ナマクラ!Reviews

05/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30./07

第10回本屋大賞 1位:海賊とよばれた男/百田尚樹

海賊と呼ばれた男 (200x290)
(あらすじ)
異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油会社から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく。出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベル。

answer.――― 83 点
日本大震災からの復興を願い、百田尚樹が出光興産創業者・出光佐三をモデルに「東洋の奇跡」と呼ばれた日本の“戦後復興”を描いた歴史経済小説。さて、バラエティ番組「ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!」での発言だったと思うが、著者の「《義務感》を持って筆を執った」というアツアツっ!な申告通り、不撓不屈の経営者・出光佐三こと国岡鐵造が石油メジャーを始めとした既得権益を向こうに回し、会社を、“日本”を発展させていく。とりあえず、―――単純に「面白い」。実話を基に、という予告的に《約束》された「成り上がり」のストーリー展開もあり、単行本として「上」「下」と分けられたボリュームたっぷりの頁数もストレス少なく、エンターテイメントの核となる国岡鐵造の前に立ちはだかる壁は実際、凡人には(いや、これ、……絶対無理でしょ!?)と挑まずして白旗を振りたくなる乗り越え難き壁だ。それをあの手この手、「海賊」と呼ばれるまでにイレギュラーな手段で既得権益を崩していく様は痛快を越えて感嘆するしかない。これを「つまらない」と言ってしまう人は、大衆小説なんて読まず、《文学》でも読めばいい。ただ、のめり込んで読めばただただ楽しめるものの、一歩引いて冷めてしまうと、ブラック企業の、ブラック企業の社長による、ブラック企業な押しつけでしかない事実に気づかざるを得ない(笑)ので、その辺はしっかりと目を瞑って楽しみましょう。百田尚樹は、専門的な描写はしないが、初心者には必要十分な“知識”を挿してくるので(ex.石油の精製等)、そこはもっと「作家」の仕事として評価されて良いと個人的に思う。

第10回本屋大賞 1位:海賊とよばれた男/百田尚樹

category: は行の作家

tag: OPEN 80点 百田尚樹 本屋大賞

[edit]

page top

第9回本屋大賞 10位:プリズム/百田尚樹

プリズム
(あらすじ)
世田谷に古い洋館を構えるある家に、家庭教師として通うことになった聡子。ある日、聡子の前に屋敷の離れに住む謎の青年が現れる。青年はときに攻撃的で荒々しい言葉を吐き、ときに女たらしのように馴れ馴れしくキスを迫り、ときに男らしく紳士的に振る舞った。激しく変化する青年の態度に困惑しながらも、聡子はいつして彼に惹かれていく。

answer.――― 75 点
作品そのものよりも著者自身の知名度が上がってしまった“ツルピカ”百田尚樹。こうなってしまうと、作品の良し悪しは著者の好き嫌いでほとんど語られてしまうものだが、さて、本作は、万華鏡のように性格が変わる青年に惹かれる女性の、解き明かされる青年の秘密への困惑と自身の想い……というストーリーライン。《多重人格》を扱う作品と云えば、否が応でもダニエル・キイスの『24人のビリー・ミリガン』を連想してしまうと思うが、もはやノンフィクションの「古典」と言ってしまっても過言ではない同作のため、「逆に」未読な可能性も十分に考えられる現在。その意味で、新味らしい新味はせいぜい恋愛を溶かし込んでいる程度ながら《多重人格》についての初歩な知識を披露してくれているので、「物語」を読みながら……の有用性は確保されている。百田尚樹は、そのジャンルにおける《初心者》向けの作家だ。それを目くじらを立てて「題材を掘り下げていない」なる理由で非難するのは違うと思う。メディアでは「偏った」言動が目につく著者だが、少なくとも本作では之といったものは見当たらない。《多重人格》を題材にしたごくごく普通の恋愛小説。私は誰を好きになったのか?なんて疑問をもっとクローズアップしても良かったかも分からんが、そうすると、《文学》に寄ってエンターテイメント性が減退するだろうしね。

第9回本屋大賞 10位:プリズム/百田尚樹

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 百田尚樹 本屋大賞

[edit]

page top

第6回本屋大賞 5位:ボックス!/百田尚樹

ボックス!
(あらすじ)
高校教師の高津耀子は通勤中に電車内で暴れていた不良達を注意したせいでその不良達に絡まれてしまう。すると突然ある少年があっという間に不良達を滅多打ちにしてしまい耀子は助けられる。名前も名乗らず風のように去って行ったその少年を探す耀子はその少年が自分の勤めている高校のボクシング部の生徒「鏑矢義平」であることを知る。

answer.――― 77 点

百田尚樹の一時の伊坂幸太郎を思わせる本屋大賞の席巻、打ち立て続けるベストセラーには、ピカピカと光る自身を積極的に晒け出す、TVを始めとしたメディア出演に由来する部分も多々あるだろうが、個人的には題材を単純明快―――初心者にその道の視点を紹介しながら押し出していく作風が何よりもウケているのだと思う。物語を読みながら知識が増える一石二鳥の快感は、=面白い(=興味深い)!に繋がって有難がられるものだ。冒頭、不良に絡まれる女教師を救う「喧嘩上等」鏑矢義平、そんな彼とは対照的な「ごめんなさい」木樽優紀の2人を主人公に配した本作「ボックス!」は、《ボクシング》を題材にした青春譚。ボクシングはボクシングでも、本作で扱うのはプロボクシングではなく、アマチュアボクシングで、同じようで違う競技の説明を交えつつ、W主人公の王道、「天才肌」の経験者と「努力」重ねる初心者の立場の逆転劇を描く―――とまとめても良いのだが、流石は出版不況どこ吹く風の突き抜けたベストセラー作家だけあって、双方にしっかりと華を持たせる。率直に《相反する気質ながら、二人は親友!》をこうもストレートに描いてきたのには驚かされた。立場が逆転した後の2人の距離感は秀逸の一言に尽きる。百田尚樹は読み手の既視感をしっかりと把握しているのだろう。(王道故の)意外性を理解し、そこを踏んで読み手にオリジナリティの錯覚的演出を仕掛けてきている。同じ相手を前にしたW主人公のそれぞれの挫折の表現も味わい深い。そういう意味では、本稿冒頭で言及した外面的作風よりも、注目に値する著者の隠れた「作風」だと思う。勿論、ジャブから始まる講義、大阪という地域性を取り入れ、ボクシングの強豪校として名高い朝鮮学校の例を引いて、ボクシングに不可欠のハングリー精神に言及する等、対初心者アピールも抜かりない。拳闘場面を惜しみなく投入し、友情、努力、敗北、勝利が散りばめられた大衆小説としてまず良質な一作と云えるだろう。しかしながら、時が経って本作を振り返ったとき、―――何が残っているか。対初心者向けの作風に共通する「読書中」がピークという欠点もまた、本作は有していることを付け加えておく。「読書中」と「読後」、ピークをどちらに定めるかで同じイベントでも描写は劇的に変わるものだ。上下巻、合わせてのレヴューです。

第6回本屋大賞 5位:ボックス!/百田尚樹

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 百田尚樹

[edit]

page top