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第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

ファイティング寿限無 (201x290)
(あらすじ)
落語家が突然にボクシングを始めた。きっかけはケンカ。オレにはファイターの素質があったのか!?師匠の言葉「売れるためには、まず有名になること」を信じて、一人前の芸人になるためにチャンピオンを目指す日々。落語の楽しさと、スポーツの爽快さにあふれた青春小説の傑作。

answer.――― 80 点
売れない落語家が落語で生きていくために「ボクシング」を始めるというストーリーライン。ボクシングを題材にした小説というと、パッと思いついたところで、吉村昭の『鉄橋』と百田尚樹の『ボックス!』が浮かんだが、前者は轢死したボクサーの謎に多視点から迫る文学(的)作品なので、比較するなら《真っ当に》ボクシングを描いた後者だろう。そう、要所でボクシングの試合自体は相応に描いていているものの、本作がボクシングらしいボクシング小説かというと、やはり違うだろう。本作のエンターテイメントの核は主人公の師匠の言「落語家として売れるためにはまず有名になれ」。これを愚直に実践して、あくまで落語家として成り上がっていく主人公の様を楽しむ作品だ。ボクシングを最優先にしない態度、戦った相手へのリスペクトと一種の生き様を見せつけられるわけだが、そんな展開のなかでの「ぃよっ、職人芸!」と唸らせられたアレンジは、成り上がり話では定番の、調子に乗って―――な場面の不採用。これは、天賦発揮して昇り詰めていくボクサーの自分は仮初めであり、落語家として大成したい自分を自覚している主人公故に、当然と言えば当然の演出選択なのだが、案外と見落としてしまうもの。コンセプトの徹底は、それだけで価値がある。一本筋の通った、変則的なボクシング小説。師匠との別れも感動的でした。典型的な隠れた(?)良作でしょう。

第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 立川談四楼 酒飲み書店員大賞

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第3回酒飲み書店員大賞 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己

東南アジア四次元日記 (198x290)
(あらすじ)
会社を辞め、東南アジアへ旅に出た。遊園地にしか見えない教団施設、仏像の迷路、バナナを頭にのせた虎の像など、奇奇怪怪なものが続々登場。しかもその道程は、オンボロバスに乗せられたり、オカマの祭りで股間に危機が訪れたりと、ハイパーデンジャラス!

answer.――― 60 点
旅行エッセイストの著者による「そうだ、東南アジアに行こう!」という脱サラ後の過程を描いた旅行エッセイ。やや滑り気味の書き口がなかなか厳しかったものの、何と言うか、流石はExotic Asia!といった各国の文化の豆知識の紹介には実際、目が点になった。ベトナムにも盆栽の文化はあるようだが、《ベトナムの盆栽はさらに、その岩に五重の塔ふうパゴダや仙人仙女の人形などを配し、全体を箱庭のようにしてしまう》なんてのはその典型。トラブルに巻き込まれ気味な著者の性分と未知の分野を知れるという意味で、読み捨てる分には「可」なエッセイ。

第3回酒飲み書店員大賞 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己

category: ま行の作家

tag: OPEN 50点 宮田珠己 酒飲み書店員大賞

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第1回酒飲み書店員大賞 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

ワセダ三畳青春記
(あらすじ)
家賃12000円。早稲田の超ボロアパート野々村荘はケッタイな住人だらけ。三畳一間の私の部屋は探検部のタマリ場となり……。限りなく「おバカ」な青春を描いた書き下ろし傑作。

answer.――― 70 点
本作は、栄えある第1回酒飲み書店員大賞受賞作。著者は「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーとしている高野秀行―――さて、どこかで聞いたことあるような?と思った貴方、そうです、著者は松本人志がMCを務める紀行バラエティ番組『クレイジージャニー』に複数回出演している、あの“クレイジー”な旅人です。そんなわけで、本作の概要は、ワセダのぼろアパート野々村荘を舞台に、すでに“クレイジー”な兆候を見せている著者と大家、そして、ズレた住人たちの半自伝的青春狂想譚。エッセイらしくアタリハズレは多いものの、実体験だと思うと“ここではない、どこかへ”感溢れるファンタジーに読め、趣きも出る。「守銭奴も名探偵」「第一次野々村大戦」「だから結婚式はいやなんだ!」あたりが個人的に《当たり》なエピソード。特に「だから結婚式はいやなんだ!」は著者のパーソナルも光るイチオシの一編に挙げたい。正味な話、『クレイジージャニー』(の映像&トーク)ほどには楽しめなかったが、(……こんな人いるんだ)的楽しみ方は十分出来ました。

第1回酒飲み書店員大賞 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

category: た行の作家

tag: OPEN 70点 高野秀行 酒飲み書店員大賞

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酒飲み書店員大賞受賞作一覧


▼ 第11回~ (2015年~) ▼



第12回 受賞作:ベンチウォーマーズ/成田名璃子
第11回 受賞作:海と真珠/梅田みか

▼ 第1回~第10回 (2005年~2014年) ▼

酒飲み書店員大賞1

第10回 受賞作:球団と喧嘩してクビになった野球選手 破天荒野球選手自伝/中野渡進
第9回 受賞作:セレモニー黒真珠/宮木あや子
第8回 受賞作:キネマの神様/原田マハ
第7回 受賞作:俺たちの宝島/渡辺球
第7回 受賞作:アフリカにょろり旅/青山潤
第6回 受賞作:月読/太田忠司
第5回 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾
第4回 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼
第3回 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己
第2回 受賞作:笑う招き猫/山本幸久
第1回 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

category: 酒飲み書店員大賞

tag: OPEN 受賞作List 酒飲み書店員大賞

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第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

笑う招き猫 (199x290)
(あらすじ)
オトコより、お金より、あなたの笑いがほしい!新人女漫才コンビ、アカコとヒトミ。彼氏もいない、お金もない、だけど夢は忘れない2人に、テレビ出演のチャンスが……。

answer.――― 69 点
(第何次なのかは不明だが)お笑いブームの最中に投下された、女漫才師コンビを主人公にした第16回小説すばる新人賞受賞作。漫才師ということで、物語の焦点は芸が鈍っても売れるTVタレントとなるか、売れなくてもライブで沸かせる漫才師にこだわるのかという二択にコンビそれぞれが思い悩み、衝突するところに置かれている。王道と云えば聞こえはいいが、ありがちと云えばありがちな焦点なだけに、女漫才師を如何に才人に描けるかがキーポイントとなる。が、可もなく不可もなく……なために及第点に到らず。もっとも、文字に起こしての「漫才」披露は著者のチャレンジ精神を買いたいところ。笑いの本質は「間」なのだろうから、それを実質封じられる文章で「つまらなくはない」と思わせる仕上がりは好印象を抱いた次第。題材を変えた著者の「次」の作品に興味を持てる。作中で個人的に興味惹かれたのは、先輩芸人の妻である元アイドルのユキユメノを巡る痴情。結局、ゴシップ(そして、それに巻き込まれること)が一番面白いのは二次元でも、三次元でも変わらない。漫才師たちの「悩み」、選んだ「答え」なんて、現在進行形でTVで汗掻きながら映っているので、そのライブ感と比すれば、本作の内容では霞んでしまう。ユキユメノというゴシップをもっとクローズアップしても良かったと思う。なお、千葉近辺の書店員・出版社営業が催した酒飲み書店員大賞の第2回の受賞作でもあります。

第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山本幸久 小説すばる新人賞 酒飲み書店員大賞

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第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾

太陽がイッパイいっぱい
(あらすじ)
バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が……。

answer.――― 81 点
投稿時の『ハナづらにキツいのを一発』から出版に際して『太陽がイッパイいっぱい』と爽やかに改題された本作。その概要は、生温い大学生活から解体現場のアルバイトに身を投じれば、「労働って素晴らしい!」と汗水垂らして底辺の同僚たちと帰りにビールを煽る、刹那のイッパイいっぱいな青春模様を描くもの。基本的には連作短編の章構成で、主人公イズミの働き先であるマルショウ解体の面々を紹介しながら、草野球、デート、給料泥棒、経営危機など、泥臭くもハートフル、ソーシャル・ブルーなストーリーを展開していく。が、中盤からは実質の主人公交代、本作の主役は無敵の喧嘩師カンとなる。半グレ集団“シックス・クール”との抗争はまさしく怒涛のサプライズで、「カン!カン!!カン、カモ―ン!!!!」と血湧き肉躍る大活劇に読み手の頁をめくる手は止まらなくなる。喧嘩真っただ中の描写も頭一つ、二つ抜けている匠を見せつけてくれるが、個人的には喧嘩前、カンとハラケンの探り合いは珠玉の描写として挙げたい。不良の不良らしい、怜悧かつアドレナリン滾る分析&思考放棄は、書こうと思っても書けるものではない。そんな脇役カンに「ほんで?ややこしいハナシはえぇから、はよ用件ゆうてや」と主役の座を完全に奪われた主人公だが、終盤に垣間見せるナンダカンダで鍛えられているサービスな事実は実に心地良い。作品としての〆めも抜かりなく、社会の「形」を教えてくれる。何の変哲もない若者譚が続く序盤は若干のストレスも感じるが、終わって見れば視界良好!快作と呼ぶ相応しい青春譚、青春小説でした。地味なところで、この汗臭い設定で女性キャラクターの存在感をしっかり出せているのも素晴らしい。出版時期から考えて、版元は関西版『池袋ウェストゲートパーク』として売り出したかったんだと思うが、本家よりも気に入りました。【推薦】させて頂きます。

第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【推薦】

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 三羽省吾 小説新潮長編小説新人賞 酒飲み書店員大賞 推薦

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