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category: あ行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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第22回小説すばる新人賞 受賞作:桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

桐島 (216x290)
(あらすじ)
映画化大ヒット青春小説!バレー部のキャプテン・桐島の突然の退部が、5人の高校生達に波紋を起こして……。至るところでリンクする、17歳の青春群像小説。

answer.――― 60 点
朝井リョウというと遊び心くすぐられる名タイトルな本作『桐島、部活やめるってよ』が代名詞となっていると思うが、個人的にはいつだったか情報番組『王様のブランチ』での和田竜、中村文則、川上未映子、西加奈子、そして、朝井リョウという旬な作家たちを集めての座談会での放言の数々を思い出す。その放言がどんなものだったかは各自調べて頂きたいが、私が一番興味を惹かれたのは「色んな評価体系が全部自分に来たら凄く良くないですか?」という世界の中心で「朝井リョウ!」と叫ぶ自信である。一点の曇りもなく、朝井リョウは自分が《面白い》作品を作っていると思っている。事実、彼は本作で小説すばる新人賞、『何者』で直木三十五賞、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞と受賞し続け、ベストセラーを世に出し続けている。この《結果》を考えれば、彼は間違いなく《面白い》作品を作っている……わけだが、果たして、彼は本当に《面白い》作品を作れているのだろうか?《結果》は麻薬だ。《結果》を出してしまうと、自己否定出来なくなってしまう。徐々に下がる売上をどう受け止める?突如としてまったく売れなくなったとき、どういう結論に辿り着ける?「俺は面白い!」―――そんな 無意識下の『前提』が、いつの間にか着せられていた道化の衣装をいつまでも脱がせてくれなくなる。本作は表題通りのイベントをキッカケに揺れ動く高校生たちをそれぞれの視点で描く。肝心の桐島が本編中で視点を持っていないのが実験的と云えば実験的な仕掛け。朝井リョウが大学在学中に投稿した事実から分かるように、当時代の思春期迎えた若者(たち)の現在、そして、感性をダイレクトに触れられる(た)のが本作最大の見所。たとえば「チャットモンチー」をファッションな《記号》として扱っているのは個人的に興味深かった。何にせよ、生もの的な作品。朝井リョウは作品そのものより作家という《人間》、観察対象として追っていきたい作家の一人です。

第22回小説すばる新人賞 受賞作:桐島、部活やめるってよ/朝井リョウ

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 朝井リョウ 小説すばる新人賞

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第20回小説すばる新人賞 受賞作:桃山ビート・トライブ/天野純希

桃山ビート・トライブ (202x290)
(あらすじ)
時代は安土桃山。偶然三味線を手に入れた悪童の藤次郎、笛役者になるため家を飛び出した小平太、太鼓叩きを趣味とする元奴隷の弥介、天性の踊り子ちほの4人が、型破りな演奏で、権力や身分によって押さえつけられた世の人々を惹きつけていく戦国ストーリー。

answer.――― 83 点
サムライ・ギタリストと紹介されるMIYAVIをご存知だろうか?ヴィジュアル系らしい女形の容貌にパーカシッヴなギター奏法が特徴のギタリストで、『SAMURAI SESSIONS』と銘打った他アーティストとのコラボレーション・シリーズをあざとくリリースするなど、なかなかの歌舞伎者である。さて、安土桃山時代を舞台にした本作『桃山ビート・トライブ』―――三味線速弾く中心人物の藤次郎は、そのMIYAVI本人も「ビックリするくらい似てました(笑)」と認める、読み手の耳目惹く跳ね返りっぷり。作品の概要としては、戦国時代、傾奇者たちでRock 'n' Roll!石田三成がナンボのもんじゃない!といったところなのだが、兎にも角にも、藤次郎をはじめキャラクターかぶらない傾奇者を揃えてくるのが素晴らしい。個人的に膝を打ったのが、「黒人」弥介の採用。彼が太鼓を叩くわけだが、その説得力たるや理詰めに圧巻。黒人見慣れぬ時代にアフリカンビート、そこに三味線の速弾きが重なると、作中の聴衆同様、読み手もその音をまともに想像出来ず混乱来たすのは必然である。まさしく傾奇者たちの演奏を「読める」わけだ。男臭くならないように「踊り手」ちほ、本作の起伏の実は全てを担っているメンバー唯一の常識人なヘタレ「笛吹き」小平太と、配役に抜かりない。小説すばる新人賞随一と断言出来る「痛快」な一作。どうせ、こんなもんだろ?という予想をしっかり超えてくる三味線Rock 'n' Rollを体験出来ます。意外や意外、読書家さんたちのなかでも知名度低いようなので、ここは【推薦】させて頂きます。

第20回小説すばる新人賞 受賞作:桃山ビート・トライブ/天野純希  【推薦】

category: あ行の作家

tag: OPEN 80点 天野純希 小説すばる新人賞 推薦

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第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

はるがいったら
(あらすじ)
両親の離婚で別々に暮らす園と行の姉弟。妥協知らずで完璧主義者の姉・園は、婚約者のいる幼なじみと不毛な恋愛関係を続けていた。一方、虚弱体質で冷めた性格の弟・行は、幼い頃に園と拾った愛犬・ハルの介護をしながら、進路に悩んでいた。

answer.――― 78 点
西加奈子の初のベストセラー作品『さくら』を《陰》とするならば、そのカウンターである《陽》的作品として個人的に挙げたくなるのが本作『はるがいったら』。両作の共通項は一家の一員としての「犬」が老いて弱り、その派生として飼い主周りが動き出す点。しかし犬はあくまでマスコット!的役割であり、物語は飼い主たちの現状に焦点を当てている形。もっとも、その飼い主たちは(家庭事情複雑ながらも)ごくごく普通の一般人で、どこにでもありそうな日常のなかであっても読み手の琴線触れる《機微》を施せるかが著者の手腕試されるところ。結論から言ってしまうと、―――これは、良作!と素直に称えられるクオリティーが本作にはある。病弱な弟、才色兼備な姉。二人が視点人物なわけだが、それぞれが読み手にそれとなく先入観を与え、覆していくカタルシスはデビュー作らしくない洗練されたもので、チョイ役の小川君に「じゃあ今日はみんなお隣さんですね」とまとめさせるトリッキーな演出も含め、著者の次作へ誘う魅力を備えている。作中のハイライトは、デパート勤める姉・園への嫌がらせの顛末。上述の通り、植え付けられた先入観を覆し、明かされ、解かれる感情はエンタメ的に仕上げられているが、《文学》的演出。サプライズ的に楽しめます。

第18回小説すばる新人賞 受賞作:はるがいったら/飛鳥井千砂

category: あ行の作家

tag: OPEN 78点 飛鳥井千砂 小説すばる新人賞

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第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

走るジイサン_0001 (194x290)
(あらすじ)
単調な毎日を送っていた作治。だが、同居する嫁に疼くような愛しさを覚えた頃から、頭上に猿があらわれて……。老いの哀しみと滑稽さを描く、第11回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 66 点
ある日、突然、頭に猿が乗っていた―――というシュールな設定で描かれる枯れた人生、その周りの若人たちの悩み。詰まる/詰まらないという評価軸で判断してしまうと、決して詰まるほうの内容ではないのは、あらすじからも察せるところ。本作の読みどころは、本作出版時点で五十路に差し掛かろうとしていた著者の視点。それは息子の嫁に仄かな劣情を抱いたり、己の職業経験から相手の隠れた心情を察するなど、エンタメとして描かれること少ない「枯れた」視点である。鋳物職人であった主人公の、明ちゃんの絵に用いられた「赤」の変化を静かに見抜く場面は、「老人」設定を生かした象徴的な演出。この手の場面をもっと増やせれば、「枯れた」視点も捨てたものでもないのが解る……が、如何せん、その手の演出は少ないので、積極的に推せません。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:走るジイサン/池永陽

category: あ行の作家

tag: OPEN 60点 池永陽 小説すばる新人賞

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第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

オロロ畑 (200x290)
(あらすじ)
超過疎化にあえぐ日本の秘境・牛穴村が、村おこしのため、倒産寸前の広告代理店と手を組んだ。彼らが計画した「作戦」とは!?

answer.――― 74 点
先頃、4回のノミネート&落選の末、ついに『海の見える理髪店』で直木三十五賞を受賞した荻原浩のデビュー作が本作『オロロ畑でつかまえて』。その概要は、過疎/高齢化に悩む村人が広告代理店に勤める旧友(と思っている同級生)に村興しを頼み、UMA発見というイカサマなニュースを流す、というもの。広告代理店に就職していた自身の経歴を生かした題材で、序盤のコンドームのキャッチコピーへのプレゼン―――《我々の業界には『ラ』の音と濁音の入ったフレーズはヒットするという定説があります》は眉唾ながらに検証、そして、(……マジかよ)とのめり込ませる魅惑のリードとなっている。そこからいよいよ到着する過疎村、そのらしいカッペ演出は上々ながら、社の事情で渋々嫌々ながら村興しの依頼を受け、UMA発見!?とマスコミを巻き込む展開はあらすじに起こせばダイナミックに映るものの、実際は目を剥くような細かなアイディアは施されず、大味なのが残念なところ。本作は村興しではなく、中盤より投入される人生逆転賭けるアナウンサー(♀)の心境の変化が実質のメインと云える。結論としては「良」ではあるものの、他人に推すほどには弱い「優」ならずのデビュー作。それでもラスト、オロロ畑の真相はそれこそダイナミック(食うんかいっ!)で、著者のセンスを存分に感じられます。なお本作の後も、「ユニバーサル広告社」シリーズとして続編が刊行している模様。

第10回小説すばる新人賞 受賞作:オロロ畑でつかまえて/荻原浩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 荻原浩 小説すばる新人賞

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第7回小説すばる新人賞 受賞作:恋人といっしょになるでしょう/上野歩

恋人といっしょになるでしょう (201x290)
(あらすじ)
浅草にある玩具月報社に勤める“僕”と儚げな“彼女”。揺れる心が愛に変わる時、僕たちは同じ月を見ていた。

answer.――― 70 点
友人に純文学の書き方を訊いたとき、人に読ませようと思って書かないこと、という答えが返ってきて半ば感心したことがあったが、その大前提の上で「読ませる」工夫が出来ていると、その他大勢から抜け出せるのだろう。さて、本作は、斜陽企業に就職した行き当たりばったりの主人公(♂)が既婚者(♀)に惹かれ、仕事に精を出し、―――というストーリーライン。主人公が学生時代に消化した小説、映画等の固有名詞を地の文にまぶした《お洒落》な作風で、そこを踏まえての特段の起伏見られない展開に、人によっては《文学》の薫りを嗅ぎ取ってしまうかもしれない。が、著者は固有名詞を《記号》的に配しているように、読み手の目を多分に意識しているので、本作が大衆小説なのは間違いないところ。仮に《文学》の薫りを嗅ぎ取ってしまったならば、きっと「文学=文章の機微」程度に文学を解釈してしまっているので認識を改めたほうがいいだろう。しかし、―――お洒落だ。著者の引き出しの豊富さは「買える」。テレホンショッキングのカラクリを流用しての営業は個人的な作中のハイライト。現実の営業でも実践的に使えるのが素晴らしい。隣人マリーを正ヒロインへ配役しなかった悪手が目に余るものの、読めば知らず己のセンスを磨ける一作。

第7回小説すばる新人賞 受賞作:恋人といっしょになるでしょう/上野歩

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 上野歩 小説すばる新人賞

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第20回電撃小説大賞 銀賞:王手桂香取り!/青葉優一

王手桂香取り!
(あらすじ)
三度の飯より将棋好きの中学一年・上条歩が秘かに憧れる人は同じ将棋クラブの主将・大橋桂香先輩。そんな歩のもとに「私たちは、将棋の駒だ」と突如美少女たちが現れる。そ人知を超えた将棋の強さをそなえる彼女たちの指導のもと、歩は棋力をめきめき上げていく。

answer.――― 70 点
将棋の駒の化身が現れ、少年を強き棋士へと導く!というアイディアからも漫画『ヒカルの碁』をそのまま彷彿させる《将棋》を題材にした作品。ライトノベルにかぎらずだが、売上の多寡を《キャラクター》がとりあえず握る昨今、巨乳姉御肌の「香車」、和装しとやかな「歩」、上からの西洋貴族令嬢な「桂馬」と駒の化身たちを総じて女性化したのが、先の漫画からのライトノベルらしいアレンジ。「桂馬をちゃんと有効に使わないからよ!」と内容自体もなかなかに本格的で、(二流とはいえ)プロ棋士を早々に打倒するなんて「大」イベントを前半で消化しての、《横歩》をキーワードにした終盤の一戦は、相手方のBUMP!な気概含めて素直に〇を打てる出来。丁寧な筆致で、巷の評判通り、いわゆる《良作》に数えられることに何ら異論ない。がしかし、どうにも手放しで褒められないのは、素直で受け身な主人公、そして、良くも悪くも破綻の無い展開からか。本作、結局、真っ当に将棋の話であり、駒の化身たちもそんな「設定」を取り払えばファンタジー要素0の年上の女師匠に過ぎない。ライトノベルというティーンが手に取るジャンルで出版するのだから、もっと《キャラクター》を押し出す演出―――それこそ化身たちの『日常』、各々のパーソナルな『過去』、現代に対する好奇心を描く、そんな「寄り道」があって然るべきだったと思う。著者的には巻数を重ねて《キャラクター》化していく意図があったんだろうが、……時勢を見誤ったかな?この辺、大評判の後発の将棋ライトノベル『りゅうおうのおしごと!』(未読)が答えを出してくれているでしょう。個人的には主人公の想い人“ザ・優等生”な桂香部長が優等生として100点満点に描けているだけに大化けが期待出来て◎のキャラクターメイキングでした。なお、《将棋》題材というと大衆小説ですが、『盤上のアルファ』が快作でしたので未読の方はオススメです。

第20回電撃小説大賞 銀賞:王手桂香取り!/青葉優一

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 70点 青葉優一

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第20回電撃小説大賞 銀賞:思春期ボーイズ×ガールズ戦争/亜紀坂圭春

思春期ボーイズ ガールズ戦争
(あらすじ)
正しく生きるのを止め、“男であり続ける”ことを誓った三人の少年がいた。彼らは女の子を知るためには、大きな力にも屈することなく立ち向かっていこうと誓ったのだった。覗きすら辞さない―――つまり、どうしようもなく思春期だった。こじらせすぎてしまった少年達と怒りの鉄槌を下そうとする女子達。思春期ボーイズ×ガールズの青い戦いの行方は!?

answer.――― 62 点
投稿時の表題が『放課後猥雑倶楽部』という事実からも察せられるように、貴方の下半身(Oh,Pocket Monster!)をストレートに狙った本作。その概要は、女尊男卑法蔓延る社会で三人の思春期ボーイズが「エロ本を創る!」という決意から困難辛苦に見舞われる、というもの。『多摩湖さんと黄鶏くん』の稿でも言及したように、ライトノベルにはエロ本としての側面があり、本作はその側面を前面へ採用してきた形。エロ本制作のために想い人のパンティーを眺めに向かい、偶然にも拾得、良心から投げ返したものの、翌日に下駄箱に何故か仕込まれていた!という陰謀めいた序盤から、女子寮務め、おトイレ目撃……と、ライトに猥雑を陳列していく展開は、ライトノベル=エロ本という認識の方にはある程度その需要に応えられている印象。ただ、……もっと過激にしても良かったのでは?と思ってしまうのは、あらすじからも了承済みのストーリーの弱さから。例えば、パンティーは履いちゃって良かったと思う。その上で主人公たちのポケモンを立ち上がらせる。そして、そこから先こそ著者の個性と覚悟、倫理規定との鍔迫り合いではないだろうか。一昔前ならばいざ知らず、表紙にヒロインがセックスアピール気味に占拠している現在で、遠慮なんて要らない。持ち物検査やらの小イベントのチョイスが良質なだけに、我慢出来ず主人公が射精してしまうような「マジかよ!?そんなことが許されるのか!?」とこちらも驚かざるを得ない演出がなかったのが残念でした。

第20回電撃小説大賞 銀賞:思春期ボーイズ×ガールズ戦争/亜紀坂圭春

category: あ行の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 60点 亜紀坂圭春

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第13回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ファーレンハイト9999/朝倉勲

ファーレンハイト9999 (205x290)
(あらすじ)
アニメ、漫画、ゲーム、ラノベ、フィギュア―――すべてが規制の対象となった現代。警視庁に新設された“オタクを取り締まる機関”焚書課の高校生捜査官・維刀臥人は、中学生の先輩・奏手イリナとともに違反者を検挙し続けていた。だが、隠れオタクである臥人はその裏で規制に反逆する白亜の聖堂騎士・エルガットとして単身政府に抵抗していた!?

answer.――― 56 点
ヲタクが断罪される日本が舞台―――高校生の主人公(♂)はヲタクを取り締まる職に就きながら、ヲタク文化を愛好する背徳者であり、時にアンチヒーローとなってヲタクの取り締まりを妨害する構図。とりあえず、著者に提示したいのは『鏡』である。生まれついての書き手などいない。誰しも読み手からそのキャリアは始まる。しかし奇妙なことに読み手から書き手に回ったとき、自分が見えなくなってしまう―――自分がどんなものを書いているのか、自覚せず脱稿してしまうことが間々ある。そんな時のために、『鏡』が求められる。百の批評より一つの『鏡』―――「えー?俺の作品ってこんなのなの?……冗談でしょ?www」と、映るのは残酷なまでの現実である。注意事項として、『鏡』は貴方の身内に用意させてはいけない。貴方を無駄に傷つけまいと手心を加えられてしまうからだ。という訳で、関わりのない第三者である私が著者に『鏡』としてお薦めしたいのが、―――と続けたかったのだが、適当なのが思い浮かばなかった。ヲタクが迫害されるコミカルな世界に訪れる謎の美女、大規模なジェノサイドを予告されるミステリアスな進行、辿り着く俺TUEEEE!な大活劇!これが本作の展開だが、この《コミカルな世界》設定からすでに(……面白い)じゃなくて(……このまま読んで大丈夫か?)と齟齬が書き手と読み手の間に生まれている。「核兵器」という作中のスケールを考えると、トンデモな爆弾を導入しているところは買えるが、ラストのどんでん返しは『空色パンデミック1』のようなスマートなイメージならば、実際は『繰り世界のエトランジェ 第一幕 糸仕掛けのプロット』のような、結婚式に「努力は必ず報われる!」と刺繍された特攻服で列席する仕上がりなので、その辺はしっかりイメージを修正しておきましょう。地力はありそうなので、著者には変化球な作風でなく、もっとストレートな作品を作って頂きたい。

第13回スーパーダッシュ小説新人賞 大賞:ファーレンハイト9999/朝倉勲

category: あ行の作家

tag: スーパーダッシュ小説新人賞大賞 OPEN 50点 朝倉勲

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