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第5回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:風流冷飯伝/米村圭伍

風流冷飯伝
(あらすじ)
四国は讃岐の吹けば飛ぶよな小藩が、この法螺噺の舞台です。ご案内役は、お江戸で鳴らした幇間。相方を務めますは、お武家の次男、俗に申します冷飯ぐい。でも、この男、暇のつぶし方が、なんだか飄々としております。藩のしきたりも、すこぶる妙です。そんな冷飯ぐいどもが、何の因果か、藩の命運を背負うことになったから、さあ大変……。繰り出すあの手この手に思わず唸る大江戸笑劇の快作。

answer.――― 78 点

もはや「売れている本をもっと売りたい!」という趣旨になってきた本屋大賞だが、立ち上げられた当初は、書店員は知っているけど、一般的な知名度は高くない……そんな「埋もれている」作家を紹介してくれるのかと業界の自浄作用的「賞」が出来たとばかりに喜んだが、そもそも書店員も社会人。読んでいる暇も無ければ、しがらみは言葉遣いから服装までしっかりあるものだ。最近では、作家が編集者と菓子折りを持って挨拶に廻って来るなんてゴシップもあるので、本屋大賞のレヴューを止めようかと思う今日この頃です。さて、本作は本屋大賞で紹介すべき「埋もれている」作家の一人、米村圭伍のデビュー作。第4回までの小説新潮長編小説新人賞の受賞作は総じて文学の色合いが濃かったが、この第5回の受賞作である本作と同時受賞の『俺はどしゃぶり』は完全な娯楽小説で、何より力作となっている。舞台は江戸時代、四国の奇妙奇天烈な小藩。江戸からやってきた謎の幇間(太鼓持ち)と見るが愉しみの人の良い貧乏武士(童貞)の二人の視点を中心に、前半は小藩の昔からの変テコな条令の解説、痴話騒動、後半は将棋に始まる意外や意外の田沼意次による改易の陰謀……と、ほのぼのからの右肩上がり構成は見事の一言。文体も面白く、所々に挟まれる著者の全容を語らずに後ろへ後ろへと展開を投げる書き口は、ストーリーの無さそうな本作にストーリーがあることを時々に注釈してくれる。逆に云えば田舎の雰囲気こそ出せているものの、長閑で済んでしまう前半は読み物としてはやや退屈で、著者の煽りが無ければ読み止めてしまう可能性もある。だが、後半―――具体的に云えば、数馬の貞操の危機を味わえる友人の縁結びミステリーからは痛快。トリを飾る改易騒動も上々の出来だ。地味ではあるかもしれないが、典型的な良作。本当、書店員はこういうの推せよ。ややホラ吹く感じだが、『僕僕先生』が好きな人は手を出してみても良いかもしれない。とりあえず、下ネタが活き活きしているのが感心、感心。

第5回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:風流冷飯伝/米村圭伍

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 米村圭伍 小説新潮長編小説新人賞

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