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第11回本屋大賞 1位:村上海賊の娘/和田竜

村上海賊の娘 (201x290)
(あらすじ)
和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった―――。

answer.――― 72 点
本作は、「海賊王」村上武吉の謎の実娘・景という史実からストーリーを編んだ歴史小説。「貰い手のない醜女」というレッテルを貼った上で、男勝りの怪力&胆力を持つヒロイン・景が、結婚相手を探しつつ、信長の侵攻を受ける本願寺に加勢するストーリーライン。読書中、そして、いざ読了してみても印象はついに変わらず―――本屋大賞第1位という評価に首をひねってしまったのが正味な話。やはりと言うべきか、「貰い手のない醜女」というヒロインに相応しからぬレッテル張りにその原因を見てしまう。当然といえば当然だが、景はいわゆるブサイクではない。戦国時代に生きる人々の美的感覚からズレているだけであり、作中では醜女の景の容姿を美しいと見做す者たちも少なくない……が、要所で醜女、醜女と連呼して刷り込み、そんな醜女が活躍する物語を楽しむのは難しい。どんな理由があろうとも、「醜い」容姿を主人公格に与えてはいけない。日本の海賊、村上水軍を題材として取り上げる作品は物珍しく、挿される“知識”は新鮮だったものの、歴史小説でありながら登場人物たちのキャラクターがかったコミカルな調子、「女性ヒロインが活劇する」という観点から、ライトノベルにも似た印象もあり、個人的にはそれが軽薄にも映った。キャラクターを重視するなら、今度は“知識”が邪魔だ。作品の質としては、著者自身初の本屋大賞ランクイン作品『のぼうの城』のほうがキャラクターと知識のバランスが取れているので、同作をお薦めしたい。

第11回本屋大賞 1位:村上海賊の娘/和田竜

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 和田竜 本屋大賞

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第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

のぼうの城
周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍城。領主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれ、親しまれる人物であった。智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!

answer.――― 83 点

概して、登場人物を魅力的に描け、というと、その登場人物「自身」に焦点を絞って煮詰めてしまうものだが、「智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!」なるキャッチコピーを与えられた「のぼう様」こと成田長親を主人公にした本作は、登場人物を魅力的に描け、という課題がもはや難題化している作家(志望含む)に一石を投じてくれるだろう一作。上記のキャッチコピーからもお察しの通り、この成田長親は「のび太」だ。勿論、ただの「のび太」ではなく、劇場版「のび太」だ。ただ、―――まったく新しい英傑、現る!とおNewであることを大層謳われているのは何故かと云えば、実際問題、小説で劇場版「のび太」を再現する困難さ故。劇場版「のび太」を演出するためにはまず日常の「のび太」を演出しなければならない。が、いざ取り掛かってみて戸惑うだろうことは、「のび太」をそのまま描くと全く魅力的に描けない事実だろう。だからといって、小説特有の十八番的アレンジ―――心内文、地の文で(……馬鹿じゃないんですよ?)とカバーすればするほど、「のび太」らしくならない。むしろ、それではもはや「のび太」ではなくなってしまう矛盾。では、どうすればいいのか?本作に、その答えがあるように思う。本作は《視点》の工夫、及び歴史という裏付けを以って劇場版「のび太」を成立させた秀作。成田長親の表情は豊かだ。成田長親の行動は幼い。しかし、そんな「のび太」な彼を語っているのはそんな先入観持つ《視点》者だ。そうして、そこに絡んでくるのは読み手は開始数頁で結末まで知っている仕掛け。淡々とした書き口なる評も目立つが、それは歴史面から「劇場版」のび太を―――おNewな主人公を成立させるための弊害なので仕方がない。与えられていく「のび太」な先入観、しかし、すでに知っているただの「のび太」であるはずがない結末との齟齬。それを埋める頁捲りこそ本作の醍醐味と云える。新しい英傑、現る!というよりも、新しく「映る」工夫が随所に施された一作。テンプレ通りの登場人物しか作れない、と云う非難が向けられたなら、それは実は読み手に《先入観》を与えられる特技だと本作を読んで気づいてみよう。

第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 80点 和田竜

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