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第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

ファイティング寿限無 (201x290)
(あらすじ)
落語家が突然にボクシングを始めた。きっかけはケンカ。オレにはファイターの素質があったのか!?師匠の言葉「売れるためには、まず有名になること」を信じて、一人前の芸人になるためにチャンピオンを目指す日々。落語の楽しさと、スポーツの爽快さにあふれた青春小説の傑作。

answer.――― 80 点
売れない落語家が落語で生きていくために「ボクシング」を始めるというストーリーライン。ボクシングを題材にした小説というと、パッと思いついたところで、吉村昭の『鉄橋』と百田尚樹の『ボックス!』が浮かんだが、前者は轢死したボクサーの謎に多視点から迫る文学(的)作品なので、比較するなら《真っ当に》ボクシングを描いた後者だろう。そう、要所でボクシングの試合自体は相応に描いていているものの、本作がボクシングらしいボクシング小説かというと、やはり違うだろう。本作のエンターテイメントの核は主人公の師匠の言「落語家として売れるためにはまず有名になれ」。これを愚直に実践して、あくまで落語家として成り上がっていく主人公の様を楽しむ作品だ。ボクシングを最優先にしない態度、戦った相手へのリスペクトと一種の生き様を見せつけられるわけだが、そんな展開のなかでの「ぃよっ、職人芸!」と唸らせられたアレンジは、成り上がり話では定番の、調子に乗って―――な場面の不採用。これは、天賦発揮して昇り詰めていくボクサーの自分は仮初めであり、落語家として大成したい自分を自覚している主人公故に、当然と言えば当然の演出選択なのだが、案外と見落としてしまうもの。コンセプトの徹底は、それだけで価値がある。一本筋の通った、変則的なボクシング小説。師匠との別れも感動的でした。典型的な隠れた(?)良作でしょう。

第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

category: た行の作家

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第21回小説すばる新人賞 受賞作:魚神/千早茜

魚神 (203x290)
(あらすじ)
夢喰いの獏、雷魚などの伝説が残る遊郭栄える島で、本土を追われた人々は自治組織を作り、独自の文化を営んでいる。この島で捨て子の姉弟として育った白亜とスケキヨ。一方は遊女として、一方は男娼として、悲運のままに堕ちていく二人が迎える結末とは……。

answer.――― 83 点
ヤンチャな思春期を過ごした従兄がいるのだが、イジメがエスカレートしてバットで撲殺してしまった、とある少年事件を見て「素手で喧嘩したことねえんじゃねえの?」とつぶやき、その心を訊いてみると「殴ると痛いんだよ、自分の拳も」と返され、「殴り過ぎでしょ!」「だから、(次は)その前に止めるだろ」「ああ、なるほど」と頓智をかけられた気分に陥った記憶があるが、体験から得られる事実が世の中にはごまんとあるもの。本作は第21回小説すばる新人賞、第37回泉鏡花文学賞のW受賞を果たした千早茜のデビュー作。その概要は、娼館溢れる島で「売られる」ために育てられた美しい姉弟・白亜とスケキヨの、島の伝承交えたファンタジックな顛末。一読して実にセンチメンタル、感傷的な印象を受けた。女にしか書けない―――転じて、女になってみないと書けない文章があると思うが、著者の筆はまさにそれで、後に連作短編集『あとかた』で島清恋愛文学賞を受賞するところからもそれは裏付けられるだろう。「女になってみないと書けない」―――これの意味するところは不合理、不条理といった内容を含めた諦観にも似た《停滞》が現れ、文章として刻まれることだと思う。それは内省的で、《動く》こと=進展することが《面白い》と感じるエンターテイメントの本質からすると退屈と隣り合わせの厄介な代物だが、著者は《停滞》を《耽美》へと昇華し、エンターテイメントとして成立させているのが素晴らしい。作中のハイライトは、島の用心棒・蓮沼が童女ハナへ包丁突き刺し教育する場面を挙げたい。上述の《停滞》と相反する、作中でも指折りの《動く》場面ながら、酷薄な世界観を同質に表現した著者のセンスが光る。また、作中、白亜が涙を流す場面があるが、そこに神秘を見い出せるのも注目したいところ。これこそ、男には描けないだろう。『魚神』という世界を覗く一冊。『物語』をある種必要としない、希少な筆を著者は持っている。デビュー作として大変秀逸なので、【推薦】させて頂きます。

第21回小説すばる新人賞 受賞作:魚神/千早茜  【推薦】

category: た行の作家

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第20回小説すばる新人賞 受賞作:桃山ビート・トライブ/天野純希

桃山ビート・トライブ (202x290)
(あらすじ)
時代は安土桃山。偶然三味線を手に入れた悪童の藤次郎、笛役者になるため家を飛び出した小平太、太鼓叩きを趣味とする元奴隷の弥介、天性の踊り子ちほの4人が、型破りな演奏で、権力や身分によって押さえつけられた世の人々を惹きつけていく戦国ストーリー。

answer.――― 83 点
サムライ・ギタリストと紹介されるMIYAVIをご存知だろうか?ヴィジュアル系らしい女形の容貌にパーカシッヴなギター奏法が特徴のギタリストで、『SAMURAI SESSIONS』と銘打った他アーティストとのコラボレーション・シリーズをあざとくリリースするなど、なかなかの歌舞伎者である。さて、安土桃山時代を舞台にした本作『桃山ビート・トライブ』―――三味線速弾く中心人物の藤次郎は、そのMIYAVI本人も「ビックリするくらい似てました(笑)」と認める、読み手の耳目惹く跳ね返りっぷり。作品の概要としては、戦国時代、傾奇者たちでRock 'n' Roll!石田三成がナンボのもんじゃない!といったところなのだが、兎にも角にも、藤次郎をはじめキャラクターかぶらない傾奇者を揃えてくるのが素晴らしい。個人的に膝を打ったのが、「黒人」弥介の採用。彼が太鼓を叩くわけだが、その説得力たるや理詰めに圧巻。黒人見慣れぬ時代にアフリカンビート、そこに三味線の速弾きが重なると、作中の聴衆同様、読み手もその音をまともに想像出来ず混乱来たすのは必然である。まさしく傾奇者たちの演奏を「読める」わけだ。男臭くならないように「踊り手」ちほ、本作の起伏の実は全てを担っているメンバー唯一の常識人なヘタレ「笛吹き」小平太と、配役に抜かりない。小説すばる新人賞随一と断言出来る「痛快」な一作。どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる三味線Rock 'n' Rollを体験出来ます。意外や意外、読書家さんたちのなかでも知名度低いようなので、ここは【推薦】させて頂きます。

第20回小説すばる新人賞 受賞作:桃山ビート・トライブ/天野純希  【推薦】

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第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史

ジョッキー (199x290)
(あらすじ)
栄光に向かって疾走する、若き騎手の青春。女子アナとの淡い恋、横暴な馬主との確執、馬への愛情――様々な思いを抱え、心優しき騎手は天皇賞の大舞台に挑む。魅力的な登場人馬を描く。

answer.――― 86 点
何かと忌避されがちな「競馬」題材の本作について回るのは、《10万部突破》という眩しいまでの金看板な文句。最終的に辿り着いた部数なのか、経過途中での部数なのかは定かではないが、出版不況と叫ばれて幾星霜……皆様も《10万部》突破が示す意味を十二分にご承知のことでしょう。結論から言ってしまえば、本作には「全て」がある。腕はあれども騎乗依頼の少ない中堅のジョッキーを主人公に、成功と挫折、諦観と矜持を交錯させ、ほろ苦い失恋、時にハーレムまで用意する周到なエンターテイメントを展開。注目すべきは主人公に「負け」を徹底して負わせ、且つ、それを貫かせていることだろう。この主人公は《勝っても、負ける》のである。突き詰めれば、負けて前を向く―――己の負けを認めるために物語は進む。「競馬」題材であるにもかかわらず、肝心のレース描写を必要最低限に済ます《プロフェッショナル》な判断、代わりに単巻作品としては異例と云えるヒロイン格の女性を三人投じ、挙げ句に一部屋に集める離れ業には絶句する他ない。作中のハイライトは本作を読了した全ての人が挙げるだろう、終盤の大レース「天皇賞(秋)」―――そのゲートが開く間際につぶやかれる一言「ショウサン」は鳥肌立つ名演出。読み手の時を止めてくれること請け合いだ。節目の第30回も近い小説すばる新人賞、その受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。【推薦】させて頂きます。余談になるが、上述で、本作には「全て」がある、と言及させてもらったが、これは内容&要素の他に、著者にとっての「全て」という意味も含んでいる。というのも、貴方の読書遍歴でこんな経験はないだろうか?作品は非常に面白かったのに、著者の他の作品に何故か手が伸びない、なんてことが。それはきっと本能で感じ取ったのだ、著者の全身全霊、作家としてのピークを目の当たりにしたことを。明らかに要素詰め込み過ぎなのに、その処理が神懸かり的なんだよね、この作品。

第14回小説すばる新人賞 受賞作:ジョッキー/松樹剛史  【推薦】

category: ま行の作家

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第6回小説すばる新人賞 受賞作:ジャガーになった男/佐藤賢一

ジャガーになった男_0001 (202x290)
(あらすじ)
伊達藩士・斉藤小兵太寅吉は恋人を捨て、冒険を求めて支倉常長遣欧使節に加わった。着いたイスパニアはすでに全盛期の栄光を失っていたが、一人のイタルゴと意気投合し、共に戦場に赴くために、帰国する使節団と訣別する決心をする。

answer.――― 80 点
専門家も唸る“知識”をあくまでエンターテイメントの一要素として作中に溶け込ませる作家というと、史実の分野では「大蟻食」佐藤亜紀―――そして、この「ピエール」佐藤賢一が個人的にまず思い浮かぶ。両者ともに唸るどころか、のけ反らせられる“知識”をさらりと披露してくれるが、後者は後に『王妃の離婚』で直木三十五賞を受賞したように、バトル有りマス!な分かり易い大衆へのアピールも含んでいるのが特徴。本作もデビュー作ながら、今現在に続く魅せ方がしっかりと刻まれている。イスパニアに渡った凄腕の剣士・寅吉が現地の娘エレナと恋に落ちて帰国を拒み、しかし己の腕を振るう場を求めるうちに悲劇へ雪崩れ込むストーリーライン。とにかく、重厚である。寅吉はヒロインの兄にそそのかされるままに戦場を駆け巡り、エレナの心を壊していく。夢を追うのか、愛を取るのかの取捨選択は実に情動的で悲劇と呼ぶに相応しく、読み手に安易な感想を抱かせることを良しとしない。その意味で読者を選ぶ作品ではあるが、故に選民的満足感も得られるのが罪深いところ。遊び心溢れるハイライトは、寅吉とかの銃士隊隊長トレヴィルとの対決。三銃士の面々でなく、あえて隊長トレヴィルを採用してきたところが心憎い演出だ。また、表題『ジャガーになった男』も度肝を抜く仕掛けになっているので、悲劇であっても最後まで頁をめくって頂きたい次第。デビュー作ながら、大器を予感させる秀作です。

第6回小説すばる新人賞 受賞作:ジャガーになった男/佐藤賢一

category: さ行の作家

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第13回本屋大賞 1位:羊と鋼の森/宮下奈都

羊と鋼の森 (200x290)
(あらすじ)
言葉で伝えきれないなら音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

answer.――― 80 点
本作はピアノの調律に魅せられ、調律師の道へ進んだ青年の物語。《音楽》を題材にしている作品にハズレはない!とは大袈裟だが、実際、《音楽》を扱っているだけで大抵の読み手はその査定を甘くする……というのも、《音楽》が日常に寄り添うものでありながら、非日常の産物であることを知らず実感しているからなのだろう。また、《音楽》を文字で捉えようとすれば、必然と詩情帯びる。読書の障害と見做されてしまうことも間々あるソレが、しかし《音楽》を題材にした作品となると、不可欠の演出のように歓迎される。本作においても、作中のキーワードとなる詩人・原民喜の理想の文体「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少しは甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」の引用を始め、物静かな場面を詩情溢れる文章が彩っていく。作中のハイライトには、嫌味な先輩の調律師・秋野の「夢」語りを挙げたい。一体、何の話だ?と主人公同様に読み手も訝って拝聴/拝読してしまうなか、「4年」と一言、示唆的に着地する様は実にスマート、洒落ている。続編があっても何ら不思議ではない主人公の調律師「初段」具合だが、裏方である調律師の世界を界隈の《常識》とともに披露し、楽しませてくれる手堅い一作。ちなみに、表題「羊と鋼の森」はピアノに関わる素材を表わしています。

第13回本屋大賞 1位:羊と鋼の森/宮下奈都

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 宮下奈都 本屋大賞

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第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

本屋さんのダイアナ (201x290)
(あらすじ)
私の呪いを解けるのは、私だけ。「大穴」という名前、金色に染められたパサパサの髪、行方知れずの父親。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と同級生の彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人は一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に……。

answer.――― 85 点
作家の文章力を量るとするならば、解かり易いところで「とりあえず」語彙の多寡だろう。言葉を知らなければ、そもそも「文章」を綴れない。しかし語彙が豊富であっても、文章力の高低が定まるわけではないのは御存知の通り。起承転結に始まる構成、内面/外面の描写、完成された(色褪せない)ユーモア、今を楽しむ時事ネタなど、総合的な観点で《文章力》の有無は判定される。そして、人によって各項目の配点が変わるのも《文章力》なるものが曖昧となる理由だろう(個人的に、構成が出来ていると「巧い」と見做される傾向にあると思う。同時に、詩的な散文は駄文と見做される傾向にある。これは《文章力》に、エンターテイメント的な観点が設けられている証左でもある)。そんな中、あまり論点にならない、書き手のセンス問われる項目を一つ紹介したい。作中の時間経過をどうやって表すか?である。一例を引く。司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』の主人公・坂本龍馬は全国を行脚したことでも知られている。当然、ただ移動しているだけの経過が幾度もあるわけだが、そこは省略するのが常道で、実際、司馬遼太郎も多くを省略している。が、敢えて書いているページがある。そこを目にしたとき、読み手は書き手の遊び心を感じざるを得ないはずだ。その描き方とは、渋谷、原宿、代々木、……といった地名をいちいち改行しての羅列である。地名を並べることで、移動時間を表現しているのである―――たっぷりの余白をユーモアと添えて。時間経過は、それが唐突で大胆であるほど、読み手を作中世界へと巻き込む―――あるいは、作中世界から突き放す。ただ時間を飛ばすだけでもセンスが要る。そこに遊び心を加えられるか否かは、まさしく作家としての《余裕》が無ければ出来ないのである。さて、本作必見のハイライトを挙げる―――Wヒロイン(大穴&彩子)の外見が変わる。それは劇的なもので、幼少期の互いへの憧憬をそのまま己へ転写。時間経過を作品のエンターテイメントの核として採用しているのが解かる。そこに絡ませてくるのが著者である柚木麻子の十八番“イタさ”で、後半の主役である彩子の迷走はまさしく《悲劇のヒロイン》。幼さ故に思考を停止する人間の弱さを堪能出来る。全ての登場人物を関係者にしてしまうご都合はいかがなものか……と眉をひそめてしまうものの、“イタさ”にしっかりと向き合うエンディングは実に清々しい。大衆を楽しませる視覚要素溢れる一作。上流から下流までの家庭の書き分けも面白かったです。

第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 柚木麻子 本屋大賞

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第10回本屋大賞 1位:海賊とよばれた男/百田尚樹

海賊と呼ばれた男 (200x290)
(あらすじ)
異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油会社から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく。出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベル。

answer.――― 83 点
日本大震災からの復興を願い、百田尚樹が出光興産創業者・出光佐三をモデルに「東洋の奇跡」と呼ばれた日本の“戦後復興”を描いた歴史経済小説。さて、バラエティ番組「ブラマヨとゆかいな仲間たち アツアツっ!」での発言だったと思うが、著者の「《義務感》を持って筆を執った」というアツアツっ!な申告通り、不撓不屈の経営者・出光佐三こと国岡鐵造が石油メジャーを始めとした既得権益を向こうに回し、会社を、“日本”を発展させていく。とりあえず、―――単純に「面白い」。実話を基に、という予告的に《約束》された「成り上がり」のストーリー展開もあり、単行本として「上」「下」と分けられたボリュームたっぷりの頁数もストレス少なく、エンターテイメントの核となる国岡鐵造の前に立ちはだかる壁は実際、凡人には(いや、これ、……絶対無理でしょ!?)と挑まずして白旗を振りたくなる乗り越え難き壁だ。それをあの手この手、「海賊」と呼ばれるまでにイレギュラーな手段で既得権益を崩していく様は痛快を越えて感嘆するしかない。これを「つまらない」と言ってしまう人は、大衆小説なんて読まず、《文学》でも読めばいい。ただ、のめり込んで読めばただただ楽しめるものの、一歩引いて冷めてしまうと、ブラック企業の、ブラック企業の社長による、ブラック企業な押しつけでしかない事実に気づかざるを得ない(笑)ので、その辺はしっかりと目を瞑って楽しみましょう。百田尚樹は、専門的な描写はしないが、初心者には必要十分な“知識”を挿してくるので(ex.石油の精製等)、そこはもっと「作家」の仕事として評価されて良いと個人的に思う。

第10回本屋大賞 1位:海賊とよばれた男/百田尚樹

category: は行の作家

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第27回山本周五郎賞 受賞作:満願/米澤穂信

満願
1.夜警
2.死人宿
3.柘榴
4.万灯
5.関守
6.満願

answer.――― 80 点
2015年度の週刊文春の『週刊文春ミステリーベスト10』、宝島社の『このミステリーがすごい!』、早川書房の『ミステリが読みたい!』にて第1位を奪取!東野圭吾の『新参者』、横山秀夫の『64』の二冠を超え、三冠を達成!目下、最も「旬」なミステリー作家・米澤穂信の短編集。個人的に米澤穂信は“古典部”シリーズを始め、局所的に名を上げた『さよなら妖精』、《売り》に来た『インシテミル』ともハマらず、世間評と乖離のある作家の一人だったが、本作はいざ頁をめくってみれば早々に良い意味で裏切られた―――《人》が前面に押し出されてくるからだ。第1話「夜警」ではベテランの刑事を軸に、己の過去の経験から新人警察官(の性格&傾向)へ言及していく。そして、それが後に起こる事件への予告となっている。どの短編も目を瞠るトリックらしいトリックは無いが、何故、《過ち》(事件)が起こったのかを「起」→「転」→「結」→「承」と提示し、《過ち》起こる「承」を強く刻んでくる構造が余韻を増して楽しませてくれる。個人的なハイライトは第二話「死人宿」を挙げたい。思い寄せる人に言葉尻から「あなたは、自分が変わったと言った。でもそれは間違いだったみたいね」と己さえ気づいていなかった深層を見透かされる男の様には、思わず我が身を省みたくなった。《キャラクター》描くライトノベル作家からスタートして、《人》、あるいは《人間》を描くまで踏み込んできた作家としての伸長は実際、唸らせられる。第三話「柘榴」は乙一を想起させる歪な人間模様で、インスタントに楽しめる《キャラクター》も未だ描けることを主張しているようで面白い。ただ、バラエティには富むものの、いわゆる《代表作》にはなり得ない印象を持ってしまうのは、(短編とはいえ)登場人物それ自体に魅力が備わっていないからだろう。その意味で、本作の後に出版され、上述の三冠を再奪取することになる『王とサーカス』は私的米澤穂信の最高傑作で、是非と推薦したくなる。とりあえず、本作に関していえば、良質でしたよ、と。

第27回山本周五郎賞 受賞作:満願/米澤穂信

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 米澤穂信 山本周五郎賞 本屋大賞

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第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾

太陽がイッパイいっぱい
(あらすじ)
バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が……。

answer.――― 81 点
投稿時の『ハナづらにキツいのを一発』から出版に際して『太陽がイッパイいっぱい』と爽やかに改題された本作。その概要は、生温い大学生活から解体現場のアルバイトに身を投じれば、「労働って素晴らしい!」と汗水垂らして底辺の同僚たちと帰りにビールを煽る、刹那のイッパイいっぱいな青春模様を描くもの。基本的には連作短編の章構成で、主人公イズミの働き先であるマルショウ解体の面々を紹介しながら、草野球、デート、給料泥棒、経営危機など、泥臭くもハートフル、ソーシャル・ブルーなストーリーを展開していく。が、中盤からは実質の主人公交代、本作の主役は無敵の喧嘩師カンとなる。半グレ集団“シックス・クール”との抗争はまさしく怒涛のサプライズで、「カン!カン!!カン、カモ―ン!!!!」と血湧き肉躍る大活劇に読み手の頁をめくる手は止まらなくなる。喧嘩真っただ中の描写も頭一つ、二つ抜けている匠を見せつけてくれるが、個人的には喧嘩前、カンとハラケンの探り合いは珠玉の描写として挙げたい。不良の不良らしい、怜悧かつアドレナリン滾る分析&思考放棄は、書こうと思っても書けるものではない。そんな脇役カンに「ほんで?ややこしいハナシはえぇから、はよ用件ゆうてや」と主役の座を完全に奪われた主人公だが、終盤に垣間見せるナンダカンダで鍛えられているサービスな事実は実に心地良い。作品としての〆めも抜かりなく、社会の「形」を教えてくれる。何の変哲もない若者譚が続く序盤は若干のストレスも感じるが、終わって見れば視界良好!快作と呼ぶ相応しい青春譚、青春小説でした。地味なところで、この汗臭い設定で女性キャラクターの存在感をしっかり出せているのも素晴らしい。出版時期から考えて、版元は関西版『池袋ウェストゲートパーク』として売り出したかったんだと思うが、本家よりも気に入りました。【推薦】させて頂きます。

第8回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【推薦】

category: ま行の作家

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第24回山本周五郎賞 受賞作:ふがいない僕は空を見た/窪美澄

ふがいない僕は空を見た
1.ミクマリ
2.世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸
3.2035年のオーガズム
4.セイタカアワダチソウの空
5.花粉・受粉

answer.――― 81 点

1章「ミクマリ」が《女による女のための》と謳うR-18文学賞の受賞作という事実からも察せられる通り、Sex,Drugs,& Violence!のエンターテイメントの金科玉条【禁忌編】の第1条を担うSEXを明け透けに施した窪美澄のデビュー作。小説の型としては書き手に優しく、読み手にも優しいwin-winな連作短編で、上述の「ミクマリ」で早々に披露される高校生と主婦によるだらしないコスプレセックスを筆頭に、捻りの利いたスキャンダラスなVivid Entertainmentが展開されている。しかしながら、Sex,Drugs,& Violence!の金科玉条は守れば守るほど、エンターテイメントの純度は増すものの、その反動でともすれば陳腐化するものだが、著者はその辺を理解していて、前提の「セックス」の上にしっかりとスキャンダラスな「転」開を仕込んでいるのが素晴らしい。各短編の登場人物たちは「セックス」によって誰もがホロ苦く傷つくのである。1章「ミクマリ」の主人公・卓巳は若気の至りから初恋と気づいてスキャンダル「性(Say!)」、2章は卓巳を落とした主婦・里美の人生がスキャンダル「性(Say!)」、3章は卓巳にほの字の同級生・七奈が自暴自棄になってスキャンダル未遂「性(Say!)」、4章はそれまでとは角度を変えて卓巳の友人・良太がFuck!My Life!と中指突き立てて、しかし結局、スキャンダル「性(Say!)」、そこから〆に5章では卓巳の母親が自ら運営する助産院でアクシデント「生(Say!)」―――と、辿り着けば本作が「性」と「生」を交錯させた物語だと解る。堅実な文章で綴られた一本「筋」の通ったエンターテイメントで、読後感は良い。ストーリーの流れと配置的に4章「セイタカアワダチソウの空」がベストに挙げられるのは当然ながら、ややくどいものの、2章「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」はちょっとしたお奨め短編。いわゆるBitch!を描いているが、この手のBitch!に視点を与えているのは物珍しく、それでセックスを気持ち良いものとして捉えていないのがまた適当に感じる(*゚∀゚*)イイネ!!

第24回山本周五郎賞 受賞作:ふがいない僕は空を見た/窪美澄

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 窪美澄 本屋大賞 山本周五郎賞

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第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

光媒の花
1.隠れ鬼
2.虫送り
3.冬の蝶
4.春の蝶
5.風媒花
6.遠い光

answer.――― 85 点
乙一がせっせと隙間を突き、手懐けたライトノベラーなファンたちへ、大胆不敵にも「乙一さん?知り合い!知り合い!」と咲かない向日葵を携えて営業を仕掛けてきた道尾秀介。本作は、ミステリー・ランキングを荒らし、着々とセールス実績を築いて、いよいよ本丸「直木十五賞」にロック・オン!そうして、前哨戦「山本周五郎賞」を受賞した連作短編集。6つの短編の各視点人物は前編の登場人物と繋がりを持たせ、その誰にも仄暗いエピソードを付けて、ラストで光を灯して浄化していく構図。先に個人的なハイライトを挙げさせてもらえば、1章「隠れ鬼」における竹林での口淫場面を推したい。《ジュブナイル》《ミステリー》《ファンタジー》といった要素を絡めた作風に共通点を持つ乙一と道尾秀介だが、その二人の違いを端的に挙げるなら《文章力》に尽きる。ライトノベルで培った乙一のシンプルを是とする文章はリーダビリティの観点からも若年層に歓迎されたと思うが、道尾秀介は乙一のフォロワー、そして、本家「乙一」と一線を画すべく、語彙、表現に力を注いでいる。上記の口淫場面は著者のキャリアにおいてもおそらく指折りの筆力を用いた幻想的な場面で、読み手の向こう、選考委員たちへのアピールさえ透けて見える。もっとも、文章力はあくまでオプションであり、氏の人気を支えているのは《ミステリー》を基本としたダークな人間模様だろう。本作は既存のファンの期待に十二分に応える出来で、殺人起こるバッドエンド風味の前半、そこから半(≠反)転、仄かに光が射してくる後半と、陰陽のバランスを感じさせる作品構成が素晴らしい。5章「風媒花」は“らしくない”ハッピーエンドで、作品に拡がりを与えている。1章の視点人物へ「返す」物語となる〆めの6章「遠い光」が前に配される5つの短編と比するとやや「格」落ちの感は否めないが、それでも、“裏・直木三十五賞”たる山本周五郎賞受賞も納得のクオリティーの連作短編。道尾秀介の作品のなかでも、特にミステリー読者を対象とせずに制作された印象もあり、その意味で著者にとって異色な一作と云えるかもしれない。

第23回山本周五郎賞 受賞作:光媒の花/道尾秀介

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 道尾秀介 山本周五郎賞

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第21回山本周五郎賞 受賞作:果断 隠蔽捜査2/今野敏

果断
(あらすじ)
長男の不祥事により所轄へ左遷された竜崎伸也警視長は、着任早々、立てこもり事件に直面する。容疑者は拳銃を所持。事態の打開策をめぐり、現場に派遣されたSITとSATが対立する。異例ながら、彼は自ら指揮を執った。そして、この事案は解決したはずだったが……。

answer.――― 86 点
私利私欲を排し、意固地なまでに合理的であろうとする警察庁のキャリア・竜崎伸也を主役に配した隠蔽捜査シリーズ第二弾。前作『隠蔽捜査』での息子の不祥事を受けて、竜崎が都内大規模署である大森署署長という「現場」へと左遷的に配属される本作は、現場ならではの「不合理」な縄張り争いから、またしても《隠蔽捜査》が―――というダーティーなコンセプトを継続させているのがまず素晴らしい。もっとも、前作同様、起こる事件それ自体は決して目新しくはない。にもかかわらず新鮮に映るのは、やはり、竜崎のキャラクター故だろう。作中、すべての登場人物たちから「変人」扱いされるように、竜崎の采配はどこまでも合理的でありながら奇怪極まりない。因習に囚われず、私情も挟まず(が、心のうちでは愚痴をこぼしまくっているのが面白い。幼馴染「伊丹」へのコンプレックスは作品に多面性を大いにもたらしている思う、伊丹本人の小人物性を含め)、行動を決定、指示していく。合理的、という論理的な《知性》を感じさせる演出も様ざまあり、PTA対するクレーム処理は早々に読み手へ提示するインテリジェンス。部下の戸惑いを含めて著者のいぶし銀な仕事を垣間見る。SITとSATの対立、責任の所在への糾弾&紛糾、息子を通してのアニメへの理解など、仕事にプライベートに頭を痛める竜崎。前作よりも著者が伊丹を「掴んだ」のか、竜崎の彼に対する嫉妬がよりコミカルになったのも嬉しいところ。山本周五郎賞受賞に相応しい充実のエンターテイメント作品。シリーズ作ながら本作から読んでも楽しめる諸所に散らした情報もあるので、未読の方は順番を気にせずどうぞ。

第21回山本周五郎賞 受賞作:果断 隠蔽捜査2/今野敏

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 今野敏 山本周五郎賞 隠蔽捜査シリーズ

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第20回山本周五郎賞 受賞作:夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

夜は短し
1.夜は短し歩けよ乙女
2.深海魚たち
3.御都合主義者はかく語りき
4.魔風邪恋風邪

answer.――― 83 点

森見文学なる文学を自ら築いたと全国紙で本気で豪語した森見登美彦。本作でも森見節を丁々発止、開く頁、開く頁、満遍なく踊らせている。四章仕立ての作品だが、個人的なハイライトは三章「御都合主義者はかく語りき」。これは素晴らしい出来栄えだった。見事なまでに御都合主義なのだが、見事なまでに構成し尽くしている。非常に挑戦的で面白い。主人公とヒロインの視点が交互に入れ替わって物語が進むが、一章は正直読みにくいだけで面白みも無く、完全に完封負けな展開だったものの、二章の古本市で追いついて、三章で注文通りの逆転ホームランを打ってくれた。ヒロインが狙い通りの出来。途中、そのキャラクターがブレ気味だったが、緋鯉(@三章参照)に負けた。負けてやった。

第20回山本周五郎賞 受賞作:夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 森見登美彦 本屋大賞 山本周五郎賞

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第18回山本周五郎賞 受賞作:君たちに明日はない/垣根涼介

君たちに明日はない
1.怒り狂う女
2.オモチャの男
3.旧友
4.八方ふさがりの女
5.去り行くもの

answer.――― 85 点
新語・流行語大賞を参照にすれば、勝ち組負け組に象徴される格差社会を意識させる言葉が03年からランクインし始めたが、その真っ只中の05年にリストラを題材に上梓されたのが本作『君たちに明日はない』。形式としては読み手に優しい連作短編で、リストラ専門会社「日本ヒューマンリアクト」の有能社員・村上真介が、会社側がリストアップしたリストラ対象者を調べ上げ、あの手この手で自主的に「……辞めます」とこぼすまで追い詰めていく―――という話には違いないのだが、大衆小説としては上々のシリーズ全4巻、コミカライズ&ドラマ化と展開したように、リストラ対象者に有能無能な一癖、二癖をつけ、時には彼らの人生を好転させるキッカケを、時には読み手もどちらに転ぶのか見物な判断を迫られ、そこに色恋のプライベートも織り交ぜる、貫録のエンターテイメントが収められている。著者の作家としての手腕は早々に主人公の年増好き、そして、ヒロインを披露/確定させる第一話「怒り狂う女」で確認出来るだろう。以降の話も《パターン》と見做されないように角度を変えて魅せていく。作中のハイライトは旧友を追い込む第三話「旧友」、あるいは、犬を残すか猿を残すか互角の実力者を天秤に掛ける第五話「去り行くもの」か。どちらも甲乙つけがたい秀作で、前者は未来を臨むハッピーエンド、後者はそれまでの四話とは別ベクトルの「理」が提出され、実に爽快な気分を堪能出来る。《リストラ最有力候補になる社員にかぎって、仕事と作業との区分けが明確に出来ていない。》なんて本質をさらりと突いてくる一文もあり、社会の荒波に呑まれる前に読んでおきたい一冊。就職先が決まって一安心している大学生にプレゼントする本に良いかもね。

第18回山本周五郎賞 受賞作:君たちに明日はない/垣根涼介

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 垣根涼介 山本周五郎賞

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第17回山本周五郎賞 受賞作:邂逅の森/熊谷達也

邂逅の森
(あらすじ)
秋田の貧しい小作農に生まれた富治は、伝統のマタギを生業とし、獣を狩る喜びを知るが、地主の一人娘と恋に落ち、村を追われる。鉱山で働くものの山と狩猟への思いは断ち切れず、再びマタギとして生きる。

answer.――― 87 点
《マタギ三部作》の第二作にして、山本周五郎賞、直木三十五賞をW受賞するという快挙を成し遂げたことからも、熊谷達也の事実上の代表作と謳える本作『邂逅の森』。一読しての感想はそんな快挙も納得のマタギ男の紆余曲折の半生を描いたエンターテイメント大作で、そもそも、―――「熊」と対峙しないストーリー展開には多くの人が意表を突かれることだろう。本作は熊が大暴れするなか、マタギが静かに猛り、銃弾を放つような典型的なマタギ話ではない。若者が姦通し、炭鉱に落とされ、後輩に慕われ、いわくつきの嫁を娶り、己の過去と向き合い―――そうして、ようやく「宿敵」と対峙する。頁数がそのまま年輪となって一人のマタギを誕生させる構図は圧巻で、誰しも心のうちで営む読了Libraryにおいて、自分の趣味趣向を超えた《面白い》の、ある種のベンチマーク的作品となることは必至だ。作中のハイライトはそれこそ読み手によって違ってくるだろうが、個人的にはやはり終盤も終盤の「宿敵」との対峙、互いの命を賭した一戦を挙げたい。小説すばる新人賞を受賞した著者のデビュー作『ウエンカムイの爪』でも「熊」は投入されたわけだが、同作の「熊」とはまさしく《格》が違う。序盤、中盤とあっさりと「……Hunt!」していた過程もあり、次の頁には逝ってしまうかもしれない、出し惜しみのない死闘はスペクタル以外の何物でもない。三十作を超える山本周五郎賞の受賞作においても、まず五本の指に入るだろう「この受賞作を読め!」な傑作。「熊谷達也」の名を、直木賞作家が盗作……!というセンセーショナルな報道で知っただけで氏の作品を未読な方は是非、本作を手に取ってみましょう。「面白いやんけ!お前の作品忘れないから、もう引退してもええで!」と作家の本懐なエールを著者へためらいもなく贈れます。

第17回山本周五郎賞 受賞作:邂逅の森/熊谷達也

category: か行の作家

tag: OPEN 80点 熊谷達也 山本周五郎賞 マタギ三部作

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第11回山本周五郎賞 受賞作:血と骨/梁石日

血と骨
(あらすじ)
1930年代の大阪を舞台に、その体躯と凶暴性で極道からも畏れられた金俊平。彼の蒲鉾製造業や高利貸しによる事業の成功と、その裏での実の家族に対する暴力、そして、その後の愛人との結婚による転落、遂には「故郷」である北朝鮮での孤独な死までを描いた作品。

answer.――― 82 点
舞台は、戦前―――そして、戦後の大阪。在日朝鮮人・梁石日が実父をモデルに、おぞましいまでの「悪」を描いた大作が本作『血と骨』。頁をめくれば、「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」……誇張があるにせよ、いわゆる「七つの大罪」、そのすべてを大いに犯す「極悪」金俊平(183cm、100kg!!何よこのサイズ!?)に戦慄を覚えることは必至で、嫌韓感情が渦巻くこのご時世に、「……ざ、在日朝鮮人死ぬべし!殺すべし!!」とそれこそ火病してしまう。とにかく、《外道》極まっている。金俊平にとって自分以外の存在は搾取の対象であり、女はただ犯す対象である。作中、その圧倒的な暴力で人は性別問わず嬲られ続け、それがRape & Violence!For Money!という後ずさりたくなるエンターテイメントとして成立。最大の被害者と云える「妻」英姫が金俊平に見初められてからの目を覆いたくなる転落劇は、男尊女卑のもはや結晶である。いや、それさえ上回るのは「愛人」清子への仕打ちか。嗚呼、外道!ここに極まれり!!しかし、そんな「誰も止められない」金俊平が因果応報の理に巻き込まれる終盤も終盤は何とも胸がすくm9(^Д^)プギャー展開。最期までダーティーに魅せてくれる。金俊平がチ♂コ挿入すれば女はメロメロになるというトンデモな設定があるものの、そこにさえ目をつむれば、稀に見る性悪説の体現者を覗き見続けられる逸品。表題となっている「血と骨」など随所に朝鮮人の価値観/文化が挿され、教養的な面も施されているので、その点も「買える」ところ。個人的には、《吝嗇》がここまで「悪」へと繋がる事実に感銘にも似た驚きを受けました。Web上で韓国と言えば、……!な「トンスル」への言及も有り。と、ふと気づいたが、著者の趣味なのか、それとも朝鮮人を扱うと必然なのか、糞便演出が多かった気がする。何にせよ、「極悪」金俊平の存在感は圧巻。ピカレスク小説を描きたい人は参考にさえ出来るだろう。日本人にはこの手の「悪」は描けないんじゃないだろうか?

第11回山本周五郎賞 受賞作:血と骨/梁石日

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 梁石日 山本周五郎賞

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第9回山本周五郎賞 受賞作:家族狩り/天童荒太

家族狩り
(あらすじ)
脂肪にぎらつくナイフが、肉を骨を家族を生きながら裂いてゆく地獄絵。「崩壊した家族に再生はあるのか」血の海に沈んだ家族がひとつ、またひとつ。一家心中か、連続大量殺人事件か。きっかけは、心理相談のラインに掛かってきた、一本の電話だった。

answer.――― 80 点
同性との初対面時、貴方はまず何を量るだろうか?私の場合、相手が自分より(喧嘩が)強いか否かを量る。これは意図せずのもので、言ってしまえば、反射的な―――本能的な反応だ。ところで、私の先輩に趣味でボディビルに励んでいらっしゃる方がいる。本人は「喧嘩なんかしたことないよぉ」とか弱く仰るが、あの尋常ではない肉体を目にしたとき、たとえ敵意を向けられていなくても、私には《脅威》と評価せざるを得なかった、己の身の危険を感じざるを得なかった。「崩壊した家族に再生はあるのか」。もはや血走っている表題は元より、単行本の厚み、文庫本ならばその冊数からも十二分に察せられるだろう著者のキ×ガイ染みた狂気。そうして、頁をめくってみれば想像通りの、いや、想像以上の(……コイツ、本物のキ×ガイだ!)という確信を抱かせる情念ならぬ情「怨」塗りたくった文章。「……勘弁してくれ、もう勘弁してくれ!」心のうちで何度そう叫んだことだろう。それでも、頁はまだまだ続いていた。読了したときの感覚をよく覚えている、……「無」である。私の心は著者によって蹂躙され尽くされていた。本作を一言でまとめると、家庭に問題を抱えた登場人物たちが遭遇する地獄絵図であり、やっぱり地獄絵図である。生きたまま鋸で斬られ、釘で打ちつけられる恐怖。本作は「詰まる/詰まらない」では語れない。世の中には《評価せざるを得ない》なんて己の嗜好を飛び越えたモノがあると思うが、私にとって本作はその類の怪作だ。……何を言っているか解からない?そりゃそうだ、「魂の殺人」……私は本作にレイプされたのだから。「……勘弁してくれ、もう勘弁してくれ!」しかまともに覚えてないわ。これに関して著者自身、憎悪という憎悪を込めた入魂の作品だったらしく、04年時の文庫化の際にはほとんど全面改稿に近い「文庫版の新作」として発表した。……なんてエピソードも付け加えさせて頂く。時を経て、著者自ら(……やり過ぎだ!)とマイルドに改変せしめた問題作。だからこそ、手を出すなら是非とも「オリジナル(ver.単行本)」で。

第9回山本周五郎賞 受賞作:家族狩り/天童荒太

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 天童荒太 山本周五郎賞

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第6回山本周五郎賞 受賞作:火車/宮部みゆき

火車
(あらすじ)
休職中の刑事、本間俊介は遠縁の男性に頼まれて彼の婚約者、関根彰子の行方を捜すことになった。自らの意思で失踪、しかも徹底的に足取りを消して―なぜ彰子はそこまでして自分の存在を消さねばならなかったのか?いったい彼女は何者なのか?謎を解く鍵は、カード会社の犠牲ともいうべき自己破産者の凄惨な人生に隠されていた。

answer.――― 85 点
東野圭吾と宮部みゆき……大衆小説と言えば、一時、この二人が担っていたと思うが、より(早く)「幅」広い支持を受けたのは後者、宮部みゆきだったと思う。その「幅」とはF1やM1といった年齢を区切りにした層の広さではなく、お茶の間からいわゆるインテリゲンチャ、知識層までの偏差値の垣根が取り払われた「幅」だ。クレジットカードの作成から露見した「自己破産の過去」、婚約者の謎の失踪から暴かれていくミステリー。出版当時の時勢を掴み、消費者金融のあり方を問うた本作『火車』大衆小説でありながら文学の専売特許、《人間》に迫った一作!と謳うにはいささか大げさながら、「最後の一行に犯人が出てくる小説」なんて着想からその完遂故に必然的に生じる、他者たちが語る様々な角度からの一人の人物像には、進行していく物語とともに暗い井戸の底を覗き込むように引かれていく。そうして、何者なのか?と探るうちに辿り着いた不動産屋・倉田康二が語る離婚の理由は、誰しも納得の作中の裏ハイライト。宮部みゆきがインテリゲンチャたちに「昨今の文学作品よりも……」と以降、評価されていく手腕が伺える。そんなお茶の間受けに留まらない部分もあり、賞創設20周年を記念して催された「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベストでは見事に第1位に輝き、時代を跨いだ娯楽の傑作として認定。多作の氏のなかでも代表作に挙げられる一作となっているので、未読の方は読んで損ということはないでしょう。個人的にも冗長な場面が散見される『模倣犯』よりもコンパクトで、よほど質の高さを感じられました。

第6回山本周五郎賞 受賞作:火車/宮部みゆき

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 宮部みゆき 山本周五郎賞

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新潮文庫:ねじまき鳥クロニクル/村上春樹

ねじまき鳥クロニクル
第1部 泥棒かささぎ編
第2部 予言する鳥編
第3部 鳥刺し男編

answer.――― 89 点

「最初のシーンを読んでいると、パスタを食べたくなる」―――多分にブラフにせよ、読み手にそんなことを言わしめる冒頭を持つ本作は、ライトノベルに退屈を覚え始めた貴族の諸氏(ライトノベラー)に新たな地平を見せる純文学ならぬ準文学、ライトノベルならぬ準ライトノベルな快作。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の稿にて、―――村上春樹はライトノベル作家だ。なる一文を提示させてもらったが、ここで改めてその一文の補足をさせて貰おう。今でこそ「パンツ」と「裸」の披露はライトノベル世界における最高法規として遵守を命じられているが、90年代において「パンツ」と「裸」よりもライトノベル「らしさ」を担っていた要素に「食事」場面の挿入があったのは間違いない。それらの場面は目先のパンツを前に省略化の傾向があるが、今現在を以っても、……推して知るべし!の効能を持つ。ライトノベルを何故、読むのか?ライトノベルを何故、読みたいのか?書き手はよく考えてみて欲しい。編集部は三大欲求である「性欲」に焦点に当てているだけに過ぎないのだ。温故知新!ワナビーよ、登場人物たちにメシを食わせてみよ!されば、扉は開かれん!さて、文学作家の仮面をかぶるタキシード仮面様こと天才ライトノベル作家・村上春樹が放つ本作は、突然の妻の失踪から始まるファンタジックなミステリー。物語は突然、始まってこそ面白い―――村上春樹はその神髄をよく理解している。謎めく妻の理由無き失踪から始まり、不貞を働いていた予感、それでもどこか純愛を匂わせ、(読み手に)嫉妬を煽る―――現代が舞台、なのにファンタジー。主人公は朴訥に無職、なのにクールな探偵のように静かに動き回るストーリー展開は秀逸だ。女性ライトノベラーが強く己を投影するだろう笠原メイは作中の実質MVPで、書き手は彼女を解体することで知り得ることは多いだろう。主人公を井戸に放置する手際は、もはや神業だ。評論では戦争を扱ったことがクローズアップされるが、そこが物語の進行上で一番の蛇足に感じるも(野暮ったいし、読ませようという工夫も放棄している)、「文学」観点での目くらましには必要不可欠な必要悪だったと云える。《ねじまき鳥》というマスコットまで用意する手の込みようは、『ノルウェイの森』で終わらない著者の意志表示にも思える。とどのつまり、キャッチーの一言に尽きる一作。「文学」「大衆小説」「ライトノベル」の三者が組み合う様を楽しみましょう。きっと、女の子が中学生時点でこれを読んじゃうと(……あ、私って笠原メイだ!)って思い込んで、そこからハルキストになっちゃうのよねえ……。第1部、第2部、第3部の全3巻を合わせたレヴューです。

新潮文庫:ねじまき鳥クロニクル/村上春樹 (1995)

category: ま行の作家

tag: OPEN 村上春樹 80点

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講談社文庫:ノルウェイの森/村上春樹

ノルウェイの森
(あらすじ)
37歳の僕は、ハンブルク空港に到着した飛行機のBGMでビートルズの「ノルウェーの森」を聴き、激しい混乱を覚えた。そして18年前(1968年)の学生時代のことを回想した。限りない喪失と再生を描き、新境地を拓いた長編小説。

answer.――― 85 点

緑と赤のシンプル極まりない装丁、「100%の恋愛小説」なるキャッチコピー、単行本&文庫本を合わせた発行部数800万部超……そこに日本を代表する“旅人”中田英寿が遠征の機中で読んで「死にたくなった」という眉唾なエピソードさえある本作は、村上春樹と云えば、……の代表作。村上春樹は兎角、賛否が分かれる作家ではあるが、売れている分だけ本作に対する風当たりの強さは972hPa、もはや爆弾低気圧を思わせるものがある。古典を愛する(なんちゃって!)インテリゲンチャに特にその傾向が見られ、すべてを否定する様はヒステリーそのもの。それ自体を一種の老害と扱っても良いかもしれない。本作における特徴に「よく遊び、よく寝る」ならぬ「よく死に、よくセックスする」要素が挙げられると思うが、生死の営みはなるほど、強い「記号」である。読み手はその「記号」にエンターテイメントを必要十分以上に感じ、村上春樹を彼ら大好きの古典作家以上の存在に奉るのが気に食わないのも理解出来なくもない……が、読み手ではなく、書き手の視点に立ったとき、本作は村上春樹を再考するに相応しい作品となっている。村上春樹は巷で糾弾されるほど文章は下手ではない。まともに書こうと思えばまともに書けるだろう。ただ、それをしようとしないだけだ。まともに書く―――事象を通して描きたいことを描く。本作にはそんな珠玉の場面がある、給水塔で蛍を解き放つ場面だ。この場面の凄味は、この場面だけ切り離しても成り立つところにある。何を言っているわけではない、だが、何を言っているのかが分かる。特別なことを表しているわけではない、だが、何を表しているのかが理解出来る。『ノルウェイの森』のストーリーがここにある事実。文章技巧という観点では極致の場面と言える。ここを称えずして、何がインテリゲンチャだ。お前ら、「物語」しか読んでねえから「文章」読めねえんだよ。もっとも、私の中で一番忘れらない本作の論評は大学時代の先輩の「『ノルウェイの森』って三十半ばのオバサンとセックスする話だろ?」だった。それで、本当の中庸の人の意見の神髄に触れることが出来たことを付け加えておく。本作を読んで、このまとめ方が出来る人は天賦の才があると思う。是非、未読の方は私の先輩と同じようにまとめられるのか試して頂きたい。上巻/下巻、合わせてのレヴューです。

講談社文庫:ノルウェイの森/村上春樹 (1987)

category: ま行の作家

tag: OPEN 村上春樹 80点

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講談社文庫:羊をめぐる冒険/村上春樹

羊をめぐる冒険
(あらすじ)
1978年9月。「僕」の新しい「ガール・フレンド」は、「僕」に不思議な予言を告げる。「羊をめぐる冒険」が始まると。「僕」が「相棒」と共同経営している広告代理店に、大物右翼「先生」の秘書が現われた。彼は「特別な羊」を探せと、「僕」を脅迫する。その「羊」は、「僕」の会社で編集したPR誌上の風景写真に、偶然 写っていたのだった。

answer.――― 83 点
文学の薫りをまとう村上春樹の初期三部作、その最後を飾る大作。後に「僕と鼠もの」シリーズとしての結末をつける『ダンス・ダンス・ダンス』が発表されるが、一般的な見解としてのシリーズの完結は本作で迎えられる。文庫本・上下巻に分けてのリリースは商業的な意味合いもあるだろうが、それでも前二作と比してボリューム感満載の文章量を誇る事実を持つ本作は作中、不必要なまでに比喩を施し、あたかもと言わず、歴然とした村上春樹流の比喩の見本市―――文章表現への挑戦が伺える一作となっている。面白い比喩とは何か? この問いへ誰でも出来る簡潔な答えを出すならば、「事実」と「擬人」を並べることだと思う。例えば、「電池が切れて」「眠っている」ような時計、である。これをもう一歩進めるならば、それだけで《物語》を想起させる比喩―――例えば、《開始のゴング》の叩き方を忘れた時計、と私は考える。もちろん、人によって千差万別、正解は無限に等しい。それでも、自分の中でだけでも答えを出せなければ、外へ向けて【挑戦】は出来ない。本作において面白い比喩というものに対するイメージが掴めているからこそ、村上春樹はこうも大胆に披露出来るのだ。彼の比喩表現の核、それは「縮尺」と「食べ物」だ。後者の核に関しては、ライトノベルへと通じるものを見る……が、それはまた、別の話@王様のレストラン。表題の通り、ストーリーは一枚の写真に写った羊をめぐり、「僕」が会社を止め、大物政治家やらマフィア、ついには専用の続編まで編まれる人気キャラクター・羊男に辿り着くまでを描く。シリーズと謳いながら前二作と明確に違うのは、羊男のように、完全にファンタジーへと踏み出している点。それで違和感が無いのは、―――というよりそこを糾弾/追求されないのは、村上春樹が文学作家と言うよりも、そもそも、超級のファンタジー作家であることを見落とされているからだろう。……いや、マジで突っ込もうよ!羊男が出てきて、何で皆、受け入れてるのさ!?文学という石仮面をつけたまま、いよいよ作家としてのスタンドプレイに奔り始めた本当の意味での分岐点な一作。そこを抜きにしても、技巧ではない、センスであつらえた比喩表現を体感出来るので自分なりに盗んでみましょう。

講談社文庫:羊をめぐる冒険/村上春樹 (1982)

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 村上春樹 「僕と鼠もの」シリーズ

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講談社文庫:風の歌を聴け/村上春樹

風の歌を聴け
(あらすじ)
一九七〇年の夏、海辺の街に帰省した“僕”は、友人の“鼠”とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。二人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、“僕”の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。

answer.――― 85 点
大江健三郎以来のノーベル文学賞の受賞が事実上の既定ラインとさえなっている“世界の”の冠をかぶる村上と云えば村上春樹、その第22回群像新人文学賞を受賞した処女作。一言、―――熱い!おそらく、村上春樹の作品中随一の、あるいは唯一の熱がここに込められている。村上春樹というと、提示される題材を「やれやれ」と右から左に放り投げ、頁に余白を導いていく文章が印象的で、それを時間とノルマに追われる現代社会に「So Cool!」と歓迎されているのだと思うが、本作における文章は導いた余白に向けて「ここには何も無い(……いや、本当に何も無いのか?)」と第三者に否定を求める、そんな熱さが込められている。本作以降の作品群の余白には「ここには無い、……何も無い」と単にニヒルな意味以外を(少なくとも私には)感じることが出来ず、以降の作品で人気を獲得していくことを鑑みれば、そのスタイルこそが本来の春樹節、ハルキストたちの熱狂の源なのだろうが、それだけに処女作ならではの異色の輝きを私は本作に見い出してしまう。1970年21歳の時の8/8から8/26までの19日間の物語、という体で夜な夜な散文的に綴ったらしい制作背景からか、良くも悪くも随所に豊富なアイディアが盛り込まれている。取り上げるならば、「こんなのだ」とTシャツの絵を投げてきたところ、架空の作家デレク・ハートフィールドへのさもそれらしい言及の二点を挙げたい。前者はその投げやり加減をイラストの存在を前提に表現している点、後者はともすれば流れていくだけの話に注意を留める役割を担わせた点が素晴らしい。デレク・ハートフィールドに関しては、未だ存在しないと分かっているのに書店へ行けばその著作を探している私がいるお洒落酩酊な事実に刮目して頂きたい。何にせよ、―――熱い!と唸らせてくれるギラギラと照りつける灼熱の一作。個人的な意見だが、村上春樹はこの一作で筆を折って欲しかったな、と。後に初期三部作、「僕と鼠もの」シリーズと謳われる栄えある一作目でもある。

講談社文庫:風の歌を聴け/村上春樹 (1979)

category: ま行の作家

tag: OPEN 80点 村上春樹 「僕と鼠もの」シリーズ

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第5回山本周五郎賞 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一

砂のクロニクル (202x290)
(あらすじ)
それは現代史大逆転の、最後の賭け。二万挺の自動小銃に託された壮大なるロマン。ロンドンからモスクワへ、そして戒厳令下のイランへ。日本人武器商人はひた走る。歴史の隠された真実を明かしながら。煮えたぎる情念をまき散らしながら。物語作家としての天才と、メッセージのすべてを叩き込んだ未曽有の巨編。

answer.――― 83 点
先日、訃報が流れた船戸与一による80年代末期のイランを舞台にした大作。いわゆる“死の商人”である二人の日本人「ハジ」を軸主人公に起用し、イランより独立を目指すクルド人ゲリラへの武器手配、その顛末を濃厚なSex & Violenceを押し出しながら描いていく群像劇。ほとんどの人にとって教科書に記載されている程度の見聞だろう「イラン革命」の理想とその《腐敗》を革命隊の末端である「サミル」から目の当たりに出来る点、たとえばゾロアスター教徒が革命へ憎悪を抱く理由など「イラン革命」にまつわる《知識》が挿される点は、本作ならではのセールスポイントに挙げられるだろう。手抜き知らず……と、たじたじに評したくなる著者の筆圧を含め、読了する頃にはしっかりと頭(と時間)が困憊していることを《お約束》出来る仕上がりとなっている。エンターテイメント満載の内容ながら、上述の通り、さして効果を発揮していない同名の軸主人公の採用、それ以外にも視点人物が何度も切り替わるのは集中力を強いる大きなマイナス要因で、これが原因でGive Up!してしまう読者も少なくないことが予想されるので、個人的には構成に「難有り」と思う次第。各章のメインキャラクターを示すために、西暦、ペルシア暦、イスラム暦と前置いているが、それで「整理」出来るほど、「ハジ」は書き分けられていない。登場人物で云えば作中、もっとも魅力的に映ったのはグルジアの武器密売業者ゴラガジビリ。金こそ全て!の二枚舌、女垂らしの下衆というキャラクターは、堅苦しい展開のなかで一種の清涼剤とさえなり、その「最期」は、群像劇ならではの《意外な視点人物》として栄誉の抜粋。女に溺れた男らしく、散るその時まで楽しませてくれました。

第5回山本周五郎賞 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一

category: は行の作家

tag: OPEN 80点 船戸与一 山本周五郎賞

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第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良

ダックコール (202x290)
1.望遠
2.パッセンジャー
3.密猟志願
4.ホイッパーウィル
5.波の枕
6.デコイとブンタ

answer.――― 81 点
石に鳥の絵を描く男に出会った青年は、河原で微睡むうちに鳥にまつわる六つの夢を見る―――というレイ・ブラッドベリの『刺青の男』をモチーフにした短編集。「希に見る美しい小説」とは選考委員を務めた藤沢周平の評だが、その言葉も決して大袈裟に聞こえない、出逢ってしまえば感情揺さぶられる《数瞬》を、確かなインテリが手掛けた翻訳小説を思わせる剛健な筆で描いている。それらは冒頭の二編、己の職を失ってまで手に入れた奇跡「望遠」、リョコウバトの恐怖「パッセンジャー」が端的に象徴するところだと思うが、個人的には「希に見る美しい小説」というよりも、「野に遺賢あり」という藤沢周平以外の選考委員の評のほうが的を射ている、玄人(書き手)好みな作品の印象。女を排して男の匂いを立ち込める作中もっとも頁を費やした中編「ホイッパーウィル」は、著者のハードボイルドな本質が現れている一編だろう。先の「希に見る美しい小説」から文章の面からも耽美的な、《繊細》な文章をイメージしていたが、その真逆の、《題材》それ自体の美しさを真正面から彫り込む力強さには面食らった。奇をてらった表現、(似た言葉を重ねる)感覚任せな描写が少ないのは、文学の衰退とともに軽量化を是とする時流を逆行するストロングスタイルと云える。詰まる/詰まらないで語る類いの作品ではないものの、地味なことは否めず、その意味で読み手を選ぶ一作には違いない。が、短編好きを標榜するならば、〆めの第六話「デコイとブンタ」は必読の一編。「ハードボイルド・ポップ」とでも命名したくなるこの沈黙の一編は、シーズンオフ間近の遊園地の観覧車と風船の《邂逅》により、ついにデコイを空へ飛ばす。その爽快感たるや圧巻で、「デコイ、お前は最高だっ!」と膝を打つこと必至。前の五編で著者と噛み合わなくても、お薦め出来る逸品です。

第4回山本周五郎賞 受賞作:ダック・コール/稲見一良

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 稲見一良 山本周五郎賞

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第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな

TUGUMI (200x290)
(あらすじ)
病弱で生意気な美少女つぐみ。彼女と育った海辺の小さな町へ帰省した夏、まだ淡い夜のはじまりに、つぐみと私は、ふるさとの最後のひと夏をともにする少年に出会った。少女から大人へと移りゆく季節の、二度とかえらないきらめきを描く、切なく透明な物語。

answer.――― 80 点
ばななは『キッチン』さえ読んでおけばいい!というネガティヴ・キャンペーンな持論の発端は、著者がメディアその他の性悪な露出によって、作中で《吉本ばなな》が見えてしまうからなのだが、それでも『キッチン』以外でもう一作、あえて挙げるならば、やはりこの第2回山本周五郎賞受賞、海外でも支持高い(らしい)本作『TUGUMI』になるのだろうか。おっとりとした「私」の従妹「つぐみ」は美しく病弱で、それでいて、じゃじゃ馬だった―――帰省した大学一年の夏、「つぐみ」との強烈な日々を振り返りながら、現在を描く青春譚の本作。百葉箱を用いた「お化けポストごっこ」、そこからの友情の分岐点となった悪戯など、読み手が暗黙の了解として求める登場人物たちの《過去》を振り返る形で惜しげもなく披露していく作風は、「死」を抜け目なく挿し込んでくるセンスを含め、ある種の天性を感じざるを得ない。自由気ままに書いていただろう文章も、数作を経て洗練されたのも好印象。表題になってさえいる「ヒロイン」つぐみは、出版から四半世紀過ぎた現在でもVividで、第1級のヒロイン格を保てている。ラストの手紙も素敵な演出だ。本作が著者の代表作、名作に挙げられるのも頷ける。にしても、……である。作中、私が顔をしかめたのは、例によって、ズイッ……と吉本ばなな@居酒屋事件で検索!が出てきたからだ。「お前のことを好きになった」とは、出会って間もないイケメンにつぐみが放った肉食極まりない言葉だが、私はこの台詞に(……お前、ばななだな?)と著者を見た。つぐみは、男には素を隠すという設定はどこへ行った?一目惚れなら、ここはつぐみならたとえば苛つくところなんじゃねえか?どんな言葉を並べても、作家と登場人物は切り離すことは出来ない。 だからこそ、作家は己を「隠す」技巧を修めるべきだ。それが出来ないなら、作家は「表」舞台に出てくるべきではないと思う。もっとも、「お前のことを好きになった」以外は特に気にもならなかったので、大衆小説として◎を打てる一作。楽しめました。

第2回山本周五郎賞 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 よしもとばなな 山本周五郎賞

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第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

横道世之介
1.四月 桜
2.五月 ゴールデンウィーク
3.六月 梅雨
4.七月 海水浴
5.八月 帰省
6.九月 新学期
7.十月 十九歳
8.十一月 学祭
etc...

answer.――― 83 点

冒頭からしばし続くあまりにリアリティ溢れる上京してきた新大学生の「しょうもない」日常に、―――大学生必読の一冊!という謳い文句が脳内にこだましたが、途中、唐突に挟まれる謎の視点に「……邪魔するなよ!」と思ったのは私だけではあるまい。その謎の視点の正体は平凡極まりない主人公と関わった友人、知人たちの二十年後であり、そこで彼らの現在と、主人公への幾ばくかの当時の印象が添えられる。この辺りは文学畑出身である著者らしい構成で、同じ<人間>に対する評価の変遷―――つまりは時間軸を変えることで、登場人物自身の価値観の変遷を描きたかったのが伺える(そして価値観が変わっても、主人公は二人といない良い奴だったな、……という演出)。もっとも、文学のような<人間>への追究性は薄く、あくまで味付け程度の処理なために「それなら結局、……邪魔するなよ!」とも思ったのだが、とある登場人物の登場によってそんないつものイチャモンは彼方へと消えた。―――与謝野祥子、ここ一年読んできた二百冊近い本のヒロインのなかで彼女はBESTだ。マジで萌えた。表題をそれこそ「横道世之介」ではなく、「与謝野祥子」に改題すべきだとさえ思った。ついでに、彼女の視点で物語を編んでくれ!と未だ願って止まない。登場当初は侮蔑さえしていたのにいつの間にか惚れてしまっていた主人公のように、本作が本屋大賞にランクイン出来たのは間違いなく書店員もまた彼女にFalling In Loveしたからである。彼女の魅力については多く語るまい。読めば分かる、そして、シルヴィ・ヴァルタン宜しくIrrésistiblement(あなたのとりこ)だ。冒頭にも書いたが、主人公の時間の過ごし方は現在の大学生の生活そのまま。こうならないためにも、大学生は一度読んでおいて損は無いだろう。しかし兎にも角にも、本作の主役は―――与謝野祥子。きっと、読めば貴方も萌えられる。ちなみに、主人公の名前の由来は江戸時代の名作『好色一代男』からとのこと。己の無知をまた知りました。

第7回本屋大賞 3位: 横道世之介/吉田修一

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 吉田修一 本屋大賞

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第9回本屋大賞 2位:ジェノサイド/高野和明

ジェノサイド (201x290)
1.ハインズマン・レポート
2.ネメシス
3.出アフリカ

answer.――― 84 点
第9回本屋大賞を総括すると、三浦しをんの大衆からの認知のQ.E.D.、『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』のランクインによるライトノベルの浸透(というより、現代の消費者によるイラストに対する歓迎の表明)だと思うが、個人的には、週刊文春ミステリーベスト10(2011年度)1位、このミステリーがすごい!(2012年度)1位、第145回直木賞候補!第33回吉川英治文学新人賞候補!など、おそらく今後も含めた高野和明という作家にとってのCareer-Highとなった本作『ジェノサイド』のランクインが一番印象深い。物語の概要は、破格の報酬に釣られてアフリカでの謎の作戦に従事することになった元グリーンベレー、事故死した父から謎の指示が届いた日本人青年を主人公に、一見、地理上でも交わるはずのない点が線となり、アメリカ合衆国の大統領の首を絞める!という気宇壮大なサイエンス・フィクション。冒頭より称えたくなるのは、「謎」の提示が巧みなこと。『新世界より』のレヴューで、面白いとは《矛盾していること》と説いたが、ストーリーの面からではなく、その外側―――演出の面から答えを出すのならば、面白いとは《先を読ませること》である。そして、その上で《先を読ませないこと》だ。それを成立させるために必要なのが「謎」である。「謎」は勿体ぶって「謎」のままにしてはならない、しかし「謎」のままでなくてはならない―――この《矛盾》をお手本のように施していったのが本作。一例を挙げる。元グリーンベレーに持ち込まれたのは「謎」の作戦である。その作戦は「高額の報酬」にも関わらず、「身の危険は無く」「特定の国の利害に関わらない」「人類全体に奉仕する仕事」―――そこから、主人公は「暗殺」と推察する。「謎」は「謎」のまま、しかし、その輪郭を読み手に《予告》的に「掴ませている」のが素晴らしい。もっとも、そんな「謎」を掴ませた直後、視点切り替わり、舞台も10000km以上、雰囲気も180度変えて(……これ、本当に繋がるの?)と思考を停止させてくるところは、「初手」天元な布石。これがただの奇手に終わらないのが圧巻である。諸所で言及されているように、嗚呼、こりゃKOREA!JAPANESE、死すべし!とアイタタタタ……な著者の史観が頁をめくる手を邪魔をしてくれるが、思わず検索してしまう「ハインズマン・レポート」など、作り込んだ設定が人類の絶滅を確かにカウントダウンさせてくれる快作。未読の方はハリウッド映画にも負けない《圧倒的なスケール》を是非、御体験ください。

第9回本屋大賞 2位:ジェノサイド/高野和明

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 高野和明

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第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

教場
1.職質
2.牢門
3.蟻穴
4.調達
5.異物
6.背水

answer.――― 83 点
警察小説は数あれど、鶏が先か、卵が先か―――ではないが、その隙間を突いてくるまさかの《警察学校》を舞台にした異色の警察小説が本作『教場』。「警察学校は、優秀な警察官を育てるための機関ではなく、適性のない人間をふるい落とす場である」と煽るように、職質、取り調べ、スピードの取り締まり、変わったところで、医療&生物関連などの豆を含めた《知識》を交えながら、あの手この手の演出でSURVIVEする者、脱落していく者を描いていく。リアリティが在るのか無いのか、登場する教官&警察官候補生たちはもはや犯罪者予備軍のような底意地の悪さを強く押し出され、「……日本、大丈夫か?」と若干の失笑を禁じ得ないが、これに関してはいい年したヒヨっ子たちの失敗をそのまま描いても「つまらない」ことを著者は知っているということだろう。全話通して登場するのは「教官」風間だが、各話の視点人物はそれぞれ「癖」のある候補生たち。一部の例外を除き、警察学校という設定上、彼ら候補生は無知な「凡人」のために感情移入は捗らず、故に欺き、蹴落とす怨恨込みの脱落劇に著者は活路を見い出したのだろう。こうありたい俺!な感情移入が出来ないのはマイナスだが、各話で用意されている見知らぬ常識な《知識》はやはりスパイシーで、「読んで得をする」作品に仕上がっている。「教官」風間を主役にした続編が出ているようだが、個人的には本作でSURVIVE出来た視点人物たちが主役の作品を出すべきだと思うんだが、……話題待ちでもしているんだろうか?第三話「蟻穴」が幕の切り方を含め一番気に入りました。

第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

category: な行の作家

tag: OPEN 80点 長岡弘樹

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第1回本屋大賞 5位:重力ピエロ/伊坂幸太郎

重力ピエロ
(あらすじ)
半分しか血のつながりがない「私」と、弟の「春」。春は、私の母親がレイプされたときに身ごもった子である。ある日、出生前診断などの遺伝子技術を扱う私の勤め先が、何者かに放火される。町のあちこちに描かれた落書き消しを専門に請け負っている春は、現場近くに、スプレーによるグラフィティーアートが残されていることに気づく。連続放火事件と謎の落書き、レイプという憎むべき犯罪を肯定しなければ、自分が存在しない、という矛盾を抱えた春の危うさは、やがて交錯し……。

answer.――― 83 点
熱心な読者とは言えないが、伊坂幸太郎のピークはいつなのか?と訊かれれば、おそらくこの『重力ピエロ』ないし次作の『アヒルと鴨のコインロッカー』までだと答えると思う。日常にモノホンな「事件」を起こし起こさせる「優等生」伊坂幸太郎。本作は当時の彼の持ちうる《日常》を余すことなく出し尽くしただろう一冊。「日常」―――伊坂幸太郎にかぎらずだが、実のところ、すべての作家がすぐに尽きる「(世界)観」が《日常》である。それというのも、人生は「自分」一度しか体験出来ていないからだ。そして、《日常》とはその説明を省いてしまえば実質的にモラトリアム、思春期に培った感性(&記憶)の吐露に他ならない。社会人以降の《日常》は、多くは業界(社会)の説明、専門分野の知識の披露でしかなく、思春期の産物ではない、社会人の《日常》らしい《日常》を演出するためには「結婚」「転職」「介護」などの《責任》関わるイベントを用いなければならない。また、日常は本来的に面白いものではないために……云々、と。こう《日常》と連呼してもやはり抽象的になってしまうので切り上げるが、何にせよ、《日常》を武器とする故に伊坂幸太郎は作品を上梓する毎に摩耗&劣化し、ついにはストック尽きて、「この10年間で小説に対するモチベーションがかなり変わった。最初は読者の反応を気にして、執念をもって小説を執筆していたが、最近は小説を書くこと自体が楽しくてしょうがない」なる発言を残して10年代に到る。最近の作品が気抜けのサイダーのような出来なのは実際、気抜けで書いているからなのである。本作より後発の世界を終わらせてまで《日常》をひねり描いた『終末のフール』を読んでみればお察し出来るように、《日常》のストック気にせず存分に披露出来た初期作品こそ伊坂幸太郎の筆が躍動した跡だ。本作はそのとびきりの「跡」、マイケル・ジョーダンからDNAまで著者の世代が薫るネタを台詞に、地の文に仕込みに仕込んだ、レイプ有り!殺人有り!正義は……!と性悪説&性善説入り混じる快作。暇を持て余している大学生にピッタリの良質な大衆小説です。

第1回本屋大賞 5位:重力ピエロ/伊坂幸太郎

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 伊坂幸太郎 本屋大賞

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