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電撃文庫:空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎

空ノ鐘の響く惑星で
(あらすじ)
毎年、ある季節になると、空から鐘に似た音が降ってくる世界。『御柱』と呼ばれる宙に浮く巨大な柱がある世界。そんな世界に生じたひとつの噂話―。“深夜をまわる頃、『御柱』の一部に、若い女の姿が浮く―”事実を確かめに行ったフェリオの前に現われたのは、御柱の中に浮かぶ異装の少女の姿だった……。

answer.――― 70 点

2005年から2007年の「このライトノベルがすごい!」にて連続TOP10入りを果たしたように、本編全12巻&外伝1巻の好評を博した渡瀬草一郎の代表作として扱われるシリーズ作、その第一巻。シリーズとしてのストーリーラインは、古より予言されていた異世界よりの侵入者によって突発的に生じた王位継承を巡る内紛、やがて国土さえ割る戦いを描く「末弟」主人公の英雄譚。あとがきにあるように編集部より依頼されての作品のため、元よりシリーズとしての構成がなされ、本作は起承転結で語れば、まさに「起」そのものを任されたプロローグな内容。故に冒頭からしばし起伏が乏しく、筆もデビュー作『陰陽ノ京』の労作具合から一転、肩の力を抜いた散文調が目立つ。それでも、人気を博せたのは登場人物たちのアクシデントな強さの不等号変化、そこからの秀逸な幕引きにある。読者は誰しもアクシデントを期待する。事故に遭えば事故だけをその日の出来事と記憶するように、〆に事故を起こせれば途端にそれまでの評価を覆す。本作における終盤の怒涛の呆気ない殺戮劇、その窮地を力足りずも救う主人公は、ブルー・ブラッド流れるライトノベラーたちにとって感情移入に足る器を示した。シリーズ作品に求められるのは、「……始まったよ!」と思わず空を仰ぎたくなる「起」なラスト。本作は、まさにそれを体現しているお手本のようなシリーズ第一巻。シリーズ作のヒットを狙うなら参考にしたい一作。「投稿作とは違うのだよ、投稿作とは」という草一郎ちゃんの二松学舎なつぶやきをラストの行間で聴いてみましょう。

電撃文庫:空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎 (2003)

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡瀬草一郎

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第7回電撃小説大賞 金賞:陰陽ノ京/渡瀬草一郎

陰陽
1.むかしのこと
2.鬼女の章
3.呪殺の章
4.屍鬼の章
5.花の宴

answer.――― 76 点

2000年前後に吹き荒れていた陰陽師ブーム。その中核を担っていたのは夢枕獏の代表作『陰陽師』だと思うが、本作もまた、トレンドに目敏い電撃文庫が柳の下に「……ほらドジョウ♪」理論から受賞させた―――なんて考えていたら、まさかのウナギ的作品。イラストを田島昭宇が手掛けているあたりからも、ライトノベルらしくないとは思っていたが、まさか本当にライトノベルではないとは思わなんだ。時は平安、陰陽道の名門の出にありながら文章道に進んだ主人公・慶滋保胤。ある日、師である安倍晴明の頼みで洛外の外法師の素性を調べに向かえば、そこに待っていたのは……という物語の概要。安倍晴明を登場させる陰陽師シリーズは数あれど、本作はその中でもお薦め出来るクオリティを持っている。それは起承転結に始まる物語の構成であったり、書き綴る文章、作品背景に合わせた知識、もちろん、登場人物の設定にも及ぶ。この手の作品で弱点になりがちの女性キャラクターにもしっかり機微がある。懸念と云えば、巷に陰陽師モノが溢れ過ぎて食傷気味な点くらいで、これは後発組の宿命だ。本作は「金賞」受賞という形を取っているが、それは単純にライトノベルではないためで、作品としては「大賞」の扱いで良いと思う。陰陽師モノ御用達キャラクター「阿倍晴明」は、本作の場合は年齢を上げて狸親父の風貌で描かれている。区別化を図っているこんなところも評価したい。

第7回電撃小説大賞 金賞:陰陽ノ京/渡瀬草一郎

category: わ行&数字の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 70点 渡瀬草一郎

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