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第13回ファンタジア大賞 努力賞:Varofess I -ヴァロフェス-/和田賢一

ヴァロフェス (207x290)
(あらすじ)
彼は、誰のことも愛さない。彼を、誰も愛しはしない。真黒き忌み鳥、鴉の顔を持って、彼は生まれた。黒衣のヴァロフェス。一国の王子でありながら、その呪われた姿のためにヴァロフェスは母と祖国と、彼が心を許したただひとりの少女を失った。悲劇のすべては、絶望の始まりは、魔術師マクバの陰謀。そして、ヴァロフェスには、―――復讐が残された。

answer.――― 62 点
“復讐”という単純明快な目的を持つ主人公ヴァロフェスの物語。まず目に入るアレンジはその造形で、鴉の顔を持つ、という醜いアヒルの子ならぬ醜いアンチヒーローな出で立ち。当然、孤独であり、その横にいるのはお喋りな木偶人形オルタンのみ。しかし、“復讐”のキッカケとなった愛する女性と似た少女と出会い、……と、ここまで書けば、後はお分りでしょう。「先」が読めることの是非(& more!)はこの「Varofess」シリーズが二巻で打ち切りになった事実で察せられるとして、しかし、作中で拾ってあげたいところはヴァロフェスの仇敵マクバの存在感。漫画『ベルセルク』のゴッドハンドを想起させる遠謀深慮の怪物的人物で、己、そして、終盤に明かされる、崇め奉る「王子」ヴァロフェスでさえ矮小な存在であると嘯く場面は圧倒されること必至。作中世界の構築は上等の部類に入るだろう。エピローグも決して晴らさず、仄暗いままのto be continuedな形に仕上げていて好感を抱いた。……売れる!とは間違っても思えないが、まさしく努力賞を与えたくなる一作。繰り返すけど、マクバ、良い(゚∀゚)bグッジョブ!

第13回ファンタジア大賞 努力賞:Varofess I -ヴァロフェス-/和田賢一

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 60点 和田賢一 ファンタジア大賞努力賞

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第16回ファンタジア大賞 準入選:トウヤのホムラ/小泉八束

トウヤノホムラ (206x290)
序章
第一章 炎をはじまり
第二章 FIRST MISSION
第三章 反目
第四章 水面は揺れる
第五章 トウヤのモムラ
終章

answer.――― 65 点
船津東哉は“神”である。―――というあらすじのリード文から察せられる内容の通りの伝奇アクション。物語は、社に10年監禁されていた主人公・船津東哉が従妹より解放され、報復の誓いを内に刻みながら、目の前の危機へ備えるストーリーライン。一読して、語彙豊富、ライトノベルの“華”である戦闘描写も達者な筆力が魅力的。ファンタジア大賞は時流への対応がイマサンながら、この時期の受賞作は総じて筆力が高い印象がある。本作もその印象を証明してくれるように、(著者が)描きたいことを描ける筆が確認出来た。しかし1ブロックそのままの《説明》も散見され、著者(&作品)にとって必要でも……という贅肉は明確なマイナス項目。読ませられる自信があったのだろうが、目新しさのない《説明》は次の頁をめくる意欲を削ぐ。著者に必要だったのは、エンターテイメントへの謙虚さだろう。06~07年というと、奈須きのこ&moreの影響を受けた新伝綺な作風が蔓延し、本作のような凄惨な描写もない、真っ当過ぎる作品はもはや論外に追いやられていたと思う。己の断筆を賭けて《面白さ》を突き詰めれば、このような仕上がりにならなかったはずだ。それでも、作品としての仕上がりは「買える」ところ。次作があるなら断筆を賭けた、渾身のエンターテイメント作品を創ってくださいな。

第16回ファンタジア大賞 準入選:トウヤのホムラ/小泉八束

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 小泉八束

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第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

太陽戦士サンササン (205x290)
(あらすじ)
「太陽戦士サンササン、降臨ッ!」来間鉄斎が出会ったのは族メットに憑依した自称・異世界の勇者ジャバだった。彼は伝説の勇者となるため、自分を装着することを鉄斎に強要する。鉄斎は全面拒絶するが……!?

answer.――― 66 点
ライトノベルには《イラスト》があり、そして、一部(以上)の人にとってそれは紛れもない本編冒頭よりも大事な「顔」となっている。さて、本作の表紙をご覧あれ。ホットパンツの女の子はとりあえず可としても、その横にいるのは髑髏マーク入りの族メットをかぶった、何ともダサい……はいっ、(負けの方向で)勝負あり!である。がしかし、実際に読んでみれば、族メットに異世界から勇者が転生するという間抜けな設定ながら、まさかの真っ当に「熱い」ヒーローものであることに驚くだろう。そして、語彙豊富、描写力もあって真っ当に「巧い」と来たら、もはや苦笑いするしかない迷作決定である。詰まる/詰まらないで云えば、詰まる作品なのだが、……如何せん、《読みたい》と思わせる設定で描かなかったのが最大の敗因。テツ、ジャバ、詩菜、麻琴の主要登場人物は勿論、ラストでは敵方ニカ・カジにまで華を持たせようとする姿勢も意欲的。書き手としての実力は認めたいところなので、読み手にもっと真面目に寄り添ってみましょう。仮に「売れない」ままだったら、《売れ線》を真面目に研究していないだけなので同情の余地も無し。

第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 坂照鉄平 ファンタジア大賞準入選(金賞)

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このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

この素晴らしい世界に祝福を (203x290)
(あらすじ)
ゲームを愛する引き籠もり少年・佐藤和真の人生は、あっけなく幕を閉じたはずだったが、目を覚ますと目の前に女神と名乗る美少女が。「異世界に行かない?一つだけ好きな物を持っていっていいわよ」「じゃあ、あんたで」ここから異世界に転生したカズマの大冒険が始まる―――と思いきや、衣食住を得るための労働が始まる!

answer.――― 69 点
目下、ここで人気を得れば“とりあえず……”の売上を約束されるウェブサイト「小説家になろう」発、例によっての“異世界転生”を題材とした一作。本作の主人公・佐藤和真は《引きこもりでニート》、そこから何とも間抜けな事故で現実から退場――転生の場で小馬鹿にしてくれた女神アクアを道連れに、新たな冒険人生を始めるストーリーライン。一読して、コストパフォーマンスの高さに目を瞠らせてもらった。文章をこね回すことなく、高飛車お馬鹿な女神、中二病全開のロリ魔女、超ドM変態の女騎士といったキャラクターを配し、無能で常識的な主人公に呆れ、キレさせていくテンポの良さ―――解かり易さは、これぞ、“ライト”ノベル!と云える即席の享楽を堪能出来る。序盤早々に披露される、生活費稼ぐための「ジャイアントトード五匹討伐」なんて課題は、生粋のライトノベラーならばそのフレーズを見ただけで、著者の“活躍”を確信するのではないだろうか。如何せん、中身は無い。しかし、これは著者自身が楽しんでいないと書けない代物であり、それはコミカル路線歩む作品が世に羽ばたく上でもっとも重要で、もっとも維持難しい大事な核だ。シリーズ累計300万部超えも納得の“パーティー”ラノベ。何も考えず、ただただ作品世界に埋没したいライトノベラーにこそお薦め出来ます。

このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 暁なつめ このライトノベルがすごい!

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第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

殺戮のマトリクスエッジ (203x290)
序章
第一章 少年と少女
第二章 少女と少年
第三章 獣
補章

answer.――― 68 点
時代は西暦20××年、舞台は東京湾上に建設された次世代型積層都市トーキョー・ルルイエと置いたサイバーパンクアクション。電脳ネット上に現れる《ホラー》なる怪物を単独で狩り続ける主人公がある日、謎の少女と出会い、救ったことから始まるストーリーライン。ジャンルがジャンルだけに「説明」処理が著者の手腕試される試金石なわけだが、かのライアーソフトの主力シナリオライターだけにその辺りは如才なく仕上げているのが好感。序盤も序盤から現れる都市伝説《ホラー》をあえて謎のまま、作品世界の根幹である電脳ネットもことさら詳しく言及せず、謎のBoy Meets 謎のGirlを推し進める様はまさに大胆不敵。そうして、誰しも読み疲れる中盤での作中世界の「説明」処理―――ある種の匠を堪能出来るだろう。しかしながら、パッと読んでオリジナリティ溢れていそうでも、いざ読んでみれば……な既視感ある設定、ストーリー展開は残念と言えば残念なところ。著者自身が本作にたとえば絶筆の想いを込めれば「化けた」のでは?書けたから書いた、みたいな仕事感が本作に垣間見える。個人的に《ホラー》というシンプルなネーミングの謎の敵から、第12回電撃小説大賞《金賞》受賞作『哀しみキメラ』を思い出した。こちらは《モノ》なので、対比してみればセンスの差を感じられると思う(笑)何にせよ、「そこそこ」な一作。

第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 桜井光 ラノベ好き書店員大賞

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第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

八月の青い蝶
(あらすじ)
急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学生のときに被爆していた。大日本帝国陸軍偵察機パイロットのひとり息子であった彼は、当時、広島市内に住んでいたのだ。妻と娘は、亮輔が大事にしている仏壇で、異様に古びた標本箱を発見する。そこには、前翅の一部が欠けた小さな青い蝶がピンでとめられていた。

answer.――― 65 点
「原爆」題材の振り返りモノ。と紹介されるだけで読む気を削がれる方もいらっしゃると思うが、かく云う私はその該当者の一人。この手の題材に触れる度に自分が読書に求めているのは結局、娯楽なのだと再確認させられるわけだが、実際、本作もWW2――リトルボーイによって引き裂かれた思春期がメインのストーリーライン。表題『八月の青い蝶』とあるように、「蝶」をキーワードにして父親の愛人へ「美貌」「儚さ」といった憧憬を重ねる演出。個人的に目を惹いたのは、愛人・希恵の昆虫学者の父の視線を《視姦》と喩えた点。《愛を分かちあってともに幸福になろうとも思わない愛。それが視姦する者のまなざし。残酷なまなざし。》なる言及は、成る程、と淡泊な感性を刺激してくれた。また、終盤も終盤に《何故、原爆を落とされて謝らねばならない!?》という日本人が忘れてはならない正論が繰り出されるのは痛快の一言。この部分は是非ともTeenagerに読んで頂きたいところ。が、やはり良くも悪くも、「原爆」題材の振り返りモノ。という範疇の作品であるのは間違いない。

第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 周防柳 小説すばる新人賞

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

赤と白 (206x290)
(あらすじ)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく。

answer.――― 69 点
雪国・新潟を舞台に、ボタンの掛け違えから女性特有の共同感覚的な友情が崩れ、バッドエンドへと突き進んでいく本作『赤と白』。失望、嫉妬、背徳……と、登場人物たちがそれぞれの形で抱く疑心は堂に入ったもので、そこへ過食症、ストーキングといった狂気垣間見させる設定をつけ、読み手へ何かが起こる予感(不安)をしっかりと与えてくれる。著者のデビュー作であり、シリーズにもなっている『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているように、上述の予感は《ホラー》のそれに近い。もっとも、本作のエンタメの核は《人間関係の歪み》といったところだが、読み手にどんな感想を抱かせたかったのかが曖昧なのが残念なところ。用意したキャラクター、イベントは相応だったと思うが、《人間》へ迫りたかったのだとしたら大味過ぎる。ついでに、大衆小説でそこを目指してしまうと、退屈へ到ってしまう。本作に足りないのは、ズバリHero(Heroine)。それを確立させるだけで「あーあ……」で終わってしまう結末にあっても、意志ある何者かがスタートを切ったことでしょう。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 櫛木理宇 小説すばる新人賞

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第22回小説すばる新人賞 受賞作:桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

桐島 (216x290)
(あらすじ)
映画化大ヒット青春小説!バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。

answer.――― 60 点
朝井リョウというと遊び心くすぐられる名タイトルな本作『桐島、部活やめるってよ』が代名詞となっていると思うが、個人的にはいつだったか情報番組『王様のブランチ』での和田竜、中村文則、川上未映子、西加奈子、そして、朝井リョウという旬な作家たちを集めての座談会での放言の数々を思い出す。その放言がどんなものだったかは各自調べて頂きたいが、私が一番興味を惹かれたのは「色んな評価体系が全部自分に来たら凄く良くないですか?」という世界の中心で「朝井リョウ!」と叫ぶ自信である。一点の曇りもなく、朝井リョウは自分が《面白い》作品を作っていると思っている。事実、彼は本作で小説すばる新人賞、『何者』で直木三十五賞、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞と受賞し続け、ベストセラーを世に出し続けている。この《結果》を考えれば、彼は間違いなく《面白い》作品を作っている……わけだが、果たして、彼は本当に《面白い》作品を作れているのだろうか?《結果》は麻薬だ。《結果》を出してしまうと、自己否定出来なくなってしまう。徐々に下がる売上をどう受け止める?突如としてまったく売れなくなったとき、どういう結論に辿り着ける?「俺は面白い!」―――そんな 無意識下の『前提』が、いつの間にか着せられていた道化の衣装をいつまでも脱がせてくれなくなる。本作は表題通りのイベントをキッカケに揺れ動く高校生たちをそれぞれの視点で描く。肝心の桐島が本編中で視点を持っていないのが実験的と云えば実験的な仕掛け。朝井リョウが大学在学中に投稿した事実から分かるように、当時代の思春期迎えた若者(たち)の現在、そして、感性をダイレクトに触れられる(た)のが本作最大の見所。たとえば「チャットモンチー」をファッションな《記号》として扱っているのは個人的に興味深かった。何にせよ、生もの的な作品。朝井リョウは作品そのものより作家という《人間》、観察対象として追っていきたい作家の一人です。

第22回小説すばる新人賞 受賞作:桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 朝井リョウ 小説すばる新人賞

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このライトノベルがすごい!(2016年版) 9位:冴えない彼女の育てかた/丸戸史明

冴えない彼女の育てかた (207x290)
アニメのBD購入費用を得るためにアルバイト中の高校生・安芸倫也は、桜の舞う坂道で出会った少女に興味を抱き、彼女をメインヒロインにした同人ゲームの作成を思いつく。筋金入りのオタクだがイラストもシナリオも書けない倫也は、果たしてゲームを作り上げることが出来るのか!?

answer.――― 67 点
私の思春期ど真ん中の最中に投下されたのはゲーム「RPGツクール」によるコンテスト、『アスキーエンタテインメントソフトウェアコンテスト』。1000万円を狙え!というキャッチそのままの、まさに子供騙し!もはや投資詐欺!な販促商法によって、私の周りのオタク予備軍はこぞって購入、例によって作り上げられず、そんな話は無かった!ことになったのは思い出の断片だが、賞金にこそ興味無かったが、何かを創る、ということに珍しく好奇心をくすぐられた私も同ゲームを購入、競馬の血統に基づいてキャラクターを街に配置する、という我ながら何が面白いのか詳細不明のゲームを制作したのは歴然とした黒歴史である。前置きはこれくらいに、イラストもシナリオも描けない主人公が仲間たちと美少女ゲームを制作する、というストーリーラインの本作。一読して、著者の本業がゲームシナリオライターというのも納得の、独特の「間」が目立つ印象。これは個人の趣向なので無視して頂きたいが、シナリオライターは「(文字を)読ませる」技巧よりも「展開(構成)」的技巧に重きを置いているため―――そして、知らず絵(画)がある前提で筆を執っているため、「間」に違和感を覚えてしまう。そのため、作品と呼吸が合わず、読み止めてしまうことが私には間々ある。本作もその類だった。故に一応は読了したものの、感想らしい感想は浮かばず。ただ、上述通り、《イラストもシナリオも描けない》というハンデを持つ主人公が女の子たちと情熱的にゲーム制作するのだから、心の隅でクリエイターに焦がれる読み手はいつぞやの私のように好奇心をきっとくすぐられるだろう。作り手にまだ回っていない人のほうが楽しめるのではないでしょうか。あ、(メインヒロインに)キャラクターがない、と指摘(&改善を要求)するアプローチは実験的に思えて好感を抱きました。ちょっと《文学》的だね。

このライトノベルがすごい!(2016年版) 9位:冴えない彼女の育てかた/丸戸史明

category: ま行の作家

tag: OPEN 60点 丸戸史明 このライトノベルがすごい!

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第19回小説すばる新人賞 受賞作:でかい月だな/水森サトリ

でかい月だな (198x290)
(あらすじ)
満月の夜、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」。命は助かったが、右足に大怪我を負う。そんな「ぼく」の前に、二人の変人——科学オタク・中川と邪眼を持つオカルト少女・かごめ、そして「やつら」が現れる。

answer.――― 63 点
満月の夜、理由も分からないまま、友人に崖から蹴り落とされた「ぼく」は、日常生活はともかく、大好きなバスケットボールが出来ない身体となって―――と、欠けてしまった故に「得る」、主人公の心の成長を描いていく成長譚なのかと思いきや、まさかのSFへ駆け上がっていく本作『でかい月だな』。一読しての印象は、「雑」の一言。蹴り落とした友人を保留気味に庇いつつ、周囲の無用にも思える憐憫に苛立ちを覚えるティーンな葛藤から、IQ高い変人、邪眼使いの少女とつるんでいく展開は自然と云えば自然だが、読み手自身がその場に居たい(参加したい)と思わせる演出が乏しいのが残念。理科準備室のビーカーで紅茶を淹れるなりは良質なジュブナイルを感じるものの、その手の工夫は施し過ぎるということはない。もっと仕掛けるべきだったろう。「やさしさブーム」からのSF展開は面食らうものの、それが作品に貢献しているか問われれば疑問を呈さざるを得ない。著者の意気込みと作家としての力量が噛み合っていない作品。まあ、デビュー作らしいと云えばデビュー作らしい。

第19回小説すばる新人賞 受賞作:でかい月だな/水森サトリ

category: ま行の作家

tag: OPEN 60点 水森サトリ 小説すばる新人賞

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第8回小説すばる新人賞 受賞作:バーバーの肖像/早乙女朋子

バーバーの肖像
(あらすじ)
「あのころ、バーバーの手のぬくもりだけが救いだった」 別れを告げてきた少女期の夢のかけらたちのレクイエム。悲しい少女期、愛と癒しの物語。

answer.――― 65 点
足長おじさんの正体は!?的ストリーラインの本作『バーバーの肖像』。基本的に回想する形で、読み手―――そして、ヒロイン自身の複雑な家庭事情を解き明かしていく。その謎の中心人物は表題にも採用されている『バーバー』。己の思春期を支えた「謎」の人物を探るときに問われるのは、(今後の人生への教唆&示唆的エピソードを用意するのは大前提として)実際の経歴を上下、どちらに振るのかということ。多くの場合、「上」にして(……あ、あの人が!)的にするものだが、本作の場合は「下」に振る。結論として、その試みは可もなく不可もなく……と言ったところなので、派手さに欠ける分、半ば失敗だろう。文章はソツなく、ツンとうがったヒロインを描けているので、『バーバー』のクオリティ次第でもっと楽しめる作品になっていたと思う。いっそ、『バーバー』は複数人いても良かったんじゃねえかな?

第8回小説すばる新人賞 受賞作:バーバーの肖像/早乙女朋子

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 早乙女朋子 小説すばる新人賞

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第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚

プリズムの夏 (204x290)
(あらすじ)
海辺の町。高校生のぼく・植野と親友の話題は、寂れた映画館の美しく無愛想な受付嬢・松下菜那のことだった。憧れと現実、情熱と挫折、そして……。

answer.――― 66 点
高校生二人が恋した映画館の受付嬢は、《メンヘラ》だった!という雑な紹介ではコメディになってしまうが、概要としてはまったく間違っていない本作『プリズムの夏』。コメディでなければ何なのかといえば、このままでは自殺しかねない初恋の人を二人で一生懸命「助け」に向かう、真っ当にシリアスな青春譚。しかし今現在に目を通してしまうと、やはりコメディとして扱いたくなるのは、出版から十余年を経て、《メンヘラ》なるネットスラングが定着してしまったからだろう。そう、受付嬢は鬱屈とした日々、投げやりな日々をウェブで綴っているのである。それを偶然閲覧&観察し、二人は仲違いしつつも駆け出すのだ。私生活を公開することが当たり前になり始めた頃―――それを捉えた、ある種の先駆け的な作品としての価値が第15回小説すばる新人賞受賞という評価に繋がったのだと思う。そんなドキュメント性に《文学》を見い出してみても良いのではないでしょうか?なお、鬱な女子をお望みならば、王道で古井由吉の『杳子・妻隠』収録の「杳子」を未読の方は押さえておきましょう。杳子を鬱な女子の基準にすると、質の高低の精度が高くなると思います。

第15回小説すばる新人賞 受賞作:プリズムの夏/関口尚

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 関口尚 小説すばる新人賞

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第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一

8年 (200x290)
(あらすじ)
30歳すぎの元オリンピック出場投手が大リーグへ挑戦! 自分の夢を実現するため、チャレンジする男の生き様を描くスポーツ小説の白眉。

answer.――― 64 点
第13回小説すばる新人賞受賞した「野球」題材のスポーツ小説。五輪での活躍からプロ入りを期待されながら結局はプロ入りせず、しかし33歳となって突然海を渡ってメジャーへと挑むピッチャーを軸に物語を展開する。もっとも一から十まで野球一辺倒なのかと云えばそうではなく、球団運営――マネーボール的視点が挿し込まれているのがセールスポイント。雑感として、やはり「旧い」印象。「マネーボール」という切り口は出版当時は鮮度があったのだろうことを察せるものの、今や「マネーボール」当事者がよりVividに現状を出版して語っているために(極)薄味にしか映らない。そのため、エンターテイメント観点だと「オールドルーキー」の要素に期待をするしかないが、野球部分の面白味よりも「何故、彼は突然、……」という背景明かしに傾斜、内容もまた暗いために頁をめくりたくならない。作品としてはラスト、単なる野球好きが「不正を正す!」様を楽しめるくらいなので、ある種の《先駆け》だった事実を確認したい奇特な方のみお読みください。

第13回小説すばる新人賞 受賞作:8年/堂場瞬一

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 堂場瞬一 小説すばる新人賞

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第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

パンの鳴る海、緋の舞う空
(あらすじ)
心に傷を抱えた男女の、切なく激情的な恋。恋人に失踪されたマヤは、愛することができなくなっていた。だが、友達募集の新聞広告でグレゴリーと出会って……熱情に揺れる南国の恋物語。

answer.――― 60 点
ブログ、そのプロフィールを開けば「作家」「イラストレーター」「翻訳家」と自らを紹介するように、多方面で活躍中の野中ともその《小説家》としてのデビュー作。その概要は、ニューヨークを舞台に、トリニダード・トバゴで再会を誓った男女の恋の行く末。一読してストーリーに必要な描写が少なく、本作が登場人物を含めた作品世界の《お洒落さ》に重点を置いているのが分かる。その点で先日の『恋人といっしょになるでしょう』とセールスポイントが近似と云えるが、同作が主人公「自身(趣味)」に《お洒落》を施していくのとは対照的に、本作は登場人物「自身」ではなく、その「周囲(環境)」に《お洒落》の焦点を当てていくのが特徴。舞台はニューヨーク、約束の地はトリニダード・トバゴ、黒人、日本人、クラブ、パーティー、スティール・パン―――そんな具合である。正味、(……都会の孤独は哀しいぜ、ベイベー)といった陶酔的な《お洒落さ》を求める心境でないと読み物としては退屈で、読み手を確実に選ぶ作品。個人的に、著者にはイラストレーターとしての才覚のほうが世間的な需要がある気がするが、その方面の方からすれば、著者は作家業のほうが向いているように見えるのか気になるところです。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 野中ともそ 小説すばる新人賞

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第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

走るジイサン_0001 (194x290)
(あらすじ)
単調な毎日を送っていた作治。だが、同居する嫁に疼くような愛しさを覚えた頃から、頭上に猿があらわれて……。老いの哀しみと滑稽さを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 66 点
ある日、突然、頭に猿が乗っていた―――というシュールな設定で描かれる枯れた人生、その周りの若人たちの悩み。詰まる/詰まらないという評価軸で判断してしまうと、決して詰まるほうの内容ではないのは、あらすじからも察せるところ。本作の読みどころは、本作出版時点で五十路に差し掛かろうとしていた著者の視点。それは息子の嫁に仄かな劣情を抱いたり、己の職業経験から相手の隠れた心情を察するなど、エンタメとして描かれること少ない「枯れた」視点である。鋳物職人であった主人公の、明ちゃんの絵に用いられた「赤」の変化を静かに見抜く場面は、「老人」設定を生かした象徴的な演出。この手の場面をもっと増やせれば、「枯れた」視点も捨てたものでもないのが解る……が、如何せん、その手の演出は少ないので、積極的に推せません。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 池永陽 小説すばる新人賞

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第8回小説すばる新人賞 受賞作:英文科AトゥZ/武谷牧子

英文科AトゥZ
(あらすじ)
大学英文科を舞台に、若く美しい志村麻美と文芸評論家・蓬田健のロマンスを、教授会の戯画的世界に描く。英単語に秘められた意外なストーリーとは?

answer.――― 65 点
貴方は「論文」を読んだことがあるだろうか?そして、書いたことがあるだろうか?大学全入時代なんて揶揄されている御時世なので、多くの方がどちらも経験あるだろうが、―――先に、本作のハイライトをご紹介。作中中盤、英文科のヘミングウェイの講読場面である。ここで披露される『二つの心臓の大きな川(Big Two-Hearted River)』への考察は、その正否はともかく、「論文」なるもの(の輪郭)に触れる良質な機会を与えてくれる。何せ、「書かれていない部分」に言及するのだ。《文学》の素養のない人にとって、そのアプローチは清新で、目から鱗となるだろう。「論文」をよく理解しないまま見様見真似で筆を執っても、採点者に文字数を確認されるのがオチだ。その意味で、大学入学前に本作に目を通すのもそう悪い話ではない。が、エンターテイメント観点で判断すれば、見逃すのが賢明だろう。本作は、イギリス帰りのヒロイン講師がポスト争いから憂鬱に浸る大学教壇の内ゲバ物語。大学教壇という舞台自体は物珍しく、興味そそられるものの、イベントに飛躍無く、実質、それだけで終わってしまう。誰に読ませるのか考えていなかった印象。“知識”で攻めちゃったね。

第8回小説すばる新人賞 受賞作:英文科AトゥZ/武谷牧子

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 武谷牧子 小説すばる新人賞

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第4回小説すばる新人賞 受賞作:涼州賦/藤水名子

涼州賦_0001 (202x290)
1.涼州賦
2.秘玉

answer.――― 69 点
唐代末期、うだつのあがらぬ三十男が武威郡県尉となって西域である涼州へ赴任するも、そこは賄賂横行する腐敗の地で―――というストーリーライン。賄賂を跳ね除け、勧善懲悪!という単純な図式かと思いきや、上述の通り、主人公である尚参は良識こそあれ、冴える頭も鎮める腕っぷしもない、いわゆる「ヘタレ」な設定。では、どうやって物語が展開していくのかと云えば、賞金稼ぎの豹狄、勝ち気な居酒屋の女将・小杏―――サブキャラクターの活躍に因る。尚参が早々に四面楚歌の状況に放り込まれるなか、二人だけが味方してくれるわけだが、中盤、終盤の活劇の敵役が二人の因縁ある「殺人、強姦、何でもござれ!」の巨漢の用心棒・史亥であるように、実質、本作の「物語」は豹狄と小杏のもので、二人が《前へ進む》ためのキッカケが尚参という部外者だったということが解かる。「王道」的な展開だけに、安易に豹狄を主人公にしなかったところに著者のセンスを感じられるだろう。個人的ハイライトは、豹狄と史亥の《強弱》の妙味。作中、強さの不等号が当事者たちの評も含めて良い意味で定まらない。悪の親玉・董公の「お前一人で、あれをやれるか、史亥?」と訊き、意気込む史亥を「いや、無理だ」と制す場面は、(……え?無理なの!?)と読み手も驚く問答。なかなか洒落ております。表題作の他、女怪盗の活躍光る「秘玉」収録。

第4回小説すばる新人賞 受賞作:涼州賦/藤水名子

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 藤水名子 小説すばる新人賞

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第22回電撃小説大賞 大賞:ただ、それだけでよかったんです/松村涼哉

ただ、それだけでよかったんです (204x290)
(あらすじ)
ある中学校で一人の男子生徒Kが自殺した。『菅原拓は悪魔です。誰も彼の言葉を信じてはいけない』という遺書を残して。Kは人気者の天才少年で、菅原拓はスクールカースト最下層の地味な生徒。なぜ、天才少年Kは自殺しなければならなかったのか。

answer.――― 68 点
経済学に「悪貨は良貨を駆逐する」という格言があるように、品質の高低において高い位置にあるものがその《基準》として採用されたとしても、必ずしもソレが絶対の基準として流通し続けるとはかぎらない。概して、均してしまえば低く流れるものだ。悪貨と謗るつもりはないが、ライトノベル界隈の事実上の最高勲章《電撃小説大賞》、その《大賞》受賞作である本作は、果たしてライトノベルなのか?イジメから自殺した天才少年の真相に迫っていくミステリーなストーリーライン。「天才」「悪魔のような中学生」というレッテルこそあれ、キャラクターらしいキャラクター性の薄い登場人物たちが《イジメ》を探っていく様は大衆小説的で、MW文庫ならまだしも電撃文庫の作品としてリリースされたことに違和感を禁じ得ない。巷の評判の通り、ひたひたと近づき、そして、近づけられてきた真相という不穏が輪郭づけられていく後半はまさしく胸くそ悪いもので、逆にそれが本作が決して質の低い作品ではない証明となる。が、本作は果たしてライトノベルなのか?踏み込めば、これがライトノベルとして扱われる必要があるのか?たとえば小説すばる新人賞でも、小学館文庫小説賞でも送り先は良かったと思う―――受賞するかはさて置き、だ。そもそも、ライトノベルとは何か?という話になると、「そんなものは決まっていない」と曖昧にすることを是とする意見を目にする。が、読み手はそれで問題ないかもしれないが、少なくとも書き手は「ライトノベルとは?」という問いへの自分なりの答えを出しておかなければならない。それが《ライトノベル作家》としての矜持になるからだ。本作が大衆小説の公募賞へ投稿されたとき、果たして受賞出来るのか?「悪貨は良貨を駆逐する」、本作は誰が読んでも「ライトノベル」と認められなければならない。

第22回電撃小説大賞 大賞:ただ、それだけでよかったんです/松村涼哉

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 60点 松村涼哉

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第21回電撃小説大賞 銀賞:銀賞:いでおろーぐ!/椎田十三

いでおろーぐ!
(あらすじ)
雪の降るクリスマス・イヴ、カップルだらけの渋谷。街の様子に僻易していた非リア充の高校生・高砂は、雑踏に向かって「恋愛を放棄せよ!すべての恋愛感情は幻想である!」と演説する少女に出会った。彼女の正体は同じクラスの目立たない少女、領家薫。演説に同調した高砂は、彼女が議長を務める“反恋愛主義青年同盟部”の活動に参加する。

answer.――― 63 点
この人の描く立ちバックからは神の姿が浮かんでくる!!と称えられるエロ漫画家・如月群真。氏の作品の特徴としてハーレムと乱交があり、それが日常に溶け込み、ごく自然に執り行われる様はまさに男がまぶたを閉じて描く妄想の世界そのものだが、読み進めてもついに立ち消えなかった本作の主人公への《気持ち悪さ》、《気色悪さ》の正体を探っているうちに、私は「あ、教室で乱交が当たり前の世界なら納得出来るわ」と本作がエロ漫画的倒錯を孕んでいることに気づいた。反恋愛主義を高らかに謳う美貌のヒロインと行動を供にする主人公の矛盾。主人公は(読み手へ)本心をどこまでも明かさない。「リア充爆発しろ!」とやさぐれながら、ネジの外れたヒロインと逢瀬を重ねる。外見や仕草に「女」をいちいち見出すが、己の好意は添えない。じゃあ、何で一緒にいるんだ?という話になるわけだが、読み手にさえ本心を隠すため、ヒロインを恋愛の対象ではなく、性欲の対象として捉えているように映ってしまう。この「恋愛」を否定するヒロインの設定ならば、主人公はヒロインへずっと片思いしているべきだろう。(ベタと言われようが)近くて遠い、そんな距離感に苛まれる姿を描くべきで、よく解からないけど(一緒にいる)……なんて有り得ない嘘は必要無い。本作、作品の構造から『涼宮ハルヒの憂鬱』をモチーフと指摘するレヴューを幾つか見掛けたが、実際、私も本作同様、主人公キョンへ尋常ならざる生理的拒否感を持ったのを鮮明に覚えている。が、クラスメイトたちがパコってる横で、ハルヒが毎日髪形を変え、不機嫌そうに机に頬杖ついていたならば「これは、SF!乱交に参加しないハルヒこそ常識人なんだ!」と驚愕を持って受け入れたと思う。とズレたが、主人公が合わなかっただけ、と結論づけられても特に否定はしない。ただ、SFとは言わないまでも、ファンタジーの要素はもっと含めても良かったと思う。『中核vs革マル』的なオマージュの薫りがする達者な台詞も、普通の学園生活では活かしきれないだろう。

第21回電撃小説大賞 銀賞:銀賞:いでおろーぐ!/椎田十三

category: さ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 椎田十三

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第20回電撃小説大賞 金賞:韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-/真代屋秀晃

韻が織り成す召喚魔法 (203x290)
プロローグ:クラスルーム・クライシス
Track01:ヒップホップ・ハイスクール
Track02:イメージダウン・ブレークダウン
Track03:プリンセス・プロデュース
Track04:ウリエルギター・ミラクルシスター
Track05:サタニックマイク・ミスティックライブ
エピロー:バスタ・リリッカーズ・イズ・マイメン

answer.――― 66 点
「ノイズを取る、このマイクバトル!」を合図にラップバトルが始まる本作は、韻が織り成す……という表題からも察せられる通り、Hip-Hopを題材にし、また、それを文体へ落とし込んだ実験的な一作。Hip-Hopを落とし込んだ文体というと、畑は違えど、モブ・ノリオの『介護入門』―――もとい芥川龍之介賞受賞、その記者会見での壮大な滑り芸を思い出してしまうが、本作では作中で実際にフリースタイルのラップバトルが展開されるため、そこまでの滑り芸となってはいない。なんて冷ややかに評したのは、やはり不良文化薫るHip-Hopの要素は、ライトノベルというジャンルにおいては需給の面で的外れな印象を拭えないからだ。著者自身それを認めて、主人公を「超」が付く真面目な生徒会長に、かのメフィストフェレスの娘をヒロインに配すなど設定面での対策を施してはいるが、根本的な解決には至っていない。Hip-Hopそれ自体がCoolとされるものなのだから、扱うならば真っ当に大衆小説として―――それこそラノベ仕様なファンタジーは排し、仕上げるべきだっただろう。著者は隙間を狙い過ぎたね。もっとも、個人的な嗜好としてはラップバトルは心躍った文章の実験場。特に新聞部の梨田の一戦はリズミカルなもので、一読に値する力作の場面。残念ながら以降のラップバトルはその一戦と比してしまうと、やや拍子抜けてしまう出来だったが、フロンティアを開拓する著者のチャレンジ精神は買ってあげて欲しいところです。

第20回電撃小説大賞 金賞:韻が織り成す召喚魔法 -バスタ・リリッカーズ-/真代屋秀晃

category: ま行の作家

tag: 電撃小説大賞金賞 OPEN 60点 真代屋秀晃

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第20回電撃小説大賞 銀賞:思春期ボーイズ×ガールズ戦争/亜紀坂圭春

思春期ボーイズ ガールズ戦争
(あらすじ)
正しく生きるのを止め、“男であり続ける”ことを誓った三人の少年がいた。彼らは女の子を知るためには、大きな力にも屈することなく立ち向かっていこうと誓ったのだった。覗きすら辞さない―――つまり、どうしようもなく思春期だった。こじらせすぎてしまった少年達と怒りの鉄槌を下そうとする女子達。思春期ボーイズ×ガールズの青い戦いの行方は!?

answer.――― 62 点
投稿時の表題が『放課後猥雑倶楽部』という事実からも察せられるように、貴方の下半身(Oh,Pocket Monster!)をストレートに狙った本作。その概要は、女尊男卑法蔓延る社会で三人の思春期ボーイズが「エロ本を創る!」という決意から困難辛苦に見舞われる、というもの。『多摩湖さんと黄鶏くん』の稿でも言及したように、ライトノベルにはエロ本としての側面があり、本作はその側面を前面へ採用してきた形。エロ本制作のために想い人のパンティーを眺めに向かい、偶然にも拾得、良心から投げ返したものの、翌日に下駄箱に何故か仕込まれていた!という陰謀めいた序盤から、女子寮務め、おトイレ目撃……と、ライトに猥雑を陳列していく展開は、ライトノベル=エロ本という認識の方にはある程度その需要に応えられている印象。ただ、……もっと過激にしても良かったのでは?と思ってしまうのは、あらすじからも了承済みのストーリーの弱さから。例えば、パンティーは履いちゃって良かったと思う。その上で主人公たちのポケモンを立ち上がらせる。そして、そこから先こそ著者の個性と覚悟、倫理規定との鍔迫り合いではないだろうか。一昔前ならばいざ知らず、表紙にヒロインがセックスアピール気味に占拠している現在で、遠慮なんて要らない。持ち物検査やらの小イベントのチョイスが良質なだけに、我慢出来ず主人公が射精してしまうような「マジかよ!?そんなことが許されるのか!?」とこちらも驚かざるを得ない演出がなかったのが残念でした。

第20回電撃小説大賞 銀賞:思春期ボーイズ×ガールズ戦争/亜紀坂圭春

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 亜紀坂圭春

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第19回電撃小説大賞 メディアワークス文庫賞:路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店/行田尚希

路地裏のあやかしたち (203x290)
1.人間の話
2.天狗の話
3.狸の話
4.猫又の話
5.狐の話

answer.――― 69 点
「職業」「職人」のような現実社会に根ざした1テーマにスポットを当てると、キャラクターではなく、人と面と接するかの如く《知識》挿され、自ずと大衆小説の匂いをまとうものだ。年重ねるライトノベラー、そして、隙あらばライトノベルのコーナーに寄りつかない層を取り込むべく創設されたMW文庫。そこへ配属された本作は掛け軸、屏風等を扱う『表具師』を題材にしたライトノベル。5つの短編連作で、各章の表題で察せるように表具に「妖怪」というファンタジーを絡めるのがエンターテイメントとしての味付けとなっている。全体の印象を述べれば、無難、その一言に尽きる。1章「人間の話」を読めば、以降はゲストキャラクター、表具を変えただけの金太郎飴的展開で、5章「狐の話」でようやく変化をつけてくるが、時すでに遅し。「悪くはないけど、……」と語尾濁され、イマイチの烙印を押されてしまうことだろう。金太郎飴と切ったが、《怪異(表具)が持ち込まれる→解決》という展開自体が悪いわけではなく、根本の問題は「主人公がどの章でも傍観的」なことにある。これを改善するだけで金太郎飴の印象は払拭されるが、果たして著者は気づける―――もとい、気づけたかな?文章含めソツのない仕事っぷりに伸びしろを感じるので、ここは絶筆するつもりで入魂の一作を創って頂きたい。結婚詐欺師の狸は、次巻以降の化け具合が気になるキャラクターでした。

第19回電撃小説大賞 メディアワークス文庫賞:路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店/行田尚希

category: や行の作家

tag: OPEN 60点 行田尚希 メディアワークス文庫賞

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第13回本屋大賞 2位:君の膵臓をたべたい/住野よる

君の膵臓をたべたい (195x290)
(あらすじ)
偶然、僕が病院で拾った1冊の文庫本。タイトルは「共病文庫」。それはクラスメイトである山内桜良が綴っていた、秘密の日記帳だった。そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて……。

answer.――― 68 点
公募賞に出せども出せども拾われず、「この作品だけは誰かに読んでもらいたい」という著者の想いから小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿……人生の転機キタコレ!!というまさしく成り上がりの一作が本作『君の膵臓をたべたい』。そのストーリーラインは、奇縁からクラスメイト(♀)の余命が短いと知った少年がそこから二人、恋に落ちて迎える最期のその時まで。ストーリーラインの印象通り、内容それ自体は一昔前の「ケータイ小説」を想起させるもので、文章が大衆小説のソレにUpdateした形。そのため、「死にたくないよぉ」「助けてください!」「Your love forever……!」という世界の中心でお涙頂戴!が大好物な方には安心保証の出来。帯に旬な女優の「泣きながら一気に読みました。私もこれからこんな恋愛をしてみたいなって思いました」なんてたらい回しなコメントが載っても何ら違和感がない。もっとも、「本屋大賞」「ダ・ヴィンチBOOK OF THE YEAR」など販促賞にランクインしているが故の期待値を上回ることはまずないので、その辺は注意が必要だ。読了後、「君の膵臓がたべたい」というフレーズがどれくらい心に残ったかで本作の価値が量れるだろう。なお、ここまで書いておいて『世界の中心で、愛をさけぶ』はケータイ小説ではないことに気づいた。同じ括りにしてしまい、申し訳ございません(。・ ω<)ゞてへぺろ

第13回本屋大賞 2位:君の膵臓をたべたい/住野よる

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 住野よる 本屋大賞

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第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:アンシーズ - 刀侠戦姫血風録/宮沢周

アンシ―ズ (201x290)
1.抜刀
2.七七七
3.岐路
4.アンシー
5.終局

answer.――― 61 点
とりあえず、本作の核となる設定に関する台詞を抜粋してみようと思う―――「カタナとは、己の男としての力の象徴」「すなわち、抜刀とは、己の男をカタナに変えて具現化させることである」「したがって、男が抜かれた状態の体は……」「女になっちまうんだよ!」―――と。さて、私がこの設定を理解したときの顔と言えば、(´◉◞౪◟◉)である。いわゆる「男の娘」を楽しみ、愛でる(?)活劇ライトノベルと解釈させて頂いたが、果たしてソレで正しいのかは定かではない。本作の刊行からシリーズとして全3巻の着地点が示すのは、やはり、需給の問題だろう。現在ならば『バカとテストと召喚獣』の木下秀吉、『僕は友達が少ない』の楠幸村のように、脇役にその地位をサブマリン投法のように確立している例もあるが、後者では結局、実は本物の女の子でした!という設定解体が起こったように、「男の娘」は扱いが難しい。まして、ライトノベラーが憑依する主人公となると……という話。「男の娘」を主人公に採用し、《結果》を出した金字塔作品は未だ「無い」と云える。その意味で、隙間を突こうとした著者の野心には拍手を送りたいところだが、同時に、他人の作品だったとき、自分で金を出してまで買おうと思えるのか?という根本的な問いも投げたくなる。

第8回スーパーダッシュ小説新人賞 佳作:アンシーズ - 刀侠戦姫血風録/宮沢周

category: ま行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞優秀賞(佳作) OPEN 60点 宮沢周

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第11回本屋大賞 2位:昨夜のカレー、明日のパン/木皿泉

昨夜のカレー、明日のパン (198x290)
(あらすじ)
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ----7年前、25歳で死んだ一樹。遺された嫁のテツコと一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフの何気ない日々に鏤められたコトバが心をうつ連作長篇。

answer.――― 66 点
『野ブタ。をプロデュース』などで知られる脚本家・木皿泉―――和泉務と妻鹿年季子夫妻の《小説家》としてのデビュー作。その概要は、うら若い寡婦・徹子は義父と同棲しているために世間からはゴシップの的だが、そんなことは気にもせず、二人は日々をのらりくらりと生きている、というもの。夫&息子の一樹の喪失が周囲に散りばめられ、そこを埋めていくのが作品としての着地点となるが、……正味な話、十把一絡げな凡作な印象は拭えない。脚本家というのも納得の表現技巧少ない文章で、義父を「ギフ」、幼馴染を「ムムム」と呼ぶなど、《日常》を舞台にした小説としてのオーソドックスな工夫は見られるものの、だからこそ安易に映ってしまう。物語の進展で《解決》するにせよ、そんな《大事》にする仕掛けでもないだろう。ただ、ドラマ―――映像ある前提で考えてみると面白味が増す気もするので、この物語には表情演じてくれる「俳優」が画竜点睛のピースなのかもしれない。本作を“ゆるい”と称賛する向きがあるようだが、個人的には描き切れず、起伏に乏しい言葉の連なりにしか見えなかった。こういう“ゆるい”描き方をするなら、視点は人ではなく、故人と所縁のある猫や犬、鳥のような視点のほうが良かったと思う。

第11回本屋大賞 2位:昨夜のカレー、明日のパン/木皿泉

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 木皿泉 本屋大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

未完少女ラヴクラフト (202x290)
(あらすじ)
身心惰弱な少年カンナは、片思い中の女性の顔面に突如として開いた穴に吸い込まれ、異世界スウシャイへと迷い込む。そこで出会ったラヴと名乗る少女に救われたカンナは、少女が呪いによって「愛」に関する言葉を奪われていることを知る。クトゥルフ神話の祖・怪奇小説作家ラヴクラフトを美少女化!名状しがたき暗黒冒険ファンタジー。

answer.――― 69 点
《クトゥルフ神話》の創作者として著名なH・P・ラヴクラフトを美少女にして登場させ、氏の作品に関するキャラクター、町、etc...を自前のストーリーにコラージュしていく実験的な作品。この手のコラージュ作品で気になるのは、元ネタとなる作品(ここではラヴクラフトの作品群)の「読了」前提なのか否かだと思うが、余白が足りない!とばかりに挿される豆知識な脚注のお陰で、もはや一つの宇宙と化し、手を伸ばす気も失せている《クトゥルフ神話》未読者にとっては格好の予習ライトノベルとなっているのが嬉しい。当然、既読者は既読者で見解の相違を含め楽しめるだろう。難点は、一目見て解る当社比1.5倍の頁数。気弱な主人公が美少女ラヴクラフトと、化け物飛び交うコラージュな世界で「愛」を求めて驚いていく―――のは結構なのだが、やはり途中より情報過多となって集中力を削がれ、ストーリーを楽しめなくなる。この間延びな展開(場面)もコラージュの一環なのか?などと邪推してしまったのは、私だけではあるまい。クトゥルフ信者(著者)としては不満であってもコラージュを減らし、あくまで《ストーリー》がメインであって欲しかったのが正味な話。ただ、本作を読めば《クトゥルフ神話》への興味が高まるのは間違いないので、その用途でも手を伸ばす価値がある「物は試しに……」な作品。表紙のモノクロ具合は個性的でGood!黒史郎(くろしろう)と関係あるの、これ?

第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 黒史郎 ラノベ好き書店員大賞

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第3回ラノベ好き書店員大賞 9位:グラウスタンディア皇国物語①/内堀優一

グラウスタンディア皇国物語 (208x290)
序章 戦の終わりと、始まりの誓い
第一章 皇国の騎士
第二章 皇都シオニアへの帰還
第三章 狂戦士ガジェル・プリアモス
第四章 紅海の海戦
第五章 大戦の熾こり火

answer.――― 66 点
国と国が争い、その渦中の英雄を描く《軍記物》というと、ライトノベルならば旧いところで『ロードス島戦記』、新しいところで『天鏡のアルデラミン』あたりが例として挙げられると思うが、本作はHJ文庫の軍記物としてシーンへ放たれた刺客。ストーリーは国を救った少年が、時を経て青年となり、再び救国のために招聘されることから始まる。“皇国七聖”という英雄たちが作中のキーワードで、彼らは少年から老人までの一見、戦場には不似合いな手に職を持つ者たち。新たな開戦を前にかつての仲間を探し、出会い、(読み手に)紹介しつつ、目の前の多勢を撃破していく展開となっている。一読しての印象は、可もなく不可もなく、といったマイルド具合で、読み手を多分に配慮した工夫が良くも悪くも目立つ仕上がり。その工夫とは、主要登場人物の女性比率。戦記物と言えば、男、男、男と相次ぎ名のある男たちが現れるものだが、本作ではヒロインたちが「天才」主人公の周りを忙しく回る。そのため、主人公以外の男の評価が上がることなく、活躍、あるいは対峙しても、モブ以上の存在になり得ないのが厳しいところ。あとがきにて、編集者より「女性キャラクターは必須」というハードルを課された制作秘話を披露しているが、結果として要望を「形」だけで応えてしまっているのが残念。著者は軍記物のヒロインに確たる像が無いのだろう。個人的に、水野良の新シリーズ『グランクレスト戦記』(第3回ラノベ好き書店員大賞では第3位にランクイン!)と比較して、現在のライトノベラーたちがどちらの作品を支持するのか興味がある。

第3回ラノベ好き書店員大賞 9位:グラウスタンディア皇国物語①/内堀優一

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 内堀優一 ラノベ好き書店員大賞

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第2回ラノベ好き書店員大賞 1位:マグダラで眠れ/支倉凍砂

マグダラで眠れ (204x290)
(あらすじ)
錬金術師クースラは、昔なじみの錬金術師ウェランドと共に戦争の前線の町グルベッティの工房に送られることになる。グルベッティの町で、クースラたちは前任の錬金術師が謎の死を遂げたことを知る。そして辿り着いた工房では、白い修道女フェネシスが二人を待ち受けていた。

answer.――― 67 点
作家という生き物は本来的に傲慢であり、ある程度のセールスを伴うキャリアを積むと、―――己は何でも書ける!と万能ぶる。とは、森見登美彦の意欲作『ペンギンハイウェイ』のレヴューでの一文だが、その一文をそっくりそのまま貼りつけたくなる本作は、電撃文庫の00年代のドル箱『狼と香辛料』の著者・支倉凍砂が手掛けた下卑た野心丸出しの新シリーズ。そのストーリーラインは、社会不適合な錬金術師が己の夢を追う、というもの。主人公の倫理外れる思考/行動の抑制として、敬虔な修道女をヒロインに配しているのが今後のファンタジーを招く主だった仕掛け。前作で《経済》を題材にライトノベルに新風を吹かせた著者だが、本作では《錬金術》という一種の魔法に時に化学な裏付けをしつつ、中世当時の常識を披露するなど、変わらずライトノベルらしからぬ作風を貫いている。が、「……で、これ、誰に読ませたいの?」と首を傾げたくなるのが、正味な感想。性悪な錬金術師が修道少女を小馬鹿にし、心内では冷笑気味に世間&世界を説き、危機が起これば淡々と処理していく。そもそも、ほぼ何も起こらないまま(物語が見えないまま)、中盤へと進んでいくのは眉をひそめたくなる構成難。《錬金術》に対して頁の消費量が明らかに多過ぎる。しかし、だからこそダイレクトに伝わるのが「俺を見ろ!」という著者の自己主張だろう。「いいか、錬金術ってのはなー!」という御高説である。著者は見誤っている。『狼と香辛料』が多くの支持を集めたのは、《ホロが可愛かった》ことに尽きる。それが大前提にあってこそ、《経済》を題材にした物珍しさがクローズアップされたのであって、その逆ではない。本作のどこにそんな大前提を見い出せばいいのか。修道女に耳生やすなら出会ってすぐに生やせや!『狼と香辛料』が何で売れたのか、著者本人も実は解かっていなかった事実を露呈してしまった一作。人は成功すると化けの皮が剥がれる、……全ては慢心からだ。何でも書けるなんて幻想なのである。書けてしまう場合は、そこまで売れるものは作れない。

第2回ラノベ好き書店員大賞 1位:マグダラで眠れ/支倉凍砂

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 支倉凍砂 ラノベ好き書店員大賞

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このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

ノーゲーム・ノーライフ (205x290)
(あらすじ)
ニートでヒキコモリ、だがネット上では都市伝説とまで囁かれる天才ゲーマー兄妹・空と白。世界を「クソゲー」と呼ぶそんな二人は、ある日“神”を名乗る少年に異世界へと召喚される。そこは神により戦争が禁じられ、“全てがゲームで決まる”世界だった――そう、国境線さえも。

answer.――― 66 点
”全てがゲームで決まる”という異世界に召喚された天才ゲーマー兄妹が、イレギュラーなゲームに臆せず挑み、攻略していくゲームファンタジー。無職童貞、白髪赤瞳、ゲーム廃人、コミュ障、義兄妹、天才といった強烈なレッテルを貼り、傲岸不遜に作中世界を進行ならぬ侵攻していく俺TUEEEE!作品。正味な話、それ以上でもそれ以下でもない印象。イラストレーターも兼ねる著者、それこそイラスト、その独特の彩色とのパッケージがあって数ある俺TUEEEE!作品の一群から抜け出たのでしょう。読み手の需要を満たす意味での安定感として、俺タチハ狂ッテイル……!類の登場人物の振り切りは幼稚との紙一重があるので、書き手も素面では挑めないもの。本作ではその辺の躊躇が見られないので、著者は選ばれた人なのだと思いますね。自分の感性に疑問を持たず、筆の赴くまま、感性のままの、天才的作風です。このライトノベルがすごい!のみならず、第2回ラノベ好き書店員大賞にも第2位でランクイン。売レテマス(売レテマシタ)!

このライトノベルがすごい!(2014年版) 10位:ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 榎宮祐 このライトノベルがすごい! ラノベ好き書店員大賞

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第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

マイスウィートホーム
(あらすじ)
どうして私はこの人と暮らしているのだろう? 冷めきったカップルをリアルに描き、恋愛の魔力と夫婦の危うさを鮮やかに抉り出す、全男女震撼の結婚小説、ついに誕生!

answer.――― 66 点
誰しもそうだと思うが、《自分》が大好きだ。自傷癖のある方には、特にそれを強く感じる。《自分》が大好きなことは自然の摂理のようなものなのでそれ自体はまったく構わないが、他人に血を、傷を見せてまでアピールすることではないので、「―――大人になれよ、三井」と。そんなわけで「格好良く」描くこと、「格好悪く」描くこと、どちらが難しいのかといえば、甲乙つけがたいものの、あえて選ぶなら個人的には後者―――「格好悪く」描くことだと思う。中でもクズをクズとして描くことは、とりわけ難しい。仮にそれを成立させてしまえば、然るべき《報い》を与えるだけで読み手にカタルシスが生まれるからだ。冷めきった夫婦の顛末を描いた本作。夫が、稀に見るクズである。弱者に対してしか強気に出れず、口から出る言葉は誇大妄想気味な自己主張、己の非をあくまで認めない自己弁護。女にだらしなく、金も浪費する。自分の子どもさえ省みない。著者のファインプレーは、夫を遊び人らしい遊び人ではなく、塾講師という一見「まとも」そうな職からイメージ付けたことだろう。そんな夫に不満を感じつつも、生活の不安から離婚に踏み切れない妻もまた、苛つかせてくれる。このように頁をめくれば読み手に何がしかの感情の波を起こすことに成功しているので、そこは「買える」ところではあるが、それ以上のものは残念ながらないので、読了して数日で十把一絡げの作品として忘れ去られてしまうでしょう。時間を置いて書いたのか、時折り、たどたどしい筆もマイナスな印象。

第9回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 富谷千夏 小説新潮長編小説新人賞

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