ナマクラ!Reviews

04/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./06

第7回本屋大賞 7位:船に乗れ!/藤谷治

船に乗れ
1.合奏と協奏
2.独奏
3.合奏協奏曲

answer.――― 85 点

誰しも、挫折は経験しておいたほうが良い、なる趣旨の発言を目に耳にすることがあると思うが、そこで言及される挫折は立ち上がれる程度の「敗北」であって、まず「挫折」ではないのはご存知の通りだ。挫折とは、今後、数年、あるいは数十年、もしかすれば、一生「元に戻れない」、自己の喪失だ。それだから、挫折なんて間違っても望むものではない。しかしながら、万が一、挫折に遭ってしまったときのことを考えると、―――立ち直れず、人生の幕を引いてしまう怖さがある。危機管理の一環として挫折とは何なのか、「最低限」知っておかなければならない。挫折は経験しておいたほうが良い、もあながち間違っていないのだ。―――さて、ここに圧倒的敗北がある。本作は、チェロを専攻する高校生・津島サトルを主人公にした青春音楽小説、の形をした「挫折」追体験小説。これは思春期のうちに是非とも一読をお薦めしたい。否、思春期のうちに読まなければならない。挫折は早ければ早いほど、人を強く、思考を大人にしてくれるからだ。本作の読書中、そして、読了後の数日間、ウワアアアアアアアア(:.;゚;Д;゚;.:)ウワアアアアアアアア!!と反芻煩悶すれば、貴方「自身」は傷つかず「挫折」を追体験出来たことになる。本を読んで、これ程「実」になることはそうそうないだろう。「合奏と協奏」「独奏」「合奏協奏曲」と副題を課したボリュームある三部作だが、だからこそ丁寧に、その長さの分だけ、……10代では背負い切れない絶望を味わえる。津島サトルは第一志望の芸術高校に落ちながらも、しかし祖父が創始者である三流の新生学園大学付属音楽高校へ進学し、そこで「曲がりなりにも」なエリート街道を歩む。大人になったサトルが回顧する語り口は、当時の自分を世間知らずの中2病と認めるものだが、自身は貶しながらもそこそこの実力が提示されていく過程は心地良く、津島サトルが感情移入に足る主人公と認められるだろう。音楽小説だけあって専門用語が飛び交うが、ファッションとして塗している印象もあり、不快感は無い。何にせよ、ほろ甘い第1部を経過した、第2部以降は目を背けたくなる垂涎の出来。自棄になり、恩師を追い込む手前で過去の自身へ贈る警告は迫真だ。この「挫折」はやはり経験したほうが良い。【推薦】させて頂きます。全3部、合わせてのレヴューです。

第7回本屋大賞 7位:船に乗れ!/藤谷治  【推薦】

category: は行の作家

tag: OPEN 80点 藤谷治 推薦

[edit]

page top