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第9回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ニーナとうさぎと魔法の戦車/兎月竜之介

ニーナとうさぎと魔法の戦車
1.ニーナ、十二歳
2.初陣
3.ラビッツの日常とアンフレックの町
4.戦死者
5.午前
6.午後
7.エピローグ

answer.――― 68 点

「で、この人はいつプロ活動を始めるの?」と選考委員が上から誉め言葉を遣わすように、新人離れした出来の<大賞>作。この第9回には同じく大賞を授与された『オワ・ランデ! ヤレない貴族のオトシ方』があるが、同じ<大賞>とは思えない確かな差がある(そもそもの話、あれを大賞にする理由が……というのもあるが)。本作を手放しで称賛したくなる要因のひとつに、まずは<オリジナリティ>を挙げたい。表題にもあるように<戦車>を扱う本作は、そこに私立戦車隊という独立遊軍の<雇われ>要素、対する相手に自動で動く大戦の負の遺産<野良戦車>を配備するなかなかに斬新な設定。これだけでも十分にこちらの関心を引いてくれるが、それで物語を綴る文章まで一線級なのがまさに新人離れだ。いやいや、これは凄いねえ……と感嘆しながら頁を捲っていくと、……ふむ?と雲行きが怪しくなって、結局は「本日、晴天也!」と勢い良く本を閉じられない心の曇り具合となる。結論から言って、この設定ならもっと面白くなっただろう?と。根本的な問題として、作者の気質が関係しているように思われる。実を言うと、私、この作者のアマチュア時代の作品を読んだことがある(もちろん面と向かって会ったことがある訳ではない、あちらも私のことなんぞ知らないだろう)。その時の作品だが、―――ドSなものだった。この人、根本的に<バッドエンド>に歓びを見い出すのだと思う。登場人物を作中で虐げることに己を見い出すのだ。本作でも「これ、戦争…… (゚▽゚)ウヒッ!」と、当たり前のように悲劇を挟んでくる。バッドエンド思考故に、散見する和気あいあいの日常場面がどうにもしっくりと面白味を感じられないのだ。この設定、この筆力で70点に届かないのはそんな不自然さが作品に漂っているからだ。終盤の大敵の出現の唐突さ、頭の悪さも何とも粗く、残念な出来。<超巨大>な敵というのはフィナーレに相応しく、かなり買えるんだけどね。上述でバッドエンド云々と書いたが、本作はちゃんとハッピーエンドになっている。だからこそ、著者に言いたい。中途半端は止めろ。ハッピーで締めたいならヒロインが無駄に暗い思考を持ち過ぎだ。これからの作品は自分を取るか、読者を取るかハッキリした方が良い。箱庭的な「首なしラビッツ」の奮闘が読みたかったな、と。

第9回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ニーナとうさぎと魔法の戦車/兎月竜之介

category: あ行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞大賞 OPEN 60点 兎月竜之介

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