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第13回本屋大賞 1位:羊と鋼の森/宮下奈都

羊と鋼の森 (200x290)
(あらすじ)
言葉で伝えきれないなら音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

answer.――― 80 点
本作はピアノの調律に魅せられ、調律師の道へ進んだ青年の物語。《音楽》を題材にしている作品にハズレはない!とは大袈裟だが、実際、《音楽》を扱っているだけで大抵の読み手はその査定を甘くする……というのも、《音楽》が日常に寄り添うものでありながら、非日常の産物であることを知らず実感しているからなのだろう。また、《音楽》を文字で捉えようとすれば、必然と詩情帯びる。読書の障害と見做されてしまうことも間々あるソレが、しかし《音楽》を題材にした作品となると、不可欠の演出のように歓迎される。本作においても、作中のキーワードとなる詩人・原民喜の理想の文体「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」の引用を始め、物静かな場面を詩情溢れる文章が彩っていく。作中のハイライトには、嫌味な先輩の調律師・秋野の「夢」語りを挙げたい。一体、何の話だ?と主人公同様に読み手も訝って拝聴/拝読してしまうなか、「4年」と一言、示唆的に着地する様は実にスマート、洒落ている。続編があっても何ら不思議ではない主人公の調律師「初段」具合だが、裏方である調律師の世界を界隈の《常識》とともに披露し、楽しませてくれる手堅い一作。ちなみに、表題「羊と鋼の森」はピアノに関わる素材を表わしています。

第13回本屋大賞 1位:羊と鋼の森/宮下奈都

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 宮下奈都 本屋大賞

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第9回本屋大賞 7位:誰かが足りない/宮下奈都

誰かが足りない
(あらすじ)
足りないことを哀しまないで、足りないことで充たされてみる。注目の「心の掬い手」が、しなやかに紡ぐ渾身作。偶然、同じ時間に人気レストランの客となった人々の、来店に至るまでのエピソードと前向きの決心。

answer.――― 68 点
不穏な表題「誰かが足りない」、そして読んでみれば案の定、1章ではお先真っ暗気味な男のブルーな吐露&目の前に自分の恋人を事実上寝取った男が現れて〆られる章末に、(これはまた、ドス黒そうな……)と恐る恐る頁をめくれば、次章はあっさり別の視点人物の話に変わってしまい、何とも拍子抜けをしてしまった本作。その概要は、予約を取ることも難しいレストラン「ハライ」に10月31日午後6時に予約を入れた客たちのそれぞれの物語。各章で暗い背景を背負った登場人物たちを紹介し、終章でそれぞれが「時」を同じくレストランという「場」で偶然「会している」事実を描いているわけだが、正直、……それがどうした?となってしまうのが偽らざる本音な感想。個人的には、これは「底辺」、と納得出来る状態を示せていた第1章の人生ドン詰まりの視点人物の「物語」を読みたかった。著者としては「失敗自体は病じゃないんだ。絶望さえしなければいいんだ」的なことを伝えたかったようだが、絶望の中から小さな希望を見い出すくらいじゃ、第1章の彼の人生は何にも「変わらない」でしょうに。それだけに「物語」を用意してあげて欲しかったな、と。「その後」を読んでみたかったな、と。

第9回本屋大賞 7位:誰かが足りない/宮下奈都

category: ま行の作家

tag: OPEN 60点 宮下奈都

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