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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:All Time Best!!】


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ようやく新たな【All Time Best!!】が完成!感無量であります!能書きは下にたらたらと書いてございますので、挨拶はこの辺で切り上げまして。小説すばる新人賞に興味がありつつも未読のまま、……な方は参考にしてみて下さい!では、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれている本作。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の大レース「天皇賞(秋)」……そのゲートが開く間際につぶやかれる「ショウサン」は、誰が読んでも鳥肌立つ名演出。小説の醍醐味を得られること間違いなし!小説すばる新人賞の受賞作で娯楽を求めるなら、まずは本作をお薦め致します。

どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの戦国Rock 'n' Roll!文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが素晴らしい。三味線速弾く藤次郎と「黒人」弥介の放つアフリカン・ビートの衝突、男臭さ霧散させる「踊り手」ちほ、実質の物語担うヘタレな「笛吹」小平太―――と、主要登場人物の役割に抜かりはない。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。兎も角、稀に見る「痛快」な一作。

千早茜の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性はこのデビュー作から発揮されていたことを証明するように、小説すばる新人賞のみならず泉鏡花文学賞も受賞。『物語』をある種必要としない、希少な筆は「売られる」ために育てられた美しい姉弟の堕ちていく《耽美》な様を見事に描き切った。表紙には宇野亜喜良を起用。業界からの期待の高さが伺えます。

才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、……だからこそ!と推したくなるデビュー作らしいデビュー作。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出した真実が情熱的に刻まれている。新旧”天才”対決―――心躍ります。第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説としても立派なお墨付きを得ている作品。

専門家も唸る“知識”をエンターテイメントの一要素として作品へ組み込む、インテリゲンチャご用達の作家の一人・佐藤賢一のデビュー作。夢を求めて渡ったイスパニアの地で恋に落ちるも夢を忘れられず、誘いのままに戦に出掛ける侍―――その様は実に情動的で「悲劇」と呼ぶに相応しい。作品の「質」という観点では、ここで上位に選んだ四作よりも実質、本作のほうが上だろう。しかし重厚、故に生半可な読者では忌避感出てしまうのも避けられない。「表題」は壮大な仕掛けなので、手に取ったら最後まで読み切りましょう。かの銃士隊隊長の登場も必見です。

なかなか手を伸ばしにくい「発達障害」を題材にしたハートフルな一作。例によって、お涙頂戴!な展開なのだが、視点人物を二人配し(「発達障害」役は一人)、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したことで、終盤の「吐露」がいよいよ胸に突き刺さる。あくまで現実的な設定に根ざした上で視点人物、両者に起こる中盤のイベントは実質の最大級!この思い切りの良さは燻る作家群は是非参考にして貰いたいところ。出し惜しみなし!

☆☆  総評  ★★

【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】の稿でも言及したが、小説すばる新人賞の受賞者には、後に天下の直木三十五賞、大天下の芥川龍之介賞を受賞した作家が多数いる。もっとも、それは第10回までの受賞者に集中していたが、最近では朝井“(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!”リョウが『何者』で直木三十五賞を受賞、作品が候補に挙がった千早茜も控え、新人作家の良質な登竜門として盛り返し、面目を保っている印象。さて、 この【小説すばる新人賞:All Time Best!!】だが、見事なまでにその直木賞&芥川賞作家たちの作品を選んでいない。かろうじて佐藤賢一の『ジャガーになった男』を第5位に取り上げてはいるが、娯楽小説としては重厚な作風なために、個人的には選びたくなかった。もっとも、読めば「質」の高さは否定出来ないところなので、妥当と言えば妥当な選出だとも思っている。小説すばる新人賞は文学賞ではない。あくまで大衆小説、娯楽を提供出来る作家の輩出を意図した公募賞なのだから、万人が「面白い!」と唸りたくなる作品こそ推薦したい。という観点から考えると、個人的に第1位と第2位に置いた作品―――『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は不動の2トップ。どこの公募賞に出しても受賞するだろうクオリティーが両作にはある。後者はセールスが評判に追いついていない印象もあるので、未読の方は是非手に取って読んで欲しい。第3位、第4位のランクイン作品は若書きが心地良いデビュー作らしいデビュー作。青田買いの楽しみが味わえる。【次点】は複数候補あったものの、《感動》出来る観点で選出。終盤に披露される発達障害者の《吐露》のカタルシスたるや尋常ではない。選ばなかった作品では、篠田節子の『絹の変容』はVividなホラーSFで、やはり著者の可能性を感じざるを得ないところ。“森見登美彦のプロトタイプ”な『草小路鷹麿の東方見聞録』、“ザ・伊坂幸太郎”な作風の『名も無き世界のエンドロール』、著者の次作を期待させる爽やかな『はるがいったら』あたりも拾い物。しかし、まあ、……未読ならばランクイン作品を順番に読んで頂きたい。実際問題、「面白い!」は人それぞれだが、それでもかぶるものはかぶるのである。受賞作を読む!というコンセプトで消化していくと「おい、何で消えた!?」な葬り去られた作品、「全盛期はここだったか!?」な再発見な作家と出会えるわけだが、この小説すばる新人賞では『ジョッキー』を拾えたのが競馬好きの私としても最大の収穫でした。大衆小説らしい大衆小説、しっかりと引き継ぎたい良質の遺産(旧作)です。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

85

84

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】
    魚神/千早茜  【第3位】

82

81

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第5位】

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第4位】

78  はるがいったら/飛鳥井千砂

77  

76  絹の変容/篠田節子
    ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也
    名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉
    粗忽拳銃/竹内真
    国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  赤と白/櫛木理宇
    涼州賦/藤水名子
    笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    八月の青い蝶/周防柳
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ
    パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年03月03日/修正

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第29回!】


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まだ第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なんだけど、未読なんだけど、俺は今書きたいから、そんなの関係ねえ!そんなの関係ねえ!精神で仕上げさせて頂きました。同作を後々レヴューした後、改めてこの稿も改稿する予定です。まあ、「最年少」なんてレッテルで売ろうとしているだけでしょ?きっと推したくならないっしょ!と予想中。ではでは、現時点での 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第29回!】、始めさせて頂きます!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

着々と直木三十五賞を受賞させるための計画が進行している感のある千早茜のデビュー作。もっとも、いざ読んでみればカオナシたちがバックアップしたくなるのも納得の、凡百のナンチャッテ!作家たちとは一線を画す筆力、感性が確認出来る。「売られる」ために育てられた美しい姉弟を主役に起用した本作でも、堕ちていく二人の《耽美》な様を描き切った。『物語』をある種必要としない、希少な筆は目撃する価値がある。小説すばる新人賞のみならず、本作は泉鏡花文学賞の受賞作。読んで損になることはまずないでしょう。

プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』。身を賭して掴んだその輪郭を、己の筆で女流棋士の新旧”天才”対決へ転換せしめたのが本作。才能、才能、ほらまた、才能!とやや一辺倒な若書きながら、それだけに情熱も感じられる。「将棋」題材の作品として上等の部類でしょう。

発達障害者を題材にした作品となれば、お涙頂戴!となるのは必然なわけで、本作もそこに軒を連ねる。アレンジは互いに見掛けるだけで「交わらない」視点人物を二人配し、それぞれの《弱者》っぷりを徹底したこと。「発達障害者」中村の苦悩は真摯なもので、終盤の怒濤の吐露はまさにハイライトに値する。なかなか手を伸ばしにくい題材ながら読み応えは十二分に有り。

(ノ゚Д゚)キリシマ、ブカツヤメロッテヨ!という人工的なベストセラー小説。皆が読んでるなら読んでおかないと、後々、センスを疑われる事態が生じることもあるので掛け捨ての保険扱いで押さえておきたいところ。

☆☆  総評  ★★

名実ともに小説すばる新人賞では随一の知名度を誇る『桐島、部活やめるってよ』をどう扱うかまず迷う、この第21回 から 第29回までの受賞作群。もっとも、最新作である第29回の『星に願いを、そして手を。』を未読なため、正確には―――この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第21回 ~ 第28回!】なのだが、その辺は「最年少」「現役高校生」というレッテルで売り出しているあたりからお察しして強気に無視。「現役大学生」というレッテルで売り出された『桐島、部活やめるってよ』の話題性を上書き出来るか否かが個人的な同作の焦点。そんなわけで、大衆小説として真っ当にお薦めしたいのが上述の『魚神』、『サラの柔らかな香車』、そして、『白い花と鳥たちの祈り』の三作。特に『魚神』、『サラの柔らかな香車』の二作はデビュー作らしいデビュー作で、著者の才気が奔っている印象。新人賞、新人作家ならではの若書きが楽しめるのが良い。選から漏れたが伊坂幸太郎クローンな『名も無き世界のエンドロール』、メディアワークス文庫賞を授与したいラノベ風味な『ラメルノエリキサ』あたりも拾いどころ。正味、小粒な受賞作が揃った感もあるが、大ハズレもない(……本当かな?と自分でも懐疑的になったワw)のは大台である第30回を迎える新人賞、作家への登竜門としてしっかり認知されているからだと思う。今後も良質な作品を輩出して頂きたいですね、ハイ。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

83  魚神/千早茜  【第1位】

80  

79  サラの柔らかな香車/橋本長道  【第2位】

78  

77  

76  ラメルノエリキサ/渡辺優

75  白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子  【第3位】

☝  満足  ☟  普通


74  名も無き世界のエンドロール/行成薫

73  国道沿いのファミレス/畑野智美

72  たぶらかし/安田依央

71  

70  

69  赤と白/櫛木理宇    

68

67  

66  

65  八月の青い蝶/周防柳

60  桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ  【次点】

☝  普通  ☟  不満


59  

55  

45  砂漠の青がとける夜/中村理聖

40  蛇衆/矢野隆

36  

☝  不満  ☟  アマチュア


35  

現在、2017年03月01日/修正

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前回から二日で脱稿!というわけで、間隔短く 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】へGo!計画は成功と相成りました。まあ、この受賞作を読め!は該当作品のレヴューから引用するから書きやすいのが大きいね。ではでは、 【小説すばる新人賞:第11回 ~ 第20回!】のお薦め作品をご紹介させて頂きますYo!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

個人的に小説すばる新人賞の受賞作において、一、二を争うエンターテイメント作品。標題通りの「競馬」題材ながらレースの描写は少なく、あくまで人間ドラマとして描かれているのが特徴。その人間ドラマとは、ズバリ―――《敗者》の美学。本作の主人公は負けるために、己の負けを認めるために勝つ。娯楽要素を詰め込み過ぎなまでに詰め込み、それらを完全処理!結果、デビュー作ながら10万部突破という快挙を成し遂げて、著者にとって一世一代の代表作となった。終盤の名場面、「ショウサン」の一言を見逃すな!

「ビックリするくらい似てました(笑)」と“サムライ・ギタリスト”MIYAVI(G.)も認めた三味線操る藤次郎を中心とした戦国Rock 'n' Roll。どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる傾奇者たちの怪演は痛快そのもので、文字で聴かせる、という偉業をキャラクターデザインからアプローチしているのが何より素晴らしい。知名度低いものの、埋もれさせるには勿体無いアイディアとクオリティー。未読の方は是非、手に取ってあげて下さい。

西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品。平凡な登場人物たちを配して、読み手を楽しませる――というのは作家の手腕試されるところだが、突拍子もない設定を出すことなく《日常》を不穏→爽快へ展開させて描き切ったのは、著者の今後の活躍を予感させてくれる。デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末は著者のインテリジェンスを感じました。良作です。

☆☆  総評  ★★

先に断わっておくと、以下の【受賞作:点数一覧】からも分かるように、第1位から第3位まではすんなりと点数通りにお薦め出来たのだが、【次点】は今回はあえて選ばないでおいた。というのも、三作が頭抜けているのもあるが、そもそも、2位と3位のお薦め具合の差が点数以上に離れているからだ。好みの差こそあれ、まず誰が読んでも『ジョッキー』と『桃山ビート・トライブ』は「面白い!」と唸らせられると思う。この二作は大衆小説として本当にお薦め出来る。しかしながら、点数通りに拾うと【次点】となる『粗忽拳銃』は個人的に贔屓にしたくなる玄人具合。地味に「巧い」、渋いけど「巧い」のである。(……この作家、生き残ってるだろ)と検索してみれば、やはりしぶとく生き残っていた。是非とも、遅咲きの桜を咲かせて貰いたいものである。他の受賞作で目ぼしいものといえば、『天使の卵 エンジェルス・エッグ』『笑う招き猫』か。前者は当時のベストセラー、後者は目下、巷で話題の清水富美加さんが主演して撮影済みのドラマの行く末を心配されている作品である。まあ、何にせよ、この【第11回 ~ 第20回!】の主役は『ジョッキー』、そして、『桃山ビート・トライブ』だ。あ、第3位の『はるがいったら』も面白いですよ?文学的なアプローチがスパイスになってて、ラストも「隣同士」なんてユーモアで〆めてくれるので著者の知性を感じられます。犬が好きな人なら尚良し。ただ、比べる相手が悪かっただけです。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  ジョッキー/松樹剛史  【第1位】

83  桃山ビート・トライブ/天野純希  【第2位】

80  

78  はるがいったら/飛鳥井千砂  【第3位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  

73  粗忽拳銃/竹内真

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  笑う招き猫/山本幸久

68

67  となり町戦争/三崎亜記

66  走るジイサン/池永陽
    プリズムの夏/関口尚

65  

64  8年/堂場瞬一

63  でかい月だな/水森サトリ

62

61  

60  パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

☝  普通  ☟  不満


59

現在、2017年02月24日/修正

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この受賞作を読め! 【小説すばる新人賞:第1回 ~ 第10回!】


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ようやく消化し終えた小説すばる新人賞の受賞作群―――となれば、(開設当初は)ナマクラ!Reviews恒例(にするはずだった)、『この受賞作を読め!』を始めようではあーりませんか!とりあえず、まずは【第1回 ~ 第10回!】から選んでみましたよ!総仕上げの【All Time Best!】は【第11回 ~ 第20回!】、【第21回 ~ 第29回!】の企画記事を書き上げてからまとめる所存。さてさて、前置きはこれくらいに【第1回 ~ 第10回!】のこの受賞作を読め!をお楽しみあれ~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

己の身一つ、刀一つでどこまで成り上がれるのか―――夢を抱いて渡ったイスパニアで愛を知り、それでも、夢を忘れられなかった侍の成れの果てとは!?インテリゲンチャも唸る“知識”をさらりと施す佐藤賢一。デビュー作ながら、現在の作品と比しても見劣りしないクオリティーは圧巻の一言。新人離れとはまさに本作、著者を評すにピッタリの言葉だ。かの銃士隊隊長トレヴィルの登場には沸くこと必至。我こそは……!という読書家の方は挑戦してみましょう。

ボーダーレスに作品を産んでいく篠田節子のデビュー作は、巨大な蚕が襲ってくる!というB級臭漂うパニックSF。しかし、これがなかなかどうして―――真っ当に「恐ろしい」。野生回帰能力を完全に失った唯一の家畜化動物『蚕』という文学性持つ題材への的確なアプローチ、それをホラーに仕立て上げる手腕に唸らされた。ドラマ化作品の陰に隠れてしまっているが、著者のキャリアの中でも好作なのでは?個人的にイメージ変わりました。読めて良かった。

「無名」と断言して良いだろう草薙渉のデビュー作は、―――あの森見登美彦の《プロトタイプ》がここに!?と思わず銘打ちたくなる同質のユーモア吹き込まれた一作。生まれて26年間、広大な屋敷から一歩も外に出たことがなかった公家の末裔・草小路鷹麿というキャラクター、そして、彼によって味付け、解体される日常は絶品で、タイムレスな魅力に溢れている。森見登美彦ほどの筆力はないものの、思わぬ拾い物をした気分になれます。

小説や映画、女優……固有名詞とその“知識”を登場人物にさらりと口にさせるお洒落な作品。斜陽企業に就職した主人公のそれなりの奮闘というストーリーも、なかなかオツなもの。インテリ層に響く内容はないが、著者のセンスがとりあえず光る。個人的には、アーウィン・ショーに手を伸ばすキッカケを頂きました。読むなら暇を持て余したモラトリアムの時期にどうぞ。

☆☆  総評  ★★

記事にしている最中に気づいたが、この【第1回 ~ 第10回!】で小説すばる新人賞を受賞した作家のうち、後に天下の直木三十五賞を受賞したのが5人、大天下の芥川龍之介賞を受賞したのが1人という破格の事実。なるほど、こうなるとこの小説すばる新人賞が集英社出版四賞に数えられるのも分かる!五虎将軍かよ(笑)とか貧困な発想で小馬鹿にしてすまんかった!さて、そんなビッグネーム溢れる本賞の創世記だが、受賞作、そのクオリティーを総括してみると、エンタメ作品としては実に「渋い」印象。上に次点を含めて四作挙げさせてもらったものの、興味深さこそあれ、手放しで「面白い」と称えるのは難しい作品ばかり。その辺りは、第1位に『ジャガーになった男』を選んだところに象徴されている気がする。単純にエンタメ基準だけで言えば、後の直木賞受賞作家たちである荻原浩の『オロロ畑でつかまえて』、熊谷達也の『ウエンカムイの爪』を選びたくなるが、デビュー作だけに彼らの現在の作品ほどには完成されていないのが正直なところ。そんなわけで、この【第1回 ~ 第10回!】の受賞作のなかで個人的MVPは3位に挙げた『草小路鷹麿の東方見聞録』。著者の現代でも通じるユーモアには可能性しか感じない。若書きだからこそ……!の魅力は、出版から二十余年経った今さえ刻まれている。作家としてはもはや虫の息のようだが、是非とも逆襲の一作を上梓して欲しい。余談ながらに村山由佳も本賞から『天使の卵 エンジェルス・エッグ』でデビューしているが、同作は作品それ自体より五木寛之の選考評(レヴュー参照)が最大の読み応えを発揮しているところからお察しくだされば宜しいかと思います。何にせよ、受賞作を消化してみて、90年代はまだまだ大衆小説として発展し切れてない印象。現在の大衆小説のレベルの高さよ(流通量多いから必然駄作も多いが……)。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

80  ジャガーになった男/佐藤賢一  【第1位】

79  

78  

77  

76  絹の変容/篠田節子  【第2位】

75  

☝  満足  ☟  普通


74  オロロ畑でつかまえて/荻原浩
    ウエンカムイの爪/熊谷達也

73  恋人といっしょになるでしょう/上野歩  【次点】
    草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉  【第3位】

72  

71  

70  天使の卵 エンジェルス・エッグ/村山由佳

69  涼州賦/藤水名子

66  

65  バーバーの肖像/早乙女朋子
    英文科AトゥZ/武谷牧子

64  

63

62

61  

60  

☝  普通  ☟  不満


59  砂時計/吉富有

57  包帯をまいたイブ/冨士本由紀

56  マリアの父親/たくきよしみつ

55  川の声/山本修一

40

36  こちらノーム/長谷川潤二

☝  不満  ☟  アマチュア


35  陋巷の狗/森村南

30  ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

現在、2017年02月24日/修正

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この受賞作を読め! 【山本周五郎賞:第11回 ~ 第20回!】


この受賞作を読め! 【山本周五郎賞:第1回 ~ 第10回!】から引き続いて、山本周五郎賞での「この受賞作を読め!」第2弾!ここでも第11回 から 第20回の全14作の受賞作のなかから、3作+次点を選んでランキング!どれも有名作だが、やはり《売れる》だけあって面白いのよねえ!では、始まり始まり~。

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初の山本周五郎賞と直木賞のW受賞!という離れ業を為した、著者の代名詞となっている「マタギ三部作」の第2弾。やや及び腰になってしまう頁数がそのまま年輪となって一人のマタギを誕生させる構図は圧巻で、知名度高い販促賞、そのW受賞も誰しも納得出来るクオリティーがある。そもそも、熊が出て来ないのは意外なまでのサプライズだったが、やはり―――ラストはしっかり「山の神」と戦う。コイツは、創作物の熊史上最強の熊なんじゃねえか……!?と思わせる神々しさもあり、まさしく必見。兎に角、ドラマチックな一作。

森見文学はデビュー作より始まったとは思うが、いわゆる「森見登美彦」が森見登美彦となったのは本作からなんじゃなかろうか?京都を舞台に男と女がお洒落にすれ違う。個人的に3章「御都合主義者はかく語りき」は傑作的ご都合主義な一編。森見登美彦のフォロワーは今や五万と生まれているが、このレベルの一編はまず作れまい。大二病必読の一冊。

言語を絶するとはこの事か。在日朝鮮人・梁石日が実父をモデルに、おぞましいまでの「悪」を描いた大作。とにかく、《外道》極まっている金俊平は100冊、いや、200冊に1人の存在感を放っている。頁をめくれば、Rape & Violence!For Money!なんてドン引きせざるを得ないエンターテイメントがどこまでも続く。《吝嗇》がここまで「悪」へと繋がるのかと驚嘆させられるだろう。食傷を来たす繰り返しな展開に難があるものの、一度は出会っておくべき「悪」がここにいる。

勝ち組負け組と叫ばれ始めた時世に投下された連作短編。リストラ専門会社「日本ヒューマンリアクト」の有能社員・村上真介が、言葉巧みに「……辞職します」とリストラ対象者を追い詰めていく。旧友を追い込む第三話「旧友」は、これからの“人要らず”の淘汰の時代、嫁に読ませておきたい一編。また、いわゆる“ダメな社員”とは何なのかを冒頭早々に残酷に提示してくれるので、新社会人は予習として読んでおくと良いかもしれない。プレゼントにも使える便利な良作。

☆☆  総評  ★★

個人的に第11回から 第20回までの山本周五郎賞の受賞作……というよりも、受賞作家たちは第10回までの受賞作家たちよりも、より《売れる》ためのステップ的な意味での授賞を感じてしまうのは、吉田修一の『パレード』や森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』があるからなのかもしれないが、何にせよ、基本的にどの受賞作も「質」が高いのは読み手としては喜ばしいところ。そんな中で、恩田陸の『中庭の出来事』に関してはそもそも選考作に挙げてきたこと/残してきたこと自体が失態だと思う。未読の方は未読のままがオススメです。さて、今回も著名作を選定してしまったが、選んだ4作はどれも他の受賞作よりも実際、頭抜けて「面白い」。『邂逅の森』と『血と骨』は、ボリューム(とマチスモな題材)の点で手に取るのが億劫になってしまうかもしれないが、両作ともにエロ有り!バトル有り!のエンターテイメントとして充足の逸品である。特に後者、『血と骨』は「極悪」金俊平の類い稀な存在感があり、忘れられるには惜しい。後世に繋げるためにも、若い読書家の方は是非とも押さえて頂きたい悪漢小説だ。選定より漏れたが、アルツハイマーに罹る前に!という意味で、『明日の記憶』も目を通しておきたい一冊。現実はそんな綺麗事で済まないとは百も承知の上で、やはり「前を向ける」エンディングが実に心地良い。意固地を溶かす『小田原鰹』、男は黙って、……!な『蟹』が収められている『五年の梅』は、まさしく《いぶし銀》な短編集。時代小説をさらっと読みたくなった時、手に取ってみてもまず損は無いだろう。個人的には琴線に触れなかったが、中山可穂の『白い薔薇の淵まで』は百合ものとして知名度高い一作。こちらも押さえておいて損は無いだろう。と並べてみても、あからさまな“地雷”は上述の『中庭の出来事』くらいなので、山本周五郎賞は信頼出来る販促賞と言えると思いますね、ハイ。さあ、次は第21回~第30回のリストを飛ばして(まだ第28回までしか発表されてないからね)、All Time Best!!を選定しようと思います。乞う、ご期待!

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  邂逅の森/熊谷達也  【第1位】

85  君たちに明日はない/垣根涼介  【次点】

84  

83  夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦  【第2位】

82  血と骨/梁石日  【第3位】

81   

80

79  

78  五年の梅/乙川優三郎

77  明日の記憶/荻原浩

76  覘き小平次/京極夏彦

75  パレード/吉田修一

☝  満足  ☟  普通


74  ぼっけえ、きょうてえ/岩井志麻子

73  

72  

71  エイジ/重松清

70  

66  白い薔薇の淵まで/中山可穂

65  

64  安徳天皇漂海記/宇月原晴明

63

62

61  

60  泳ぐのに、安全でも適切でもありません/江國香織

☝  普通  ☟  不満


40  中庭の出来事/恩田陸

現在、2016年03月13日/修正

category: この受賞作を読め!

tag: OPEN 山本周五郎賞 この受賞作を読め!【山本周五郎賞】

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この受賞作を読め! 【山本周五郎賞:第1回 ~ 第10回!】


新潮社が開催した日本文学大賞の後継イベントとして1988年に創設された山本周五郎賞。2016年3月現在、第28回まで開催済みだが、ここではその第1回から第10回までの全11作の受賞作のなかから、【この受賞作を読め!】と銘打って3作+次点を選んでランキングしてみました。第11回から第20回の【この受賞作を読め!】も間を置かず制作予定。乞う、ご期待!ではでは、始まり始まり~。

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

当時の社会関心であった《債務》を題材に、「最後の一行に犯人が出てくる小説」という着想から始まった宮部みゆきの代表作のひとつ。一時、インテリゲンチャたちに「昨今の文学作品よりも……」と称えられた《人間》に迫った筆は、たとえば不動産屋・倉田康二が語る離婚の理由に見い出せる。時勢を読んだ作品のためにやや黴臭くもあるが、08年発表の集大成企画「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベストでは第1位に選ばれた作品でもある。大衆小説の「古典」としても読まない理由は無い。

日本産のバナナとして世界に輸出される“吉本ばなな”。個人的に「ばななは『キッチン』さえ読んでおけばいい!」という持論があるものの、「吉本ばなな」という作家を知る上では押さえておきたい知名度高い一作。表題になっている「ヒロイン」つぐみは、出版から四半世紀過ぎた現在でもVividで、第1級のヒロイン格を保てているのは実際、素晴らしい。デビュー作『キッチン』と比すれば、洗練された天性の「筆」がここにある。

「希に見る美しい小説」と評されたことで知られる、稲見一良のレイ・ブラッドベリの『刺青の男』をモチーフにした短編集。翻訳小説を思わせる剛健な筆で読み手を選ぶ一作ではあるが、各短編で奇跡的な《数瞬》を力強く印象づけてくれる。そんな中で終章「デコイとブンタ」はやや毛色違うポップな逸品。デコイが空を飛んだ瞬間は、希に見る爽快感を与えてくれる。余談だが、本作も何気に上述の集大成企画「このミステリーがすごい!」ベスト・オブ・ベストに第6位にランクインしていたりする。

記念すべき山本周五郎賞の第1回の受賞作。自覚なく痩せ細っていく―――というホラー仕立ての物語ながら、アットホーム極まる“すき焼き小説”として名高い矛盾は、自分の目で確かめて頂きたいところ。新聞などさらりと引き合いに出される作品なので、押さえておくとお得感も。

☆☆  総評  ★★

芥川龍之介賞あれば三島由紀夫賞あり、直木三十五賞(以下、直木賞)あれば山本周五郎賞あり!という認識で実際、間違いないと思うが、大衆小説の販促賞として(直木賞と比すれば二格は落ちるものの)そこそこに浸透している山本周五郎賞。この第1回から第10回の《初期》とも云える段階でも、受賞者の顔ぶれは豪華絢爛。そうして、【この受賞作を読め!】と銘打って選んでみると、宮部みゆき、吉本ばななといったビッグネームのビッグセールスな作品をナンダカンダで選定してしまうイマサンな事態に……が、山本周五郎賞を総括する【All Time Best!!】では角度を変えて選び直していく予定。とりあえず、この稿ではベターに押さえておきたい作品を挙げておきました。何せ、1位と2位の作品は多作の両者の代表作に該当する作品だろうからね。未読ならば是非読んでおきましょう。両者のセンス欠いた近作しか読んでいない方ならば、「ああ、これは売れるわ」と認識を改められると思う。個人的なメインは第3位の『ダック・コール』、そして、次点に選んだ『異人たちとの夏』の選定。どちらも知名度は知る人ぞ知る程度だと思うが、前者は「希に見る美しい小説」という希に見る選考評を確かめるために、後者は“すき焼き小説”と謳われる所以を確認する意味でも、一読の価値があると思う。ところで次点は早々に決められたものの、実は3位はどれにしようか迷った。その迷った作品は船戸与一の『砂のクロニクル』、天童荒太の『家族狩り』。どちらも見た目(頁数)からして重厚で、実際に読んでみても膝をつきたくなるほど圧倒的な筆力で描かれているのだが、……凄過ぎて安易にお薦め出来なかったのが選外の決め手となった。また、江戸川乱歩のスランプ期を題材にした『一九三四年冬 - 乱歩』は耽美的な展開もあって女性受けしそうな印象もあり、この10回までの受賞作で3作挙げるならばダークホース的集票があっても不自然なことではないと思う。何にせよ、埋もれかけていて読めば(……拾い物!)な作品としては、個人的に『異人たちとの夏』を強く推したい。上にも書きましたが、“すき焼き小説”って人に薦めるときに言えるのが良いじゃないですか。勝手に(この人、読書家なんだ……)って勘違いしてくれますよ、きっと (๑´ڡ`๑)ブヒィ

☆ 受賞作:点数一覧 ★

85  火車/宮部みゆき  【第1位】

84  

83  砂のクロニクル/船戸与一

82

81  ダック・コール/稲見一良  【第3位】

80  家族狩り/天童荒太
    TUGUMI/吉本ばなな  【第2位】

79

78  一九三四年冬 - 乱歩/久世光彦
    異人たちの夏/山田太一  【次点】

77  奪取/真保裕一

76

75

☝  満足  ☟  普通


74  

73  閉鎖病棟/帚木蓬生

72  

71  エトロフ発緊急電/佐々木譲

70  

65  

64  

63

62

61  ゴサインタン -神の座-/篠田節子

60  

☝  普通  ☟  不満


59

現在、2016年03月13日/修正

category: この受賞作を読め!

tag: OPEN 山本周五郎賞 この受賞作を読め!【山本周五郎賞】

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この受賞作を読め! 【小説新潮長編小説新人賞:All Time Best!!】

すでに閉幕している小説新潮長編小説新人賞(その後継には新潮エンターテインメント大賞が設置されるも、こちらも閉幕の模様)。その全12作の受賞作のなかから、「これは読んでおこうや!この新人、期待出来るよ!」発表後10年以上過ぎているので、作家が今「現役」かどうかでその結果は解かってしまうが、何にせよ、この受賞作を読め!の始まり始まり~。

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

歓喜有り、悲哀有り、恋愛有り、喧嘩有り!の端的に言ってしまうと、関西版『池袋ウエストゲートパーク』しかし、どこか上からのお洒落さが鼻につく本家と違い、こちらは「マルショウ解体」という汗水垂らす現場が舞台のため、男性読者により共感を呼び込む豪快な抗争展開が魅力。喧嘩師カンの脇役からの実質の主人公交代劇は痛快極まりない。そんな汗臭い作中においても、女性キャラクターがしっかり存在感を放っているのも嬉しいところ。スロースタートな序盤に難があるものの、間違いなく小説新潮長編小説新人賞の受賞作においてNo.1のエンターテイメント作品。読むならまず本作からでしょう。千葉近辺の書店員と出版社営業が設けた販促賞「酒飲み書店員大賞」でも、見事ランクインしていた模様。青春小説としてもお薦め出来ます。

レヴューを読み返してみたら、《本屋大賞で紹介すべき「埋もれている」作家の一人、米村圭伍のデビュー作。》なんて書いていたが、実際、いぶし銀のポップを堪能出来る作家だと思う。本作でも、のほほんとした気の良い武士(童貞)を駆使して間抜けとも云える騒動を解決していく。下品ではないエロが散りばめられ、ストーリーが見えなかった展開にも「予告」通り、さらりとストーリーを持ち込んでくるのは、ちょっとした匠の技。良作、というレッテルを貼りたくなる作品。

女優/演出家が本職と云える前川麻子のデビュー作。主人公が著者と同名という仕掛けが最大のセールスポイント。これで本作は自伝ないし半自伝として読めるため、読み手は「文学」の領域に踏み込んでいる作品と錯覚出来る。実話、として捉えてしまえば、日常場面も退屈には映らない。鬱病に罹ってしまったユキとの電話のやり取りは創作(?)とは思えない迫力があり、本作のハイライトに挙げたくなる場面。ただ、終盤の〆め方は賛否分かれるところ。構造的な凝り方は要らなかったと思う。

おそらく小説新潮長編小説新人賞の受賞作において、選考委員たちにもっとも激賞されたのが本作『俺はどしゃぶり』だろう。何せ、「稀にみる快作」「ビールで乾杯したくなる」である。他の新人対象の公募賞でもなかなかお目に掛かれない激賞具合で、思わず手に取りたくなる。……ものの、いざ読んでみると肩透かしと言わないまでも、眉根を寄せてしまうのはもはや仕様か。弱小アメリカンフットボール同好会の顛末なわけだが、それをコンセプト通りに描き切ったところは確かに唸らせられるが、……。選考委員評と自分の読了後の感想の差を楽しむ作品として捉えるのが一興かと。

☆☆  総評  ★★

新たな娯楽小説の輩出を目的とした小説新潮長編小説新人賞。その全12作の受賞作からの1位から3位+次点の4作を選んでみたが、今回は物の見事にレヴューでの配点通りの順になったのが個人的に驚いた。がしかし、自分で言うのもなんだが、小説新潮長編小説新人賞の受賞作の中から4作選べ!というお題が出れば、順番はともかくとして、ほとんどの人も上記のランクイン作品を選ぶのじゃなかろうか。特に、第1位に選んだ『太陽がイッパイいっぱい』はもはや不動の印象。他の三作のランクイン作品も良作には違いなく、読んで損と云うことはない―――が、とりあえず読むなら、と同作はまず薦めたくなる。今現在における作品、著者自身の知名度の低さも信じられないくらいのギラギラした娯楽&青春小説だ。ランクイン作品以外だと、出版当時の流行りだったキャバクラ題材の『調子のいい女』は、ヒロインの男あしらいのテクニックが実践的で面白い。文章的な観点からならば、錦絵と称えられたり、駄文と貶されたり、と選考委員で評価の別れた『決闘ワルツ』も、書き手には反面教師的な意味合いで一読の価値はありそう。小説新潮長編小説新人賞における随一のゴシップ作品としては、『手紙 The Song is Over』も忘れてはいけない。17歳の女子高生がデビュー!と「最年少デビュー」ブームのある種の先駆け的作品である。選んだ責任を放り投げて、選考委員(主に井上ひさし御大)がボロカスに貶しているのが面白酷いとしか言いようがない。公募最初期は娯楽小説を募集していながら文学崩れの小説ばかりで、真っ当な娯楽小説が集まらなかったようだが、第5回のW受賞作(『風流冷飯伝』&『俺はどしゃぶり』)を境に好転。良作の輩出は新たな良作を呼び込むことを証明したように思う。終わってしまった公募賞の受賞作品というのは、なかなか再発掘される機会がないと思うが、ここでランクインしている作品はいぶし銀のクオリティを持った確かな作品なので、気になった方は手に取って読んでみてくださいな。ではでは!

以下に小説新潮長編小説新人賞の受賞作のみの【点数一覧】を付け足しておきます。相対評価なので、ちょいちょい点数は前後しますのでご了承下さい。

☆ 受賞作:点数一覧 ★



81  太陽がイッパイいっぱい/三羽省吾  【第1位】

80

79

78  風流冷飯伝/米村圭伍  【第2位】

77

76  鞄屋の娘/前川麻子  【第3位】

75  俺はどしゃぶり/須藤靖貴  【次点】

☝  満足  ☟  普通


74  調子のいい女/宇佐美游

73

72

71  

70  石鹸オペラ/清野かほり

69  ノーティアーズ/渡辺由佳里

68  居酒屋野郎ナニワブシ/秋山鉄

67  

66  マイ・スウィート・ホーム/富谷千夏

65  

60  決闘ワルツ/秋月煌

☝  普通  ☟  不満


58  あなたへの贈り物/和泉ひろみ

☝  不満  ☟  アマチュア


30  手紙 The Song is Over/佐浦文香

現在、2015年12月27日/修正

小説新潮長編小説新人賞受賞作一覧は⇒こちらへ!

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この受賞作を読め! 【電撃小説大賞:第1回 ~ 第10回!】

今や天下に号令をかける電撃小説大賞の黎明期からいよいよ攻勢に転じる成長期直前と云える【第1回~第10回】までの受賞作から5作+次点をチョイスしてみました。短評、総評もつけたので、過去の受賞作に興味がありつつも未読のまま、……な方は参考にしてみて下さい。では、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

同級生と大人たちに色々な卒業を迫られるライトノベラーに「……僕はここにいてもいいんだ!」と錯覚させ、ずっとライトノベルを読むことを肯定させた記念碑的作品。多くのライトノベルがTeenな主人公を採用するにもかかわらず、日々迫る“将来”へ対する憂鬱を未だ描けずにいるが、10余年前に出版された本作は、その第1章「浪漫の騎士」で《ブギーポップ》というファンタジーを絡めて見事に描いた。頁をめくれば、そこにモラトリアムなアンニュイがある一作。思春期のうちにどうぞ。

ライトノベルと大衆小説のクロスオーバーの先陣を切った作品……というと、やや語弊があるかもしれないが、ライトノベルというジャンルが時代の潮流的に求めていた「シリアス」な一面を押し出してきた一作。何が「シリアス」なのか?それは本作の「1章」、続く「2章」に目を通せば分かるだろう。ただ、「3章」以降は趣味の分かれるところ。白馬の王子様的ロマンスが待っている。誰が呼んだか、有川浩の「自衛隊三部作」の一作目。

バッド・ボーイ製造機、成田良悟のデビュー作。禁酒法時代末期のアメリカを舞台に、マフィアを交えた不死の酒を巡る群像劇を展開する。映画を思わせる歯切れの良い場面切り替え、マフィアを雰囲気損なうことなく、ライトノベル仕様に仕立てているのが特徴。キャラクター先行の物語には違いないが、いわゆるライトノベルとは一線を画す徒花的作風。

題材は王道、「野球」……主に筆力(ex.「努力」場面の処理など)の関係で、スポーツを題材としたライトノベルの成功例は数えるほどだが、その稀少な成功例に挙げられるのが本作。実在するプロ/アマ問わずの選手のエピソードを交え、現実ではなかなか「一見」出来ない、「百聞」な知識を施してくれる。それまで興味の無かったジャンルへ好奇心の芽を植えてくれる有用なライトノベル。時事ネタが多く、鮮度が切れてしまっているのが残念。

巷にあふれ返る「陰陽師」を題材にした作品のなか、ライトノベラーが卑屈になることなく自信を持って薦められるだろう「陰陽師」題材のライトノベル。マニアックになり過ぎない知識、作品のために誂えた文体、陰陽師と云えば、……の「阿倍晴明」も差別化を図ったデザインで、安易なアイディアを挟んでこない。著者の真摯な創作姿勢がうかがえる作品。

猫が好きならば、=ライトノベラー!は成り立たなくても、ライトノベラーならば、=猫が好き!が成り立つほどに、ライトノベラーは<猫>に弱い。本作は、随所で猫が徘徊する作品。ただ、単なるマスコットものかといえば「話」は違う。ほのぼのした日常にどこかバッドエンドが薫る。派手さに欠けるが、そこに渋味があるライトノベル。

☆☆  総評  ★★

ランクイン作品をご覧になれば分かる通り、錚々たる顔ぶれ……というよりも、わざわざ選ばなくても、一端のライトノベラーの皆さんならば既読済みの有名作ばかりが並んでしまったが、1位と2位の作品に関しては事実上、電撃文庫を象徴する作家のデビュー作なので誰が選んでも動かしようがなかったかな、と。3位以降が人によって選ぶ作品も順位も変わる印象。第10回までの電撃小説大賞《大賞》受賞作は、7作。そのうち、第2回の『ブラック・ロッド』、第9回の『キーリ 死者たちは荒野に眠る』の2作がこの手の企画で支持を集めそうな作品だが、個人的に前者はいかにもSFから路頭に迷って投稿されたような作風から、後者はTeen受けする翳りがあるので【次点】にするか迷ったものの、コンパクトさに欠ける印象で選外にした。この他、私の中でランクインさせようか迷った、第6回の『ダブル・ブリッド』、第7回の『ウィザーズ・ブレイン』、第9回の『七姫物語』あたりもそれぞれ長期シリーズとなった事実からもランクインに相応しい支持を受けるかな、と。そんな中、3位、4位、5位の作品を選んだ理由は、エンターテイメント面の質の高さもさることながら、当時の電撃小説大賞らしい、「イロモノ」手前のライトノベル具合から。3位の『バッカーノ!』は、ストーリー展開こそ難があるが、著者の成田良悟のキャラクター作りと演出はやはり他作品では見掛けない魅力がある。4位の『若草野球部狂想曲』は、これぞ知る人ぞ知る良作。時事ネタが多く(阪神の川尻って言っても現代っ子はもはや解らんだろう)、完全な消費期限切れを起こしているので是非とも【現代版】としてリメイクして欲しい。それでも、読む価値は十分にある鮮度切れの一作だ。5位の『陰陽ノ京』は単純にライトノベルを読もうとして、……ライトノベル?と首を傾げてしまう感じになるので「5位」に置かせて頂いたが、受賞作中一番「巧い」ので、その意味でも読む価値はあると思う。次点の『吸血鬼のおしごと』は、とりあえず「猫」が出ているので推してみた……と云うのは半分冗談で、半分は本気だ。賞の歴史やらを重視するなら、第7回の『天国に涙はいらない』を選んでも良いかもしれないが、今読んでもそれ程価値があるとは思えないので選外にしました。そんな感じで、【第11回~第20回】編も該当受賞作を全部読み次第、作ってみようと思います。ではでは!

以下に電撃小説大賞の受賞作のみの【点数一覧】を付け足しておきます。相対評価なので、ちょいちょい点数は前後しますのでご了承下さい。

☆ 受賞作:点数一覧 ★



80

79  陰陽ノ京/渡瀬草一郎  【第5位】

75

☝  満足  ☟  普通


74  

73

72  我が家のお稲荷さま。/柴村仁
    ブラックロッド/古橋秀之
    リングテイル 勝ち君の戦/円山夢久

71  吸血鬼のおしごと/鈴木鈴  【次点】

70  ブギーポップは笑わない/上遠野浩平  【第1位】
    七姫物語/高野和

69  塩の街 wish on my precious/有川浩  【第2位】
    天国に涙はいらない/佐藤ケイ
    バッカーノ! The Rolling Bootlegs/成田良悟  【第3位】

68  ウィザーズ・ブレイン/三枝零一
    ダブルブリッド/中村恵里加

67  大唐風雲記 洛陽の少女/田村登正

66

65  

64  キーリ 死者たちは荒野に眠る/壁井ユカコ
    シャープ・エッジ stand on the edge/坂入慎一

63  若草野球部狂想曲 サブマリンガール/一色銀河  【第4位】
    結界師のフーガ/水瀬葉月

62  先輩とぼく/沖田雅
    五霊闘士オーキ伝 五霊闘士現臨!/土門弘幸

61  

60  冒険商人アムラフィ 海神ドラムの秘宝/中里融司

☝  普通  ☟  不満


59  

58  悪魔のミカタ 魔法カメラ/うえお久光

57  クリス・クロス 混沌の魔王/高畑京一郎

56  シルフィ・ナイト/神野淳一
    猫目狩り(上巻/下巻)/橋本紡

55  パンツァーポリス1935/川上稔
    月と貴女に花束を/志村一矢

54  NANIWA捜神記/栗府二郎
    天剣王器 dual lord reversion/海羽超史郎

53  僕の血を吸わないで/阿智太郎
    学園武芸帳「月に笑く」/白井信隆

52  コールド・ゲヘナ/三雲岳斗

51  

50  シュプルのおはなし Grandpa's Treasure Box /雨宮諒

49

48

47  

46

45  インフィニティ・ゼロ 冬~white snow/有沢まみず

☝  不満  ☟  アマチュア


35

21  A/Bエクストリーム CASE-314[エンペラー]/高橋弥七郎

現在、2014年03月04日/修正

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この受賞作を読め! 【日本ファンタジーノベル大賞:All Time Best!!】

【第1回~第10回】は⇒こちらへ!

【第11回~第20回】は⇒こちらへ!

【第21回~第25回】は⇒こちらへ!


流石は数多の著名作家を輩出してきた日本ファンタジーノベル大賞。BEST 5では絞り切れず、急遽、次点を+1して全7作の選出と相成りました。短評、総評もつけたので、日本ファンタジーノベル大賞に興味がありつつも未読のまま、……な方は参考にしてみて下さい。では、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

Q.ザ・日本ファンタジーノベル大賞な作品とは?という問いが出たとして、とりあえず、答えに本作を挙げておけば当の受賞者たちを採点者に招いたとしても「正解」にするだろう日本ファンタジーノベル大賞の象徴的作品。読書を〝義務〟にしている玄人、読書を〝嗜み〟にしている素人、どちらの読み手であっても楽しませられる《いぶし銀》な中華風ファンタジー。ちょいエロの魅せ方が格好良い。未読の方は押さえておきましょう。

ライトノベルを想起させるキャラクターを前面に押し出した、親しみやすさを強調したモダンな逸品。まんまとシリーズ化し、第13回の『しゃばけ』と並ぶヒット作に。著者自身も当シリーズの刊行を「ライフワーク」と語る代表作となっている。現況、日本ファンタジーノベル大賞が打ち出した、最後の〝売れる〟ファンタジーの「答え」でもある。

『ピアニスト』『ギタリスト』『ヴァイオリニスト』でも構わないと思うが、そんな音楽家な表題を持つ作品が日本ファンタジーノベル大賞で《大賞》を受賞したとすれば読んでみたくなるでしょう?今回がたまたま「オルガン」を題材にした『オルガニスト』だったと云うだけのことです。さあ、「なんとなく」手に取らないのは止めて、「なんとなく」手に取って読んでみましょう。世にも珍しいオルガン・ファンタジー。

第15回は森見登美彦の《大賞》受賞作『太陽の塔』に隠れてしまったが、もう一作、〝推したくなる〟受賞作があった。それが本作『象の棲む街』。〝レイプ〟〝スカトロ〟〝臓器売買〟……と7つの大罪ならぬ、様ざまな「悪」を凝らした、ある種のバッドエンドが続く短編連作。視点者の選定が絶妙で、あるべき短編連作の形を提示してくれている。

朝鮮半島を舞台に設定しただろう本作は、逆臣と罵られた英雄の物語。曲者集う日本ファンタジーノベル大賞、その受賞作「らしさ」は希薄ながら、道化を演じる天才が躍動するオーソドックスな魅力に溢れる一作。荒俣宏、井上ひさしからの評価が低く、注釈付きながらも、残りの3人の選考委員たちが「楽しんだ」辺りで本作の方向性を察して欲しい。いっそライトノベルとして装丁を変えれば、隠れ切れずに話題を呼ぶスケール感がある。

インテリゲンチャが一目を置く〝大蟻食〟こと佐藤亜紀のデビュー作。「国際舞台にも通用する完璧な小説」と選考委員にホラ吹かせた理由が何なのか?それを理解出来るのならば、貴方も立派なインテリゲンチャだ。一般的に第1回の『後宮小説』と本作が、日本ファンタジーノベル大賞の確立に貢献したと云われているが、万人にお薦め出来ないのが難点。

何故に次点に選んだのかと訊かれれば、(……こんな小説があるんだ)というなかなか出会えない感覚をプレゼントしてくれるからに他ならない。空前絶後、後にも先にも生まれない、「鉄塔」徹尾なルポルタージュがここにある。ちなみに、多くの読了者がそうであるように、私もまた本作が面白いとは全く思っていない。しかし稀少、故に価値がある。

☆☆  総評  ★★

日本ファンタジーノベル大賞の【All Time Best !!】―――そのBEST 5を妥当に選ぶなら、『後宮小説』、『バルタザールの遍歴』の両《大賞》作を不動のワン・ツーに置いて、残りの三枠を日本ファンタジーノベル大賞切っての売れっ子作家たちである畠中恵の『しゃばけ』、森見登美彦の『太陽の塔』、仁木英之の『僕僕先生』の三者で埋め、次点で知名度は低いがウケの良い『オルガニスト』、アイディア賞の『鉄塔 武蔵野線』で押さえる―――といざ並べていて思ったが、これはマジで誰も文句つけないラインナップだったな。これならこれであんまり悩まなくても良かったかもしれんが、 せっかくなのでエンターテイメント色豊かで、物珍しくも尖り過ぎず、読んで得する著名作と掘り出し物的な良作を基準に選んでみた。1位の『後宮小説』は短評の通りの説明不要のザ・日本ファンタジーノベル大賞な作品。2位の『僕僕先生』は全受賞作中、1,2を争うキャッチーさから選出。3位の『オルガニスト』は音楽モノにハズレ無し、……でも、題材はまさかの「オルガン」!という物珍しさから選出。4位の『象の棲む街』、5位の『戒』は候補作が溢れる中で、掘り出し物、隠れた良作具合を重視して選出した。両作ともに「型」がバッドエンド風のため、ともすると低評価を招いているが、読後感は決して悪くないので、それを心配している方がいるなら安心して頂きたい。まさかの次点に配した『バルタザールの遍歴』は、―――面白い!と唸るには確実に無理をしなければならないため。娯楽目的で読むには敷居が高いかな、と。『鉄塔 武蔵野線』は、日本ファンタジーノベル大賞の懐の深さが解る異色の作品。実際、活字中毒なんです、助けて下さい!Your love forever!とうそぶきたい諸氏には必読の一冊と云える。さて、ここからはランクインを逃した(私の中の)候補作について一言ずつ。第13回の『しゃばけ』はド真ん中の大衆小説で、わざわざ日本ファンタジーノベル大賞の受賞作なんて肩書きは不要でしょう。第15回の『太陽の塔』は森見登美彦のデビュー作ではあるが代表作では無いため。必殺の「ええじゃないか」は彼の後発の作品のほうがより洗練されているだろう。第21回の『増大派に告ぐ』はPaint It, Black!な文章に推したくなるものの、如何せん、「壊れた」大人のパートは作品には必要でも楽しむ類では無いため。第24回の『絶対服従者』は個人的に最後までランクインさせようか悩んだが、ライトノベルの亜種とも云えるこの手の作品が仮に日本ファンタジーノベル大賞の「受賞作」として毎年出版されるなら《日本ファンタジーノベル大賞》という看板は降ろすべきだろう。「格」が足りない。とりあえずの〝最後〟となった第25回の『忘れ村のイェンと深海の犬』は、同賞が残す置き土産な一作。続きが気になるのは確かだが、如何にも「粗い」。―――と、長々と書いたが、受賞作家以外にも、最終選考者に岩本隆雄、恩田陸、小野不由美、高野史緒……といった第一線で活躍出来る作家を輩出した素晴らしい公募賞でした。レヴューしていて楽しかったですワ。また時間を置いて、第1回~第10回、第11回~第20回、第21回~第25回のリストを勝手に作ろうと思います。ではでは!おっと、せっかくなので以下に【点数一覧】を付け足しておきます。相対評価なので、ちょいちょい点数は前後しますのでご了承下さい。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

86  しゃばけ/畠中恵

85  後宮小説/酒見賢一  【第1位】

84  戒/小山歩  【第5位】
    バルタザールの遍歴/佐藤亜紀  【次点】

83  僕僕先生/仁木英之  【第2位】
    オルガニスト/山之口洋  【第3位】

82  絶対服従者/関俊介

81  象の棲む街/渡辺球  【第4位】

80

79  忘れ村のイェンと深海の犬/冴崎伸

78  金春屋ゴメス/西條奈加
    月桃夜/遠田潤子

77  厭犬伝/弘也英明

76  ブラック・ジャック・キッド/久保寺健彦
    仮想の騎士/斉藤直子
    楽園/鈴木光司

75  増大派に告ぐ/小田雅久仁
    ボーナス・トラック/越谷オサム
    太陽の塔/森見登美彦

☝  満足  ☟  普通


74  クロニカ 太陽と死者の記録/粕谷知世 
    さざなみの国/勝山海百合
    前夜の航海/紫野貴李

73  闇鏡/堀川アサコ

72  月のさなぎ/石野晶
    ヤンのいた島/沢村凛
    糞袋/藤田雅矢

71  バガージマヌパナス ― わが島のはなし/池上永一
    競漕海域/佐藤茂

70  昔、火星のあった場所/北野勇作
    吉田キグルマレナイト/日野俊太郎
    ラス・マンチャス通信/平山瑞穂

69  なんか島開拓誌/原岳人

68

67  天使の歩廊 ある建築家をめぐる物語/中村弦
    かおばな憑依帖/三國青葉

66  英雄ラファシ伝/岡崎弘明
    彼女の知らない彼女/里見蘭
    アイランド/葉月堅

65  鉄塔 武蔵野線/銀林みのる  【次点】
    イラハイ/佐藤哲也

64  青猫屋/城戸光子
    宇宙のみなもとの滝/山口泉

63

62

61

60  バスストップの消息/嶋本達嗣
    BH85/森青花
    酒仙/南條竹則

☝  普通  ☟  不満


57  信長 あるいは戴冠せるアンドロギュヌス/宇月原晴明

54  青猫の街/涼元悠一

50  ベイスボイル・ブック/井村恭一

45  世界の果ての庭 ショート・ストーリーズ/西崎憲

40  星の民のクリスマス/古谷田奈月

現在、2014年03月04日/修正
【第1回~第10回】は⇒こちらへ!

【第11回~第20回】は⇒こちらへ!

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category: この受賞作を読め!

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この受賞作を読め! 【日本ファンタジーノベル大賞:第21回 ~ 第25回!】

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日本ファンタジーノベル大賞の【この受賞作を読め!】企画の“とりあえず”の最後となる【第21回 ~ 第25回!】編は、受賞作の数が全10作ということで、【BEST 5】ではなく【BEST 3】に変更し、【次点】も無しという設定で選出させて頂きます。まあ、この手の企画で興味持つのなんて、せいぜい1~2作だろうからむしろ改良でしょ( ゚∀゚)ハッハー!ではでは、始まり始まり~!

* 作品タイトルをクリックすると、その該当作品のレヴューページに飛びます。

「壊れた」大人と「壊れかけ」の少年のひたすら陰鬱な言葉が連ねられていく「人の底」な一作。「壊れた」大人のパートは意味の無さがストレスを運んでくるものの、「壊れかけ」の少年のパートは暗澹たる人間模様が披露され、著者の今後の活躍を期待したくなる。どちらかといえば「物語」というよりも、著者の「筆」を評価したくなる作品。

何の準備もせずに「うっかり」ライトノベル作家となった著者が、多くの「うっかり」作家たち同様に世間から忘れられていったものの、……俺にも意地がある!と起死回生を賭け、上梓。雇用問題をファンタジーでアレンジ、途中で合流する“ツンデレ”Beeなヒロイン、何より人称を極力省くモダンな文章など、ライトノベル作家の素養を存分に発揮した快作。

―――私、続きが気になります!日本ファンタジーノベル大賞がその幕を“とりあえず”閉じる間際、残していった置き土産的ファンタジー。キノコ、コケといった菌類で生計を立てる村を舞台に後に「女傑」となるイェンの幼少期を描いた物語。粗さは目立つものの、兎に角、エンディング間際は必見必読の「……始まったよ!」なサプライズが起こる。

☆☆  総評  ★★

荒俣宏だったと思うが、ファンタジーらしいファンタジーが応募されなくなってきた、と選評で嘆いていた記憶があるが、こうしていざ選んでみれば、確かに(……日本ファンタジーノベル大賞の役割が終わったのかな?)とも思うラインナップとなった。別に詰まる&詰まらないという話ではなく、ナニコレ?的イロモノが淘汰されている感じがね。選ばせて貰った三作は、それぞれ難を抱えながらも(それは【第1回~第10回】編、【第11回~第20回】編のランクイン作品にも勿論云えることだが)、粗削りな魅力が勝る作品たち。ここでは選ばなかったが、第21回の『月桃夜』は【第21回 ~ 第25回】の受賞作の中では一番出来が良いと思うので、サプライズ抜きの物語を求めたい人にはそちらをオススメしたい。残りの6作の受賞作は時の運を得ただけの印象。受賞出来て良かったね、と。とりあえず、【第21回 ~ 第25回】の受賞作群は【All Time Best!!】には割って入れない「どこか」小粒なところが何とも残念。

☆ 受賞作:点数一覧 ★

82  絶対服従者/関俊介  【第2位】

81  

80

79  忘れ村のイェンと深海の犬/冴崎伸  【第3位】

78  月桃夜/遠田潤子

77  

76  

75  増大派に告ぐ/小田雅久仁  【第1位】

☝  満足  ☟  普通


74  さざなみの国/勝山海百合
    前夜の航海/紫野貴李

73  

72  月のさなぎ/石野晶

71  

70  吉田キグルマレナイト/日野俊太郎

69  

68

67  かおばな憑依帖/三國青葉

66  

65  

☝  普通  ☟  不満


40  星の民のクリスマス/古谷田奈月

現在、2014年03月04日/修正

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