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第21回電撃小説大賞 大賞:ひとつ海のパラスアテナ/鳩島すた

ひとつ海のパラスアテナ
(あらすじ)
世界の全てを二つの青が覆う時代「アフター」。14歳のアキは愛船パラス号で大海を渡り荷物を届ける『メッセンジャー』として暮らしていた。ある日、アキは航行中に恐るべき『白い嵐』に遭遇、船を失って浮島に取り残されてしまう。そこは、見渡す限り青い海が広がる孤立無援の島だった。

answer.――― 73 点
物語は14歳の少年(?)アキがペットのカエルとともに嵐によって遭難、無人の浮島に漂着するところから幕を上げる。そして、そんな過酷な第1章はペットを食料にして生き抜いたところで終わる。―――と、いきなりネタバレさせて頂いたが、これは本作を読了するための私の勝手な配慮である。読むも退屈で「あー、こりゃダメだ」と放り捨てたくなる第1章は名著『ロビンソン漂流記』の出来損ないでしかないが、盟友となる第二のヒロイン・タカと漂流する第2章以降は目くるめく海路を往く。どこまでも広がる海、ビフォアと呼ばれる文明の名残り、工夫凝らされた海生物、溢れる格言&造語……と、序盤こそ著者のオリジナリティへの拘りに忌避感を持ってしまうが、性格対照的なアキ&タカの陽性なやり取り、諍いを通してそれらは緩和され、イベントの解決とともに新たな設定の紹介を待ち望むようになる。巷で言及されているように百合と解る百合モノであるにもかかわらず、百合特有の過剰演出が無いのは《適性》ない読み手には有難いところ。こうなってくると、先の展開を読んで《初恋》のイベントが待ち遠しくなる。個人的ハイライトは、第二章「あるフッカーの漂流」でのゴミザメ用いた脱出劇。ここでの「そして今は十割が海。この世界はもう何度も終わっているのよ」というファンタジーは第1章での失地を回復させ、ゴミザメとともに動き出す船の姿には著者を書き手として信頼に足る人物と安心させてくれるだろう。返す返すも、第1章の遅々としたサバイバル劇は拙く勿体無いものの、読み終わってみれば爽快な海洋冒険譚。良質なライトノベルです。

第21回電撃小説大賞 大賞:ひとつ海のパラスアテナ/鳩島すた

category: は行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 70点 鳩島すた

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