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第23回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:吉田キグルマレナイト/日野俊太郎

吉田キグルマレナイト
1.悶絶ヒーロー
2.吉田スタジオパーク
3.鞍馬からかさ一座
4.三人の悟空
5.いざ! 初舞台
6.御前会議
etc...

answer.――― 70 点

本作は、デパートの屋上などで催されるアクション・ショーで被りものをしているスーツアクター、いわゆる「中の人」を主人公にした小説。ストーリーラインは、悩みのアガリ症でとうとう劇団をクビになってしまった主人公が、先輩に紹介された老舗劇団にて再び「中の人」となるチャンスを与えられるも、そこの被りものは……という裏方ファンタジー。見返しの著者の紹介欄を覗けば、著者自身が人形劇団で役者、脚本を担当した経歴があるようで、なるほど、その経験を活かした作中の「劇」演出―――「合図」と「アドリブ」に関する裏事情的物珍しさ、ベテランのスーツアクターへの主人公の駆け出しアクター丸出しの感心に説得力が働いている。昨今「流行り」のヤングな文体を用い、読みやすく、起承転結の基本的構成も出来てはいるのだが、各所で指摘されている通り、「転」に当たる契約更新を兼ねた劇団の窮地が唐突で、物語にのめり込む前に浦安のネズミーパークのパレードもかくやのキグルミ・パレードを以ってクライマックスを迎え、読み手と書き手の温度差激しく終幕する。選考委員評では、応募作にファンタジーらしいファンタジーが消えてきた、と嘆かれていたが、本作に用意された仕掛けも小規模で、その評の典型に挙げられる作品となっている。ところで、著者は京都大学出身である。私はこの経歴で、ひどく腑に落ちた。森見登美彦、そのデビュー作「太陽の塔」が本作の読了中、常にチラついていたからである。そして、実際、ラストのお祭り騒ぎを鑑みれば同作をやはり「下敷き」にしたのだろう。著者は森見文学の門下生だったのである。平野啓一郎、森見登美彦万城目学、闘魂三銃士ならぬ京大三銃士(@ナマクラ!Reviews認定)の影響は凄まじく、京大入ったら小説家にならなきゃね!的な雰囲気でもあるんじゃないだろうか?特に、森見登美彦。彼の文体のコピーを昨今、よく見掛ける。サンデーサイレンス並みの席巻ではあるが、同時に危惧もしている。人それぞれに「文章」のスタイルがある。他人の型を倣って、個性を埋没させるのは惜しい。安易なクローン化に警鐘を鳴らしたい。

第23回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:吉田キグルマレナイト/日野俊太郎

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 70点 日野俊太郎

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