ナマクラ!Reviews

04/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./06

第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

ファイティング寿限無 (201x290)
(あらすじ)
落語家が突然にボクシングを始めた。きっかけはケンカ。オレにはファイターの素質があったのか!?師匠の言葉「売れるためには、まず有名になること」を信じて、一人前の芸人になるためにチャンピオンを目指す日々。落語の楽しさと、スポーツの爽快さにあふれた青春小説の傑作。

answer.――― 80 点
売れない落語家が落語で生きていくために「ボクシング」を始めるというストーリーライン。ボクシングを題材にした小説というと、パッと思いついたところで、吉村昭の『鉄橋』と百田尚樹の『ボックス!』が浮かんだが、前者は轢死したボクサーの謎に多視点から迫る文学(的)作品なので、比較するなら《真っ当に》ボクシングを描いた後者だろう。そう、要所でボクシングの試合自体は相応に描いていているものの、本作がボクシングらしいボクシング小説かというと、やはり違うだろう。本作のエンターテイメントの核は主人公の師匠の言「落語家として売れるためにはまず有名になれ」。これを愚直に実践して、あくまで落語家として成り上がっていく主人公の様を楽しむ作品だ。ボクシングを最優先にしない態度、戦った相手へのリスペクトと一種の生き様を見せつけられるわけだが、そんな展開のなかでの「ぃよっ、職人芸!」と唸らせられたアレンジは、成り上がり話では定番の、調子に乗って―――な場面の不採用。これは、天賦発揮して昇り詰めていくボクサーの自分は仮初めであり、落語家として大成したい自分を自覚している主人公故に、当然と言えば当然の演出選択なのだが、案外と見落としてしまうもの。コンセプトの徹底は、それだけで価値がある。一本筋の通った、変則的なボクシング小説。師匠との別れも感動的でした。典型的な隠れた(?)良作でしょう。

第4回酒飲み書店員大賞 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼

category: た行の作家

tag: OPEN 80点 立川談四楼 酒飲み書店員大賞

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第3回酒飲み書店員大賞 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己

東南アジア四次元日記 (198x290)
(あらすじ)
会社を辞め、東南アジアへ旅に出た。遊園地にしか見えない教団施設、仏像の迷路、バナナを頭にのせた虎の像など、奇奇怪怪なものが続々登場。しかもその道程は、オンボロバスに乗せられたり、オカマの祭りで股間に危機が訪れたりと、ハイパーデンジャラス!

answer.――― 60 点
旅行エッセイストの著者による「そうだ、東南アジアに行こう!」という脱サラ後の過程を描いた旅行エッセイ。やや滑り気味の書き口がなかなか厳しかったものの、何と言うか、流石はExotic Asia!といった各国の文化の豆知識の紹介には実際、目が点になった。ベトナムにも盆栽の文化はあるようだが、《ベトナムの盆栽はさらに、その岩に五重の塔ふうパゴダや仙人仙女の人形などを配し、全体を箱庭のようにしてしまう》なんてのはその典型。トラブルに巻き込まれ気味な著者の性分と未知の分野を知れるという意味で、読み捨てる分には「可」なエッセイ。

第3回酒飲み書店員大賞 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己

category: ま行の作家

tag: OPEN 50点 宮田珠己 酒飲み書店員大賞

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第1回酒飲み書店員大賞 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

ワセダ三畳青春記
(あらすじ)
家賃12000円。早稲田の超ボロアパート野々村荘はケッタイな住人だらけ。三畳一間の私の部屋は探検部のタマリ場となり……。限りなく「おバカ」な青春を描いた書き下ろし傑作。

answer.――― 70 点
本作は、栄えある第1回酒飲み書店員大賞受賞作。著者は「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを面白おかしく書く」をモットーとしている高野秀行―――さて、どこかで聞いたことあるような?と思った貴方、そうです、著者は松本人志がMCを務める紀行バラエティ番組『クレイジージャニー』に複数回出演している、あの“クレイジー”な旅人です。そんなわけで、本作の概要は、ワセダのぼろアパート野々村荘を舞台に、すでに“クレイジー”な兆候を見せている著者と大家、そして、ズレた住人たちの半自伝的青春狂想譚。エッセイらしくアタリハズレは多いものの、実体験だと思うと“ここではない、どこかへ”感溢れるファンタジーに読め、趣きも出る。「守銭奴も名探偵」「第一次野々村大戦」「だから結婚式はいやなんだ!」あたりが個人的に《当たり》なエピソード。特に「だから結婚式はいやなんだ!」は著者のパーソナルも光るイチオシの一編に挙げたい。正味な話、『クレイジージャニー』(の映像&トーク)ほどには楽しめなかったが、(……こんな人いるんだ)的楽しみ方は十分出来ました。

第1回酒飲み書店員大賞 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

category: た行の作家

tag: OPEN 70点 高野秀行 酒飲み書店員大賞

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酒飲み書店員大賞受賞作一覧


▼ 第11回~ (2015年~) ▼



第12回 受賞作:ベンチウォーマーズ/成田名璃子
第11回 受賞作:海と真珠/梅田みか

▼ 第1回~第10回 (2005年~2014年) ▼

酒飲み書店員大賞1

第10回 受賞作:球団と喧嘩してクビになった野球選手 破天荒野球選手自伝/中野渡進
第9回 受賞作:セレモニー黒真珠/宮木あや子
第8回 受賞作:キネマの神様/原田マハ
第7回 受賞作:俺たちの宝島/渡辺球
第7回 受賞作:アフリカにょろり旅/青山潤
第6回 受賞作:月読/太田忠司
第5回 受賞作:太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾
第4回 受賞作:ファイティング寿限無/立川談四楼
第3回 受賞作:東南アジア四次元日記/宮田珠己
第2回 受賞作:笑う招き猫/山本幸久
第1回 受賞作:ワセダ三畳青春記/高野秀行

category: 酒飲み書店員大賞

tag: OPEN 受賞作List 酒飲み書店員大賞

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わ行&数字の作家一覧

 わ行&数字    

和ヶ原聡司
渡瀬草一郎
渡辺球
渡辺優
渡辺由佳里
和田賢一
和田竜
渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 作家一覧

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や行の作家一覧

 や行    

安井健太郎
安田依央
柳広司
八薙玉造
柳実冬貴
柳田狐狗狸
矢野隆
矢作俊彦
山形石雄
山口泉
山口幸三郎
山門敬弘
山田宗樹
山田太一
山之口洋
山原ユキ
山本修一
山本幸久
弥生翔太
梁石日
結城充考
遊歩新夢
行田尚希
行成薫
雪野静
柚木麻子
弓弦イズル
横山忠
横山秀夫
吉田修一
吉田直
吉富有
吉村夜
よしもとばなな
米澤穂信
米村圭伍

category: や行の作家

tag: 作家一覧 OPEN

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は行の作家一覧

 は行    

橋本和也
橋本紡
橋本長道
ハセガワケイスケ
長谷川潤二
支倉凍砂
長谷敏司
長谷川昌史
畠中恵
畑野智美
八針来夏
葉月堅
葉月双
初美陽一
鳩島すた
花村萬月
羽根川牧人
帚木蓬生
浜崎達也
葉巡明治
原岳人
原田マハ
張間ミカ
坂照鉄平
東川篤哉
東野圭吾
東山彰良
氷川透
菱田愛日
ひびき遊
日野俊太郎
日昌晶
百田尚樹
平坂読
平山瑞穂
広沢サカキ
弘也英明
深緑野分
福井晴敏
福田政雄
藤谷治
藤田雅矢
籘真千歳
藤まる
伏見つかさ
藤水名子
藤本圭
冨士本由紀
船戸与一
古川日出男
古処誠二
古橋秀之
星野亮
窪美澄
穂邑正裕
堀川アサコ
誉田哲也
本田誠

category: は行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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さ行の作家一覧

 さ行    

雑賀礼史
西條奈加
斉藤直子
佐浦文香
冴木忍
三枝零一
冴崎伸
早乙女朋子
坂入慎一
榊一郎
酒見賢一
坂本和也
桜井光
桜井美奈
桜坂洋
桜庭一樹
佐々木譲
細音啓
佐々之青々
佐藤亜紀
佐藤ケイ
佐藤賢一
佐藤茂
佐藤多佳子
佐藤哲也
里見蘭
狭山京輔
更伊俊介
沢村凛
椎田十三
椎葉周
時雨沢恵一
重松清
梓崎優
静月遠火
雫井脩介
紫野貴李
しなな泰之
篠田節子
志瑞祐
柴村仁
嶋本達嗣
島本理生
志村一矢
下村智恵理
十文字青
殊能将之
白石一文
白石かおる
白井信隆
白川敏行
白鳥士郎
白星敦士
真藤順丈
新堂冬樹
新保静波
真保裕一
周防柳
杉井光
鈴木光司
鈴木鈴
鈴木大輔
涼元悠一
須藤靖貴
住野よる
清野静
清涼院流水
関口和敏
関口尚
関俊介
瀬那和章
蝉川タカマル
蘇部健一

category: さ行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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あ行の作家一覧

 あ行    

逢空万太
葵せきな
青葉優一
青田八葉
蒼山サグ
暁なつめ
赤月黎
茜屋まつり
赤松中学
亜紀坂圭春
秋田禎信
秋月煌
秋月涼介
秋穂有輝
秋山鉄
秋山瑞人
日日日
浅井ラボ
朝井リョウ
アサウラ
朝倉勲
浅暮三文
朝田雅康
あさのあつこ
あざの耕平
足尾毛布
飛鳥井千砂
東佐紀
東亮太
阿智太郎
雨木シュウスケ
天酒之瓢
天埜冬景
天野純希
尼野ゆたか
雨宮諒
綾崎隼
新井円侍
有川浩
有沢まみず
淡路帆希
庵田定夏
飯嶋和一
五十嵐雄策
池上永一
池永陽
伊坂幸太郎
石崎幸二
石田衣良
和泉ひろみ
石野晶
石原宙
市川拓司
一乃勢まや
壱月龍一
一色銀河
いとうせいこう
絲山秋子
稲見一良
乾くるみ
犬村小六
井上堅二
井上悠宇
井村恭一
入江君人
入間人間
岩井志麻子
岩井恭平
岩城けい
岩佐まもる
いわなぎ一葉
岩本隆雄
うえお久光
上野歩
宇佐美游
内堀優一
宇月原晴明
兎月山羊
兎月竜之介
宇野朴人
冲方丁
浦賀和宏
虚淵玄
江國香織
榎木津無代
遠藤浅蜊
大澤誠
大島真寿美
大森藤ノ
岡崎弘明
岡崎裕信
おかゆまさき
小川博史
小河正岳
小川洋子
沖田雅
荻原規子
荻原浩
奥泉光
奥田英朗
小田雅久仁
乙一
乙川優三郎
乙野四方字
小野不由美
小山歩
恩田陸

category: あ行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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第13回ファンタジア大賞 努力賞:Varofess I -ヴァロフェス-/和田賢一

ヴァロフェス (207x290)
(あらすじ)
彼は、誰のことも愛さない。彼を、誰も愛しはしない。真黒き忌み鳥、鴉の顔を持って、彼は生まれた。黒衣のヴァロフェス。一国の王子でありながら、その呪われた姿のためにヴァロフェスは母と祖国と、彼が心を許したただひとりの少女を失った。悲劇のすべては、絶望の始まりは、魔術師マクバの陰謀。そして、ヴァロフェスには、―――復讐が残された。

answer.――― 62 点
“復讐”という単純明快な目的を持つ主人公ヴァロフェスの物語。まず目に入るアレンジはその造形で、鴉の顔を持つ、という醜いアヒルの子ならぬ醜いアンチヒーローな出で立ち。当然、孤独であり、その横にいるのはお喋りな木偶人形オルタンのみ。しかし、“復讐”のキッカケとなった愛する女性と似た少女と出会い、……と、ここまで書けば、後はお分りでしょう。「先」が読めることの是非(& more!)はこの「Varofess」シリーズが二巻で打ち切りになった事実で察せられるとして、しかし、作中で拾ってあげたいところはヴァロフェスの仇敵マクバの存在感。漫画『ベルセルク』のゴッドハンドを想起させる遠謀深慮の怪物的人物で、己、そして、終盤に明かされる、崇め奉る「王子」ヴァロフェスでさえ矮小な存在であると嘯く場面は圧倒されること必至。作中世界の構築は上等の部類に入るだろう。エピローグも決して晴らさず、仄暗いままのto be continuedな形に仕上げていて好感を抱いた。……売れる!とは間違っても思えないが、まさしく努力賞を与えたくなる一作。繰り返すけど、マクバ、良い(゚∀゚)bグッジョブ!

第13回ファンタジア大賞 努力賞:Varofess I -ヴァロフェス-/和田賢一

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 60点 和田賢一 ファンタジア大賞努力賞

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第16回ファンタジア大賞 準入選:トウヤのホムラ/小泉八束

トウヤノホムラ (206x290)
序章
第一章 炎をはじまり
第二章 FIRST MISSION
第三章 反目
第四章 水面は揺れる
第五章 トウヤのモムラ
終章

answer.――― 65 点
船津東哉は“神”である。―――というあらすじのリード文から察せられる内容の通りの伝奇アクション。物語は、社に10年監禁されていた主人公・船津東哉が従妹より解放され、報復の誓いを内に刻みながら、目の前の危機へ備えるストーリーライン。一読して、語彙豊富、ライトノベルの“華”である戦闘描写も達者な筆力が魅力的。ファンタジア大賞は時流への対応がイマサンながら、この時期の受賞作は総じて筆力が高い印象がある。本作もその印象を証明してくれるように、(著者が)描きたいことを描ける筆が確認出来た。しかし1ブロックそのままの《説明》も散見され、著者(&作品)にとって必要でも……という贅肉は明確なマイナス項目。読ませられる自信があったのだろうが、目新しさのない《説明》は次の頁をめくる意欲を削ぐ。著者に必要だったのは、エンターテイメントへの謙虚さだろう。06~07年というと、奈須きのこ&moreの影響を受けた新伝綺な作風が蔓延し、本作のような凄惨な描写もない、真っ当過ぎる作品はもはや論外に追いやられていたと思う。己の断筆を賭けて《面白さ》を突き詰めれば、このような仕上がりにならなかったはずだ。それでも、作品としての仕上がりは「買える」ところ。次作があるなら断筆を賭けた、渾身のエンターテイメント作品を創ってくださいな。

第16回ファンタジア大賞 準入選:トウヤのホムラ/小泉八束

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 小泉八束

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第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

太陽戦士サンササン (205x290)
(あらすじ)
「太陽戦士サンササン、降臨ッ!」来間鉄斎が出会ったのは族メットに憑依した自称・異世界の勇者ジャバだった。彼は伝説の勇者となるため、自分を装着することを鉄斎に強要する。鉄斎は全面拒絶するが……!?

answer.――― 66 点
ライトノベルには《イラスト》があり、そして、一部(以上)の人にとってそれは紛れもない本編冒頭よりも大事な「顔」となっている。さて、本作の表紙をご覧あれ。ホットパンツの女の子はとりあえず可としても、その横にいるのは髑髏マーク入りの族メットをかぶった、何ともダサい……はいっ、(負けの方向で)勝負あり!である。がしかし、実際に読んでみれば、族メットに異世界から勇者が転生するという間抜けな設定ながら、まさかの真っ当に「熱い」ヒーローものであることに驚くだろう。そして、語彙豊富、描写力もあって真っ当に「巧い」と来たら、もはや苦笑いするしかない迷作決定である。詰まる/詰まらないで云えば、詰まる作品なのだが、……如何せん、《読みたい》と思わせる設定で描かなかったのが最大の敗因。テツ、ジャバ、詩菜、麻琴の主要登場人物は勿論、ラストでは敵方ニカ・カジにまで華を持たせようとする姿勢も意欲的。書き手としての実力は認めたいところなので、読み手にもっと真面目に寄り添ってみましょう。仮に「売れない」ままだったら、《売れ線》を真面目に研究していないだけなので同情の余地も無し。

第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 坂照鉄平 ファンタジア大賞準入選(金賞)

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このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

この素晴らしい世界に祝福を (203x290)
(あらすじ)
ゲームを愛する引き籠もり少年・佐藤和真の人生は、あっけなく幕を閉じたはずだったが、目を覚ますと目の前に女神と名乗る美少女が。「異世界に行かない?一つだけ好きな物を持っていっていいわよ」「じゃあ、あんたで」ここから異世界に転生したカズマの大冒険が始まる―――と思いきや、衣食住を得るための労働が始まる!

answer.――― 69 点
目下、ここで人気を得れば“とりあえず……”の売上を約束されるウェブサイト「小説家になろう」発、例によっての“異世界転生”を題材とした一作。本作の主人公・佐藤和真は《引きこもりでニート》、そこから何とも間抜けな事故で現実から退場――転生の場で小馬鹿にしてくれた女神アクアを道連れに、新たな冒険人生を始めるストーリーライン。一読して、コストパフォーマンスの高さに目を瞠らせてもらった。文章をこね回すことなく、高飛車お馬鹿な女神、中二病全開のロリ魔女、超ドM変態の女騎士といったキャラクターを配し、無能で常識的な主人公に呆れ、キレさせていくテンポの良さ―――解かり易さは、これぞ、“ライト”ノベル!と云える即席の享楽を堪能出来る。序盤早々に披露される、生活費稼ぐための「ジャイアントトード五匹討伐」なんて課題は、生粋のライトノベラーならばそのフレーズを見ただけで、著者の“活躍”を確信するのではないだろうか。如何せん、中身は無い。しかし、これは著者自身が楽しんでいないと書けない代物であり、それはコミカル路線歩む作品が世に羽ばたく上でもっとも重要で、もっとも維持難しい大事な核だ。シリーズ累計300万部超えも納得の“パーティー”ラノベ。何も考えず、ただただ作品世界に埋没したいライトノベラーにこそお薦め出来ます。

このライトノベルがすごい!(2017年版) 9位:この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま/暁なつめ

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 暁なつめ このライトノベルがすごい!

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第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

殺戮のマトリクスエッジ (203x290)
序章
第一章 少年と少女
第二章 少女と少年
第三章 獣
補章

answer.――― 68 点
時代は西暦20××年、舞台は東京湾上に建設された次世代型積層都市トーキョー・ルルイエと置いたサイバーパンクアクション。電脳ネット上に現れる《ホラー》なる怪物を単独で狩り続ける主人公がある日、謎の少女と出会い、救ったことから始まるストーリーライン。ジャンルがジャンルだけに「説明」処理が著者の手腕試される試金石なわけだが、かのライアーソフトの主力シナリオライターだけにその辺りは如才なく仕上げているのが好感。序盤も序盤から現れる都市伝説《ホラー》をあえて謎のまま、作品世界の根幹である電脳ネットもことさら詳しく言及せず、謎のBoy Meets 謎のGirlを推し進める様はまさに大胆不敵。そうして、誰しも読み疲れる中盤での作中世界の「説明」処理―――ある種の匠を堪能出来るだろう。しかしながら、パッと読んでオリジナリティ溢れていそうでも、いざ読んでみれば……な既視感ある設定、ストーリー展開は残念と言えば残念なところ。著者自身が本作にたとえば絶筆の想いを込めれば「化けた」のでは?書けたから書いた、みたいな仕事感が本作に垣間見える。個人的に《ホラー》というシンプルなネーミングの謎の敵から、第12回電撃小説大賞《金賞》受賞作『哀しみキメラ』を思い出した。こちらは《モノ》なので、対比してみればセンスの差を感じられると思う(笑)何にせよ、「そこそこ」な一作。

第3回ラノベ好き書店員大賞 8位:殺戮のマトリクスエッジ/桜井光

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 桜井光 ラノベ好き書店員大賞

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ラノベ好き書店員大賞ランクイン作品一覧


▼ 第3回 (2014年) ▼

ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか

1位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
2位 ナイツ&マジック/天酒之瓢
3位 グランクレスト戦記/水野良
4位 灰と幻想のグリムガル/十文字青 
5位 氷の国のアマリリス/松山剛
6位 クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿
7位 未完少女ラヴクラフト/黒史郎 
8位 殺戮のマトリクスエッジ/桜井光
9位 グラウスタンディア皇国物語/内堀優一
10位 エーコと【トオル】と部活の時間。/柳田狐狗狸

▼ 第2回 (2013年) ▼

マグダラで眠れ (204x290)

1位 マグダラで眠れ/支倉凍砂
2位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
3位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン
4位 魔法少女育成計画/遠藤浅蜊
5位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望
6位 覇剣の皇姫アルティーナ/むらさきゆきや
7位 俺、ツインテールになります。/水沢夢
8位 とある飛空士への誓約/犬村小六
9位 森の魔獣に花束を/小木君人
10位 も女会の不適切【アイ・ド・ラ】な日常/海冬レイジ

▼ 第1回 (2012年) ▼

のうりん (205x290)

1位 のうりん/白鳥士郎
2位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
3位 雨の日のアイリス/松山剛
4位 東雲侑子は短編小説を愛している/森橋ビンゴ
5位 六花の勇者/山形石雄
6位 問題児たちが異世界から来るそうですよ?/竜ノ湖太郎
7位 アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者/榊一郎
8位 葵~ヒカルが地球にいたころ~/野村美月
9位 こうして彼は屋上を燃やすことにした/カミツキレイニー
10位 犬とハサミは使いよう/更伊俊介

category: ラノベ好き書店員大賞

tag: OPEN 受賞作List ラノベ好き書店員大賞

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このライトノベルがすごい!ランクイン作品一覧


▼ 2017年度 ▼

りゅうおうのおしごと (204x290)

1位 りゅうおうのおしごと!/白鳥士郎
2位 Re:ゼロから始める異世界生活/長月達平
3位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬  
4位 ソードアート・オンライン/川原礫
5位 ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも
6位 メロディ・リリック・アイドル・マジック/石川博品
7位 ゲーマーズ!/葵せきな
8位 弱キャラ友崎くん/屋久ユウキ
9位 この素晴らしい世界に祝福を!/暁なつめ
10位 この恋と、その未来。/森橋ビンゴ

▼ 2016年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ソードアート・オンライン/川原礫
3位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人
4位 エイルン・ラストコード ~架空世界より戦場へ~/東龍乃助
5位 終末なにしてますか? 忙しいですか? 救ってもらっていいですか?/枯野瑛
6位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
7位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
8位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
9位 冴えない彼女の育てかた/丸戸史明
10位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望

▼ 2015年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ソードアート・オンライン/川原礫
3位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐
4位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
5位 後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール/石川博品
6位 絶深海のソラリス/らきるち
7位 エスケヱプ・スピヰド/九岡望
8位 とある飛空士への誓約/犬村小六
9位 この恋と、その未来。/森橋ビンゴ
10位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人

▼ 2014年度 ▼

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている

1位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航
2位 ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン/宇野朴人
3位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
4位 ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか/大森藤ノ
5位 ソードアート・オンライン/川原礫
6位 はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司
7位 東京レイヴンズ/あざの耕平
8位 六花の勇者/山形石雄
9位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
10位 ノーゲーム・ノーライフ/榎宮祐

▼ 2013年度 ▼

ソードアートオンライン

1位 ソードアート・オンライン/川原礫
2位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
3位 六花の勇者/山形石雄
4位 バカとテストと召喚獣/井上堅二   
5位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
6位 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航  
7位 デュラララ!!/成田良悟    
8位 「東雲侑子」シリーズ/森橋ビンゴ
9位 サクラダリセット/河野裕 
10位 境界線上のホライゾン/川上稔

▼ 2012年度 ▼

ソードアートオンライン

1位 ソードアート・オンライン/川原礫
2位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
3位 ベン・トー/アサウラ
4位 円環少女/長谷敏司   
5位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
6位 僕は友達が少ない/平坂読  
7位 涼宮ハルヒの憂鬱/谷川流    
8位 丘ルトロジック/耳目口司
9位 アイドライジング!/広沢サカキ 
10位 雨の日のアイリス/松山剛

▼ 2011年度 ▼

とある

1位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬
2位 僕は友達が少ない/平坂読
3位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
4位 ソードアート・オンライン/川原礫
5位 ベン・トー/アサウラ
6位 “文学少女”シリーズ/野村美月
7位 "生徒会の一存"シリーズ/葵せきな
8位 俺の妹がこんなに可愛いわけがない/伏見つかさ
9位 デュラララ!!/成田良悟
10位 神様のメモ帳/杉井光

▼ 2010年度 ▼

バカとテストと

1位 バカとテストと召喚獣/井上堅二
2位 "化物語"シリーズ/西尾維新
3位 “文学少女”シリーズ/野村美月
4位 とらドラ!/竹宮ゆゆこ   
5位 "生徒会の一存"シリーズ/葵せきな
6位 黄昏色の詠使い/細音啓   
7位 嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん/入間人間    
8位 ベン・トー/アサウラ
9位 とある魔術の禁書目録/鎌池和馬  
10位 蒼穹のカルマ/橘公司

category: このライトノベルがすごい!

tag: OPEN 受賞作List このライトノベルがすごい!

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ま行の作家一覧

 ま行    

舞城王太郎
前川麻子
万城目学
真代屋秀晃
又吉直樹
松樹剛史
町田康
松下寿治
松時ノ介
松村涼哉
松山剛
まみやかつき
丸戸史明
円山夢久
三浦しをん
水鏡希人
三門鉄狼
三上延
三河ごーすと
三國青葉
三雲岳斗
三崎亜記
水口敬文
水沢夢
水野良
水森サトリ
道尾秀介
美奈川護
水瀬葉月
湊かなえ
峰守ひろかず
宮沢周
宮下奈都
宮部みゆき
三羽省吾
海羽超史郎
六塚光
村上春樹
むらさきゆきや
村山由佳
森絵都
森青花
森田季節
森田陽一
森月朝文
森橋ビンゴ
森博嗣
森見登美彦
森村南
諸星悠

category: ま行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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第13回本屋大賞 10位:火花/又吉直樹

火花 (203x290)
(あらすじ)
お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。

answer.――― 75 点
賛否両論の評判からどんなKAGEROUなのかと思いきや、意外や意外、何とも「まとも」な作品に仕上がっている本作『火花』は、お笑いコンビ「ピース」の先生こと又吉のデビュー作であり、純文学における大天下の芥川龍之介賞をベストセラーの勢いそのまま受賞した話題作。その概要は、売れない芸人が売れない先輩芸人と出会い、その壊れたセンスに惹かれる、というもの。友人に純文学の書き方を訊いたとき、人に読ませようと思って書かないこと、という答えが返ってきて半ば感心したことがあったが、その大前提の上で「読ませる」工夫が出来ていると、その他大勢から抜け出せるのだろう―――とは手前味噌なレヴュー、『恋人といっしょになるでしょう』稿からの引用だが、その観点からすれば、本作は「読ませる」工夫がしっかり施されている。たとえば、それは著者の実体験を想起させる「お笑い芸人」を題材にしていることだったり、芸それ自体には関係のない色恋の要素、そして、何より「結」で提示される先輩芸人の壊れた「笑い」で確認出来る。純文学は《人間》を描くジャンルであり、そこで求められるのは《面白い》というより《興味深い》ことだ。本作では、お笑い芸人という特殊な職業(とそこへ就いた者たちの感性)に焦点を当てつつ、エンターテイメントとして先輩芸人の「壊れ」具合を披露しているのが素晴らしい。飛び抜けた技巧や無二のセンスこそ無いが、本作を純文学へ該当させるだけの《仕事》は為されている。目くじらを立てることはないのではないでそうか。というか、良作じゃん?これが駄目なら今の純文学、ほとんど駄目だろ。個人的には、先輩芸人の恋人が実話っぽくて興味深かったです。

第13回本屋大賞 10位:火花/又吉直樹

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 又吉直樹 本屋大賞

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:All Time Best!!】


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ようやく新たな【All Time Best!!】が完成!感無量であります!能書きは下にたらたらと書いてございますので、挨拶はこの辺で切り上げまして。小説すばる新人賞に興味がありつつも未読のまま、……な方は参考にしてみて下さい!では、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれている本作。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の大レース「天皇賞(秋)」……そのゲートが開く間際につぶやかれる「ショウサン」は、誰が読んでも鳥肌立つ名演出。小説の醍醐味を得られること間違いなし!小説すばる新人賞の受賞作で娯楽を求めるなら、まずは本作をお薦め致します。

どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの戦国Rock 'n' Roll!文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが素晴らしい。三味線速弾く藤次郎と「黒人」弥介の放つアフリカン・ビートの衝突、男臭さ霧散させる「踊り手」ちほ、実質の物語担うヘタレな「笛吹」小平太―――と、主要登場人物の役割に抜かりはない。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。兎も角、稀に見る「痛快」な一作。

千早茜の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性はこのデビュー作から発揮されていたことを証明するように、小説すばる新人賞のみならず泉鏡花文学賞も受賞。『物語』をある種必要としない、希少な筆は「売られる」ために育てられた美しい姉弟の堕ちていく《耽美》な様を見事に描き切った。表紙には宇野亜喜良を起用。業界からの期待の高さが伺えます。

才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、……だからこそ!と推したくなるデビュー作らしいデビュー作。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出した真実が情熱的に刻まれている。新旧”天才”対決―――心躍ります。第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説としても立派なお墨付きを得ている作品。

専門家も唸る“知識”をエンターテイメントの一要素として作品へ組み込む、インテリゲンチャご用達の作家の一人・佐藤賢一のデビュー作。夢を求めて渡ったイスパニアの地で恋に落ちるも夢を忘れられず、誘いのままに戦に出掛ける侍―――その様は実に情動的で「悲劇」と呼ぶに相応しい。作品の「質」という観点では、ここで上位に選んだ四作よりも実質、本作のほうが上だろう。しかし重厚、故に生半可な読者では忌避感出てしまうのも避けられない。「表題」は壮大な仕掛けなので、手に取ったら最後まで読み切りましょう。かの銃士隊隊長の登場も必見です。

なかなか手を伸ばしにくい「発達障害」を題材にしたハートフルな一作。例によって、お涙頂戴!な展開なのだが、視点人物を二人配し(「発達障害」役は一人)、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したことで、終盤の「吐露」がいよいよ胸に突き刺さる。あくまで現実的な設定に根ざした上で視点人物、両者に起こる中盤のイベントは実質の最大級!この思い切りの良さは燻る作家群は是非参考にして貰いたいところ。出し惜しみなし!

☆☆  総評  ★★

【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】の稿でも言及したが、小説すばる新人賞の受賞者には、後に天下の直木三十五賞、大天下の芥川龍之介賞を受賞した作家が多数いる。もっとも、それは第10回までの受賞者に集中していたが、最近では朝井“(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!”リョウが『何者』で直木三十五賞を受賞、作品が候補に挙がった千早茜も控え、新人作家の良質な登竜門として盛り返し、面目を保っている印象。さて、 この【小説すばる新人賞:All Time Best!!】だが、見事なまでにその直木賞&芥川賞作家たちの作品を選んでいない。かろうじて佐藤賢一の『ジャガーになった男』を第5位に取り上げてはいるが、娯楽小説としては重厚な作風なために、個人的には選びたくなかった。もっとも、読めば「質」の高さは否定出来ないところなので、妥当と言えば妥当な選出だとも思っている。小説すばる新人賞は文学賞ではない。あくまで大衆小説、娯楽を提供出来る作家の輩出を意図した公募賞なのだから、万人が「面白い!」と唸りたくなる作品こそ推薦したい。という観点から考えると、個人的に第1位と第2位に置いた作品―――『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は不動の2トップ。どこの公募賞に出しても受賞するだろうクオリティーが両作にはある。後者はセールスが評判に追いついていない印象もあるので、未読の方は是非手に取って読んで欲しい。第3位、第4位のランクイン作品は若書きが心地良いデビュー作らしいデビュー作。青田買いの楽しみが味わえる。【次点】は複数候補あったものの、《感動》出来る観点で選出。終盤に披露される発達障害者の《吐露》のカタルシスたるや尋常ではない。選ばなかった作品では、篠田節子の『絹の変容』はVividなホラーSFで、やはり著者の可能性を感じざるを得ないところ。“森見登美彦のプロトタイプ”な『草小路鷹麿の東方見聞録』、“ザ・伊坂幸太郎”な作風の『名も無き世界のエンドロール』、著者の次作を期待させる爽やかな『はるがいったら』あたりも拾い物。しかし、まあ、……未読ならばランクイン作品を順番に読んで頂きたい。実際問題、「面白い!」は人それぞれだが、それでもかぶるものはかぶるのである。受賞作を読む!というコンセプトで消化していくと「おい、何で消えた!?」な葬り去られた作品、「全盛期はここだったか!?」な再発見な作家と出会えるわけだが、この小説すばる新人賞では『ジョッキー』を拾えたのが競馬好きの私としても最大の収穫でした。大衆小説らしい大衆小説、しっかりと引き継ぎたい良質の遺産(旧作)です。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

85

84

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】
    魚神/千早茜  【第3位】

82

81

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第5位】

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第4位】

78  はるがいったら/飛鳥井千砂

77  

76  絹の変容/篠田節子
    ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也
    名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉
    粗忽拳銃/竹内真
    国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  赤と白/櫛木理宇
    涼州賦/藤水名子
    笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    八月の青い蝶/周防柳
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ
    パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年03月03日/修正

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【第11回~第20回】は⇒こちらへ!

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category: この受賞作を読め!

tag: OPEN この受賞作を読め!【小説すばる新人賞】 小説すばる新人賞

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第29回!】


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まだ第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なんだけど、未読なんだけど、俺は今書きたいから、そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!精神で仕上げさせて頂きました。同作を後々レヴューした後、改めてこの稿も改稿する予定です。まあ、「最年少」なんてレッテルで売ろうとしているだけでしょ?きっと推したくならないっしょ!と予想中。ではでは、現時点での 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第29回!】、始めさせて頂きます!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

着々と直木三十五賞を受賞させるための計画が進行している感のある千早茜のデビュー作。もっとも、いざ読んでみればカオナシたちがバックアップしたくなるのも納得の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性が確認出来る。「売られる」ために育てられた美しい姉弟を主役に起用した本作でも、堕ちていく二人の《耽美》な様を描き切った。『物語』をある種必要としない、希少な筆は目撃する価値がある。小説すばる新人賞のみならず、本作は泉鏡花文学賞の受賞作。読んで損になることはまずないでしょう。

プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』。身を賭して掴んだその輪郭を、己の筆で女流棋士の新旧”天才”対決へ転換せしめたのが本作。才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、それだけに情熱も感じられる。「将棋」題材の作品として上等の部類でしょう。

発達障害者を題材にした作品となれば、お涙頂戴!となるのは必然なわけで、本作もそこに軒を連ねる。アレンジは互いに見掛けるだけで「交わらない」視点人物を二人配し、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したこと。「発達障害者」中村の苦悩は真摯なもので、終盤の怒濤の吐露はまさにハイライトに値する。なかなか手を伸ばしにくい題材ながら読み応えは十二分に有り。

(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!という人工的なベストセラー小説。皆が読んでるなら読んでおかないと、後々、センスを疑われる事態が生じることもあるので掛け捨ての保険扱いで押さえておきたいところ。

☆☆  総評  ★★

名実ともに小説すばる新人賞では随一の知名度を誇る『桐島、部活やめるってよ』をどう扱うかまず迷う、この第21回 から 第29回までの受賞作群。もっとも、最新作である第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なため、正確には―――この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第28回!】なのだが、その辺は「最年少」「現役高校生」というレッテルで売り出しているあたりからお察しして強気に無視。「現役大学生」というレッテルで売り出された『桐島、部活やめるってよ』の話題性を上書き出来るか否かが個人的な同作の焦点。そんなわけで、大衆小説として真っ当にお薦めしたいのが上述の『魚神』、『サラの柔らかな香車』、そして、『白い花と鳥たちの祈り』の三作。特に『魚神』、『サラの柔らかな香車』の二作はデビュー作らしいデビュー作で、著者の才気が奔っている印象。新人賞、新人作家ならではの若書きが楽しめるのが良い。選から漏れたが伊坂幸太郎クローンな『名も無き世界のエンドロール』、メディアワークス文庫賞を授与したいラノベ風味な『ラメルノエリキサ』あたりも拾いどころ。正味、小粒な受賞作が揃った感もあるが、大ハズレもない(……本当かな?と自分でも懐疑的になったワw)のは大台である第30回を迎える新人賞、作家への登竜門としてしっかり認知されているからだと思う。今後も良質な作品を輩出して頂きたいですね、ハイ。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

83  魚神/千早茜  【第1位】

80  

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第2位】

78  

77  

76  ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【第3位】

☝  満足  ☟  普通


74  名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  

69  赤と白/櫛木理宇    

68

67  

66  

65  八月の青い蝶/周防柳

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ  【次点】

☝  普通  ☟  不満


59  

55  

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  

☝  不満  ☟  アマチュア


35  

現在、2017年03月01日/修正

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】


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前回から二日で脱稿!というわけで、間隔短く 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】へGo!計画は成功と相成りました。まあ、この受賞作を読め!は該当作品のレヴューから引用するから書きやすいのが大きいね。ではでは、 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】のお薦め作品をご紹介させて頂きますYo!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

個人的に小説すばる新人賞の受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれているのが特徴。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は負けるために、己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の名場面、「ショウサン」の一言を見逃すな!

「ビックリするくらい似てました(笑)」と“サムライ・ギタリスト”MIYAVI(G.)も認めた三味線操る藤次郎を中心とした戦国Rock 'n' Roll。どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの怪演は痛快そのもので、文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが何より素晴らしい。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。

西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品。平凡な登場人物たちを配して、読み手を楽しませる――というのは作家の手腕試されるところだが、突拍子もない設定を出すことなく《日常》を不穏→爽快へ展開させて描き切ったのは、著者の今後の活躍を予感させてくれる。デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末は著者のインテリジェンスを感じました。良作です。

☆☆  総評  ★★

先に断わっておくと、以下の【受賞作:点数一覧】からも分かるように、第1位から第3位まではすんなりと点数通りにお薦め出来たのだが、【次点】は今回はあえて選ばないでおいた。というのも、三作が頭抜けているのもあるが、そもそも、2位と3位のお薦め具合の差が点数以上に離れているからだ。好みの差こそあれ、まず誰が読んでも『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は「面白い!」と唸らせられると思う。この二作は大衆小説として本当にお薦め出来る。しかしながら、点数通りに拾うと【次点】となる『粗忽拳銃』は個人的に贔屓にしたくなる玄人具合。地味に「巧い」、渋いけど「巧い」のである。(……この作家、生き残ってるだろ)と検索してみれば、やはりしぶとく生き残っていた。是非とも、遅咲きの桜を咲かせて貰いたいものである。他の受賞作で目ぼしいものといえば、『天使の卵 エンジェルス・エッグ』『笑う招き猫』か。前者は当時のベストセラー、後者は目下、巷で話題の清水富美加さんが主演して撮影済みのドラマの行く末を心配されている作品である。まあ、何にせよ、この【第11回 ~ 第20回!】の主役は『ジョッキー』、そして、『桃山ビート・トライブ』だ。あ、第3位の『はるがいったら』も面白いですよ?文学的なアプローチがスパイスになってて、ラストも「隣同士」なんてユーモアで〆めてくれるので著者の知性を感じられます。犬が好きな人なら尚良し。ただ、比べる相手が悪かっただけです。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】

80  

78  はるがいったら/飛鳥井千砂  【第3位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  

73  粗忽拳銃/竹内真

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59

現在、2017年02月24日/修正

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】


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ようやく消化し終えた小説すばる新人賞の受賞作群―――となれば、(開設当初は)ナマクラ!Reviews恒例(にするはずだった)、『この受賞作を読め!』を始めようではあーりませんか!とりあえず、まずは【第1回 ~ 第10回!】から選んでみましたよ!総仕上げの【All Time Best!】は【第11回 ~ 第20回!】、【第21回 ~ 第29回!】の企画記事を書き上げてからまとめる所存。さてさて、前置きはこれくらいに【第1回 ~ 第10回!】のこの受賞作を読め!をお楽しみあれ~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

己の身一つ、刀一つでどこまで成り上がれるのか―――夢を抱いて渡ったイスパニアで愛を知り、それでも、夢を忘れられなかった侍の成れの果てとは!?インテリゲンチャも唸る“知識”をさらりと施す佐藤賢一。デビュー作ながら、現在の作品と比しても見劣りしないクオリティーは圧巻の一言。新人離れとはまさに本作、著者を評すにピッタリの言葉だ。かの銃士隊隊長トレヴィルの登場には沸くこと必至。我こそは……!という読書家の方は挑戦してみましょう。

ボーダーレスに作品を産んでいく篠田節子のデビュー作は、巨大な蚕が襲ってくる!というB級臭漂うパニックSF。しかし、これがなかなかどうして―――真っ当に「恐ろしい」。野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物『蚕』という文学性持つ題材への的確なアプローチ、それをホラーに仕立て上げる手腕に唸らされた。ドラマ化作品の陰に隠れてしまっているが、著者のキャリアの中でも好作なのでは?個人的にイメージ変わりました。読めて良かった。

「無名」と断言して良いだろう草薙渉のデビュー作は、―――あの森見登美彦の《プロトタイプ》がここに!?と思わず銘打ちたくなる同質のユーモア吹き込まれた一作。生まれて26年間、広大な屋敷から一歩も外に出たことがなかった公家の末裔・草小路鷹麿というキャラクター、そして、彼によって味付け、解体される日常は絶品で、タイムレスな魅力に溢れている。森見登美彦ほどの筆力はないものの、思わぬ拾い物をした気分になれます。

小説や映画、女優……固有名詞とその“知識”を登場人物にさらりと口にさせるお洒落な作品。斜陽企業に就職した主人公のそれなりの奮闘というストーリーも、なかなかオツなもの。インテリ層に響く内容はないが、著者のセンスがとりあえず光る。個人的には、アーウィン・ショーに手を伸ばすキッカケを頂きました。読むなら暇を持て余したモラトリアムの時期にどうぞ。

☆☆  総評  ★★

記事にしている最中に気づいたが、この【第1回 ~ 第10回!】で小説すばる新人賞を受賞した作家のうち、後に天下の直木三十五賞を受賞したのが5人、大天下の芥川龍之介賞を受賞したのが1人という破格の事実。なるほど、こうなるとこの小説すばる新人賞が集英社出版四賞に数えられるのも分かる!五虎将軍かよ(笑)とか貧困な発想で小馬鹿にしてすまんかった!さて、そんなビッグネーム溢れる本賞の創世記だが、受賞作、そのクオリティーを総括してみると、エンタメ作品としては実に「渋い」印象。上に次点を含めて四作挙げさせてもらったものの、興味深さこそあれ、手放しで「面白い」と称えるのは難しい作品ばかり。その辺りは、第1位に『ジャガーになった男』を選んだところに象徴されている気がする。単純にエンタメ基準だけで言えば、後の直木賞受賞作家たちである荻原浩の『オロロ畑でつかまえて』、熊谷達也の『ウエンカムイの爪』を選びたくなるが、デビュー作だけに彼らの現在の作品ほどには完成されていないのが正直なところ。そんなわけで、この【第1回 ~ 第10回!】の受賞作のなかで個人的MVPは3位に挙げた『草小路鷹麿の東方見聞録』。著者の現代でも通じるユーモアには可能性しか感じない。若書きだからこそ……!の魅力は、出版から二十余年経った今さえ刻まれている。作家としてはもはや虫の息のようだが、是非とも逆襲の一作を上梓して欲しい。余談ながらに村山由佳も本賞から『天使の卵 エンジェルス・エッグ』でデビューしているが、同作は作品それ自体より五木寛之の選考評(レヴュー参照)が最大の読み応えを発揮しているところからお察しくだされば宜しいかと思います。何にせよ、受賞作を消化してみて、90年代はまだまだ大衆小説として発展し切れてない印象。現在の大衆小説のレベルの高さよ(流通量多いから必然駄作も多いが……)。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第1位】

79  

78  

77  

76  絹の変容/篠田節子  【第2位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩  【次点】
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉  【第3位】

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  涼州賦/藤水名子

66  

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  

63

62

61  

60  

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

40

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年02月24日/修正

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category: この受賞作を読め!

tag: OPEN この受賞作を読め!【小説すばる新人賞】 小説すばる新人賞

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第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

ユートピア (201x290)
(あらすじ)
地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤により社宅住まいをしている妻・光稀。そして移住してきた陶芸家・すみれ。美しい海辺の町で、三人の女性が出会う。自分の居場所を求めて、それぞれの理想郷を探すが……。

answer.――― 76 点
「美しい海辺の町」という何の変哲もない地方都市を題材にした本作は、視点を切り替えて複数の真実をあぶり出し、やがて事件の全貌を明かしていく“安心”の湊かなえ印の手法で描かれた作品。デビュー作の『告白』で提示してきたように、湊かなえは《善》であることを許さない。登場人物を徹底的に悪役に仕立て、その人生を嘆かせ、後悔させる―――そこに読み手は暗い安息を得るわけだが、Hateな輩がやはり揃う本作でもっとも口角上げさせてくれたのは、アートな志を持って町へ移住してきた陶芸家すみれ。これぞ凡才!という思考&行動を立ち去るその時まで披露してくれる。湊かなえの凄味はロールモデルが豊富なことだろう。ただ才能が無いだけでは偽者なり得ない。本当の偽者は何より己を知らず、虚栄、そして、虚勢を張るのだ。この辺の機微を登場人物にしっかり施せる故に、デビューよりベストセラー作家として驀進出来たわけである。がしかし、作家としていよいよ頭打ちの印象も。これしか出来ない!これしか書けない!はその実、その通りなわけだが、だからといって派手さに欠けてはいけない。寂れた地方都市の殺人事件とその解決なんて《キャラクター》でもいないかぎり読みたいとも思わない。大衆小説、その担い手であることを忘れてしまうと、後は筆も創造性も落ちていくだけだ。暗く地味な一冊、そうまとめられてしまえば元も子もない。

第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 湊かなえ 山本周五郎賞

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山本周五郎賞受賞作一覧


▼ 第21回~ (2008年~) ▼

③山本周五郎賞

第29回 受賞作:ユートピア/湊かなえ
第28回 受賞作:ナイルパーチの女子会/柚木麻子
第27回 受賞作:満願/米澤穂信
第26回 受賞作:残穢/小野不由美
第25回 受賞作:楽園のカンヴァス/原田マハ
第24回 受賞作:ふがいない僕は空を見た/窪美澄
第23回 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎
第23回 受賞作:光媒の花/道尾秀介
第22回 受賞作:この胸に深々と突き刺さる矢を抜け/白石一文
第21回 受賞作:果断 隠蔽捜査2/今野敏
第21回 受賞作:ゴールデンスランバー/伊坂幸太郎

▼ 第11回~第20回 (1998年~2007年) ▼

②山本周五郎賞

第20回 受賞作:夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦
第20回 受賞作:中庭の出来事/恩田陸
第19回 受賞作:安徳天皇漂海記/宇月原晴明
第18回 受賞作:君たちに明日はない/垣根涼介
第18回 受賞作:明日の記憶/荻原浩
第17回 受賞作:邂逅の森/熊谷達也
第16回 受賞作:覘き小平次/京極夏彦
第15回 受賞作:泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織
第15回 受賞作:パレード/吉田修一
第14回 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂
第14回 受賞作:五年の梅/乙川優三郎
第13回 受賞作:ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子
第12回 受賞作:エイジ/重松清
第11回 受賞作:血と骨/梁石日

▼ 第1回~第10回 (1989年~1997年) ▼

①山本周五郎賞

第10回 受賞作:ゴサインタン -神の座-/篠田節子
第10回 受賞作:奪取/真保裕一
第9回 受賞作:家族狩り/天童荒太
第8回 受賞作:閉鎖病棟/帚木蓬生
第7回 受賞作:一九三四年冬―乱歩/久世光彦
第6回 受賞作:火車/宮部みゆき
第5回 受賞作:砂のクロニクル/船戸与一
第4回 受賞作:ダック・コール/稲見一良
第3回 受賞作:エトロフ発緊急電/佐々木譲
第2回 受賞作:TUGUMI/吉本ばなな
第1回 受賞作:異人たちのとの夏/山田太一

category: 山本周五郎賞

tag: OPEN 受賞作List 山本周五郎賞

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第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

ラメルノエリキサ (201x290)
(あらすじ)
女子高生・小峰りなのモットーは、どんな些細な不愉快事でも必ず「復讐」でケリをつけること。そんな彼女がある日、夜道で何者かにナイフで切り付けられる。手がかりは、犯人が残した「ラメルノエリキサ」という謎の言葉のみ。復讐に燃えるりなは事件の真相を追うが……。

answer.――― 76 点
どんな些細な事でも必ず「復讐」でケリをつける女子高生が「ラメルノエリキサ」なる謎の言葉から自分を切りつけた通り魔を探すストーリーライン。《復讐》というおどろおどろしくも単純明快なテーマを女子高生が背負うというギャップ盛り込んだキャラクターメイクはライトノベル的で、実際、作品自体も躁なヒロインに負けず劣らずの登場人物たちが現れて混沌とした様相を楽しむものとなっている。作中のハイライトは、上述の「ラメルノエリキサ」の謎解き―――のわけなく、そのままズバリ、「復讐」に妄執するヒロインと張り合える歪んだ想いを抱える登場人物たちの遭遇&暴露。完璧なママ、たおやかな姉は、ヒロインの一人称だからこそのジェットコースター的演出を味わえる。とどのつもり、キャラクターが気に入れば好作となる受賞作。ストーリーを求めてはいけません。と書きつつ、著者の伸びしろは《物語》を用意出来るかどうかにかかっているので担当は求めたいところだろうね。

第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡辺優 小説すばる新人賞

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第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

砂漠の青がとける夜 (202x290)
(あらすじ)
溝端さんと会わなくなってから人肌の温度を深く味わう機会はほとんどなかった。準君の気配を感じようとすると、高校生の頃初めてできた彼氏の穏やかな声を思い出した。付き合いそうで付き合わず、何となく疎遠になった男の人たちの肌の記憶が、私の中で蘇る。けれどこの部屋には誰もいない。

answer.――― 45 点
別れを告げた不倫相手から「愛してる」と送り続けられる主人公(♀)がファンタジーなことを述べる中学生(♂)と出会い、というストーリーライン。率直に、退屈である。何が起きるわけでもなく、職を離れ、不毛な不倫から逃がれ、空虚な日々を送る主人公の心情が綴られているだけ。ただ、それだけの作品だ。仮に需要があるとすれば、主人公(の境遇その他)へ共感出来る可能性のある女性読者か。「言葉の使い方が繊細で行間が感じられる作品」と著者の筆が受賞へと繋がったようだが、無いものねだり―――自分が描けないアプローチを採られると無駄に評価してしまうもの。読み手でそれをエンターテイメント的に評価することはまず出来ないだろう。文章を積極的に評価させたい場合、《圧倒的》でなければならない。本作は当然、その域には達していない。

第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

category: な行の作家

tag: OPEN 40点 中村理聖 小説すばる新人賞

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第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

八月の青い蝶
(あらすじ)
急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学生のときに被爆していた。大日本帝国陸軍偵察機パイロットのひとり息子であった彼は、当時、広島市内に住んでいたのだ。妻と娘は、亮輔が大事にしている仏壇で、異様に古びた標本箱を発見する。そこには、前翅の一部が欠けた小さな青い蝶がピンでとめられていた。

answer.――― 65 点
「原爆」題材の振り返りモノ。と紹介されるだけで読む気を削がれる方もいらっしゃると思うが、かく云う私はその該当者の一人。この手の題材に触れる度に自分が読書に求めているのは結局、娯楽なのだと再確認させられるわけだが、実際、本作もWW2――リトルボーイによって引き裂かれた思春期がメインのストーリーライン。表題『八月の青い蝶』とあるように、「蝶」をキーワードにして父親の愛人へ「美貌」「儚さ」といった憧憬を重ねる演出。個人的に目を惹いたのは、愛人・希恵の昆虫学者の父の視線を《視姦》と喩えた点。《愛を分かちあってともに幸福になろうとも思わない愛。それが視姦する者のまなざし。残酷なまなざし。》なる言及は、成る程、と淡泊な感性を刺激してくれた。また、終盤も終盤に《何故、原爆を落とされて謝らねばならない!?》という日本人が忘れてはならない正論が繰り出されるのは痛快の一言。この部分は是非ともTeenagerに読んで頂きたいところ。が、やはり良くも悪くも、「原爆」題材の振り返りモノ。という範疇の作品であるのは間違いない。

第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 周防柳 小説すばる新人賞

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

赤と白 (206x290)
(あらすじ)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく。

answer.――― 69 点
雪国・新潟を舞台に、ボタンの掛け違えから女性特有の共同感覚的な友情が崩れ、バッドエンドへと突き進んでいく本作『赤と白』。失望、嫉妬、背徳……と、登場人物たちがそれぞれの形で抱く疑心は堂に入ったもので、そこへ過食症、ストーキングといった狂気垣間見させる設定をつけ、読み手へ何かが起こる予感(不安)をしっかりと与えてくれる。著者のデビュー作であり、シリーズにもなっている『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているように、上述の予感は《ホラー》のそれに近い。もっとも、本作のエンタメの核は《人間関係の歪み》といったところだが、読み手にどんな感想を抱かせたかったのかが曖昧なのが残念なところ。用意したキャラクター、イベントは相応だったと思うが、《人間》へ迫りたかったのだとしたら大味過ぎる。ついでに、大衆小説でそこを目指してしまうと、退屈へ到ってしまう。本作に足りないのは、ズバリHero(Heroine)。それを確立させるだけで「あーあ……」で終わってしまう結末にあっても、意志ある何者かがスタートを切ったことでしょう。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 櫛木理宇 小説すばる新人賞

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

名も無き世界のエンドロール (205x290)
(あらすじ)
ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?

answer.――― 74 点
過去と現在を織り交ぜつつ、「ドッキリスト」「ビビリスト」「プロポーズ大作戦」「一日あれば、世界が変わる」……と日常を《言葉》で彩り、いつの間にか非日常へと逸脱していく作風は、単刀直入に言って、伊坂幸太郎そのもの。一人の才人が道を切り拓けば、そこを通り(なぞり)、踏み固める者が現れるものだが、著者はその典型と言って差し障りない。そうなってくると、本家とのクオリティー勝負となるが、――やや劣勢、かなと。伊坂幸太郎の初期作品(ex.『重力ピエロ』)は、自分のそれまで生きていた日常(思い出&思春期に培った感性)を出し惜しみなくまぶしているが、本作ではそこまでのサービス精神を感じられないのが残念。フォロワー、という二番煎じ的扱いを無意識にしてしまうのもマイナスに働いてしまうだろう。それでも、いざ非日常パートへと突入する終盤は本家と伍する勧善懲悪のカタルシス。表題『名も無き世界のエンドロール』の言い得て妙な、哀しくも爽快感ある幕切れも何とも洒落て印象づけられる。昨今の伊坂幸太郎は持ちうる日常をすり減らし、退屈の域に達してしまったが、在りし日の伊坂幸太郎に出会いたい方にはお薦め出来る作品。ちなみに、「本当に何もかもが終わって、エンドロールが止まる時、あたしはようやく立ち上がれるようになる」なる作中の《台詞》が結末に響く構成。良くも悪くも、造りが丁寧なんだよね。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 行成薫 小説すばる新人賞

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第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

サラの柔らかな香車 (202x290)
(あらすじ)
プロ棋士の夢が破れた男と、金髪碧眼の不思議な美少女が出会う。彼女に将棋を教えると奇跡的な才能が開花する。厳しくも豊かな勝負の世界を描く傑作。

answer.――― 79 点
二十余年生きて真面目に人生を省みれば、どんな薄っぺらい過ごし方をしていようと、何かしらの真理、当人だけが導き出せる結論があると思う。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』か。ストーリーラインはプロ棋士になれず、パチンコで生計立てるくすぶった三十路男が発達障害を匂わせる金髪碧眼の美少女と出会い、女流棋士の新旧”天才”対決、その決着へ運ぶまで。作中、ひたすら「才能」について語られる。それは神聖視されたもので、日常、「才能」について考察する機会のない者にはその界隈の常識(ex.「難しい。非常に難しい質問だ。芥川名人は強い。本当に強い。どうしようもない。でもね、この世界では常に若い人が勝つんだよ」)が披露されるたびに新鮮に響き、刻まれる。本作で汲み取るべき醍醐味は著者が思春期を捧げて見出した「才能」なる不確かなものの輪郭で、登場人物たちの過去&現在はまさしくエンタメ的装飾でしかない。もっとも、上述の新旧”天才”対決は「才能」の他に、「覚悟」もスパイスとしてまぶしてあるため、+αが勝負の本当の分かれ目であることを示しているようで面白い。「才能」の連呼を一本調子に思えてしまう難こそあれ、情熱溢れる若書きが印象づけられるデビュー作。良質です。なお、将棋普及への貢献が認められ、本作は第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説として立派なお墨付きを得ている。

第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 橋本長道 小説すばる新人賞

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