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第1回山本周五郎賞 受賞作:異人たちの夏/山田太一

異人たちとの夏 (206x290)
(あらすじ)
妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオライターは、幼い頃死別した父母とそっくりな夫婦に出逢った。こみあげてくる懐かしさ。心安らぐ不思議な団欒。しかし、年若い恋人は「もう決して彼らと逢わないで」と懇願した……。

answer.――― 78 点
今や裏・直木三十五賞とも云える、Nextな新進作家、あるいはブレイク間近の中堅作家による良質なエンターテイメント作品を紹介する山本周五郎賞。本作は、その栄えある第1回の受賞作。その概要は、離婚した四十路過ぎのシナリオライターが独身女性ケイと出会い、ほぼ時を同じく死別したはずの両親を浅草で見掛け、接していくうちに自覚なく痩せ細っていく真夏のホラーなのだが、……“すき焼き小説”。本作に目を通せば、そんなレッテル張りもまさしく「腑」に落ちる落涙必至の団欒場面があり、その“すき焼き”場面こそが読み手の記憶に長く刻まれるだろう本作のメインディッシュ。きっと、この場面があるからこそ本作をお薦めする方もいらっしゃることだろう。個人的に食事場面というと、“俺は女を解かっている”渡辺淳一のベストセラー『失楽園』が韓国で映画リメイクされるとき、不倫相手との出会いの店を「しゃぶしゃぶ(?)」店から「焼肉」店へと変更されたことを<お国柄で情緒が違う>と半ば嘆いていたコラムを思い出すのだが、その観点から考えてみても、家族の団欒を表現する場面として日本人には<鍋を囲む>ことが相応しいように思える。そんな隙のない“すき焼き”場面を置いても、自覚なく痩せ細っていくホラーもまた、ベタながらも実に興味をそそる演出。気負いのないリーダビリティに優れた文章、さらっと読める頁数を含め、現在でも十分に通じるエンターテイメント作品。ピックアップとして序盤、主人公が何気なく自分のマンションを見上げたとき、明かりが一つしかない無い……なんてお手本のような描写は、親指を突き立てたくなるベテランの味。良作です。

第1回山本周五郎賞 受賞作:異人たちの夏/山田太一

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山田太一 山本周五郎賞

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