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第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

殺戮のマトリクスエッジ (203x290)
序章
第一章 少年と少女
第二章 少女と少年
第三章 獣
補章

answer.――― 68 点
時代は西暦20××年、舞台は東京湾上に建設された次世代型積層都市トーキョー・ルルイエと置いたサイバーパンクアクション。電脳ネット上に現れる《ホラー》なる怪物を単独で狩り続ける主人公がある日、謎の少女と出会い、救ったことから始まるストーリーライン。ジャンルがジャンルだけに「説明」処理が著者の手腕試される試金石なわけだが、かのライアーソフトの主力シナリオライターだけにその辺りは如才なく仕上げているのが好感。序盤も序盤から現れる都市伝説《ホラー》をあえて謎のまま、作品世界の根幹である電脳ネットもことさら詳しく言及せず、謎のBoy Meets 謎のGirlを推し進める様はまさに大胆不敵。そうして、誰しも読み疲れる中盤での作中世界の「説明」処理―――ある種の匠を堪能出来るだろう。しかしながら、パッと読んでオリジナリティ溢れていそうでも、いざ読んでみれば……な既視感ある設定、ストーリー展開は残念と言えば残念なところ。著者自身が本作にたとえば絶筆の想いを込めれば「化けた」のでは?書けたから書いた、みたいな仕事感が本作に垣間見える。個人的に《ホラー》というシンプルなネーミングの謎の敵から、第12回電撃小説大賞《金賞》受賞作『哀しみキメラ』を思い出した。こちらは《モノ》なので、対比してみればセンスの差を感じられると思う(笑)何にせよ、「そこそこ」な一作。

第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 桜井光 ラノベ好き書店員大賞

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ラノベ好き書店員大賞ランクイン作品一覧


▼ 第3回 (2014年) ▼

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

1位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
2位 ナイツ&マジック/天酒之瓢
3位 グランクレスト戦記/水野良
4位 灰と幻想のグリムガル/十文字青 
5位 氷の国のアマリリス/松山剛
6位 クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿
7位 未完少女ラヴクラフト/黒史郎 
8位 殺戮のマトリクスエッジ/桜井光
9位 グラウスタンディア皇国物語/内堀優一
10位 エーコと【トオル】と部活の時間。/柳田狐狗狸

▼ 第2回 (2013年) ▼

マグダラで眠れ (204x290)

1位 マグダラで眠れ/支倉凍砂
2位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
3位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン
4位 魔法少女育成計画/遠藤浅蜊
5位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望
6位 覇剣の皇姫アルティーナ/むらさきゆきや
7位 俺、ツインテールになります。/水沢夢
8位 とある飛空士への誓約/犬村小六
9位 森の魔獣に花束を/小木君人
10位 も女会の不適切【アイ・ド・ラ】な日常/海冬レイジ

▼ 第1回 (2012年) ▼

のうりん (205x290)

1位 のうりん/白鳥士郎
2位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
3位 雨の日のアイリス/松山剛
4位 東雲侑子は短編小説を愛している/森橋ビンゴ
5位 六花の勇者/山形石雄
6位 問題児たちが異世界から来るそうですよ?/竜ノ湖太郎
7位 アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者/榊一郎
8位 葵~ヒカルが地球にいたころ~/野村美月
9位 こうして彼は屋上を燃やすことにした/カミツキレイニー
10位 犬とハサミは使いよう/更伊俊介

category: ラノベ好き書店員大賞

tag: OPEN 受賞作List ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 5位:氷の国のアマリリス/松山剛

氷の国のアマリリス
(あらすじ)
氷河期が訪れ、全ては氷の下に閉ざされた世界。人類は『白雪姫』という冷凍睡眠施設で眠り続け、そして、それを守るロボットたちが小さな村を形成し、細々と地下での生活を続けていた。副村長の少女ロボット・アマリリスは崩落事故による『白雪姫』の損傷や、年々パーツが劣化する村人たちのケアに心を砕く日々を送っていた。全ては―再び“人間”と共に歩む未来のために。

answer.――― 74 点
氷河期が訪れ、人類すべてがコールドスリープ!その終わりを待つ世界で動くは、再びご主人様へ仕えることを願うロボットたちのみ!という、いわゆる《終末》もの。物珍しいのは、ロボットたちすら長年のマイナス環境下で劣化、そして、人類の生命維持装置のために己のパーツを提供&欠損し、「終わり」を迎えていく酷薄な状況に追い込まれていること。その上で、眠る人類たちの素性を知り、……と、本作はこのライトノベルがすごい!(2012年版)にランクインして話題を呼んだデビュー作『雨の日のアイリス』と同様、ロボットを通して性悪説を主張するような展開は実に堂に入ったもので、著者の「面白い」、その方程式にも映る。確立した構成は《遊び》を入れる余裕も生まれ、たとえば本作の序盤を任されるギャーピー&デイジーの悔恨のエピソードは、本編それ自体よりも個人的に魅せられた。頁をめくるほどに切迫していく状況も説得力あり、中弛みも少ない良質な一作だ。しかし、……どうにも推したくないのは何故なのか?と我ながら不思議に思ったが、読み返してみると、下ネタの下品さにある模様。ロボットにヴァギナが装着されているのは構わんが、これ、この作品で披露する必要ある設定か?メルヘンな世界観でヒロインにブチ込みたいと常に主張し続けるアイスバーンはギャップを狙っているのかもしれないが、AV男優じゃないんだから台詞にはもっと機微が欲しい。もしかすると著者は下ネタが得意だと思い込んでいるのかもしれないが、これは独り善がりだ。下ネタ投下するなら、しっかり「笑い」(読み手自身によるツッコミ)を起こしてください。

第3回ラノベ好き書店員大賞 5位:氷の国のアマリリス/松山剛

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 松山剛 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 6位:クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿

クロックワーク・プラネット (206x290)
(あらすじ)
落ちこぼれの高校生・見浦ナオトの家に、ある日突然黒い箱が墜落する。中にいたのは自動人形の少女リューズ。作り変えられた世界と変われない人類。理想と現実が悲鳴をあげる時、二つの出逢いが運命の歯車を回す!

answer.――― 70 点
たとえば村上春樹の作品を《文学》の軒に並べたくない人の論拠に「登場人物の台詞を日常で見掛けることがない」なる言があるように、《文学》とは《人間》を描くもの―――ある種のリアリティーを求めるジャンルだと思うが、ライトノベルではその逆、人非ざる《キャラクター》の伸長を追及している節がある。つまり、「登場人物の台詞が日常からかけ離れている」ほど喝采を浴びるのである。勿論、これは極端な解釈には違いないが、少なくともモブにビール瓶で殴られて台詞無く即死するような《人間》はライトノベルに登場してはいけないのである。さて、本作は『ノーゲーム・ノーライフ』で名を上げた榎宮祐が暇奈椿との「合作」という珍しい形式でリリースしたライトノベル。ストーリーラインは、寿命を迎えた地球を舞台に、落ちこぼれの高校生が超級の自動人形を手に入れたことで、進化の止まった人類に希望が……!というSF風味のもの。一読の印象は、画が視える、と表現したくなるキャラクターを全面に押し出してくる作風。画が視える、というのは描写が細緻で秀逸という意味ではない。むしろ、描写は他のライトノベル作品と比して少ない方だろう。が、文字量それ自体は比較的多い。このギャップの正体は、自動人形リューズの徹底したSなキャラクター台詞や“時計仕掛けの惑星”というコンセプトに合わせたポエミーな地の文にある。画が視える、それは表紙やイラストからの(イメージの)刷り込みを有効に活かした跡だ。本作にはおよそ《人間》がいない。故に、これがライトノベルだ!と押しつけられれば、腑に落ちてしまう部分がある。『ノーゲーム・ノーライフ』と実質、内容は変わらないが、共作者の分だけ作品の世界観が前に出てくるので、そこは+に。ただ、「これを読ませたいならエロゲー(ヴィジュアルノベル)にしてくれ」と要求したくなるあたり、もしかすると榎宮祐の作品を楽しむにはモダンな感性が要るのかもしれない。

第3回ラノベ好き書店員大賞 6位:クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 榎宮祐 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

未完少女ラヴクラフト (202x290)
(あらすじ)
身心惰弱な少年カンナは、片思い中の女性の顔面に突如として開いた穴に吸い込まれ、異世界スウシャイへと迷い込む。そこで出会ったラヴと名乗る少女に救われたカンナは、少女が呪いによって「愛」に関する言葉を奪われていることを知る。クトゥルフ神話の祖・怪奇小説作家ラヴクラフトを美少女化!名状しがたき暗黒冒険ファンタジー。

answer.――― 69 点
《クトゥルフ神話》の創作者として著名なH・P・ラヴクラフトを美少女にして登場させ、氏の作品に関するキャラクター、町、etc...を自前のストーリーにコラージュしていく実験的な作品。この手のコラージュ作品で気になるのは、元ネタとなる作品(ここではラヴクラフトの作品群)の「読了」前提なのか否かだと思うが、余白が足りない!とばかりに挿される豆知識な脚注のお陰で、もはや一つの宇宙と化し、手を伸ばす気も失せている《クトゥルフ神話》未読者にとっては格好の予習ライトノベルとなっているのが嬉しい。当然、既読者は既読者で見解の相違を含め楽しめるだろう。難点は、一目見て解る当社比1.5倍の頁数。気弱な主人公が美少女ラヴクラフトと、化け物飛び交うコラージュな世界で「愛」を求めて驚いていく―――のは結構なのだが、やはり途中より情報過多となって集中力を削がれ、ストーリーを楽しめなくなる。この間延びな展開(場面)もコラージュの一環なのか?などと邪推してしまったのは、私だけではあるまい。クトゥルフ信者(著者)としては不満であってもコラージュを減らし、あくまで《ストーリー》がメインであって欲しかったのが正味な話。ただ、本作を読めば《クトゥルフ神話》への興味が高まるのは間違いないので、その用途でも手を伸ばす価値がある「物は試しに……」な作品。表紙のモノクロ具合は個性的でGood!黒史郎(くろしろう)と関係あるの、これ?

第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 黒史郎 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 9位:グラウスタンディア皇国物語①/内堀優一

グラウスタンディア皇国物語 (208x290)
序章 戦の終わりと、始まりの誓い
第一章 皇国の騎士
第二章 皇都シオニアへの帰還
第三章 狂戦士ガジェル・プリアモス
第四章 紅海の海戦
第五章 大戦の熾こり火

answer.――― 66 点
国と国が争い、その渦中の英雄を描く《軍記物》というと、ライトノベルならば旧いところで『ロードス島戦記』、新しいところで『天鏡のアルデラミン』あたりが例として挙げられると思うが、本作はHJ文庫の軍記物としてシーンへ放たれた刺客。ストーリーは国を救った少年が、時を経て青年となり、再び救国のために招聘されることから始まる。“皇国七聖”という英雄たちが作中のキーワードで、彼らは少年から老人までの一見、戦場には不似合いな手に職を持つ者たち。新たな開戦を前にかつての仲間を探し、出会い、(読み手に)紹介しつつ、目の前の多勢を撃破していく展開となっている。一読しての印象は、可もなく不可もなく、といったマイルド具合で、読み手を多分に配慮した工夫が良くも悪くも目立つ仕上がり。その工夫とは、主要登場人物の女性比率。戦記物と言えば、男、男、男と相次ぎ名のある男たちが現れるものだが、本作ではヒロインたちが「天才」主人公の周りを忙しく回る。そのため、主人公以外の男の評価が上がることなく、活躍、あるいは対峙しても、モブ以上の存在になり得ないのが厳しいところ。あとがきにて、編集者より「女性キャラクターは必須」というハードルを課された制作秘話を披露しているが、結果として要望を「形」だけで応えてしまっているのが残念。著者は軍記物のヒロインに確たる像が無いのだろう。個人的に、水野良の新シリーズ『グランクレスト戦記』(第3回ラノベ好き書店員大賞では第3位にランクイン!)と比較して、現在のライトノベラーたちがどちらの作品を支持するのか興味がある。

第3回ラノベ好き書店員大賞 9位:グラウスタンディア皇国物語①/内堀優一

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 内堀優一 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 1位:マグダラで眠れ/支倉凍砂

マグダラで眠れ (204x290)
(あらすじ)
錬金術師クースラは、昔なじみの錬金術師ウェランドと共に戦争の前線の町グルベッティの工房に送られることになる。グルベッティの町で、クースラたちは前任の錬金術師が謎の死を遂げたことを知る。そして辿り着いた工房では、白い修道女フェネシスが二人を待ち受けていた。

answer.――― 67 点
作家という生き物は本来的に傲慢であり、ある程度のセールスを伴うキャリアを積むと、―――己は何でも書ける!と万能ぶる。とは、森見登美彦の意欲作『ペンギンハイウェイ』のレヴューでの一文だが、その一文をそっくりそのまま貼りつけたくなる本作は、電撃文庫の00年代のドル箱『狼と香辛料』の著者・支倉凍砂が手掛けた下卑た野心丸出しの新シリーズ。そのストーリーラインは、社会不適合な錬金術師が己の夢を追う、というもの。主人公の倫理外れる思考/行動の抑制として、敬虔な修道女をヒロインに配しているのが今後のファンタジーを招く主だった仕掛け。前作で《経済》を題材にライトノベルに新風を吹かせた著者だが、本作では《錬金術》という一種の魔法に時に化学な裏付けをしつつ、中世当時の常識を披露するなど、変わらずライトノベルらしからぬ作風を貫いている。が、「……で、これ、誰に読ませたいの?」と首を傾げたくなるのが、正味な感想。性悪な錬金術師が修道少女を小馬鹿にし、心内では冷笑気味に世間&世界を説き、危機が起これば淡々と処理していく。そもそも、ほぼ何も起こらないまま(物語が見えないまま)、中盤へと進んでいくのは眉をひそめたくなる構成難。《錬金術》に対して頁の消費量が明らかに多過ぎる。しかし、だからこそダイレクトに伝わるのが「俺を見ろ!」という著者の自己主張だろう。「いいか、錬金術ってのはなー!」という御高説である。著者は見誤っている。『狼と香辛料』が多くの支持を集めたのは、《ホロが可愛かった》ことに尽きる。それが大前提にあってこそ、《経済》を題材にした物珍しさがクローズアップされたのであって、その逆ではない。本作のどこにそんな大前提を見い出せばいいのか。修道女に耳生やすなら出会ってすぐに生やせや!『狼と香辛料』が何で売れたのか、著者本人も実は解かっていなかった事実を露呈してしまった一作。人は成功すると化けの皮が剥がれる、……全ては慢心からだ。何でも書けるなんて幻想なのである。書けてしまう場合は、そこまで売れるものは作れない。

第2回ラノベ好き書店員大賞 1位:マグダラで眠れ/支倉凍砂

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 支倉凍砂 ラノベ好き書店員大賞

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 2位:ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (199x290)
(あらすじ)
隣接するキオカ共和国と戦争状態にある大国カトヴァーナ帝国。その一角にとある事情で嫌々、高等士官試験を受験しようとしている少年イクタ。戦争嫌いで怠け者で女好き。そんなイクタが、のちに名将とまで呼ばれる軍人になろうとは、誰も予想していなかった……。

answer.――― 75 点
丁か半か、黒か白か。当事者、あるいは、傍観者であっても勝負事は面白いものだが、何が面白いのかといえば、どちらも勝とうとしているからに他ならない。一生懸命に“負け”を競って面白いなんてことは有り得ない。“負ける”ことが“勝つ”ことに繋がるなら話は別だが、あくまで“勝つ”ために、“勝とう”という意志がぶつかり合うからこそ、エンターテイメントが成立する。さて、本作は何とも物珍しい“負け”を着地点にする物語。と云っても、あくまで“勝つ”ため―――外憂内患の母国救国故の着地点が“負け”ということであり、そのために幾度もの勝利を積み重ねなければならない矛盾が構造的面白味。また、“精霊”介在するファンタジーな世界観ながら、多対多の集団戦を描いているのも珍しい。“能ある鷹は……”な怠惰な主人公は地形その他から戦術を立て、危機に陥ろうが常時余裕しゃくしゃくに仲間を導き、敵を撃破していくのは痛快だ。いわゆる俺TUEEEE!な軍師もの、と捉えれば良いだろう。主人公は冒頭より毛嫌いする軍人へ、貴族へ、英雄へ……と成り上がっていくところも《お約束》な演出。ところで、本作の目玉は脇役マシュー・テトジリチなのは読了した貴方ならばご存知のことだろう。称賛浴びる仲間たちのなかで埋もれている己に忸怩たる想いを抱きながら、決して人前に出さず、そのくせ“諦めない”雑草根性は(……マシュー、お前は主役を食うんだな!?)と読み手を「筋」を無視した魅力的な博奕へと誘う。主人公とかどうでもええわ、マシュー!マシュー!!マシュぅぅうううー!!!と、拳を突き上げて応援したくなるラストの純粋なマシューの“決意”はどんな物語よりも面白い。ここには著者が本当に描きたい物語、読み手へ敷いたミスリードがある。読み手に想像(=創作)させること、それが本来的な「物語」の本質である。

このライトノベルがすごい!(2014年版) 2位:ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 宇野朴人 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

ノーゲーム・ノーライフ (205x290)
(あらすじ)
ニートでヒキコモリ、だがネット上では都市伝説とまで囁かれる天才ゲーマー兄妹・空と白。世界を「クソゲー」と呼ぶそんな二人は、ある日“神”を名乗る少年に異世界へと召喚される。そこは神により戦争が禁じられ、“全てがゲームで決まる”世界だった――そう、国境線さえも。

answer.――― 66 点
”全てがゲームで決まる”という異世界に召喚された天才ゲーマー兄妹が、イレギュラーなゲームに臆せず挑み、攻略していくゲームファンタジー。無職童貞、白髪赤瞳、ゲーム廃人、コミュ障、義兄妹、天才といった強烈なレッテルを貼り、傲岸不遜に作中世界を進行ならぬ侵攻していく俺TUEEEE!作品。正味な話、それ以上でもそれ以下でもない印象。イラストレーターも兼ねる著者、それこそイラスト、その独特の彩色とのパッケージがあって数ある俺TUEEEE!作品の一群から抜け出たのでしょう。読み手の需要を満たす意味での安定感として、俺タチハ狂ッテイル……!類の登場人物の振り切りは幼稚との紙一重があるので、書き手も素面では挑めないもの。本作ではその辺の躊躇が見られないので、著者は選ばれた人なのだと思いますね。自分の感性に疑問を持たず、筆の赴くまま、感性のままの、天才的作風です。このライトノベルがすごい!のみならず、第2回ラノベ好き書店員大賞にも第2位でランクイン。売レテマス(売レテマシタ)!

このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 榎宮祐 このライトノベルがすごい! ラノベ好き書店員大賞

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第6回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 審査員特別賞:俺、ツインテールになります。/水沢夢

俺、ツインテールになります (199x290)
(あらすじ)
ツインテールを愛する普通の高校生・観束総二。ある日、彼の前に異世界から来たという美少女トゥアールが現れる。時を同じくして、総二の住む町に怪物たちが出現!彼らは人々の精神エネルギー『属性力』を糧にする異世界人だった。トゥアールから強力なツインテール属性で起動する『空想装甲』を託された総二は、幼女のツインテール戦士・テイルレッドに変身!こうして異世界の変態たちとの壮絶な戦いが始まった!?

answer.――― 75 点
「もうこのまま出版するといいよ。もしくは来週からアニメ化とかするといいよ」とは、ゲスト審査員を務めた漫画家・畑“ハヤテのごとく!”健二郎の弁だが、いざ読了してみれば、これがどうして審査員特別賞なのか?と首をひねりたくなる、ザ・ライトノベルな仕上がり。どうかしてるぜッ!な表題からも察せられる通り、ツインテールに妄執する少年がツインテールの美少女ヒーローとなってツインテールをこの世から回収しようと企む極まって残念な怪人たちと戦うというド直球の馬鹿ノベルで、主人公は巨乳痴女、貧乳幼馴染、ついでに未だ現役の中二病罹患者の母親(個人的MVP)とともに、様ざまな角度から貞操の危機を迎えていく。下ネタをたっぷり練り込んだ台詞&次の場面では回復する暴力なツッコミは需要を満たす高度なもので、ハイテンションにもかかわらず、緩急を利かせて飽きさせない。本作はアングラ販促賞、第2回ラノベ好き書店員大賞にもランクインしているが、第1回の覇者『のうりん』への投票者が本作へ投票したことも推測出来るキャラクター重視のコメディーが徹底されている。主人公のツインテール好きが両親のDNA由来というのは壮大な馬鹿で、笑いつつもスケールを感じて感心してしまった。馬鹿ノベルだけに読了後には何も残らないのは玉に瑕ではあるものの、故に振り返ってみれば、……という思春期の泡沫作品として思い出にも残りやすい。何も考えず、時間の浪費を楽しみたいときにどうぞ。

第6回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 審査員特別賞:俺、ツインテールになります。/水沢夢

category: ま行の作家

tag: 小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門)審査員特別賞 OPEN 70点 水沢夢 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 8位:とある飛空士への誓約 1/犬村小六

とある飛空士への誓約 (205x290) (200x290)
(あらすじ)
四千もの島嶼が大瀑布を挟んで存在する「多島海」。ハイデラバード連合共同体、セントヴォルト帝国、秋津連邦、三つの大国が覇権を争うこの海を、七人の少年少女の操縦する大型飛空艇が親善飛行していた。空戦ファンタジーの金字塔「飛空士」新シリーズ、史上空前の規模でついに始動!七人の主人公が織りなす、恋と空戦の物語。

answer.――― 76 点
ライトノベル界隈で“とある”と枕に置けば、多くは鎌池和馬の“禁書目録”―――そして、その多く以外は、この犬村小六の“飛空士”シリーズを連想する。単巻ながらいきなりの映画化するほど好評を博した『とある飛空士への追憶』から『とある飛空士への恋歌』、『とある飛空士への夜想曲』と世界観はそのままに主人公を換え、枝を伸ばした“とある飛空士”シリーズ。その集大成と位置づけられたのが本作『とある飛空士への誓約』。一読しての印象は、―――なるほど、集大成!とまさしく首肯したくなる『とある飛空士への追憶』、その《才人の若人(たち)がAからBへ向かい、到着の事実とともに英雄となる》という筋と同型の展開を披露してくれる。そこに同作よりも主要登場人物を増やし、もはや確立しただろう自信の構成、語彙豊富な筆を存分に奮っているのだから、そのエンターテイメントとしての安定感は盤石である。作中の時間の流れを意識してか、航空機の動力源を変えてくる等のこだわりがしっかり施されているのも、著者の新シリーズへの意気込みを感じる。「集大成」故に既視感を感じざるを得ないのは仕方のないところだが、本作へ手を出す人の多くはシリーズのファンなのだろうから気にはすまい。シリーズ未読の新規のファンの場合ならば詰まるところ、単巻でのクライマックスを望むか、複数巻にまたがって得られるカタルシスを求めるかの選択になる。前者ならば『追憶』を、後者ならばこの『誓約』で良いだろう。新旧のライトノベラー、双方を満足させられるだろう好作。

第2回ラノベ好き書店員大賞 8位:とある飛空士への誓約 1/犬村小六

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 犬村小六 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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第2回ラノベ好き書店員大賞 9位:森の魔獣に花束を/小木君人

森の魔獣に花束を (203x290)
プロローグ
魔の森へ
人喰い花
月に唄えば
青い薔薇
森の破壊者
秋来りなば冬遠からじ
決意の剣
おやすみロザリーヌ
エピローグ

answer.――― 75 点
登場人物が多過ぎる、なる批評を目にすることがあるが、本来的に登場人物は多ければ多いほど「面白い」し、そもそも、《登場人物が多過ぎる》なる指摘は、読み手(そして、著者自身)も納得しやすい文句に違いないものの、的を外している場合も多い。というのも、上述の通り、巷で「売れている」作品、あるいは、その指摘する人が「面白い」と見做している作品中の登場人物の数と比しても、まず「数」は変わらないからだ。だから、登場人物が多過ぎる、なる批評を見つけたらそのまま受け取らず、その批評した当人も気づいていない裏の意味を考えてみよう(o'∀≦o)b!と前置いて、病弱故に見捨てられた貴族の少年が試練の森で彷徨い、出逢ったのは無邪気な魔獣「人喰い花」というストーリーラインの本作。実質、二人の登場人物で本作は成り立っているわけだが、本来的に登場人物は少なければ少ないほど「面白くする」のは難しくなる。ましてや、白痴にも似たヒロインを登用すれば尚のこと。が、ここで「ホンノー」なる第三者を合法的に介入させてくるのが著者のしたたかな工夫。魔獣とホンノーの問答は、ライトな葛藤そのものの構造で(これは……!)と推したくなる。また、さらりと放たれる、―――「後悔って……ねえっ……それ、なんだっけッ?」『思い出に苦しめられることよ。後悔が大きければ、きっと死ぬまで苦しめ続けられるわ』「そんなの嫌ッ!」―――なんて耳が痛くなる教訓めいたやり取りも良い。(やや野暮ったいものの)「二人」以外の登場人物は、無駄なく二人のための物語の伏線となっているのも好感。このストーリーで戦闘場面を必要場面として処理出来ているのも素晴らしい。右肩上がりに著者の《仕事》に魅せられる一作。たとえば紅玉いつきの『ミミズクと夜の王』が好きな方ならば、まず満足出来るでしょう。個人的には同作よりも気に入りました。【推薦】させて頂きます。

第2回ラノベ好き書店員大賞 9位:森の魔獣に花束を/小木君人  【推薦】

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 小木君人 ラノベ好き書店員大賞 推薦

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第1回ラノベ好き書店員大賞 1位:のうりん/白鳥士郎

のうりん (205x290)
(あらすじ)
立田茂農林高校、通称『のうりん』。ぼくの名前は畑耕作。ここ『のうりん』に通う、ちょっぴりアイドルオタクな高校生だ。そんなぼくの通う学校に転校してきたのは、憧れの超人気アイドル・草壁ゆかたん!?奇才・白鳥士郎が送る農業学園ラブコメディー!

answer.――― 75 点
きっとと言わず、純度100%に年季の入ったライトノベラーであろうラノベ好き書店員たちが催したラノベ好き書店員大賞。選民的少数故に投じるその一票が己が思惑を超えて重いわけだが、この第1回において9票を集め、売上を含め《最近のライトノベル》の代名詞とも云える『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』を抑え、栄えある第1位に輝いたのが本作『のうりん』。農林高校を題材にしたちょいエロコメディで、とにかくポップ!ぷるるんエロい!という優れもの。頁をめくればイラストを多分に意識しただろうキャラクターメイク、場面作りが目に留まり、《これこそラノベ!》なる書店員の評にも気持ち良く首肯出来ることだろう。軽妙な一人称、台詞主体にもかかわらず、下手と見做されないのはパロディ、時事ネタといった著者の意図を楽しみながらもダイレクトに感じるから。《農林高校》という隙間を突いてきた嗅覚、著者自ら農林高校へ体当たりの取材を敢行しただけあってのドが付くコメディから結びで一転のシリアスな農業の実態報告など、ティーンのためのエンターテイメントとして◎の出来。と御託を並べたが、上述の通り、アイドル好きの主人公が、転校してきた自分の神推しのアイドル、巨乳の幼馴染、超巨乳のお嬢様たちと、オッパイ×2、クンカ×2しているのが最大のセールスポイントの作品に間違いない。俺ガイルよりも得票が上回ったのも、エロという即効性故だろう。《これこそラノベ!》、書店員のこの言葉に裏など無い―――突き詰めれば、ライトノベルとはムッツリ助平(ライトノベラー)たちのエロ本なのである。個人的にも、モダンな作品として楽しめました。

第1回ラノベ好き書店員大賞 1位:のうりん/白鳥士郎

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 白鳥士郎 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 6位:覇剣の皇姫アルティーナ/むらさきゆきや

覇剣の皇姫アルティーナ
(あらすじ)
剣も弓も苦手で、本ばかり読んでいる落ちこぼれ軍人のレジス。左遷された辺境で、彼は運命を変える少女―――赤い髪、紅い瞳を持ち、覇者の大剣を携えた皇姫アルティーナと出会う。覇剣の皇姫と、読書狂の青年が織り成す覇道戦記ファンタジー。

answer.――― 71 点
主人公ないしヒロインの取り扱う武器に《大剣》が当たり前のように選択肢として挙げられるようになった昨今、今や“異世界ハーレムが俺に究極の選択を迫ってくる”ファミ通文庫にも、そんな《大剣》使いの軒先に名を連ねるヒロインが!本作は、覇者の大剣を担いだ落胤のお姫様アルティーナと読書家の落ちこぼれ軍人レジスによる民のための下剋上の物語。中世を想起させる魔法を排した世界、剣戟打ち鳴らされる軍記物なわけだが、兎にも角にも、本作の「冒頭」を注視して読んで頂きたい。絵画的に貼られた辺境への左遷を告げる辞令の一頁目、「――ああ、本があれば、私は自由であり、そこは我が家となる」と主人公の認識を紹介する作中作の引用文、そんな彼だからこそ絶望する左遷先の配本状況、嘆いてたら迎えがやってきたぜ、Boy Meets Girl!読まずとも「先が読める」、それが《王道》なわけだが、本作はまさしくその《王道》を征くライトノベル。「先が読める」ことは時に見切られてしまう/見限られてしまうことにも繋がるが、《王道》が在り来たりへ到らない、その分岐点となる要素は結局、「キャラクター」に尽きる(「文章」も大事だが、本作ではリーダビリティを重視しているようなので省く)。「先が読める」―――にもかかわらず、頁をめくる手が止まらないのは、そこに読み手が望む主人公(&ヒロイン)がいるからだ。内向的な落ちこぼれ(のような才人)と陽気な落胤(&戦女神な美少女)という掛け合わせは、マイナスからのスタートにもかかわらず、すでに快進撃が始まっている。故に、作品としてのピークは“勝負”の冒頭とも云え、以降は読み手にとっての“期待”のオマケである。この「冒頭」、この「二人」が気に入れば、続刊も楽しめるだろう。辺境伯ジェロームを仲間に引き入れる、というのがこの一巻の着地点。個人的には、たとえば主人公が本巻の敵役ジェロームの側に「一度」付くなりのヒロインへの否定、王道への回り道が欲しかったかな、と。

第2回ラノベ好き書店員大賞 6位:覇剣の皇姫アルティーナ/むらさきゆきや

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 むらさきゆきや ラノベ好き書店員大賞

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第5回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 大賞:こうして彼は屋上を燃やすことにした/カミツキレイニー

こうして彼は屋上を燃やすことにした
1.ドロシー(前編)
2.ライオン
3.カカシ
4.ブリキ
5.ドロシー(後編)

answer.――― 68 点
失恋したヒロイン(JK)が平然と過ごす元カレへの見せしめに自殺しようと屋上へ向かえば、そこには―――というストーリーライン。章タイトルから察せられるように『オズの魔法使い』のキャラクターを屋上に巣食う「友達ではない」登場人物たちへ重ね、失恋、イジメ、孤独、復讐……それぞれが抱える問題を解いていく。正味な話、鬱々と且つ遅々とした展開には辟易としたが、4章「ブリキ」における姿を見せなかったKEYキャラクターへのAll For Oneな収束にはその我慢した分だけのカタルシスが生まれ、本作を「一」作品として高める構成となっている。昨今、ライトノベルと大衆小説のクロスオーバー作品が細い支流からいよいよひとつの本流になりつつあるように思えるが(個人的にそれを《ライトノベル》が担うべきなのか疑問に思っている。下手すると、単なる出来の悪い大衆小説じゃん?ex.『きじかくしの庭』)、本作は主要登場人物が10代な年齢、10代な環境のため、より「ライトノベル」に寄っている印象。どの登場人物にもあたかも全世界を独りで抱え込む幼さ(「……俺は孤独だ!」 By カミツキレイニー)が見られるのが個人的に厳しかったが、逆に「それこそが10代!」「思春期!」と言われればその通りなので問題ないだろう。ただ、この手の路線の大衆小説方面には、たとえば“ザ・ポピュリズム”石田衣良がいる。クロスオーバーした行き先が「同じ」なら、ライトノベルなんて回り道なんてせずに、すでに「在る」大衆小説を読んほうが良いと思う。そういう意味で、ライトノベル作家(志望含む)はもっと「ライトノベル」ってものを意識して取り掛かる時期なんじゃねえかな、と。ちなみに本作、第1回ラノベ好き書店員大賞・第9位にランクインしております。

第5回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 大賞:こうして彼は屋上を燃やすことにした/カミツキレイニー

category: か行の作家

tag: 小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門)ガガガ大賞 OPEN 60点 カミツキレイニー ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 2位:ナイツ&マジック 1/天酒之瓢

ナイツ&マジック
(あらすじ)
一人のメカオタクが事故でこの世を去った。彼の魂は、異世界において『エルネスティ・エチェバルリア』として転生する。しかも、前世である日本人としての記憶を受けついだまま。生まれ変わった世界で巨大人型兵器である幻晶騎士と出会ったエル。彼は狂喜乱舞しながら、その操縦者となるべく行動を開始した!

answer.――― 68 点
貴方の周りに《ライトノベラー》なる人種はいるだろうか?私の周りには一人、「猫が好き」「宇宙が好き」「天才が好き」「モテモテ?当然!」「ネット?止められない!」「(精神的に)貴族(だから人を見下す)」というライトノベラーのメインストリート、そのど真ん中を往く男がいる。正直、《安い》感性の持ち主である。しかしこの男が求めたとき、あたかも追って―――世間が動いていた。数年前、その男は「最近、またネット小説を読み始めたわ」なる報告を私の耳に届けた。学生の頃ならば(……クズだな)と心のうちに抱いた思いをそのまま口にして終わらせていたが、私が身を以て世の理を学んでからは、この男の言動はもはや《神託》として「……マジかよ!?」と新時代のムーヴメントを告げられるように恐れ戦くようになってしまった。さて、そんなある日、男が得意げに渡してきたのが本作『ナイツ&マジック』。小説投稿サイト『小説家になろう』の書籍化商品で、例によって、今や(笑)を通り越して(怒)と付きかねないド直球の異世界転生、「強くてニューゲーム」な俺TUEEEE!モノである。とりあえず冒頭も冒頭、中小企業のデキる、しかしあくまで一般人AなSE(♂)の突然の交通事故死――開始数頁で己の至強が《お約束》される異世界転生の経緯に目を通して頂きたい。そして、「……are you OK?」と確認されて、「OォオオオオオオオオオオォオォKェエエエイイイィッ!!」と叫べたなら、そこから先はめくるめく「強くてニューゲーム」、貴方の快進撃が始まる。と揶揄しているように書いているが、失笑してしまうほど丁寧に俺TUEEEE!を成立させる演出から察せられる通り、本作、実にニーズに応えた逸品。ロボット題材、ネット小説発ということで説明その他が冗長ではあるが)語彙豊富、ピンチなイベントなど、綴る筆も貫録あり、巷でdisられる類の作品ではない。むしろ安心安全の「ライトノベル」で、お薦めに値する出来だ。なので導入部で拒否反応が出てしまったのならば、貴方がライトノベルから卒業すべきだと思う。点数が抑え目なのは「一巻」時点の採点のため。きっと、巻数を増すごとにJay-Zで、右肩上がりになる作品でしょう。

第3回ラノベ好き書店員大賞 2位:ナイツ&マジック 1/天酒之瓢

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 天酒之瓢 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 3位:グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ/水野良

グランクレスト戦記
1.契約
2.野心
3.災厄
4.戦旗
5.決断

answer.――― 67 点
実しやかに囁かれる噂はどこの業界にもあると思うが、たとえばライトノベル界隈ならば、ライトノベラーは一作家(につき)「1」シリーズしか追わない、というのがある。もちろん、例外は幾らでも見つかるだろう。がしかし、私はこれ、―――本当だと思う。それというのも、ライトノベルを「読む」時期に関係している。ライトノベルは《ティーンが読む》本だ。二十歳超えた、あるいは三十路超えた、ましてや四十路を超えた者のためのジャンルではない。ティーンが読む、つまりは《思春期に読む》本。これが意味するところは、《有限》だ。誰しも加齢とともに時間の進みを早く感じていると思うが、ティーンの三か月と二十歳以降の三か月は、同じ「三か月」でも体感がまるで違う。それだから、たとえば全10巻の足掛け「3」年の「1」シリーズは、実際は「3」年以上、ともすればその「倍」以上の月日を共にしてきたような錯覚を経て、著者を「思い出」へ葬り、「旧い」作家と見做してしまう。著者のイメージも固定され、そこから外れれば、……と、この通り、ライトノベラーが一作家(につき)「1」シリーズしか追わない理由は、ライトノベルを《思春期》に読むが故の特徴だと思う。さて、本作はかの『ロードス島戦記』の著者、水野良の新作ファンタジー。「聖印」を世界観の軸とした領土奪取&……!な本作は、雑感としてヒストリーな『ロードス島戦記』、キャラクターな『魔法戦士リウイ』の氏の代表シリーズの折衷的作風で、前者の水野良を望むファンも強烈な拒否反応の出にくい出来となっている。サクサクと進むファーストフードな展開はモダンで、その辺りも新旧の読み手を意識した著者の本作への意欲が伺えるが、……如何せん、新規開拓の魅力には乏しいかな、と。ファンタジーに求めるのは「未知」、あるいは圧倒的な筆で綴られた「既知」だと思う。本作にはそのどちらの要素も残念ながら「足りない」。それでも、腐っても「水野良」が垣間見えるのは間違いないので、ノスタルジーに駆られた方は手に取って損は無いでしょう。

第3回ラノベ好き書店員大賞 3位:グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ/水野良

category: ま行の作家

tag: OPEN 60点 水野良 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 4位:灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ /十文字青

灰と幻想のグリムガル
(あらすじ)
ハルヒロは気がつくと暗闇の中にいた。何故こんなところにいるのか、ここがどこなのか、わからないまま。生きるため、ハルヒロは同じ境遇の仲間たちとパーティを組み、スキルを習い、義勇兵見習いとしてこの世界「グリムガル」への一歩を踏み出していく。その先に、何が待つのかも知らないまま…これは、灰の中から生まれる冒険譚。

answer.――― 70 点
時流を読んだか、俺TUEEEE!ならぬ俺YOEEEE!主人公(たち)を採用した十文字青の異世界転生ファンタジー。一読と言わず、開始数頁で思わず著者を疑いたくなるのは、作家志望の中高生がチャットで思いつくままに打ち込んだかのような粗悪な文章。十文字青らしい書きなぐり、なんて格好良く評しているレヴューを目にしたが、書きなぐりな文章は感情が発露する場面でこそ映えるものであって、説明、日常パートやらの「静」的な場面で目にしたときには単なる拙い文章である。早々に放り投げようかと持ったが、……しかし!一般ライトノベラーだけでなく、ラノベ好き書店員(=現役古参ライトノベラー)なんてDEEPな界隈で好評を得ているのは、上述の俺YOEEEE!を徹底している故である。右も左も分からない世界での職業選択、武器&道具購入、雑魚モンスターを命を賭けて倒すドラマ―――まさしく、リアルRPG!を追体験して、初めてRPGをプレイしたあの頃を思い出させてくれる。ハイライトは、露店での買い食いを挙げたい。ファンタジーといえば食事シーン。これの有無で作品の出来は大きく変わるものだが、著者はコレを如才なく押さえて己の創作センスを示している。ふらりと目の留まるタイミングで挿された、実によだれ誘う肉料理は絶品である。学園を舞台にしたライトノベルが主流となり、長らくアットホームなファンタジーの盟主が不在だったが、今の現役中高生にお薦め出来る「ボクたちのファンタジー」が出てきた印象。もっとも、(おそらく刊行ペースを早めるため)文章は本当に粗悪な出来なので大学生以降の年齢での読み物としてはまったくお薦めしたくないが。しかし、そこさえ目をつむれば、ライトノベラーならば、いや、ライトノベラーだからこそ歓迎したくなる、「あぁ恐いね!恐くない方がどうかしてる!」ポケットの中の戦争な新世代ファンタジーです。

第3回ラノベ好き書店員大賞 4位:灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ /十文字青

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 十文字青 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 4位:魔法少女育成計画/遠藤浅蜊

魔法少女育成計画
魔法少女育成計画とは?
プロローグ
ブラック&ホワイト
お姫様と四人のおとも
魔法騎士
月夜の魔法少女
邪魔者にさようなら
マジカルキャノンガール
クラムベリーの秘密
魔王の娘
コスモスは戦場に似合う
エピローグ

answer.――― 69 点
―――これ、『まどか☆マギカ』やないかい!?とは、TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』、その第三話までしか視聴していない身としては断言出来ないものの、……乗り遅れるな!このビッグウェーブに!!なんて便乗の感がありありと漂う魔法少女を題材とした本作『魔法少女育成計画』。黒幕臭プンプンの妖精ファヴ、強いられる理不尽なルール、疑心が疑心を呼ぶ仲違い、バッドエンド薫る進行……と、いざ要素を挙げていくと、「だから、原作アニメ(仮)を見ようよ!」というご尤もな意見噴飯には違いないが、模したにせよ、「ディズニーランドの真実」なんて不穏なキャッチでも付けたくなるCuteなデザインの魔法少女アバターたちの殺し合いは、やはりエンターテイメント性溢れる。淡々とした平易な書き口も、シュールで酷薄、殺伐明快な作風に適当と云えるだろう。売れるモノを書く(描く)という姿勢はまさしく「仕事」だと思うが、著者はたとえば「高飛車」ルーラ、「強者」なキャラクターの入退場の仕方を心得ているのは心強いところ。「仕事」に必要なのは作品、登場人物への思い入れではない。本作を「安易」と詰れても、「つまらない」とは言えないでしょう。実にドライ、きっちりと仕上げられたライトノベルです。

第2回ラノベ好き書店員大賞 4位:魔法少女育成計画/遠藤浅蜊

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 遠藤浅蜊 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 10位:も女会の不適切【アイ・ド・ラ】な日常 1/海冬レイジ

も女会の不適切な日常 (206x290)
プロローグ.僕たちの不適切な日常 #.1
1.異端審問バレンタイン -前編-
2.異端審問バレンタイン –後編-
3.青春奪還トライアル
4.連鎖反応サプライズ
5.捧腹絶倒カフェテリア
6.反転攻勢ハネムーン
7.罪状認否マリアージュ
エピローグ.僕たちの不適切な日常 #.2

answer.――― 75 点
ライトノベルな日常を演出しての、……ジェットコースター!流行り廃りはいつの時代にもあるものだが、著者が真正面から《中二病》を発症している作品が減り、《中二病》を作中で扱う際には、その多くがコミカルにしたりの自虐……解かってますからね?(私自身は中二病に罹ってませんからw)と読み手へ含んできている昨今に、ちょっとしたノスタルジーさえ感じる、00年代仕様な「俺ハ狂ッテイル!!」な中二病ライトノベルをご紹介。ストーリーラインは、……と書いてしまうと野暮にも思えるが、バタフライ・エフェクト、繰り返されるTry&Error(←和製英語)、もしやデウス・エクス・マキナ?と、著者があとがきでも述べているように既知の作品の「構造」をごった煮し、登場人物には著者の中二病発症による狂気と妄執をブレンド!上述の通り、昨今は《中二病》と後ろ指差されるのを恐れて、ブレーキが掛かり、(著者自身の中二病な)狂気が抑制されている傾向が見受けられるが、「売れてナンボ!」な海冬レイジ先生はハーレムラブコメに中指を突き立て、「殺」「殺」「殺」……のジェノサイド・リピート・ミステリに仕上げている。目を惹く派手なイベントの頻発は作品を大味にも思わせるが、たとえば終盤、「マッド・サイエンティスト 」大洞繭に戸惑わせるなどの「仕事」もきっちり挿してくるので、エンターテイメントとしての体裁は上等。著者はやるべきことをやっている。作中、あまりのごった煮感に着地の不安が過ぎるものの、見事に降り立った「俺ハ狂ッテイル!!」な闇鍋な雰囲気が漂うダークなライトノベル。パワフルでした。

第2回ラノベ好き書店員大賞 10位:も女会の不適切【アイ・ド・ラ】な日常 1/海冬レイジ

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 海冬レイジ ラノベ好き書店員大賞

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第4回GA文庫大賞 大賞:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか
プロローグ 「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」
1.世界と現実と憧憬
2.だから僕は走る
3.覚醒前夜
4.だからボクは力になりたい
5.女神のイタズラ
6.バンプ・オブ・チキン!
エピローグ 「ファミリア・ミィス」

answer.――― 77 点
GA文庫大賞《大賞》受賞のみならず、目下、『このライトノベルがすごい(2014年版)』で3位、第3回ラノベ好き書店員大賞で1位と支持を受け、15年の春には(……ここが攻め時!)とばかりにアニメ化!と、GA文庫自前の《エース》として台頭してきた本作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』。その概要は、迷宮都市オラリオで駆け出しの少年冒険者ベルが高名な女性冒険者アイズに一目惚れし、彼女に釣り合う冒険者になるべく迷宮攻略に勤しむ、というもの。昨今の俺TUEEEE!に辟易している人にとっては舌打ちする他ない、捻りの効いた俺TUEEEE!作品で、それというのもこの主人公、……「挫折する」のである。そう、本シリーズを追っている読み手の心を一手に掴んだのは、まず間違いなく嘲笑浴びせられ、言い返すことも出来ずにダンジョンへと向こう見ずに飛び込む「挫折」場面だろう。「喜」「怒」「哀」「楽」―――感情表現の中核と言えるこれらは、どれも作中の登場人物たちが発露してみれば関心を引く場面となるが、「哀」からの「怒」は兎角、《鉄板》である。そこには《変身》があり、《爆発》がある。そこに《間違いは無い》のだ。逆に言えば、書き手のある種の「底」が量れる感情移行なのだが、大森藤ノは「怒り」とそれに端を発する(意識の)「フェードアウト」、この妙を心得て実にしたたかに演出。感情移行の成功例として一読の価値があるだろう。もっともそんなピークな場面を経て、牛歩な紆余を消化すると結局、俺TUEEEE!(予約済み)となる設定が貼りつけられるのだが、……それの何が悪い?という話。ライトノベル(笑)と安易に見下げられない文章力、大きなオッパイ揺らすロリ女神様と同棲中など、実務と接待に抜かりはない。成熟された俺TUEEEE!ライトノベル。「稼ぎ」終わったら、著者の単刊作品を読んでみたいね。どんな作品を書くのか興味があるわ。

第4回GA文庫大賞 大賞:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ

category: あ行の作家

tag: GA文庫大賞大賞 OPEN 70点 大森藤ノ ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている
1.とにかく比企谷八幡はくさっている。
2.いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。
3.つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。
4.つまり材木座義輝はズレている。
5.それでもクラスはうまくやっている。
6.けれど戸塚彩加はついている。
7.たまにラブコメの神様はいいことをする。
8.そして比企谷八幡はかんがえる。

answer.――― 79 点
Twitterにて《最近のライトノベル》を叩いてたり、それを叩いてたりするのを時たま見掛けるが、その度に《最近のライトノベル》が結局、何の作品を指すのか期待を込めて眺めていると、……残念ながら挙がることはない。《最近のライトノベル》とは何か?2015年(理想は2014年)現在、私の考える《最近のライトノベル》が本作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。中二病を罹患していた男子が高校進学を機に心機一転を図るものの、……というストーリーラインだが、内容についての言及はさて置いて、私が何を以って本作を《最近のライトノベル》と指定したのかと云えば、―――《文章》である。《リズムの踏襲》。様ざまな文章論において、「描写」「構成」「巧拙」が説かれるが、概して曖昧に、あるいは、読み手が首をひねる形で取り上げられるのが《リズム》についてである。小説における文章のリズム、それは俳句の「五七五」のような字数からの定型、語感揃えた韻踏み、お笑いにおける「天丼」のような繰り返し(and more!)を採用することで生ずるのかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。何より、それらは書き手が《リズム》の生成を意図したならばもはや「技」であって、読み手が暗に求めている、本来的な《リズム》ではないのだ。では、本来的な《リズム》とは何なのか?

かの“世界の”村上春樹は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』にてこんな指摘をしている。

新しい書き手が出てきて、この人は残るか、あるいは遠からず消えていくかというのは、その人の書く文章にリズム感があるかどうかで、大体見分けられます。でも、多くの文芸評論家は、ボクの見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます。でもリズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う。もちろん、ボクはそう思う、ということですが。

ここで指摘される《リズム》こそ《リズム》である。すなわち、今までの対人関係、そして、(主に思春期に)読書を通して培った語彙を駆使した文章、書き手にとってごく《自然》に浮かんでくる言葉故の「間」を持った文章である。考え、筆を「止めた」文章には理が宿ったとしても、《リズム》は自ずと狂い、果ては失われる。それが作品(中の文章)の色を褪せ、輪郭を消し、単なる文字の連なりとなって結局、退屈と成る。《リズム》とは、無形の文章の「型」なのである。そして、その「型」は書き手から書き手へ知らず《踏襲》され続けている。年を経ればノスタルジーを抱くようになる「お気に入り」の作品より、また、己の嗜好からでなく筆を執るときに「参考」に手を伸ばした作品より。私にとって、小説に関しての《最近》とは後者を汲み、そのジャンルにおいて知名度高く、それでいて技巧を称えられる―――読み手が書き手に回った際に最も「参考に手に取る」だろう作品のなかで、一番《新しい》作品が世に出た頃を指す。その観点から考えて《最近のライトノベル》と云えば、このマニアックなラノベ好き書店員大賞のランクインもさることながら、読み手が決める体の事実上の最高の販促賞「このライトノベルがすごい!」にて2013年度で6位、2014年度の1位、そして、直近の2015年度でも1位を獲り続けた本作になるかな、と。どこかの黒ヒゲではないが、「人の夢は!!!終わらねェ!!!!」と吠えるオジサン、どこかのキッドではないが、「始まるんだよォ!!!誰も見た事のねェ“新しい時代”が!!!」と猛る若人が、多かれ少なかれ《リズム》に影響を被りそうだな、と。具体的に言うと、「もちろん違うよね。知ってました。」などの「消しても通る」追尾な文章を中心にした、「そもそもお前の慎ましすぎる胸元なんか見てねえよ。……いや、ほんとだよ?ほんとほんと、マジで見てない」からの「ちょっと視界に入って一瞬気を取られただけ。」などの前振りを執拗に重箱にしての《吐露》である。この徹底した(《吐露》で斬る)「重箱」具合は圧巻で、故にその《リズムの踏襲》も図られてしまいそう。が、大前提で比企谷八幡という卑屈なキャラクターと合致して歓迎される文体なので、そこを咀嚼しないと、リズムを拗らせるだけの結果に終わるだろう。ナンヤカンヤと書いたが、要約すれば、ライトノベルというジャンルにおけるトレンドな《リズム》がここにある。そんな《流行りもの》な意味合いでも、本作に手を出して損と言うことはないでしょう。大衆小説に寄らず、「ライトノベル」を突き詰めたライトノベル。Very good!な快作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡航 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

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第1回ラノベ好き書店員大賞 4位:東雲侑子は短編小説をあいしている/森橋ビンゴ

東雲侑子は短編
(あらすじ)
何事にも無気力、無関心な毎日を過ごす高校生、三並英太。楽そうだからという理由だけで図書委員になった彼は、ともに委員を務める東雲侑子の熱のない静けさに、自分の空虚さに似たものを感じていた。しかし偶然彼女の秘密を知ってしまったことから、自分との違いを思い知らされる英太。だが、その秘密のために、彼女と距離を縮めることとなり、失ったはずの感情に胸を締めつけられていく……。

answer.――― 72 点

小説家のみならず、ゲームシナリオライター、漫画原作者と多角に創作活動を展開する森橋ビンゴ。本作は2013年度の「このライトノベルがすごい!」において第8位にランクインされたように、名実ともに森橋ビンゴの代表作となった「東雲侑子」シリーズ、第一弾。その概要は、少し冷めた高校生・三並英太が、感情表現乏しいクラスメイト・東雲侑子が作家と知ったことから始まる「擬似」恋愛劇―――と並べずとも、本作は作中のたった一文で表せる―――《俺は、東雲侑子の事が好きなのだ。》。「東雲侑子」シリーズは言うなれば、ライトノベルではなかなかお目に掛かれない、作中の一文を長編にする(創作するスタイルの)作品で、続刊、『東雲侑子は恋愛小説をあいしはじめる』では《本当に俺は東雲が好きなのか?》、『東雲侑子は全ての小説をあいしつづける』では《少なくとも俺は、東雲の事を心から好きだと言える。純粋に。》、とまとめられる。この手の「一文で表せる」作品は著者自身がテーマを完璧に把握出来るため、ブレずに描ける半面、拡がりに欠けるデメリットを負う。本作でも、ラブホテルに入る、というライトノベルだからこそ映えるサプライズが一点あるのみで、それ以外は《俺は、東雲侑子の事が好きなのだ。》に辿り着くまでの何てことはない、平坦な過程が描かれるのみとなっている。しかしながら、それがライトノベラーの心を打つのは「作中の一文を長編にする」作品を読んだことが無いからだ。この手の創作スタイルは、概して大衆小説で採られるのである。「面白い」イヴェントは少ないものの、本作は「創作手法」の面からライトノベルと大衆小説のクロスオーバーを試みた良質の一作。良いんじゃないでしょうか。ちなみに、あとがきとか読むと一文デ表セルッテ…( ´,_ゝ`)プッ!後付けワロス!と思うかも知れんが、これ、そういう作品だから。著者がシリーズの表題に自画フムフムしている時点で、発想が《言葉》から始まってる(囚われてる)じゃん。まあ、分からねえ奴には分かんねえだろうけど、そういう奴はそういう作品創っちゃうんだよーん。

第1回ラノベ好き書店員大賞 4位:東雲侑子は短編小説をあいしている/森橋ビンゴ

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 森橋ビンゴ 「東雲侑子」シリーズ ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 6位:問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!/竜ノ湖太郎

問題児たちが異世界から来るそうですよ?
(あらすじ)
世界に飽きていた逆廻十六夜に届いた一通の招待状。『全てを捨て、“箱庭”に来られたし』と書かれた手紙を読んだ瞬間……完全無欠な異世界にいました!そこには猫を連れた無口な少女と高飛車なお嬢さま、そして彼らを呼んだ張本人の黒ウサギ。ウサギが箱庭世界のルールを説明しているさなか「魔王を倒そうぜ!」と十六夜が言いだして!?そんなこと黒ウサギは頼んでいないのですがっ!!超問題児3人と黒ウサギの明日はどっちだ。

answer.――― 68 点
様ざまな賞で選考委員を務めた“ヴァイオレンス”井上ひさし御大はとある文学賞の選考評にてこう仰った、―――作家志望たちはいつまで“自分探し”をしているつもりだ?もっと視野を広く持って、社会に向けた作品を書け!(要約)と。そして、そんな書評を読んだ俺はこう思った、―――いや、お前が“自分探し”読むの飽きただけだろ。(要約)と。さてさて誰が言ったか、―――俺TUEEEE!創作物においていつの時代にもあり、実のところ、常に求められている設定要素ながら、久々に目にした累計発行部数1,000万部突破!の『ソード・アート・オンライン』を筆頭とする《強くてニューゲーム》な作品の氾濫により、食傷をきたした読み手は、これ以上の供給を望まず、「俺TUEEEE。俺TUEEEE」と竹一@『人間失格』よろしくチラシの裏、あるいは便所の壁へと落書きして自重するように求めた。しかしそんな要請なんてどこ吹く風、本作はまさに俺TUEEEE!を体現せしめる一作。その極めたアレンジは、流石の竹一@『人間失格』も「俺TUEEEE。俺TUEEEE……俺TUEEEE。お、俺TUEEEE……!―――俺、TUEEEEEE!俺って、TUEEEEEEEE!!」と目をぐるぐる回して余裕を失ってしまう、驚愕の俺TUEEEE!主人公(格)を三者配する力業。特にメイン主人公である逆廻十六夜の理由無き破天荒さは圧巻だ。ここまで解かり易い「俺TUEEEEEE!」主人公の場合は、敵役を如何に卑怯姑息に、そして、スカした仮面を剥いでから慌てふためかせられるかで出来が決まると思うが、著者は如才なく処理出来ているため、……はいはい、俺TUEEEE。×2と安易に見限られることもない。主人公に弱小コミュニティに所属させるというハンデを付けて、風呂敷を広げていこうとする展開も刊行ペースの早い《ライトノベル》ならではの造り。―――俺、お金を稼ぎたいんです!と表明しているような作品ではあるが、そういう打算から読み手のニーズに応えようとしている工夫は見て取れるので、俺TUEEEE!好きな方には安心の一作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 6位:問題児たちが異世界から来るそうですよ? YES! ウサギが呼びました!/竜ノ湖太郎

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 竜ノ湖太郎 ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者
序章 ブレイクスルー
第1章 気が付けば異世界
第2章 皇帝陛下パンチ
第3章 自由と平等と博愛と
第4章 汝の名は侵略者

answer.――― 67 点
自ら《軽小説屋》と称する榊一郎の同時進行出来るフットワークの軽さは現在進行形で確認出来ると思うが、近年は『棺姫のチャイカ』と本作『アウトブレイクカンパニー』、この両作が氏の執筆活動の「柱」だろう。前者が活劇に重きを置く「動」的作品とすれば、本作は文化を照らした「静」的作品で、多作作家ならではの自己管理、バランス感覚には感心させられる。また、どちらの作品世界でも序盤から「国家」規模の問題(視点)を提示するのは流行り廃りの業界でSURVIVE(1997)@B`zし続ける榊一郎クオリティー。―――無駄なく効率的に!そんな読み手を楽しませる省エネな術をこの作家は知っている。さて、ヲタクな自宅警備員が渋々職を求めれば何の因果か異世界に派遣され、ファンタジーな原住民たちに「萌え」を教授する、というストーリーラインの本作。いつぞやの『破壊の宴』を想起させる《リーマン》ものだが、頁を開いてまず面食らったのが、……お前は本当に榊一郎か?と首を傾げたくなるダダ書き具合。さかのぼれば学生時代に何気なく手に取った『神曲奏界ポリフォニカ』を(……ド下手だな)と見下した第一印象も、このブログを始めてから読んだデビュー作『ドラゴンズ・ウィル』、『棺姫のチャイカ』での軽妙でスケールを含んだ効率的な文章に(……ああ、こっちが素か)と感心し、評価を改めたが、本作では見下げた第一印象が鮮やかにフラッシュバック。3章「自由と平等と博愛と」でようやく(本人的に)「整えた」らしく人心地をつけるが、エンターテイメントが溢れる昨今ならそれこそこの3章から始めても良かったと思う。ファンでもないかぎり、ここまで「待っていられない」。「萌え」という時流を溶かす作風は説教臭いなる言及を目にしたが、それも否定出来ず、ファンミーティングな「内輪」作品にも映る。……が、実際説教臭くても、《ライトノベル》で「文化浸透が侵略の一手になり得る」って提示するのは流石さね(そもそも、本作を説教臭いって思う人はもうラノベ読む年齢じゃねえんだから拗らせてないで卒業しろよ)。余談だが、女性の社会進出が無駄に叫ばれている昨今ですが、本当に社会進出させたいならまず髪型を規制して、スカートを禁止すれば良いと思う。個人的に、「服」が一番世界(社会)を変えると思っている。

第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 榊一郎 ラノベ好き書店員大賞

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第1回ラノベ好き書店員大賞 8位:"葵" ヒカルが地球にいたころ……①/野村美月

葵~ヒカルが地球にいたころ~
1.お前、死んでんだろ
2.皇子様は、女の子がお好きなようで
3.恋愛の達人と呼ばれているけど……
4.人は死んだら、どこへ行くのか
5.彼女の嘘と本当
6.あの星が、微笑みかけてくれたなら
7.あのとき、地球で、君と会えたこと
8.幼年期の終わりに、きみがぼくが願ったこと

answer.――― 72 点
耳を塞ぎたくなるドナドナの惨劇な超駄作『卓球場』シリーズからまさかの反転攻勢、ライトノベルによる文学Hip-Hop!『文学少女』シリーズをリリースして、一角以上のライトノベル作家として名を挙げた野村美月が新たなシリーズの幕開けとして送り出した本作は、日本が誇るヤリチンによるマザコン&ロリコン、そして、因果応報な寝取られエンターテイメント古典『源氏物語』を下敷きにした恋愛ミステリー。その概要は、不良と勘違いされ、高校デビューに失敗した少年が出会って間もなく死んだ優男なヤリチン・帝門ヒカルに憑りつかれ、彼の心残りである女性たちの心を解いていく、というもの。決して筆力の高くない野村美月は本作でも外見描写でその拙さを露呈してしまっているが、……いやいや、そんな些細な欠点さえ目をつむれば、もはや一端の情緒ライトノベル。主人公を含めたどの登場人物も感情、あるいは思惑をひた隠し、故に誤解と嫌疑が交錯する様は、ベタと云えどもベタに面白く、そんな展開だからこそヒカルご執心のメインヒロイン・葵の幼い一途さが立っていく。意図不明な行動を取る主人公に苛つきながら解けていく葵の感情は(強引な)イベントの数を含めても丁寧な運び。何故、ヒカルは……?のミステリー部分を続刊に託しているのは、シリーズ慣れした著者の貫録漂うあざといところだ。本当、公共の場でマスターベーションを披露したが如き上述の問題デビュー作と同じ著者とは思えないね。『文学少女』における《知識》な要素さえ求めなければ、期待を裏切ることなく野村美月なストーリーが展開されています。もう駄作を書くことはないと予感させる安定感に好感を抱きました。……ナイス・「ライトノベル」!

第1回ラノベ好き書店員大賞 8位:"葵" ヒカルが地球にいたころ……①/野村美月

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 野村美月 ラノベ好き書店員大賞

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このライトノベルがすごい!(2012年版) 10位:雨の日のアイリス/松山剛

雨の日のアイリス
1.解体
2.転生
3.決行
4.手紙

answer.――― 69 点

ここにロボットの残骸がある。彼女の名は、アイリス……ロボット研究者・アンヴレラ博士のもとにいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。第17回電撃小説大賞4次選考作―――つまりは選考落選作ながらに、「このライトノベルがすごい!2012」の第10位に見事ランクインを果たした2011年の電撃文庫のダーク・ホース。落選作品でも受賞作よりセールス面で優れた結果を残した作品は『キノの旅』『とある魔術の禁書目録』などあまりにあまりな代表的事例が存在するが、しかしそれらが何故に落選したかと云えば、相応の理由があるのも事実だ。前者は短編連作という当時のライトノベルとしては商業的成功例が無かった作風ゆえ。後者は改訂前がどれ程かによるが、1巻冒頭が明らかに後で貼りつけただろう跡から察するに、巷で語られる文章の破綻云々ではなく構成上の難だろう。落選にも必ず理由があるのである。本作もまた、選考落ち―――ということは、やはり原因がある。それは何か?ズバリ、本作が「面白くないから」に他ならない。本作の読了者に「どこの場面が面白かった?」と訊いてみると良いだろう。「どんな会話が面白かった?」でも良い。おそらく挙げることは出来ない筈だ。彼らが覚えていることは、―――挿し絵。それしか無い。本作がこれ程までに支持されるのは挿し絵、イラストゆえの大勝利だった。選考時点では当然イラストが無かった故に、本作は落選したのだ。イラストが付いていれば<大賞>、ないし<金賞>だっただろう。かつてこれ程までに完璧なタイミングで、且つ、完璧なイラストが挟まれたライトノベルがあっただろうか?著者でもイラストレーターでもなく、編集者にこそ私は称賛を送りたい。「このライトノベルがすごい!2012」の第10位、これこそ編集者が出した<結果>である。著者は本作の大好評を自分の実力と勘違いせず、担当編集者の助言&提案を奴隷の如く聞き続けなさい。それがキミのためだ。編集者礼讃の記事になっているが、上述の<面白くない>をオブラートに包めば、本作は<感動>系のライトノベル。だからといって、「面白い必要が無い」というのは違うだろう。少なくとも衝撃の第2章『転生』演出の下準備とはいえ、第1章は無駄につまらなかった。なんて書きつつ、挿されるイラスト、イラストで涙腺を挑発され続けた作品でした。

このライトノベルがすごい!(2012年版) 10位:雨の日のアイリス/松山剛

category: ま行の作家

tag: このライトノベルがすごい! OPEN 60点 松山剛 ラノベ好き書店員大賞

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第12回えんため大賞 優秀賞:犬とハサミは使いよう/更伊俊介

犬とハサミは使いよう
(あらすじ)
「読まずに死ねるか!!」ある日突然、強盗に殺された俺。だが本バカゆえの執念で奇跡の生還を果たした―ダックスフンドの姿で。って何で犬!?本読めないじゃん。悶える俺の前に現れたのは、ハサミが凶器のサド女、夏野霧姫。どう見ても危険人物です。でも犬の言葉が分かる、しかもその正体は俺も大ファンの作家、秋山忍本人だった!?どうなる俺、あと俺を殺した強盗はどこ行った……!?

answer.――― 70 点
パッと思いついたところで、村上春樹の『風の歌を聴け』、東野圭吾の『悪意』、田中康夫の『なんとなく、クリスタル』が、思春期の私に《ストーリー》以外の部分で感銘を与えた小説に挙げられる。具体的に云えば、『風の歌を聴け』では作中「絵」を挿したことで小説=……な固定観念を確認出来たこと、『悪意』では先入観は台詞ではなく行動で植えつけられること、『なんとなく、クリスタル』では注釈が注釈以上の意味を持つことも有り得ることをだが、そんな三作のなかで一番使い勝手が良さそうなクリスタルなアイディアを施しているのが本作『犬とハサミは使いよう』。そのストーリーラインは、読書一筋の男が偶発的な殺人に巻き込まれるも犬畜生に執念で転生し、覆面作家(♀)に拾われてハサミで度々殺されかけながらも、己を殺した犯人を……というもの。本好き、というライトノベラーが隠れアイデンティティにしているだろう要素を主人公に配した上で(何を恥じることがあろうか?スタンスの)童貞のまま、犬で、作家(♀)と同棲で、となかなかにあざとい慧眼な設定もさることながら、やはり、……ライトノベルは表現のフロンティアだ!と言わんばかりの各章末の《注釈》は遊び心が溢れている印象。勿体無いのは実質、作品の個性にもなっている《注釈》が著者の戯れで終わってしまい、『なんとなく、クリスタル』のような時代を閉じ込めるドキュメント性が無いところか。せっかくのアイディアなのだからもっと意味を持たせても良かったと思う。それでも、ごくごく有り触れた主人公ながらにクスリとさせる造語を散りばめた一人称、それを解説的にアシストする《注釈》は好感度の高い著者の戯れには違いない。本作は、第1回ラノベ好き書店員大賞でも第10位にランクインしているように広く受け入れられ、2014年現在も刊行中のロングラン作品となっている。ただ、個人的にラストの戦闘場面は需要にそぐわない演出ミスに思うのだが、その辺はファンの方はどう捉えているのか気になるところ。登場人物の善性が魅力のライトノベル。

********注釈********
『風の歌を聴け』のイラストは~!『悪意』のトリックは~!『なんとなく、クリスタル』の注釈は~!とか、元ネタの話はしなくて( ゚Д゚)bイイカラネ!
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第12回えんため大賞 優秀賞:犬とハサミは使いよう/更伊俊介

category: さ行の作家

tag: えんため大賞優秀賞 OPEN 70点 更伊俊介 ラノベ好き書店員大賞

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