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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:All Time Best!!】


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ようやく新たな【All Time Best!!】が完成!感無量であります!能書きは下にたらたらと書いてございますので、挨拶はこの辺で切り上げまして。小説すばる新人賞に興味がありつつも未読のまま、……な方は参考にしてみて下さい!では、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれている本作。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の大レース「天皇賞(秋)」……そのゲートが開く間際につぶやかれる「ショウサン」は、誰が読んでも鳥肌立つ名演出。小説の醍醐味を得られること間違いなし!小説すばる新人賞の受賞作で娯楽を求めるなら、まずは本作をお薦め致します。

どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの戦国Rock 'n' Roll!文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが素晴らしい。三味線速弾く藤次郎と「黒人」弥介の放つアフリカン・ビートの衝突、男臭さ霧散させる「踊り手」ちほ、実質の物語担うヘタレな「笛吹」小平太―――と、主要登場人物の役割に抜かりはない。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。兎も角、稀に見る「痛快」な一作。

千早茜の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性はこのデビュー作から発揮されていたことを証明するように、小説すばる新人賞のみならず泉鏡花文学賞も受賞。『物語』をある種必要としない、希少な筆は「売られる」ために育てられた美しい姉弟の堕ちていく《耽美》な様を見事に描き切った。表紙には宇野亜喜良を起用。業界からの期待の高さが伺えます。

才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、……だからこそ!と推したくなるデビュー作らしいデビュー作。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出した真実が情熱的に刻まれている。新旧”天才”対決―――心躍ります。第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説としても立派なお墨付きを得ている作品。

専門家も唸る“知識”をエンターテイメントの一要素として作品へ組み込む、インテリゲンチャご用達の作家の一人・佐藤賢一のデビュー作。夢を求めて渡ったイスパニアの地で恋に落ちるも夢を忘れられず、誘いのままに戦に出掛ける侍―――その様は実に情動的で「悲劇」と呼ぶに相応しい。作品の「質」という観点では、ここで上位に選んだ四作よりも実質、本作のほうが上だろう。しかし重厚、故に生半可な読者では忌避感出てしまうのも避けられない。「表題」は壮大な仕掛けなので、手に取ったら最後まで読み切りましょう。かの銃士隊隊長の登場も必見です。

なかなか手を伸ばしにくい「発達障害」を題材にしたハートフルな一作。例によって、お涙頂戴!な展開なのだが、視点人物を二人配し(「発達障害」役は一人)、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したことで、終盤の「吐露」がいよいよ胸に突き刺さる。あくまで現実的な設定に根ざした上で視点人物、両者に起こる中盤のイベントは実質の最大級!この思い切りの良さは燻る作家群は是非参考にして貰いたいところ。出し惜しみなし!

☆☆  総評  ★★

【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】の稿でも言及したが、小説すばる新人賞の受賞者には、後に天下の直木三十五賞、大天下の芥川龍之介賞を受賞した作家が多数いる。もっとも、それは第10回までの受賞者に集中していたが、最近では朝井“(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!”リョウが『何者』で直木三十五賞を受賞、作品が候補に挙がった千早茜も控え、新人作家の良質な登竜門として盛り返し、面目を保っている印象。さて、 この【小説すばる新人賞:All Time Best!!】だが、見事なまでにその直木賞&芥川賞作家たちの作品を選んでいない。かろうじて佐藤賢一の『ジャガーになった男』を第5位に取り上げてはいるが、娯楽小説としては重厚な作風なために、個人的には選びたくなかった。もっとも、読めば「質」の高さは否定出来ないところなので、妥当と言えば妥当な選出だとも思っている。小説すばる新人賞は文学賞ではない。あくまで大衆小説、娯楽を提供出来る作家の輩出を意図した公募賞なのだから、万人が「面白い!」と唸りたくなる作品こそ推薦したい。という観点から考えると、個人的に第1位と第2位に置いた作品―――『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は不動の2トップ。どこの公募賞に出しても受賞するだろうクオリティーが両作にはある。後者はセールスが評判に追いついていない印象もあるので、未読の方は是非手に取って読んで欲しい。第3位、第4位のランクイン作品は若書きが心地良いデビュー作らしいデビュー作。青田買いの楽しみが味わえる。【次点】は複数候補あったものの、《感動》出来る観点で選出。終盤に披露される発達障害者の《吐露》のカタルシスたるや尋常ではない。選ばなかった作品では、篠田節子の『絹の変容』はVividなホラーSFで、やはり著者の可能性を感じざるを得ないところ。“森見登美彦のプロトタイプ”な『草小路鷹麿の東方見聞録』、“ザ・伊坂幸太郎”な作風の『名も無き世界のエンドロール』、著者の次作を期待させる爽やかな『はるがいったら』あたりも拾い物。しかし、まあ、……未読ならばランクイン作品を順番に読んで頂きたい。実際問題、「面白い!」は人それぞれだが、それでもかぶるものはかぶるのである。受賞作を読む!というコンセプトで消化していくと「おい、何で消えた!?」な葬り去られた作品、「全盛期はここだったか!?」な再発見な作家と出会えるわけだが、この小説すばる新人賞では『ジョッキー』を拾えたのが競馬好きの私としても最大の収穫でした。大衆小説らしい大衆小説、しっかりと引き継ぎたい良質の遺産(旧作)です。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

85

84

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】
    魚神/千早茜  【第3位】

82

81

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第5位】

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第4位】

78  はるがいったら/飛鳥井千砂

77  

76  絹の変容/篠田節子
    ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也
    名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉
    粗忽拳銃/竹内真
    国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  赤と白/櫛木理宇
    涼州賦/藤水名子
    笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    八月の青い蝶/周防柳
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ
    パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年03月03日/修正

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まだ第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なんだけど、未読なんだけど、俺は今書きたいから、そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!精神で仕上げさせて頂きました。同作を後々レヴューした後、改めてこの稿も改稿する予定です。まあ、「最年少」なんてレッテルで売ろうとしているだけでしょ?きっと推したくならないっしょ!と予想中。ではでは、現時点での 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第29回!】、始めさせて頂きます!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

着々と直木三十五賞を受賞させるための計画が進行している感のある千早茜のデビュー作。もっとも、いざ読んでみればカオナシたちがバックアップしたくなるのも納得の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性が確認出来る。「売られる」ために育てられた美しい姉弟を主役に起用した本作でも、堕ちていく二人の《耽美》な様を描き切った。『物語』をある種必要としない、希少な筆は目撃する価値がある。小説すばる新人賞のみならず、本作は泉鏡花文学賞の受賞作。読んで損になることはまずないでしょう。

プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』。身を賭して掴んだその輪郭を、己の筆で女流棋士の新旧”天才”対決へ転換せしめたのが本作。才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、それだけに情熱も感じられる。「将棋」題材の作品として上等の部類でしょう。

発達障害者を題材にした作品となれば、お涙頂戴!となるのは必然なわけで、本作もそこに軒を連ねる。アレンジは互いに見掛けるだけで「交わらない」視点人物を二人配し、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したこと。「発達障害者」中村の苦悩は真摯なもので、終盤の怒濤の吐露はまさにハイライトに値する。なかなか手を伸ばしにくい題材ながら読み応えは十二分に有り。

(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!という人工的なベストセラー小説。皆が読んでるなら読んでおかないと、後々、センスを疑われる事態が生じることもあるので掛け捨ての保険扱いで押さえておきたいところ。

☆☆  総評  ★★

名実ともに小説すばる新人賞では随一の知名度を誇る『桐島、部活やめるってよ』をどう扱うかまず迷う、この第21回 から 第29回までの受賞作群。もっとも、最新作である第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なため、正確には―――この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第28回!】なのだが、その辺は「最年少」「現役高校生」というレッテルで売り出しているあたりからお察しして強気に無視。「現役大学生」というレッテルで売り出された『桐島、部活やめるってよ』の話題性を上書き出来るか否かが個人的な同作の焦点。そんなわけで、大衆小説として真っ当にお薦めしたいのが上述の『魚神』、『サラの柔らかな香車』、そして、『白い花と鳥たちの祈り』の三作。特に『魚神』、『サラの柔らかな香車』の二作はデビュー作らしいデビュー作で、著者の才気が奔っている印象。新人賞、新人作家ならではの若書きが楽しめるのが良い。選から漏れたが伊坂幸太郎クローンな『名も無き世界のエンドロール』、メディアワークス文庫賞を授与したいラノベ風味な『ラメルノエリキサ』あたりも拾いどころ。正味、小粒な受賞作が揃った感もあるが、大ハズレもない(……本当かな?と自分でも懐疑的になったワw)のは大台である第30回を迎える新人賞、作家への登竜門としてしっかり認知されているからだと思う。今後も良質な作品を輩出して頂きたいですね、ハイ。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

83  魚神/千早茜  【第1位】

80  

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第2位】

78  

77  

76  ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【第3位】

☝  満足  ☟  普通


74  名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  

69  赤と白/櫛木理宇    

68

67  

66  

65  八月の青い蝶/周防柳

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ  【次点】

☝  普通  ☟  不満


59  

55  

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  

☝  不満  ☟  アマチュア


35  

現在、2017年03月01日/修正

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前回から二日で脱稿!というわけで、間隔短く 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】へGo!計画は成功と相成りました。まあ、この受賞作を読め!は該当作品のレヴューから引用するから書きやすいのが大きいね。ではでは、 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】のお薦め作品をご紹介させて頂きますYo!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

個人的に小説すばる新人賞の受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれているのが特徴。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は負けるために、己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の名場面、「ショウサン」の一言を見逃すな!

「ビックリするくらい似てました(笑)」と“サムライ・ギタリスト”MIYAVI(G.)も認めた三味線操る藤次郎を中心とした戦国Rock 'n' Roll。どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの怪演は痛快そのもので、文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが何より素晴らしい。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。

西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品。平凡な登場人物たちを配して、読み手を楽しませる――というのは作家の手腕試されるところだが、突拍子もない設定を出すことなく《日常》を不穏→爽快へ展開させて描き切ったのは、著者の今後の活躍を予感させてくれる。デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末は著者のインテリジェンスを感じました。良作です。

☆☆  総評  ★★

先に断わっておくと、以下の【受賞作:点数一覧】からも分かるように、第1位から第3位まではすんなりと点数通りにお薦め出来たのだが、【次点】は今回はあえて選ばないでおいた。というのも、三作が頭抜けているのもあるが、そもそも、2位と3位のお薦め具合の差が点数以上に離れているからだ。好みの差こそあれ、まず誰が読んでも『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は「面白い!」と唸らせられると思う。この二作は大衆小説として本当にお薦め出来る。しかしながら、点数通りに拾うと【次点】となる『粗忽拳銃』は個人的に贔屓にしたくなる玄人具合。地味に「巧い」、渋いけど「巧い」のである。(……この作家、生き残ってるだろ)と検索してみれば、やはりしぶとく生き残っていた。是非とも、遅咲きの桜を咲かせて貰いたいものである。他の受賞作で目ぼしいものといえば、『天使の卵 エンジェルス・エッグ』『笑う招き猫』か。前者は当時のベストセラー、後者は目下、巷で話題の清水富美加さんが主演して撮影済みのドラマの行く末を心配されている作品である。まあ、何にせよ、この【第11回 ~ 第20回!】の主役は『ジョッキー』、そして、『桃山ビート・トライブ』だ。あ、第3位の『はるがいったら』も面白いですよ?文学的なアプローチがスパイスになってて、ラストも「隣同士」なんてユーモアで〆めてくれるので著者の知性を感じられます。犬が好きな人なら尚良し。ただ、比べる相手が悪かっただけです。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】

80  

78  はるがいったら/飛鳥井千砂  【第3位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  

73  粗忽拳銃/竹内真

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59

現在、2017年02月24日/修正

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】


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ようやく消化し終えた小説すばる新人賞の受賞作群―――となれば、(開設当初は)ナマクラ!Reviews恒例(にするはずだった)、『この受賞作を読め!』を始めようではあーりませんか!とりあえず、まずは【第1回 ~ 第10回!】から選んでみましたよ!総仕上げの【All Time Best!】は【第11回 ~ 第20回!】、【第21回 ~ 第29回!】の企画記事を書き上げてからまとめる所存。さてさて、前置きはこれくらいに【第1回 ~ 第10回!】のこの受賞作を読め!をお楽しみあれ~!

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己の身一つ、刀一つでどこまで成り上がれるのか―――夢を抱いて渡ったイスパニアで愛を知り、それでも、夢を忘れられなかった侍の成れの果てとは!?インテリゲンチャも唸る“知識”をさらりと施す佐藤賢一。デビュー作ながら、現在の作品と比しても見劣りしないクオリティーは圧巻の一言。新人離れとはまさに本作、著者を評すにピッタリの言葉だ。かの銃士隊隊長トレヴィルの登場には沸くこと必至。我こそは……!という読書家の方は挑戦してみましょう。

ボーダーレスに作品を産んでいく篠田節子のデビュー作は、巨大な蚕が襲ってくる!というB級臭漂うパニックSF。しかし、これがなかなかどうして―――真っ当に「恐ろしい」。野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物『蚕』という文学性持つ題材への的確なアプローチ、それをホラーに仕立て上げる手腕に唸らされた。ドラマ化作品の陰に隠れてしまっているが、著者のキャリアの中でも好作なのでは?個人的にイメージ変わりました。読めて良かった。

「無名」と断言して良いだろう草薙渉のデビュー作は、―――あの森見登美彦の《プロトタイプ》がここに!?と思わず銘打ちたくなる同質のユーモア吹き込まれた一作。生まれて26年間、広大な屋敷から一歩も外に出たことがなかった公家の末裔・草小路鷹麿というキャラクター、そして、彼によって味付け、解体される日常は絶品で、タイムレスな魅力に溢れている。森見登美彦ほどの筆力はないものの、思わぬ拾い物をした気分になれます。

小説や映画、女優……固有名詞とその“知識”を登場人物にさらりと口にさせるお洒落な作品。斜陽企業に就職した主人公のそれなりの奮闘というストーリーも、なかなかオツなもの。インテリ層に響く内容はないが、著者のセンスがとりあえず光る。個人的には、アーウィン・ショーに手を伸ばすキッカケを頂きました。読むなら暇を持て余したモラトリアムの時期にどうぞ。

☆☆  総評  ★★

記事にしている最中に気づいたが、この【第1回 ~ 第10回!】で小説すばる新人賞を受賞した作家のうち、後に天下の直木三十五賞を受賞したのが5人、大天下の芥川龍之介賞を受賞したのが1人という破格の事実。なるほど、こうなるとこの小説すばる新人賞が集英社出版四賞に数えられるのも分かる!五虎将軍かよ(笑)とか貧困な発想で小馬鹿にしてすまんかった!さて、そんなビッグネーム溢れる本賞の創世記だが、受賞作、そのクオリティーを総括してみると、エンタメ作品としては実に「渋い」印象。上に次点を含めて四作挙げさせてもらったものの、興味深さこそあれ、手放しで「面白い」と称えるのは難しい作品ばかり。その辺りは、第1位に『ジャガーになった男』を選んだところに象徴されている気がする。単純にエンタメ基準だけで言えば、後の直木賞受賞作家たちである荻原浩の『オロロ畑でつかまえて』、熊谷達也の『ウエンカムイの爪』を選びたくなるが、デビュー作だけに彼らの現在の作品ほどには完成されていないのが正直なところ。そんなわけで、この【第1回 ~ 第10回!】の受賞作のなかで個人的MVPは3位に挙げた『草小路鷹麿の東方見聞録』。著者の現代でも通じるユーモアには可能性しか感じない。若書きだからこそ……!の魅力は、出版から二十余年経った今さえ刻まれている。作家としてはもはや虫の息のようだが、是非とも逆襲の一作を上梓して欲しい。余談ながらに村山由佳も本賞から『天使の卵 エンジェルス・エッグ』でデビューしているが、同作は作品それ自体より五木寛之の選考評(レヴュー参照)が最大の読み応えを発揮しているところからお察しくだされば宜しいかと思います。何にせよ、受賞作を消化してみて、90年代はまだまだ大衆小説として発展し切れてない印象。現在の大衆小説のレベルの高さよ(流通量多いから必然駄作も多いが……)。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第1位】

79  

78  

77  

76  絹の変容/篠田節子  【第2位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩  【次点】
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉  【第3位】

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  涼州賦/藤水名子

66  

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  

63

62

61  

60  

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

40

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年02月24日/修正

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