途中で興醒めさえ起こしてしまった。俺なら書ける!と思って書き始めたのか、平目板!と見切りで書き始めてしまったのかは定かではないが、やはりプロットの段階での精査は必要だっただろう。が、無視出来ないエンターテイメントは十二分に認められるのは間違いない作品。個人的に唸らされたのは、真牛(聞得大君)&真鶴の祝詞場面。あそこで語られていることは、「礎」になる。著者は資料から採ってきたのかしらん?単行本の上巻/下巻、合わせてのレヴューです。

第6回本屋大賞 4位:テンペスト/池上永一

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 池上永一

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第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バガージマヌパナス ― わが島のはなし/池上永一

パガージ
(あらすじ)
仲宗根綾乃は高校卒業後、進学もせず、就職もせず、86歳の大親友オージャーガンマーとひたすらだらだらと過ごしていた。一生、このまま過ごしてやる!という強い決意のもとに……しかしこの数日、煩わしい夢が繰り返されていた。それは、『ユタにならなければ神罰が下る』という怠け者の綾乃には受け入れ難い内容。オージャーガンマーは、綾乃にユタになった方がよい、と諭すが……。

answer.――― 71 点

星の数ほどある読み物のうち、十にひとつ……あるいは、もっと大きな確率で頁の進まない小説と出会う。それは単純に「面白くない」という要因もあるだろうが、それと並ぶ要因に「話が見えない」ことも挙げられると思う。〇〇を倒す話、○×になる話、〇×△に帰る話……といった具合に、概要を一言でまとめられない話には見えない負荷が付きまとう。沖縄は石垣島を舞台にした本作もその手の問題を抱え、序盤から中盤まで物語の見えないウチナータイムに付き合わされる。ただ、本作が各所のレヴューサイトで評判高いのは、物語が定まる終盤―――主人公・綾乃がユタと呼ばれる巫女となり、社長となり、年の離れた唯一の友達オージャーガンマーを助手に、専務に宛てがって、小さな島を駆け回るところから。動いていく物語と陰ながら同時進行していくオジャーガンマーの変化が物語の終わりを予感させてくれる。そうして、―――綾乃は今日も島のどこかで拝んでいる。で〆られる本作は<綾乃がユタになる物語>ではなく、<オジャーガンマーがひっそりと息を引き取るまでの物語>だったことが分かる。本作の読了直後、目の前は類を見ないほど澄んだ景色になる。この景色に出会うために本作を読む価値があると思う。とりあえず、私は自分の先祖へ線香を立てたくなった。著者の出身地だけに、沖縄の、石垣島の文化をよく消化している。楽しい思い出の本質が哀しみと繋がっていることを教えてくれる作品。

第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バガージマヌパナス ― わが島のはなし/池上永一

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 70点 OPEN 池上永一

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