ナマクラ!Reviews

04/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./06

第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

はるがいったら
(あらすじ)
両親の離婚で別々に暮らす園と行の姉弟。妥協知らずで完璧主義者の姉・園は、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛関係を続けていた。一方、虚弱体質で冷めた性格の弟・行は、幼い頃に園と拾った愛犬・ハルの介護をしながら、進路に悩んでいた。

answer.――― 78 点
西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品として個人的に挙げたくなるのが本作『はるがいったら』。両作の共通項は一家の一員としての「犬」が老いて弱り、その派生として飼い主周りが動き出す点。しかし犬はあくまでマスコット!的役割であり、物語は飼い主たちの現状に焦点を当てている形。もっとも、その飼い主たちは(家庭事情複雑ながらも)ごくごく普通の一般人で、どこにでもありそうな日常のなかであっても読み手の琴線触れる《機微》を施せるかが著者の手腕試されるところ。結論から言ってしまうと、―――これは、良作!と素直に称えられるクオリティーが本作にはある。病弱な弟、才色兼備な姉。二人が視点人物なわけだが、それぞれが読み手にそれとなく先入観を与え、覆していくカタルシスはデビュー作らしくない洗練されたもので、チョイ役の小川君に「じゃあ今日はみんなお隣さんですね」とまとめさせるトリッキーな演出も含め、著者の次作へ誘う魅力を備えている。作中のハイライトは、デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末。上述の通り、植え付けられた先入観を覆し、明かされ、解かれる感情はエンタメ的に仕上げられているが、《文学》的演出。サプライズ的に楽しめます。

第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

category: あ行の作家

tag: OPEN 78点 飛鳥井千砂 小説すばる新人賞

[edit]

page top