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このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

この素晴らしい世界に祝福を (203x290)
(あらすじ)
ゲームを愛する引き籠もり少年・佐藤和真の人生は、あっけなく幕を閉じたはずだったが、目を覚ますと目の前に女神と名乗る美少女が。「異世界に行かない?一つだけ好きな物を持っていっていいわよ」「じゃあ、あんたで」ここから異世界に転生したカズマの大冒険が始まる―――と思いきや、衣食住を得るための労働が始まる!

answer.――― 69 点
目下、ここで人気を得れば“とりあえず……”の売上を約束されるウェブサイト「小説家になろう」発、例によっての“異世界転生”を題材とした一作。本作の主人公・佐藤和真は《引きこもりでニート》、そこから何とも間抜けな事故で現実から退場――転生の場で小馬鹿にしてくれた女神アクアを道連れに、新たな冒険人生を始めるストーリーライン。一読して、コストパフォーマンスの高さに目を瞠らせてもらった。文章をこね回すことなく、高飛車お馬鹿な女神、中二病全開のロリ魔女、超ドM変態の女騎士といったキャラクターを配し、無能で常識的な主人公に呆れ、キレさせていくテンポの良さ―――解かり易さは、これぞ、“ライト”ノベル!と云える即席の享楽を堪能出来る。序盤早々に披露される、生活費稼ぐための「ジャイアントトード五匹討伐」なんて課題は、生粋のライトノベラーならばそのフレーズを見ただけで、著者の“活躍”を確信するのではないだろうか。如何せん、中身は無い。しかし、これは著者自身が楽しんでいないと書けない代物であり、それはコミカル路線歩む作品が世に羽ばたく上でもっとも重要で、もっとも維持難しい大事な核だ。シリーズ累計300万部超えも納得の“パーティー”ラノベ。何も考えず、ただただ作品世界に埋没したいライトノベラーにこそお薦め出来ます。

このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 暁なつめ このライトノベルがすごい!

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このライトノベルがすごい!ランクイン作品一覧


▼ 2017年度 ▼

りゅうおうのおしごと (204x290)

1位 りゅうおうのおしごと!/白鳥士郎
2位 Re:ゼロから始める異世界生活/長月達平
3位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬  
4位 ソードアート・オンライン/川原礫
5位 ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも
6位 メロディ・リリック・アイドル・マジック/石川博品
7位 ゲーマーズ!/葵せきな
8位 弱キャラ友崎くん/屋久ユウキ
9位 この素晴らしい世界に祝福を!/暁なつめ
10位 この恋と、その未来。/森橋ビンゴ

▼ 2016年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ソードアート・オンライン/川原礫
3位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人
4位 エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~/東龍乃助
5位 終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?/枯野瑛
6位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
7位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
8位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
9位 冴えない彼女の育てかた/丸戸史明
10位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望

▼ 2015年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ソードアート・オンライン/川原礫
3位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
4位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
5位 後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール/石川博品
6位 絶深海のソラリス/らきるち
7位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望
8位 とある飛空士への誓約/犬村小六
9位 この恋と、その未来。/森橋ビンゴ
10位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

▼ 2014年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人
3位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
4位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
5位 ソードアート・オンライン/川原礫
6位 はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司
7位 東京レイヴンズ/あざの耕平
8位 六花の勇者/山形石雄
9位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
10位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

▼ 2013年度 ▼

ソードアートオンライン

1位 ソードアート・オンライン/川原礫
2位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
3位 六花の勇者/山形石雄
4位 バカとテストと召喚獣/井上堅二   
5位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
6位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航  
7位 デュラララ!!/成田良悟    
8位 「東雲侑子」シリーズ/森橋ビンゴ
9位 サクラダリセット/河野裕 
10位 境界線上のホライゾン/川上稔

▼ 2012年度 ▼

ソードアートオンライン

1位 ソードアート・オンライン/川原礫
2位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
3位 ベン・トー/アサウラ
4位 円環少女/長谷敏司   
5位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
6位 僕は友達が少ない/平坂読  
7位 涼宮ハルヒの憂鬱/谷川流    
8位 丘ルトロジック/耳目口司
9位 アイドライジング!/広沢サカキ 
10位 雨の日のアイリス/松山剛

▼ 2011年度 ▼

とある

1位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
2位 僕は友達が少ない/平坂読
3位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
4位 ソードアート・オンライン/川原礫
5位 ベン・トー/アサウラ
6位 “文学少女”シリーズ/野村美月
7位 "生徒会の一存"シリーズ/葵せきな
8位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
9位 デュラララ!!/成田良悟
10位 神様のメモ帳/杉井光

▼ 2010年度 ▼

バカとテストと

1位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
2位 "化物語"シリーズ/西尾維新
3位 “文学少女”シリーズ/野村美月
4位 とらドラ!/竹宮ゆゆこ   
5位 "生徒会の一存"シリーズ/葵せきな
6位 黄昏色の詠使い/細音啓   
7位 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん/入間人間    
8位 ベン・トー/アサウラ
9位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬  
10位 蒼穹のカルマ/橘公司

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このライトノベルがすごい!(2017年版) 5位:ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも

ゴブリンスレイヤー (203x290)
(あらすじ)
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」―――その辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで銀等級にまで上り詰めた稀有な存在がいるという。冒険者になって、初めて組んだパーティがピンチとなった女神官。彼女を助けた者こそ《ゴブリンスレイヤー》と呼ばれる男だった。

answer.――― 78 点
一定の売り上げが見込めるからか、Web小説として地固めされた作品の書籍化がライトノベル作家のデビューへの道、その王道にも思えてくる昨今―――やる夫スレの人気作品がついに書籍化!と新手の方角から現れた本作『ゴブリンスレイヤー』。その概要は、「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」と辺境のギルドでゴブリンのみを狩って銀等級にまで上り詰めた孤高の冒険者、通称ゴブリンスレイヤーが『仲間』を得て……といったもの。さて、ご存知の通り、ライトノベルは隙間を突くジャンルである。著者は主人公を勇者ではなく、《ゴブリン》というゴキブリの如きザコモンスター専門の狩人に配して隙間を突いてきたわけだが、ザコ相手に俺YOEEEE!とせず、あくまで俺TUEEEE!(でも、ゴブリンもTUEEEE!)としてきたところが著者のセンス溢れる設定演出。如何にゴブリンを強敵に描けるか。その回答に著者は、ライトノベルでは禁じ手とも言える《レイプ》で応えた。作中、ゴブリンたちは(描写こそ省かれているが)女たちを蹂躙する。犯し、妊娠さえさせる。その背徳、ファンタジーでありながらも圧倒的「現実」を読み手に突きつける。本作を読めば《子供程度の知恵、力、体格しかない》ゴブリンが《子供と同じ程度には知恵が回り、力があり、すばしこい》という認識に変わり、その悪夢のような事実に恐れ慄くこと必至だ。ゴブリンスレイヤーの幼馴染、巨乳の牛飼娘は果たして処女(無事)なのか?ゴブリンにのみ執着し、憎悪するゴブリンスレイヤーの背負う過去とは?頁をめくるたびに明かされていく醜悪な生態をスパイスに、ゴブリンは人類の強敵へと変わっていく。《レイプ》の持つおぞましいエンターテイメント性をゴブリンという矮小な器へ注ぎ込んだ異形の一作。「無名」のゴブリンスレイヤーが一筋の光となって(ボクたちの)ヒロインを救います。レイプ、ダメ、ゼッタイ!

このライトノベルがすごい!(2017年版) 5位:ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも

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このライトノベルがすごい!(2016年版) 9位:冴えない彼女の育てかた/丸戸史明

冴えない彼女の育てかた (207x290)
アニメのBD購入費用を得るためにアルバイト中の高校生・安芸倫也は、桜の舞う坂道で出会った少女に興味を抱き、彼女をメインヒロインにした同人ゲームの作成を思いつく。筋金入りのオタクだがイラストもシナリオも書けない倫也は、果たしてゲームを作り上げることが出来るのか!?

answer.――― 67 点
私の思春期ど真ん中の最中に投下されたのはゲーム「RPGツクール」によるコンテスト、『アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト』。1000万円を狙え!というキャッチそのままの、まさに子供騙し!もはや投資詐欺!な販促商法によって、私の周りのオタク予備軍はこぞって購入、例によって作り上げられず、そんな話は無かった!ことになったのは思い出の断片だが、賞金にこそ興味無かったが、何かを創る、ということに珍しく好奇心をくすぐられた私も同ゲームを購入、競馬の血統に基づいてキャラクターを街に配置する、という我ながら何が面白いのか詳細不明のゲームを制作したのは歴然とした黒歴史である。前置きはこれくらいに、イラストもシナリオも描けない主人公が仲間たちと美少女ゲームを制作する、というストーリーラインの本作。一読して、著者の本業がゲームシナリオライターというのも納得の、独特の「間」が目立つ印象。これは個人の趣向なので無視して頂きたいが、シナリオライターは「(文字を)読ませる」技巧よりも「展開(構成)」的技巧に重きを置いているため―――そして、知らず絵(画)がある前提で筆を執っているため、「間」に違和感を覚えてしまう。そのため、作品と呼吸が合わず、読み止めてしまうことが私には間々ある。本作もその類だった。故に一応は読了したものの、感想らしい感想は浮かばず。ただ、上述通り、《イラストもシナリオも描けない》というハンデを持つ主人公が女の子たちと情熱的にゲーム制作するのだから、心の隅でクリエイターに焦がれる読み手はいつぞやの私のように好奇心をきっとくすぐられるだろう。作り手にまだ回っていない人のほうが楽しめるのではないでしょうか。あ、(メインヒロインに)キャラクターがない、と指摘(&改善を要求)するアプローチは実験的に思えて好感を抱きました。ちょっと《文学》的だね。

このライトノベルがすごい!(2016年版) 9位:冴えない彼女の育てかた/丸戸史明

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 2位:ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (199x290)
(あらすじ)
隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国カトヴァーナ帝国。その一角にとある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている少年イクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。

answer.――― 75 点
丁か半か、黒か白か。当事者、あるいは、傍観者であっても勝負事は面白いものだが、何が面白いのかといえば、どちらも勝とうとしているからに他ならない。一生懸命に“負け”を競って面白いなんてことは有り得ない。“負ける”ことが“勝つ”ことに繋がるなら話は別だが、あくまで“勝つ”ために、“勝とう”という意志がぶつかり合うからこそ、エンターテイメントが成立する。さて、本作は何とも物珍しい“負け”を着地点にする物語。と云っても、あくまで“勝つ”ため―――外憂内患の母国救国故の着地点が“負け”ということであり、そのために幾度もの勝利を積み重ねなければならない矛盾が構造的面白味。また、“精霊”介在するファンタジーな世界観ながら、多対多の集団戦を描いているのも珍しい。“能ある鷹は……”な怠惰な主人公は地形その他から戦術を立て、危機に陥ろうが常時余裕しゃくしゃくに仲間を導き、敵を撃破していくのは痛快だ。いわゆる俺TUEEEE!な軍師もの、と捉えれば良いだろう。主人公は冒頭より毛嫌いする軍人へ、貴族へ、英雄へ……と成り上がっていくところも《お約束》な演出。ところで、本作の目玉は脇役マシュー・テトジリチなのは読了した貴方ならばご存知のことだろう。称賛浴びる仲間たちのなかで埋もれている己に忸怩たる想いを抱きながら、決して人前に出さず、そのくせ“諦めない”雑草根性は(……マシュー、お前は主役を食うんだな!?)と読み手を「筋」を無視した魅力的な博奕へと誘う。主人公とかどうでもええわ、マシュー!マシュー!!マシュぅぅうううー!!!と、拳を突き上げて応援したくなるラストの純粋なマシューの“決意”はどんな物語よりも面白い。ここには著者が本当に描きたい物語、読み手へ敷いたミスリードがある。読み手に想像(=創作)させること、それが本来的な「物語」の本質である。

このライトノベルがすごい!(2014年版) 2位:ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

category: あ行の作家

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 7位:東京レイヴンズ 1 SHAMAN*CLAN/あざの耕平

東京レイヴンズ (205x290)
(あらすじ)
東京を中心に霊的災害“霊災"が多発するようになった現代。名門・土御門家の血を引きながらも霊的才能に見放された春虎の前に土御門家次代当主であり幼なじみの夏目がやってきて!?

answer.――― 68 点
凋落していった富士見ファンタジア文庫を支えた『BLACK BLOOD BROTHERS』に幕を下ろし、斜陽のレーベルの新たな屋台骨となるべく「学園陰×陽ファンタジー」というテーマの下、あざの耕平が着工した長期シリーズの第1作目。さて、個人的に《陰陽師》という目垢/手垢のついた題材をどうアレンジしてくるのか気になるところだったが、「学園」「警察」「陰陽師」「東京」といった外殻、そこに「幼馴染」「約束」「凡才」「天才」といったパーソナルな要素を絡めて展開する―――有り体に云えば、(……どこかで見たことあるような?)という「王道」そのものな作品で、特に言及するほどのアレンジが無かったのは残念と言えば残念。もっとも、実は一途に想っています、堂々と嫉妬しています!の主人公周り、バトル&バトルの派手なア(トラ)クション、頁をめくれば判明してくる宿命的な陰謀……!という何のてらいのない「王道」は、持ち前の語彙&構成力で手堅く飾られている。「王道」は、小説ならば《文章力》がその質に差をつける。その意味で、本作は「王道」作品として十分に及第点を与えられるだろう。ただ、やはり欲を言えば、作中でたとえば裁判を起こすような《陰陽師》とはかけ離れたサプライズを起こして欲しかった。作品としての出来はともかく、他の作品を差し置いて推したくなる作品ではない。

このライトノベルがすごい!(2014年版) 7位:東京レイヴンズ 1 SHAMAN*CLAN/あざの耕平

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

ノーゲーム・ノーライフ (205x290)
(あらすじ)
ニートでヒキコモリ、だがネット上では都市伝説とまで囁かれる天才ゲーマー兄妹・空と白。世界を「クソゲー」と呼ぶそんな二人は、ある日“神”を名乗る少年に異世界へと召喚される。そこは神により戦争が禁じられ、“全てがゲームで決まる”世界だった――そう、国境線さえも。

answer.――― 66 点
”全てがゲームで決まる”という異世界に召喚された天才ゲーマー兄妹が、イレギュラーなゲームに臆せず挑み、攻略していくゲームファンタジー。無職童貞、白髪赤瞳、ゲーム廃人、コミュ障、義兄妹、天才といった強烈なレッテルを貼り、傲岸不遜に作中世界を進行ならぬ侵攻していく俺TUEEEE!作品。正味な話、それ以上でもそれ以下でもない印象。イラストレーターも兼ねる著者、それこそイラスト、その独特の彩色とのパッケージがあって数ある俺TUEEEE!作品の一群から抜け出たのでしょう。読み手の需要を満たす意味での安定感として、俺タチハ狂ッテイル……!類の登場人物の振り切りは幼稚との紙一重があるので、書き手も素面では挑めないもの。本作ではその辺の躊躇が見られないので、著者は選ばれた人なのだと思いますね。自分の感性に疑問を持たず、筆の赴くまま、感性のままの、天才的作風です。このライトノベルがすごい!のみならず、第2回ラノベ好き書店員大賞にも第2位でランクイン。売レテマス(売レテマシタ)!

このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 榎宮祐 このライトノベルがすごい! ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 8位:とある飛空士への誓約 1/犬村小六

とある飛空士への誓約 (205x290) (200x290)
(あらすじ)
四千もの島嶼が大瀑布を挟んで存在する「多島海」。ハイデラバード連合共同体、セントヴォルト帝国、秋津連邦、三つの大国が覇権を争うこの海を、七人の少年少女の操縦する大型飛空艇が親善飛行していた。空戦ファンタジーの金字塔「飛空士」新シリーズ、史上空前の規模でついに始動!七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語。

answer.――― 76 点
ライトノベル界隈で“とある”と枕に置けば、多くは鎌池和馬の“禁書目録”―――そして、その多く以外は、この犬村小六の“飛空士”シリーズを連想する。単巻ながらいきなりの映画化するほど好評を博した『とある飛空士への追憶』から『とある飛空士への恋歌』、『とある飛空士への夜想曲』と世界観はそのままに主人公を換え、枝を伸ばした“とある飛空士”シリーズ。その集大成と位置づけられたのが本作『とある飛空士への誓約』。一読しての印象は、―――なるほど、集大成!とまさしく首肯したくなる『とある飛空士への追憶』、その《才人の若人(たち)がAからBへ向かい、到着の事実とともに英雄となる》という筋と同型の展開を披露してくれる。そこに同作よりも主要登場人物を増やし、もはや確立しただろう自信の構成、語彙豊富な筆を存分に奮っているのだから、そのエンターテイメントとしての安定感は盤石である。作中の時間の流れを意識してか、航空機の動力源を変えてくる等のこだわりがしっかり施されているのも、著者の新シリーズへの意気込みを感じる。「集大成」故に既視感を感じざるを得ないのは仕方のないところだが、本作へ手を出す人の多くはシリーズのファンなのだろうから気にはすまい。シリーズ未読の新規のファンの場合ならば詰まるところ、単巻でのクライマックスを望むか、複数巻にまたがって得られるカタルシスを求めるかの選択になる。前者ならば『追憶』を、後者ならばこの『誓約』で良いだろう。新旧のライトノベラー、双方を満足させられるだろう好作。

第2回ラノベ好き書店員大賞 8位:とある飛空士への誓約 1/犬村小六

category: あ行の作家

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このライトノベルがすごい!(2013年版) 3位:六花の勇者/山形石雄

六花の勇者
1.死地の森
2.出立と二つの出会い
3.六花集結
4.罠と潰走
5.反攻
6.解明の時
7.次なる謎

answer.――― 77 点

SD文庫のエースと云うと、醜悪祭を催し何処かへ葬られた早熟の天才・片山憲太郎を除けば、近年の『ベン・トー』の露出から考えてアサウラなのだろうが、忘れてはならないSD文庫の実力派こそ山形石雄その人である。第4回スーパーダッシュ小説新人賞の大賞作であり、氏のデビュー作となった『戦う司書』は全10巻とシリーズらしいシリーズとなったが、質の割に目立ったセールスを伴わなかったのは編集部の単純なプロデュース不足か、あるいは、ライトノベルに逆巻くファンタジー作品への逆風を受けた故なのか。そんなこんなで、氏が次に手掛けてきたのが懲りずに再びファンタジーだったあたりは、―――流石である。さて、その意欲作のあらすじは「魔王を封じるために伝説通り各地より集う6人の勇者たち。しかし、そこに全員集まってみれば何故か、……7人いた」というもの。勇者たちが偽者である「7人目」を疑心暗鬼となりながら探すミステリーは、まさしく混沌の様相。勇者vs勇者というデカダンな戦闘は、OVA『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』におけるガンダムvsガンダムを思わせる火「華」散る「狂」演で、盛り上がらない筈がない。「1」巻でピークを迎えるべくして練られた設定はアンフェアなほどに秀逸で、勇者たちの性格をあらかじめ難有りにすることでミスリードさせる手法もまた、変態的である。そして、全力疾走後に待つ“衝撃”のエンディングには、本当に「ブッ飛ばされた」。構成の奇才、ここに極まれり。あらすじに惹かれた方は、まず買って損は無いだろう。色々な意味で、続刊出来るのも頷ける快作。

このライトノベルがすごい!(2013年版) 3位:六花の勇者/山形石雄

category: や行の作家

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このライトノベルがすごい!(2013年版) 9位::サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY/河野裕

サクラダリセット
1.プロローグ
2.土曜日に始まる
3.水曜日からの出来事
4.日曜日の結末
5.エピローグ

answer.――― 76 点

頁をめくって早々にノスタルジーを感じ、……はてな?と首をひねってみれば、世界を最大三日分「巻き戻す」設定、何よりも時代を逆行するような正統派な三人称。『タイム・リープ あしたはきのう』『ロードス島戦記』、ライトノベルの黎明期に登場した名作のフラッシュバックが起こる本作を手掛ける著者は、なんとグループSNEに所属する肩書き持ち。知って納得、そして、予想外のライトノベル・ルネッサンス。正直な話、
ウヒャヒャウヒャヒャ( ゚∀゚)ウヒャッヒャッヒャッ!と『文章力ランキング』を現在進行形で作成している身としては、内容よりも文章にばかり気を削がれてしまった。能力者が集まる町・咲良田。物語はこの町を舞台に、「記憶保持」の能力を持つ浅井ケイ、「リセット」の能力を持つ春崎美空の二人が所属する「奉仕クラブ」に届けられた「猫を生き返らせて欲しい」なる依頼から幕を開ける。<時間>を取り扱う作品の醍醐味は構成の妙だが、本作における「リセット」設定はやや入り乱れていて、一読では読み手から類推しなければならない展開(ex.戦闘時に同じ行動を取る)が起こり、パズルが埋まるようなカタルシスは得にくい。それでも、単なる懐古作品に終わらないのが本作の好評の所以で、過去に経験した、取り返しのつかない「挫折」を抱えている主人公造形が現代的なアレンジとして要所で読み手の感情移入を誘っている。クライマックスとして用意された、主人公の頭部吹き飛ぶ惨劇も大胆な演出。著者の地力の高さを伺える仕上がりとなっている。グループSNEだけあって水野良の系譜を引いているため、涼宮ハルヒ以降、ライトノベルを卒業気味のライトノベラーは是非とも挑戦して頂きたい。前を向いた古き良きを体験出来るでしょう。

このライトノベルがすごい!(2013年版) 9位::サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY/河野裕

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第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている
1.とにかく比企谷八幡はくさっている。
2.いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。
3.つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。
4.つまり材木座義輝はズレている。
5.それでもクラスはうまくやっている。
6.けれど戸塚彩加はついている。
7.たまにラブコメの神様はいいことをする。
8.そして比企谷八幡はかんがえる。

answer.――― 79 点
Twitterにて《最近のライトノベル》を叩いてたり、それを叩いてたりするのを時たま見掛けるが、その度に《最近のライトノベル》が結局、何の作品を指すのか期待を込めて眺めていると、……残念ながら挙がることはない。《最近のライトノベル》とは何か?2015年(理想は2014年)現在、私の考える《最近のライトノベル》が本作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。中二病を罹患していた男子が高校進学を機に心機一転を図るものの、……というストーリーラインだが、内容についての言及はさて置いて、私が何を以って本作を《最近のライトノベル》と指定したのかと云えば、―――《文章》である。《リズムの踏襲》。様ざまな文章論において、「描写」「構成」「巧拙」が説かれるが、概して曖昧に、あるいは、読み手が首をひねる形で取り上げられるのが《リズム》についてである。小説における文章のリズム、それは俳句の「五七五」のような字数からの定型、語感揃えた韻踏み、お笑いにおける「天丼」のような繰り返し(and more!)を採用することで生ずるのかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。何より、それらは書き手が《リズム》の生成を意図したならばもはや「技」であって、読み手が暗に求めている、本来的な《リズム》ではないのだ。では、本来的な《リズム》とは何なのか?

かの“世界の”村上春樹は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』にてこんな指摘をしている。

新しい書き手が出てきて、この人は残るか、あるいは遠からず消えていくかというのは、その人の書く文章にリズム感があるかどうかで、大体見分けられます。でも、多くの文芸評論家は、ボクの見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます。でもリズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う。もちろん、ボクはそう思う、ということですが。

ここで指摘される《リズム》こそ《リズム》である。すなわち、今までの対人関係、そして、(主に思春期に)読書を通して培った語彙を駆使した文章、書き手にとってごく《自然》に浮かんでくる言葉故の「間」を持った文章である。考え、筆を「止めた」文章には理が宿ったとしても、《リズム》は自ずと狂い、果ては失われる。それが作品(中の文章)の色を褪せ、輪郭を消し、単なる文字の連なりとなって結局、退屈と成る。《リズム》とは、無形の文章の「型」なのである。そして、その「型」は書き手から書き手へ知らず《踏襲》され続けている。年を経ればノスタルジーを抱くようになる「お気に入り」の作品より、また、己の嗜好からでなく筆を執るときに「参考」に手を伸ばした作品より。私にとって、小説に関しての《最近》とは後者を汲み、そのジャンルにおいて知名度高く、それでいて技巧を称えられる―――読み手が書き手に回った際に最も「参考に手に取る」だろう作品のなかで、一番《新しい》作品が世に出た頃を指す。その観点から考えて《最近のライトノベル》と云えば、このマニアックなラノベ好き書店員大賞のランクインもさることながら、読み手が決める体の事実上の最高の販促賞「このライトノベルがすごい!」にて2013年度で6位、2014年度の1位、そして、直近の2015年度でも1位を獲り続けた本作になるかな、と。どこかの黒ヒゲではないが、「人の夢は!!!終わらねェ!!!!」と吠えるオジサン、どこかのキッドではないが、「始まるんだよォ!!!誰も見た事のねェ“新しい時代”が!!!」と猛る若人が、多かれ少なかれ《リズム》に影響を被りそうだな、と。具体的に言うと、「もちろん違うよね。知ってました。」などの「消しても通る」追尾な文章を中心にした、「そもそもお前の慎ましすぎる胸元なんか見てねえよ。……いや、ほんとだよ?ほんとほんと、マジで見てない」からの「ちょっと視界に入って一瞬気を取られただけ。」などの前振りを執拗に重箱にしての《吐露》である。この徹底した(《吐露》で斬る)「重箱」具合は圧巻で、故にその《リズムの踏襲》も図られてしまいそう。が、大前提で比企谷八幡という卑屈なキャラクターと合致して歓迎される文体なので、そこを咀嚼しないと、リズムを拗らせるだけの結果に終わるだろう。ナンヤカンヤと書いたが、要約すれば、ライトノベルというジャンルにおけるトレンドな《リズム》がここにある。そんな《流行りもの》な意味合いでも、本作に手を出して損と言うことはないでしょう。大衆小説に寄らず、「ライトノベル」を突き詰めたライトノベル。Very good!な快作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡航 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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このライトノベルがすごい!(2012年版) 4位:円環少女 1. バベル再臨/長谷敏司

円環少女
1.――Intro――
2.ここは地獄にあらず
3.素晴らしき日々
4.奇跡、遙か
5.魔法みたい
6.――Outro――

answer.――― 70 点

吉田直の『トリニティ・ブラッド』、浅井ラボの『されど罪人は竜と踊る』に代表されるように、スニーカー文庫は伝統的に読者の選民思想を煽るような<頁を漢字で敷き詰める>ファンタジーが一翼を担う。本作はその栄えある系譜に連なる一作で、『このライトノベルがすごい! 2012』において第4位にランクインしたように、スニーカー文庫の金看板『涼宮ハルヒ』シリーズとスクラムを組める人気を持つ00年代の名シリーズ。ファンタジーと云うと、剣と魔法が付きものだが、ビル群そびえる現代が舞台の本作においても縦横無尽に、敵に仲間、大地に空間を切り裂いている。破壊活動にカタルシスを覚える諸氏には「持って来いっ!(次の巻を)」の内容だろう。難点は語彙豊富ながら途中、明らかに自慰倒錯―――漢字を使いたいあまり、著者自身、何を書いているのか見失っていること。これでは一部界隈で「下手!」と断罪されても仕方ない。もっとも、本作の人気を支えているのは文章ではなく、キャラクター造形(&魔法体系)にある。特に小学生のヒロインは真性のサド性癖を持たせるという、この著者ならではのハイアレンジ。王道らしいストーリーながらオリジナリティを垣間見せる。文章に難は点けたものの、構成自体は無難にまとめられているため、作家としては決して<下手>ではない。多少ゴチャゴチャと雑音混じってはいても、バトルをちゃんとバトルとして描けているのは素直に称賛出来るのではないだろうか。アニメ化の噂は流れたまま、結局、行方不明になってしまったが、なかなか魅せてくれるファンタジー作品。全13巻完結。

このライトノベルがすごい!(2012年版) 4位:円環少女 1. バベル再臨/長谷敏司

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tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 長谷敏司

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このライトノベルがすごい!(2012年版) 10位:雨の日のアイリス/松山剛

雨の日のアイリス
1.解体
2.転生
3.決行
4.手紙

answer.――― 69 点

ここにロボットの残骸がある。彼女の名は、アイリス……ロボット研究者・アンヴレラ博士のもとにいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。第17回電撃小説大賞4次選考作―――つまりは選考落選作ながらに、「このライトノベルがすごい!2012」の第10位に見事ランクインを果たした2011年の電撃文庫のダーク・ホース。落選作品でも受賞作よりセールス面で優れた結果を残した作品は『キノの旅』『とある魔術の禁書目録』などあまりにあまりな代表的事例が存在するが、しかしそれらが何故に落選したかと云えば、相応の理由があるのも事実だ。前者は短編連作という当時のライトノベルとしては商業的成功例が無かった作風ゆえ。後者は改訂前がどれ程かによるが、1巻冒頭が明らかに後で貼りつけただろう跡から察するに、巷で語られる文章の破綻云々ではなく構成上の難だろう。落選にも必ず理由があるのである。本作もまた、選考落ち―――ということは、やはり原因がある。それは何か?ズバリ、本作が「面白くないから」に他ならない。本作の読了者に「どこの場面が面白かった?」と訊いてみると良いだろう。「どんな会話が面白かった?」でも良い。おそらく挙げることは出来ない筈だ。彼らが覚えていることは、―――挿し絵。それしか無い。本作がこれ程までに支持されるのは挿し絵、イラストゆえの大勝利だった。選考時点では当然イラストが無かった故に、本作は落選したのだ。イラストが付いていれば<大賞>、ないし<金賞>だっただろう。かつてこれ程までに完璧なタイミングで、且つ、完璧なイラストが挟まれたライトノベルがあっただろうか?著者でもイラストレーターでもなく、編集者にこそ私は称賛を送りたい。「このライトノベルがすごい!2012」の第10位、これこそ編集者が出した<結果>である。著者は本作の大好評を自分の実力と勘違いせず、担当編集者の助言&提案を奴隷の如く聞き続けなさい。それがキミのためだ。編集者礼讃の記事になっているが、上述の<面白くない>をオブラートに包めば、本作は<感動>系のライトノベル。だからといって、「面白い必要が無い」というのは違うだろう。少なくとも衝撃の第2章『転生』演出の下準備とはいえ、第1章は無駄につまらなかった。なんて書きつつ、挿されるイラスト、イラストで涙腺を挑発され続けた作品でした。

このライトノベルがすごい!(2012年版) 10位:雨の日のアイリス/松山剛

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tag: このライトノベルがすごい! OPEN 60点 松山剛 ラノベ好き書店員大賞

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このライトノベルがすごい!(2011年版) 2位:僕は友達が少ない/平坂読

僕は友達が少ない
1.プロローグというか キャラの顔見せというか ツカミのようなもの
2.羽瀬川小鷹
3.夜空
4.柏崎星奈
5.狩り
etc...

answer.――― 70 点

壮大なプロローグに巻き込まれたな、と。MF文庫J(tag、MF文庫で通シマス!)が誇る人気ライトノベル『僕は友達が少ない』。冒頭、闇鍋からの衝撃の吐瀉OPに並々ならぬ可能性を見い出し、頁を捲ること凡そ一〇〇回。そうして気づかされる道なき道、物語無き物語とその顛末。本作、驚くべきことにオチまで含めて丸々一冊、<プロローグ>だった。本を閉じたとき、「……始まったよ!」と天を仰いだのは何も私だけではあるまい。ある意味で、正しい第1巻とも云えるが、それだけに一作品としての完成度は低いと言わざるを得ない。それでも、間違いなく「いや、面白いよ」と注釈を点けられるのは「友人を作るため」に結成された隣人部に属する個性派な面々。暗殺者、未来人、サイボーグのような安易で突飛な設定に頼ることなく、不良と間違えられるハーフの主人公、エア友達と喋る孤高のヒロインA、18禁ゲームにハマる女王様ヒロインB、目指せ漢!のためのその1:ストーカー……と、あくまで地に足ついている設定のキャラクターたちのああでもない、こうでもない部活動は高次元な日常で、実に愉快に楽しく描けている。主人公の、リアル中二病の妹はまさに腐れ界隈待望の発明品。風呂が水風呂だったと、中二キャラも忘れて素っ裸で泣いて抱きついてくるMFクオリティ(挿し絵付き)はさすがとしか言いようがない。脇で輝くのが王道のハズの巨乳キャラクターが、正しくヒロインとして機能している点も見逃せない。終盤の終盤、【プール】、【昔のこと】での怒涛の「本作はプロローグだったのです!」宣言には参ったが、これはこれで、未完の情景……といった趣きとも捉えられる。いや、点数以上に楽しめた。ただ、本当にプロローグなのよ本作。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 2位:僕は友達が少ない/平坂読

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このライトノベルがすごい!(2011年版) 4位:ソードアート・オンライン1 アインクラッド/川原礫

ソードアートオンライン
(あらすじ)
クリアするまで脱出不可能、ゲームオーバーは本当の“死”を意味する―――謎の次世代MMO『ソードアート・オンライン』の“真実”を知らずにログインした約1万人のユーザーと共に、その苛酷なデスバトルは幕を開けた。主人公は、いち早くこのMMOの“真実”を受け入れる。そして、ゲームの舞台となる巨大浮遊城『アインクラッド』で、パーティーを組まないソロプレイヤーとして頭角を表していった……。

answer.――― 75 点

第15回電撃小説大賞のWinner・川原礫が、そのデビュー前からオンライン上で発表していた人気Web小説を大賞受賞後、単行本化!というよりも、本作を単行本化させるために大賞を受賞させたと見る方が自然だろう。それ程に、本作のオンライン上の人気は群を抜いていた。ストーリーラインは、電撃文庫の黎明期を支えた御意見番・高畑京一郎の『クリス・クロス』そのままなので(マジで)割愛させて頂く。さて、『アクセル・ワールド』の稿でも書いたが、私は本作をあまり評価出来ない。なるほど、戦闘描写は素晴らしい。構成も上記の『クリス・クロス』を知っている身としては白けるが、盛り上げどころを用意出来ている。しかし、―――この主人公、キモ過ぎねえか?と。ゲーム世界に閉じ込められ、孤高を気取ってパーティーを組まず、そんなところに惚れちゃった♪と超絶美女なヒロインとゲーム内で同棲(結婚)し、お互いを愛し合い、ラストバトルでは黒幕と決戦のとき、―――俺が負けてヒロインが後追い自殺しないようにしてくれ(`・ω・´)と痛い感じで胸張り、黒幕が馬鹿だからよく分からないけど勝って目覚めれば病院で、ガリガリに痩せた俺は点滴スタンドを剣の代わりについて、病院内で(―――俺たち、結婚したよね!)と超絶美女なヒロインを探し回り、見つからなかったら絶対に見つけ出してやる!と決意を固める。……いや、ちょっと待ってくれ。これ、普通に恐いわ。ホラーだわ。……他の皆、どうなのよ?と思ったら、ライトノベラー、ほとんど皆、感動しているし。……いや、これ、ホラーだよね?この後、主人公が執念でヒロインを見つけ出して「俺たち、愛し合ってたよな?」と迫るんでしょ?恐くない?オレ、実はそっちのほうが読みたいんだよね。文学だもん、それ。点数は、文章力と巷の人気を考慮しての配点。ただ、私のようにこの主人公に感情移入出来ないと、本当の恐怖体験が出来てしまいます。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 4位:ソードアート・オンライン1 アインクラッド/川原礫

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このライトノベルがすごい!(2011年版) 8位:俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ

俺の妹
(あらすじ)
俺の妹は、茶髪にピアスのいわゆるイマドキの女子中学生で、身内の俺が言うのもなんだが、かなりの美人ときたもんだ。けれど、コイツは兄の俺を平気で見下してくるし、俺もそんな態度が気にくわないので、ここ数年まともに口なんか交わしちゃいない。よく男友達からは羨ましがられるが、キレイな妹がいても、いいことなんて一つもないと声を大にして言いたいね!だが俺はある日、妹の秘密に関わる超特大の地雷を踏んでしまう。まさかあの妹から“人生相談”をされる羽目になるとは……。

answer.――― 67 点

第一章を締めくくる「……ばかじゃん? 二次元と三次元を一緒にしないでよ。ゲームはゲーム、リアルはリアルなの。大体さー、現実に、兄のことを好きな妹なんているわけないでしょ?」なる妹の台詞が象徴するように、イタタタタ……な表題そのままから連想出来る「萌え」展開が意外なまでに少ない本作。現在に流通するライトノベルと大衆小説の明確な差異は、<人間>と<キャラクター>―――登場人物のパーソナリティーにあるとは、過去のレビューでも述べた通り。しかし、才色兼備、読者モデルも務める勝ち気な妹が「実は隠れオタク」という秘密を知ってしまったことから始まる本作の物語には、現実空間で存在すれば違和感しか覚えない、<キャラクター>らしいキャラクターは登場しない。自分のヲタク趣味への葛藤、SNSを使っての友人探し、厳格な父親による糾弾……物語の進行上でぶつかる妹の問題は、病んだ現代では誇張どころか、十二分にあり得るエピソードばかりで、本作がライトノベルではなく、大衆小説にカテゴライズされたとしても不思議はない。妹やエロゲーなど際どい題材が作中で押し出されるため、序盤で忌避感が出てしまうこともあるかもしれないが、中盤まで目を通させてしまえば反転、幅広い支持も十分考えられる作品。ただ、大衆小説への接近の代償に、ライトノベルらしい破天荒な展開が見られないのが残念。兄が妹をかばう予定調和なエンディングにはもう一波乱、もう一工夫が欲しかった。余談だが、上記の<人間>と<キャラクター>の観点を本作と対比出来る作品には、同じ電撃文庫の『乃木坂春香の秘密』が良いサンプルになると思う。興味がある方はどうぞ。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 8位:俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ

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このライトノベルがすごい!(2011年版) 9位:デュラララ!!/成田良悟

デュラララ
1.『影』
2.首無しライダー 客観
3.首無しライダー 主観
4.街の日常 昼
5.街の日常 夜
6.矢霧製薬 上層部
etc…

answer.――― 67 点

池袋ウエストゲートパークのライトノベル版。あとがきで作者も言及してるしね。明確な差異は、デュラハンが主要登場人物として関わってくること。さて、この小説は物語が無い。もっと踏み込むと、この作家、物語を作るのがかなり下手だ。これは彼のデビュー作を読んだときにも思ったことだから間違いないと思われる。終盤、「……ん?え?そういう話?」となる。こうなるのも雑多にキャラクターが登場して、その度に視点を切り替えていくからだろう。物語が無いのは普通なら致命的だが、彼は人気作家に座している。その理由はキャラクター作りの上手さにある。特に、バッド・ボーイ(Bad Boy)。ライトノベル特有のCoolをまとうのに成功している。ある種、漫画的だ。手放しで「面白かった!」とは言えないが、出てくるキャラクターはライトノベルならどれも明らかな亜種で、その辺に面白さを求めて良いと思う。しかしデュラハン出てくる度、つまらないと感じさせるのは勘弁して欲しい。メインだべ?平和島‘何だ、バカヤロー!’静雄くらいの楽しみをくれ。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 9位:デュラララ!!/成田良悟

category: な行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 60点 成田良悟

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このライトノベルがすごい!(2011年版) 10位:神様のメモ帳/杉井光

神様のメモ帳
(あらすじ)
「ただの探偵じゃない。ニート探偵だ」 路地裏に吹き溜まるニートたちを統べる“ニート探偵”アリスはそう言った。高校一年の冬に僕と同級生の彩夏を巻き込んだ怪事件、都市を蝕むドラッグ“エンジェル・フィックス”―――すべての謎は、部屋にひきこもる少女探偵アリスの手によって解体されていく。僕の答えに、普段は不真面目なニートたちが事件解決へと動き出す!

answer.――― 66 点

昨今のライトノベルが掲げるマ-ケット的テーマに「大衆小説への接近」があると思うが、その接近方法をかなりアバウトに大別すると、私のなかでは「桜庭一樹」型、そして、「有川浩」型に別けられる。前者は「もはや」大衆小説であり、後者は「所詮」ライトノベルである。本作は残念ながら後者の型、所詮、と巷の高評価に期待し過ぎたのか、肩透かしを食らった一作。所詮、と批判的な響きを採用しているが、私の趣向と合致しないだけで、それが悪いという訳ではない。二つの型の差を分ける要因は、読者の想定にある。「桜庭一樹」型は筆力に物を言わせる型であり、ライトノベラーに大衆小説を読ませるのではなく、大衆小説の読者に大衆小説を読ませる、という至極真っ当な書き口を展開する。対して、本作が採った「有川浩」型は、ライトノベルの読者に大衆小説を読ませる―――キャラクターはそのままにストーリーを「大人」っぽくした話を綴る。「大人」っぽくする方法には専ら<死>、<病>、あるいは<記憶喪失>など主人公が身近なモノを喪失することを主題とする。本作では、高校に馴染めない主人公をこれまた社会に染まり切れない面々が集う『ラーメンはなまる』へと案内したヒロインが禁止薬物によって自殺未遂&植物人間になる悲劇と遭遇、その発端を探るべく主人公はニート探偵アリスへ協力云々。主題がラノベ読みたちには重いため、何かバッドエンドな感じで良い話ーサーに映るが、禁止薬物扱う事件の割に登場人物の行動、物語の展開が軽弾みで、この辺を「所詮」と見下げたくなる。ただ、読みやすいのは事実で、ライトノベル特有のキャラクター先行が活きているのも頷ける。要は、合うか合わないかに尽きる。私は×でした。

このライトノベルがすごい!(2011年版) 10位:神様のメモ帳/杉井光

category: さ行の作家

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第17回電撃小説大賞 金賞:アイドライジング!/広沢サカキ

アイドライジング
1.バトルシンデレラ
2.ハニーマスタードトラップ
3.ビターデートトレイン
4.スイートナイト

answer.――― 61 点

「時は来た!それだけだ」 “破壊王”橋本真也が未だ存命ならばかつての名言を再び引用しただろうここは日本、現在はアイドル戦国時代!文化のガラパゴス諸島と化している我が神国NIPPONにおいて、Mangaと肩を並べる輸出文化はIdol に(私のなかで)決まりつつあるが、本作はそんな時流を読んだ電撃文庫がこれまたそんな時流を読んだ目端利く著者を拾い上げた末に出版されることとなった「アイドル」をテーマにした一作。ストーリーは各企業の科学技術の枠を集めて作られたバトルドレスに身を包み、アイドルたちが戦う「アイドライジング」に、田舎出身のヒロイン(モデル体型)が賞金を求めてよくも分からず参戦!といったものなのだが、アイドルを題材にした、……そこ以外に之と云った《買い》の要素が無い事実が何とも虚しい。それでもノーパンの疑惑さえ抱いてしまう表紙からも察せられる通り、イラストが露骨にエロい。イラストレーターはバトルドレスを読者のニーズに合わせて合法的に解釈している。仕事人である。著者自身もその辺は負けずにやり手であり、投稿作での“お約束”である風呂シーンをまさかの二度挿入。完全に購買層を原爆オナニーズにロックオンしている。とまあ、こんな感じで「読んで」楽しむよりも「観て」楽しむ造りになっている。著者、編集もメディアミックスを元より睨んで制作/授賞した作品。キャラクターはそこそこ上手く描けているので、巷で指摘されているように、作家の魂があったら性悪アイドルことハセガワ・オリンを最初から主人公にしただろうね。とりあえず、風呂シーンを二度挿し込んだワナビー根性を誉めたい。

第17回電撃小説大賞 金賞:アイドライジング!/広沢サカキ

category: は行の作家

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第17回電撃小説大賞 銀賞:はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司

はたらく魔王さま!
1.魔王、生活のために労働に励む
2.魔王、新宿で後輩とデートする
3.魔王と勇者、笹塚に立つ

answer.――― 72 点
電撃小説大賞は《大賞》より、《金賞》より、《銀賞》のほうが面白い!と誰が言い始めたのかは定かでないが、この第17回より以前の《銀賞》受賞作をさかのぼると、目ぼしいところで、忘れちゃ困る『ウィザーズ・ブレイン』、ああアレか『先輩とぼく』、大本命『狼と香辛料』、萌え燃えキュン『ロウきゅーぶ!』と挙げられるが、概して通説は二例で実しやかにささやかれ、三例と数えられれば定説の如く謳われるもの。『狼と香辛料』、『ロウきゅーぶ!』とリーチが掛かってきたところで、本作『はたらく魔王さま!』の登場が本稿冒頭の言葉に鬼の首を獲ったかのような快哉をつけたのだと思う。ストーリーラインは、勇者に追い詰められた魔王が逃げた先はここ、現代NIPPON!頼りの魔力は失われ、生きていくためにはまずアルバイト!ここから、……正社員を目指すぞ!といったもの。三章仕立ての構成で、第1章は魔王とその従僕の《日常》を描いている。これがファーストフード店の接客&豆知識を絡めた実にコミカル且つ丁寧な出来で、魔王たちの現状、その紹介がてら読み手を作品世界に馴染ませてくれる。この第1章は展開も起伏に富み、好意寄せる後輩、因縁の女勇者の投入、何より章〆め間際のシリアスに、そして、ミステリアスに危機を迎え、先を「予告」させる演出が素晴らしい。流石のヒット作!と唸らされたところで、そこから先の展開を期待していると、第2章以降は「転」あれど、いわゆる想定通りで拍子抜けするものの、設定とキャラクターのギャップ、ナンダカンダの善性を楽しむものと思えば不満はない。ちょうどファンタジー求める時流もあってやや過大な評価を受けたようにも映るが、諸所に隙間突くライトノベル作家の素養を見せているので、今後も信頼おけるキャリアを築いて、良い中堅作家になってくれることでしょう。良作。

第17回電撃小説大賞 銀賞:はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司

category: わ行&数字の作家

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 1位:バカとテストと召喚獣/井上堅二

バカとテストと
1.第一問
2.第二問
3.第三問
4.第四問
5.第五問
etc…

answer.――― 78 点

デビュー以来、「このライトノベルがすごい!」にランクインし続ける人気シリーズであり、その総売り上げは500万部突破というファミ通文庫の誇る超級エース『バカとテストと召喚獣』。その概要は教室の設備がランク付けされる実験校を舞台に、卓袱台、座布団、腐った畳というFクラス(最下層)の待遇に不満を覚えた生徒たちが巻き起こす下剋上劇。テストの点数に応じた強さを持つ召喚獣を駆使してのクラスの入れ替え戦が物語の中核を担うわけだが、本作が支持されるのは、―――これぞライトノベル!その醍醐味!と喧伝したくなる登場人物たちのリズミカルなやり取りだろう。1ページに3ギャグという見事なデンプシー・ロールを放ちながら、「このライトノベルがすごい!」の男性キャラクター部門で2年連続トップ(且つ、女性キャラクター部門でも連続ベスト10入り)を飾る木下秀吉を筆頭に、キャラクター群は誰もが常夏陽性。序盤から終盤まで終始一貫して良質のコメディを提供してくれる。本作はいわゆる<ギャグ小説>に分類されるわけだが、その同系統の作品に挙げられる『生徒会の一存』と異なるのはストーリーがあることだろう。ギャグ小説は概してストーリーの工夫に乏しいが、本作は都合三度の入れ替え戦に戦術らしい戦術を用意したり、惚れた腫れたを整えたりと、創作物の主要要素全部入りしているのも魅力だ。ただ、ギャグ小説だけあって振り返ってみると、何にも残らないのが玉に瑕。瞬間的な楽しみを得るために読むのがベストだろう。一人称で読みやすく、随所にギャグが盛られているが、描写が苦手なのか校内構造が最後まで把握出来なかったのはマイナス項目。しかし、いきなりボコボコ容姿になる漫画的ギャグと台詞を盾矛にした小説的ギャグのハイブリットは、売上から考えてもギャグ小説の完成形に近い。大いに楽しめました。個人的には、ムッツリーニの活躍に胸が踊ったわ。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 1位:バカとテストと召喚獣/井上堅二

category: あ行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 井上堅二

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 2位:化物語/西尾維新

化物語
(上巻)
1.ひたぎクラブ
2.まよいマイマイ
3.するがモンキー
(下巻)
4.なでこスネイク
5.つばさキャット

answer.――― 80 点

西尾‘エキセントリック’維新の代表作―――というと、真正の維新志士(西尾維新のファン)たちから罵声を浴びかねないので断言するのは控えるが、西尾維新の作品のなかでも高い知名度を誇る作品のひとつ。その内容は、主人公・阿良々木暦と彼に出会った、化物(怪異)と関わりを持つ少女たちが不思議な事件を解決していくストーリー。実質の短篇形式で、やはり西尾式と言おうか、どの話もオチに一服盛ってある。アニメ化などメディア映えしたのはやはりホッチキスを凶器としたり、の気性を含めた女の子のデザインにあるだろう。「完全に趣味で書いた」という発言の通り、台詞回しもいつも以上の西尾節だ。この流れの雑感で申し訳ないが、西尾維新の文体にはアマチュア臭が漂う。別に、下手と言いたい訳では間違ってもない。物語に関係のない文章のお遊び、実験が多過ぎると思う。文章の工夫はファンこそ諸手を挙げて大歓迎するものだが、それ以外の人たちには時に集中力を削ぐ要素になる。ただ、この戯れがないと西尾維新<らしく>ない。個人的な話になるが、本作に配した<点数>ほど私は楽しんでいない。この点数は、プロ<らしく>ない文章の実験を貫く作家としての姿勢に敬意を払った意味合いが強い。プロになった皆(特に大御所)、忘れるものだからねその部分。西尾維新ファンは本当に誇りに思ったほうが良い。西尾維新は森見登美彦と同列か、それ以上の文章家だと思う。文章について長く言及してしまったが、単純に物語としても十分に面白い。メインヒロインが上質なツンデレです―――W La 西尾維新!

このライトノベルがすごい!(2010年版) 2位:化物語/西尾維新

category: な行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 80点 西尾維新 三大犯罪者

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 3位:"文学少女"と死にたがりの道化/野村美月

文学
1.プロローグ 自己紹介代わりの回想 ―元・天才美少女作家です―
2.遠子先輩は、美食家です
3.この世で一番美味しい物語
4.第一の手記~片岡愁二の告白
5.五月の晴れた日、彼は……
6.“文学少女”の推理
7.“文学少女”の主張
8.エピローグ 新しい物語

answer.――― 74 点

―――This Is Hip-Hop!とでも言おうか。太宰治の代表作『人間失格』を文章から登場人物まで大胆にサンプリングするという、Hip-Hop的手法が見られる本作。冒頭、さっそくの名文サンプリング後、著者のくだけた地の文に暗雲立ち込めるものの、続く“文学少女”天野遠子の登場から(ところどころ少女チックながら)文章が締まってくる。見事に嵌められたのはラブレターの代筆から始まるミステリーな展開。ストーリーの方向性が見えないだけに、……どうなるんだ?と様子見でいると、まんまと挿まれる『人間失格』の不可思議に捉われてしまう。本作の妙は、意味があるとは思えなかったサンプリングが登場人物、ストーリーそのものを形成していたこと。OBの登場の仕方などご都合も目立つが、『人間失格』の―――文学のHip-Hopはなかなかに斬新だ。“文学少女”による文学ソムリエールもあり、ライトノベラーには馴染みないだろうギャリコ他、オールドスクールな面々(作家)に読者の目を向けるキッカケにもなりそう。そういう意味でも、生産的な作風と云える。あの卓球場を突き抜けて天にも響いた超駄作『赤城山卓球場に歌声は響く』の著者だけに、読むのを渋りに渋っていたが、確かに興味深い作品だった。作家は成長するね、……とまとめようとしたら、友人から「絶対、ブレーンがいる」と身も蓋もない発言。あとがきを読むかぎり、編集さんが有能なのかしら?追記として、オチが昨今の少女漫画風に衝撃的。この罪やら罰やらを絡めたごった煮感は男では書けないだろう。ミステリーを思わせながらやや勢いでまとめた感があるのが、マイナス査定。本作の時点では緻密さに欠け、まだ才能で書いている印象が強い。それだから、竹田千愛の存在感は主人公格のソレがあって良いね。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 3位:"文学少女"と死にたがりの道化/野村美月

category: な行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 野村美月

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 4位:とらドラ! /竹宮ゆゆこ

とらドラ
(あらすじ)
目つきは悪いが普通の子、高須竜児は、“手乗りタイガー”逢坂大河と出会う。そして彼女の知ってはいけない秘密を知ってしまい……それが竜虎相食む、恋と戦いの幕開けだった!元気印のはつらつ娘・櫛枝実乃梨、文武両道、勤勉実直、だけどちょっとズレてるメガネ委員長・北村祐作も絡み、どこか変なメンツによる恋はすんなりいくはずもなく……!?

answer.――― 67 点

ライトノベルを原作としたアニメというと、「分かり易さ」がキーワードになってくると思う。ある切り取られた場面を見るだけで話の概要が分かる、何を楽しめばいいのか分かる、それがライトノベルをアニメ化した際の独自の共通項だ。だからか、深夜に何気なく点けていたTVで放映されていたアニメにはミステリアスなものを感じた。おそらく原作はライトノベルだと推測されるのに、「分かり易い」要素―――言ってしまえば、子どもでも取っつきやすいストーリー展開が無かったのだ。かといって別につまらないわけでもなく、ドタバタとした日常は見ていて和むものがある。それからも幾度か見る機会があったが、やはり突飛な設定があるわけでもなく、―――それでいてつまらないと感じるわけでもなく、物語をついつい追ってしまっていた。この感覚は何なんだろう?と考えていると、<ドラマ>という言葉がしっくりきた。本作はその<ドラマ>の一話目。読了して分かることは、物語が続くこと。そして、一巻だけで楽しむ作品ではないということだ。一応のオチはつけているが、やはりスッキリとしない。読むなら全巻揃えてから読み始めるのが良いだろう。読む時間が勿体無いなら、アニメの出来も良かったのでそちらで済ますのも有りだと思う。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 4位:とらドラ! /竹宮ゆゆこ

category: た行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 60点 竹宮ゆゆこ

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 5位:生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録1/葵せきな

生徒会の一存
1.駄弁る生徒会
2.怪談する生徒会
3.放送する生徒会
4.更生する生徒会
5.恋する生徒会
6.遊ぶ生徒会
6.振り返る生徒会
etc...

answer.――― 65 点

美少女の生徒会長の「」―――台詞提示から始まる連作短篇。著者自身「4コマ小説」として評しているように、PON!PON!PON!と地続く台詞の軽妙さが魅力の本作は、一読して分かるコストパフォーマンスの大変優秀な作品。一言で言うなら、著者、<適当>に書いている。他文庫の作品/アニメなどに触れてくるなど、ゴシップ的なアプローチで読者の関心を引く生徒会一同の会話に中身は無く、まさに<時間の無駄>が体現されているが、それこそが‘バブルの生き残り’の異名を誇るタレント・中山秀征的魅力の源泉―――読者が望む、作品への身近さに繋がる。本作は読者もまた物言わぬ肩書きの無い生徒会役員となり、その<時間の無駄>に参加している格好。そんな時間の無駄に積極的に付き合ってしまう作品としての工夫は、登場人物が全員「美少女」or「美女」ということ。ナンダカンダで、男一人のハーレム状態は華やかだ。如何せん、ストーリーがないために<小説>としての体裁は整っていないが、4コマだと思えば(……免罪符みたいな言葉だな)、ライトノベラーなら問題ないでしょう。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 5位:生徒会の一存 碧陽学園生徒会議事録1/葵せきな

category: あ行の作家

tag: このライトノベルがすごい! 60点 OPEN 葵せきな

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 7位:嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸/入間人間

嘘つき
1.再開と快哉
2.両親と診療
3.嘘と嘘
4.崩壊
5.四章、後始末「解放」

answer.――― 74 点

これからのライトノベル作家は西尾維新乙一奈須きのこ……この辺の影響を意識的にも、無意識的にも避けては通れない気がする。これは作家だけの話ではなく読者自身にも言えることで、西尾維新の影響下にある―――と著者自ら申告した本作において、何の脈絡もなく<オチ>が途中で読めてしまう事実からも分かるだろう。蔓延る<大逆転>、第三の男ならぬ第三の<答え>、総じてスピードライターなオリジネイター、そして、そのフォロワーたちの作品の氾濫によって<オチ>が<オチ>として機能しなくなっている悪循環。そんな新伝綺な逆風のなか、本作が人気シリーズとなっているのは、著者に確かな「筆力」があるからに他ならない。設定こそ新伝奇に名を連ねる作品としては実のところ十人前ながら、ベッタリ血糊のように張りついてくる主人公の一人称は、適格な奇人変人といった感じで、読者自らトレースしたくなるような整合性がある。<オチ>を先読み出来てしまったために、クライマックスの「果たし合い」は右から左に流せてしまうのが勿体無いかぎりだったが、そこはフォロワーの試練ということで。良質なフォロワーは、時にオリジネイターを超える。入間先生には是非、カリ梅食いながら「アンタ、嘘つきだね」と今後の作品で屋形越えを果たして欲しい。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 7位:嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 幸せの背景は不幸/入間人間

category: あ行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 入間人間

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 8位:ベン・トー サバの味噌煮290円/アサウラ

ベントー
1.氷結の魔女
2.魔導士
3.ダンドーと猟犬群

answer.――― 70 点

B級映画に始まり、B級スポット、B級グルメ……世間一般のB級が意味するところはいわゆる<一流に届かない>という有難迷惑なレーティングながら、そもそもにして、B級とは元よりB級を意図して創られたモノ(ex.映画『キル・ビル』)を指す―――といつぞや誰彼から耳にして以来、B級に対する認識が改まったものだが、さて、出版界の「超」大手である集英社が持つスーパーダッシュ文庫(以下、SD文庫)。本作はそこで現在のところ、事実上のエースを張る『ベン・トー』シリーズの第一弾。ストーリーは、スーパーで売り出される半額弁当を奪い合う、というシュール極まりないモノ。この時点ではっきりと予感出来ると思うが、ストーリー自体はまず面白いものではない。ただ、……とここから注釈がつくのが正統派B級ライトノベルたる本作の魅力。一読して分かることは、つまらないものを面白いものにさえ昇華させる高い文章力。作中、半額弁当奪取競争の暗黙のルールを破る輩を<豚>、ルールに順じて闘う者を<犬>、あるいは<狼>と読者を置いてけぼりにさも当然のように要所で叫ばせるが、アサウラ氏の手に掛かれば、知らぬ間にこのスーパーマーケット・ファンタジーへ引き摺りこまれ、ルールを破る輩が現れようものなら「……(コイツら、豚だ!)」と読者にそのルールを植え込ませるまでに到る。また、B級の冠に相応しい性を絡めたネタが絶妙で、何度となく吹くこと必至なので食事中は読書厳禁だ。キャラクターには漫画では出せない躍動感があり、この辺も見逃せない。如何せん、B級であるためにある種の限界こそ感じるが、かの醜悪祭を催してしまったSD文庫にあって、この光明は大事にしたいところ。今秋にはアニメ化も決定しており、このエースで弱小文庫からひとつと言わず、どこまで<格>を上げられるか見物です。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 8位:ベン・トー サバの味噌煮290円/アサウラ

category: あ行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 アサウラ

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このライトノベルがすごい!(2010年版) 9位:とある魔術の禁書目録/鎌池和馬

とある
1.幻想殺しの少年のお話
2.魔術師は塔より降り立つ
3.奇術師は終焉を与える
4.魔道書は静かに微笑む
5.退魔師は終わりを選ぶ
6.禁書目録の少女の結末

answer.――― 77 点

自分の部屋に、純白のシスターがいきなり空から降ってきた―――ボーイ・ミーツ・ガール、物語の始まりこそありきたりだが、シリーズ累計10,000,000部を超える発行部数は伊達ではない。よくある場面によくある台詞。しかし、主人公・上条当麻が提示していく「よくある」台詞はその右手に備えた《幻想殺し》と同様に、ことごとく読者の既視感を打ち破っていく。気張らずスカさず、それでも、キメるところはキメる読者本位本望な主人公像に対するのは、映画《ダイ・ハード》を思わせる息つく暇もないピンチの連続、我が身に降りかかった不幸なアドベンチャー。常時満タンの燃料タンクにガソリンを注ぎ続けるような文章が熱い。前のめりなその文章は「……ん?六万回?」と時に勢いを殺しかねない無茶も散見出来るが、地の文で《上条当麻》とフルネームで物語られる度、「おっ、また《ダイ・ハード》?」と期待してしまう。魔術VS超能力、評判高い異能バトルもありそうで少ない題材。怒涛という言葉がよく似合う一巻の押し寄せる内容だが、そのエンディングには疑問が残る。主人公が「欠ける」、その必然性を感じなかったからだ。「記憶」、あるいは「女の子を守る」がテーマだったとしても、物語をテーマで縛るのと、作者がテーマに縛られるのはまったく違う。主人公が「欠ける」なら、そうならざるを得ない意味が欲しかった……まあ印象に残るし、劇的で良いかもしれないけど。売れて当然、対ライトノベラーのために編まれた一作。

このライトノベルがすごい!(2010年版) 9位:とある魔術の禁書目録/鎌池和馬

category: か行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 70点 鎌池和馬

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第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

黄昏色
1.虹と夜の交叉 ――始まりの、そのさらに前―― 
2.赤と夜の練習歌
3.集まる者の交声曲
4.風が呼ぶ、枯れ草色の思い出を
5.始まりと約束のオペラ
6.誓者が歌う、世界よ黄昏に染まれ
7.君の望みの喜びを ――イヴは夜明けに微笑んで――
8.夜明け色の詠使い

answer.――― 72 点

特定(の色)の触媒と詩を用い、任意の物体や生物を呼び出す<名詠式>と呼ばれる召喚魔法が存在する世界を舞台にしたハイ・ファンタジーな本作。時代の潮流もあり、ファンタジー小説が芽吹くことが難しい現状において、<名詠式>なる魔法体系を全面に押し出すスタイルは読者にちょっとしたタイムスリップ、時代錯誤な感覚に陥らせてくれる。それでも、本作がレトロと揶揄されないのは作者のセンスの賜物。特定(の色)の触媒と詩を用い、……という<名詠式>それ自体はオーソドックスな魔法体系ながら、それ故の普遍性がある。これは新しい!と鼻息荒くなる要素こそないが、ファンタジーとして色褪せない、普遍性の高い設定をチョイス出来ているのが素晴らしい。本作を読んでいて想起されるのは『ハリー・ポッター』シリーズ。魔法学校に通う卵たち、という点もさることながら、「展開」に類似点を見る。それはストーリー的な意味ではなく、日常パートで魅せてからの難敵大暴走といった序破急の構成。本作が型として現代ファンタジーの「王道」を歩んでいることが分かる。簡易な文章は電撃文庫の『七姫物語』を思わせる。読みやすさを追求した部分があるのだろうが、ところどころイメージが湧かない状態になることもあり、その辺はもう少し挿し絵でカバーして欲しかったかな、と。本作の最大の見せ場は、時を超えた約束が続いているシーン。主人公がその約束(ストーリー)のために存在する「脇役」なのが実験的で面白い。作者はコントロール・フリークだね。本作はまた、このライトノベルがすごい!(2010年度)にも第6位にランクイン。ここ数年見掛けられなかった、往年の富士見ファンタジア文庫「らしい」良心的ファンタジー作品。

第18回ファンタジア大賞 佳作:黄昏色の詠使い イヴは夜明けに微笑んで/細音啓

category: さ行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 70点 OPEN 細音啓 このライトノベルがすごい!

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