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第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

ユートピア (201x290)
(あらすじ)
地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤により社宅住まいをしている妻・光稀。そして移住してきた陶芸家・すみれ。美しい海辺の町で、三人の女性が出会う。自分の居場所を求めて、それぞれの理想郷を探すが……。

answer.――― 76 点
「美しい海辺の町」という何の変哲もない地方都市を題材にした本作は、視点を切り替えて複数の真実をあぶり出し、やがて事件の全貌を明かしていく“安心”の湊かなえ印の手法で描かれた作品。デビュー作の『告白』で提示してきたように、湊かなえは《善》であることを許さない。登場人物を徹底的に悪役に仕立て、その人生を嘆かせ、後悔させる―――そこに読み手は暗い安息を得るわけだが、Hateな輩がやはり揃う本作でもっとも口角上げさせてくれたのは、アートな志を持って町へ移住してきた陶芸家すみれ。これぞ凡才!という思考&行動を立ち去るその時まで披露してくれる。湊かなえの凄味はロールモデルが豊富なことだろう。ただ才能が無いだけでは偽者なり得ない。本当の偽者は何より己を知らず、虚栄、そして、虚勢を張るのだ。この辺の機微を登場人物にしっかり施せる故に、デビューよりベストセラー作家として驀進出来たわけである。がしかし、作家としていよいよ頭打ちの印象も。これしか出来ない!これしか書けない!はその実、その通りなわけだが、だからといって派手さに欠けてはいけない。寂れた地方都市の殺人事件とその解決なんて《キャラクター》でもいないかぎり読みたいとも思わない。大衆小説、その担い手であることを忘れてしまうと、後は筆も創造性も落ちていくだけだ。暗く地味な一冊、そうまとめられてしまえば元も子もない。

第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 湊かなえ 山本周五郎賞

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第6回本屋大賞 1位:告白/湊かなえ

告白
1.聖職者
2.殉教者
3.慈愛者
4.求道者
5.信奉者
6.伝道者

answer.――― 84 点

低コストに高パフォーマンス―――2010年に松たか子を主演に迎え、一人芝居からの「ドカーン!」のCMで話題呼んでは大ヒットを招いた映画『告白』。しかしながらも、その原作もまた映画化前の2009年に本屋大賞を受賞、そもそもに出版した2008年にさえ週刊文春ミステリーベスト10、このミステリーがすごい!にランクイン!!と、元より華々しい経歴を持つ作品。驚くべきはこれが著者のデビュー作という事実!なんてところは、むしろ個人的には腑に落ちた。というのも、終章「伝道者」でのそれこそ「ドカーン!」エンディングは何しろ力業だったからだ。展開自体を否定するつもりはないが、……それ、本当?と設定面での疑問が浮かんでしまったのは渋面にならざるを得ない。しかし当初、本作は一章のみの構想だったとのこと。それを<告白>というコンセプトで一つの作品に仕上げたところは、まさしく期待のニューカマーと称えるに相応しい好アレンジ。そう、本作の醍醐味は章ごとに変わる視点人物たちの抱えている<コンプレックス>、内に潜める<悪意>が視点人物となることで暴かれていくところだ。誰もが我儘で、誰もが自分にとって都合の悪いことに目を瞑っている……本作は、そんな<性悪説>を基に創られているのが分かる。視点切り替えの妙を堪能出来る一作で、ミステリーにも関わらず二度読めそうなのが嬉しい。隠れたファンインプレーな設定として、登場人物を「中学生」にしたのも良かった。幼過ぎだろ、と無意識下で冷めかける登場人物たちの行動、思考があるものの、これも中二病と思えば流せてしまえる。無理は多々見られるが、それも気にならないほど、各々の身勝手な<告白>演出を楽しめた。著者には同じ作風で、もう一度チャレンジして欲しいね。

第6回本屋大賞 1位:告白/湊かなえ

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 湊かなえ

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