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第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者
序章 ブレイクスルー
第1章 気が付けば異世界
第2章 皇帝陛下パンチ
第3章 自由と平等と博愛と
第4章 汝の名は侵略者

answer.――― 67 点
自ら《軽小説屋》と称する榊一郎の同時進行出来るフットワークの軽さは現在進行形で確認出来ると思うが、近年は『棺姫のチャイカ』と本作『アウトブレイクカンパニー』、この両作が氏の執筆活動の「柱」だろう。前者が活劇に重きを置く「動」的作品とすれば、本作は文化を照らした「静」的作品で、多作作家ならではの自己管理、バランス感覚には感心させられる。また、どちらの作品世界でも序盤から「国家」規模の問題(視点)を提示するのは流行り廃りの業界でSURVIVE(1997)@B`zし続ける榊一郎クオリティー。―――無駄なく効率的に!そんな読み手を楽しませる省エネな術をこの作家は知っている。さて、ヲタクな自宅警備員が渋々職を求めれば何の因果か異世界に派遣され、ファンタジーな原住民たちに「萌え」を教授する、というストーリーラインの本作。いつぞやの『破壊の宴』を想起させる《リーマン》ものだが、頁を開いてまず面食らったのが、……お前は本当に榊一郎か?と首を傾げたくなるダダ書き具合。さかのぼれば学生時代に何気なく手に取った『神曲奏界ポリフォニカ』を(……ド下手だな)と見下した第一印象も、このブログを始めてから読んだデビュー作『ドラゴンズ・ウィル』、『棺姫のチャイカ』での軽妙でスケールを含んだ効率的な文章に(……ああ、こっちが素か)と感心し、評価を改めたが、本作では見下げた第一印象が鮮やかにフラッシュバック。3章「自由と平等と博愛と」でようやく(本人的に)「整えた」らしく人心地をつけるが、エンターテイメントが溢れる昨今ならそれこそこの3章から始めても良かったと思う。ファンでもないかぎり、ここまで「待っていられない」。「萌え」という時流を溶かす作風は説教臭いなる言及を目にしたが、それも否定出来ず、ファンミーティングな「内輪」作品にも映る。……が、実際説教臭くても、《ライトノベル》で「文化浸透が侵略の一手になり得る」って提示するのは流石さね(そもそも、本作を説教臭いって思う人はもうラノベ読む年齢じゃねえんだから拗らせてないで卒業しろよ)。余談だが、女性の社会進出が無駄に叫ばれている昨今ですが、本当に社会進出させたいならまず髪型を規制して、スカートを禁止すれば良いと思う。個人的に、「服」が一番世界(社会)を変えると思っている。

第1回ラノベ好き書店員大賞 7位:アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者1/榊一郎

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 榊一郎 ラノベ好き書店員大賞

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第9回ファンタジア大賞 準入選:ドラゴンズ・ウィル/榊一郎

ドラゴンズ・ウィル
1.英雄の条件
2.見えざる束縛
3.魔獣王達の憂鬱
4.最後の英雄
5.終章

answer.――― 72 点

ライトノベルは不当な評価を受けている、という風潮があるが、実際はその逆で、ライトノベルは過大に評価されつつある、というのが私見だ。その正否は求められるものではないが、例えば本作のような作品が異端に映る間は、少なくともライトノベルはあくまでティーンのためのジャンルなのだと思う。小説からアニメの脚本、そして、専修学校の講師まで務めるライトノベル界のドラゴン桜・榊一郎。本作は、そんな氏のインテリジェンス薫るデビュー作。一読して気づくのは実質、場面が一対一で構成されている点。この珍しい構成の意図は「問答」で、読み手は知らず著者の問い掛けを清聴していることになる。しかし、一対一……物語そっちのけにもなりかねない「問答」は読み手がいつ気づいて、いつ冷めてもおかしくないギャンブルな造りでありながら、今を以って思い出の名作に挙げられる本作の凄味は、それと気づかず読み終わらせてしまうことにある。榊一郎が施した工夫、それはドラゴンを物語の中核に配したことに尽きる。ドラゴンの語り(思考)、ただそれだけで人は面白く感じられる―――自分の投影先が無いことを我慢出来る。本作は、著者しか存在しない未だライトノベルにおいて稀な逸品。ドラゴンを菜食主義にしたこと、それを倒しに来た少女をヘッポコにしたこと、真逆の性格の竜(♀)を挟んでくること、適宜挿し込まれる戦闘、国家的陰謀……もちろん、これらはスパイスではある。しかしながら読み手の感情移入先が無い、ある種、欠陥品とも云える本作を成立させているのは、語り手が「絶対者」ドラゴンだからに他ならない。思慮深いドラゴン(その正体は、……榊一郎!)を前にしているからこそ、読み手@いつもは無敵の主人公!は黙っていられるのだ。安易なハッピーエンドにせず、伏して終わるのも「問答」作品として相応しいエンディングだ。本作出版当時よりライトノベルが「個」を描くことに傾倒してきた現在、名も無き兵隊が操る戦車が町を焼く戦闘描写はスケールこそ大きいものの、大雑把で陳腐にも映る。この辺は、時代の流れを感じるね。軽妙な、それでいて安過ぎない文章を含め、「問答」作品のお手本な良作です。

第9回ファンタジア大賞 準入選:ドラゴンズ・ウィル/榊一郎

category: さ行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 70点 榊一郎

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