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ハヤカワ文庫JA:スラムオンライン/桜坂洋

スラムオンライン
(あらすじ)
Aボタンをクリック。ぼくはテツオになる―――現実への違和感を抱えた大学1年の坂上悦郎は、オンライン対戦格闘ゲーム“バーサス・タウン”のカラテ使い・テツオとして、最強の格闘家をめざしていた。大学で知りあった布美子との仲は進展せず、無敵と噂される辻斬りジャックの探索に明け暮れる日々。リアルとバーチャルの狭間で揺れる悦郎は、ついに最強の敵と対峙するが……。

answer.――― 64 点

瓢箪から駒が出る―――代表作『All You Need Is Kill』が映画化!なる怪情報がいよいよトム・クルーズ主演なんて尾ひれをつけて実現する運びですが、一部界隈でバイブルとさえ祭り上げられる本作は、その余波で邦画化しないのかね?と。オンライン3D格闘ゲームに没入する大学生の《リアル》を描く、というのが本作の概要。オンラインパート、オフラインパートがさした温度差無く切り替わる妙手な書き口で進み、前者のパートでは熟練者の飽くなき強さへの追求と、後者のパートでは噛み合わない初心者な恋愛が描かれる。前述で「一部界隈」と限定的なバイブル扱いとしたのは、おそらく本作に描かれているのは、出版当時年の読み手にとっての《ゲームプレイヤー》の理想像だと推測されるため。本作を現代っ子が読んでも生産性を感じられず(実質、主人公がゲームを否定しているため)、主人公の生き方にCool!な共感を覚えられないのではないだろうか?その点で、ドキュメントを孕んだ選民的な一作。終盤、オンラインパートでの己の価値観を信じるままに選び、挑んだ宿敵との一戦は必読!と謳いたいところだが、戦闘描写が巧みかと問われれば、これまた、あまりに限定的な「巧さ」。前提、コントローラーからのコマンドなので、ダイレクトな興奮は味わいにくい。それでも、主人公演じるカラテ使い・テツオの実戦は入力ミスを許さない緊張感が確認出来る。何にせよ、(あの当時の)ゲーマーの、(あの当時の)ゲーマーによる、(あの当時の)ゲーマーのための一作。個人的に、その日の対戦成績を最後の一文に淡々と記載していく演出にははニヤリとさせられました。本作の英語版のために書き下ろされた後日談「エキストラ・ラウンド」は『ゼロ年代SF傑作選』に収録された模様。

ハヤカワ文庫JA:スラムオンライン/桜坂洋 (2005)

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 桜坂洋

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SD文庫:All You Need Is Kill/桜坂洋

All You Need Is Kill
1.キリヤ初年兵
2.フェレウ軍曹
3.戦場の雌犬
4.キラー・ケージ

answer.――― 78 点

ライトノベラーにも何故だか馴染み深いSFの文学賞『星雲賞』候補作にもなった本作は、お蔵入りすることも多々あるものの、かのワーナー・ブラザースが映画権を獲得し、2013年より製作が開始されるなる怪情報有りマス。な<無限ループ>をテーマにした作品。舞台は「ギタイ」と呼ばれる謎の生物の襲撃を受ける地球。主人公は初陣で早々に死亡するが、気づけば出撃前日の朝に戻っているというループ展開。<無限ループ>をテーマにした作品の醍醐味は「何を変えるか」「何が変わるのか」よりも、そのループしてしまう仕組みの出来で評価が決まる印象があるが、本作は上記のようなライトノベルの枠を飛び越えた評価からも分かる通り、その仕組みが「良く」出来ている。<戦闘>を何度も繰り返せる意味でも(しかし、実際の戦闘場面はほぼ終盤のみなのが素晴らしい)、その必然性を持たせる意味でも、破綻らしい破綻は見当たらない。わずか二日間のループ、一戦場のみのループのため、選択肢の「少なさ」は否めないものの、初年兵である主人公が超級のエースへと進化していく様は読み手にとって不足のない自己投影先。ラストのループ脱出バトルはやや悲劇的ながら、戦争を題材にした「らしい」余韻と捉えられなくもない。ファック!など冒頭で安易に吐いていた主人公の一人称が成長していくのも見物だ。スーパーダッシュ文庫の隠し玉的名作。

SD文庫:All You Need Is Kill/桜坂洋 (2004)

category: さ行の作家

tag: OPEN 70点 桜坂洋

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