ナマクラ!Reviews

02/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31./03

第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

赤と白 (206x290)
(あらすじ)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく。

answer.――― 69 点
雪国・新潟を舞台に、ボタンの掛け違えから女性特有の共同感覚的な友情が崩れ、バッドエンドへと突き進んでいく本作『赤と白』。失望、嫉妬、背徳……と、登場人物たちがそれぞれの形で抱く疑心は堂に入ったもので、そこへ過食症、ストーキングといった狂気垣間見させる設定をつけ、読み手へ何かが起こる予感(不安)をしっかりと与えてくれる。著者のデビュー作であり、シリーズにもなっている『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているように、上述の予感は《ホラー》のそれに近い。もっとも、本作のエンタメの核は《人間関係の歪み》といったところだが、読み手にどんな感想を抱かせたかったのかが曖昧なのが残念なところ。用意したキャラクター、イベントは相応だったと思うが、《人間》へ迫りたかったのだとしたら大味過ぎる。ついでに、大衆小説でそこを目指してしまうと、退屈へ到ってしまう。本作に足りないのは、ズバリHero(Heroine)。それを確立させるだけで「あーあ……」で終わってしまう結末にあっても、意志ある何者かがスタートを切ったことでしょう。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 櫛木理宇 小説すばる新人賞

[edit]

page top

か行の作家一覧

 か行    

海堂尊
海冬レイジ
櫂末高彰
海原零
鏡貴也
蝸牛くも
影名浅海
笠原曠野
風見周
春日部タケル
上総朋大
粕谷知世
角田光代
片山憲太郎
勝山海百合
桂望実
賀東招二
上遠野浩平
金城一紀
壁井ユカコ
鎌池和馬
神秋昌史
神坂一
神代明
カミツキレイニー
榎宮祐
垣根涼介
神高槍矢
神野淳一
川上未映子
川上稔
川口士
川崎康宏
河原千恵子
川原礫
川村元気
玩具堂
神崎リン
菊池秀行
木皿泉
貴志祐介
北川拓磨
北野勇作
樹戸英斗
城戸光子
聴猫芝居
木村心一
京極夏彦
清野かほり
霧舎巧
銀林みのる
九岡望
草薙渉
久世光彦
久保寺健彦
窪美澄
熊谷達也
栗府二郎
黒史郎
黒田研二
慶野由志
劇団ひとり
古泉迦十
小岩井蓮二
紅玉いづき
甲田学人
河野裕
小木君人
午後12時の男
九重一木
越谷オサム
午前三時五分
虎走かける
古谷田奈月
護矢真
近藤史恵
今野敏

category: か行の作家

tag: OPEN 作家一覧

[edit]

page top

第22回小説すばる新人賞 受賞作:白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子

白い花と鳥たちの祈り
(あらすじ)
中学一年生のあさぎは、母の再婚と私立中学への入学を機に新しい町に越してきた。新しい家族にも新しい学校にも馴染めない彼女の心の拠り所は、近所の郵便局に勤める青年、中村だった――居場所のない中学生と仕事の出来ない郵便局員。二人の前に拡がる新しい世界。

answer.――― 75 点
視点人物は二人。家庭事情と思春期を迎えて変化する周りから塞ぎ込む中学生「あさぎ」と発達障害に苦しむ郵便局員「中村」。二人の直接に交わりはせずとも遠くから眺め(支え)合ういわゆる《ハートフル》な作風で、ストーリーそれ自体は実質、「無い」と云える。「明日から、あかりたちとお弁当食べてくれる?」「ただの仕事のできない郵便局員だ」―――視点人物がともに明確な《弱者》故に序盤の陰鬱な展開、吐露は読み手を遠ざけること必至で、実際、その陰は終盤の終盤まで変わることはない。しかし、である。弱者を徹底的に貫く故に《響く》共感がここに描かれている。中盤、どちらにも起こる「アクシデント」を経過し、迎える終盤、二人の怒濤の「吐露」は迫真そのもので、ここまでの陰鬱な現実に耐えていた読み手は感動をせざるを得ない。個人的ハイライトは、たとえば「同僚」遠藤、そして、母など諸所に挿される「中村」への《同情》も捨て難いが、中村自身がセラピストへ感情を爆発させる場面を挙げたい。これは単純に(おいおい、これ、解決出来るのか!?)という、中村の吐露が正論過ぎる正論としてぶつけられるからなのだが。その着地は成る程、セラピストといった感じで十二分(が、ある意味、残念)。中盤の「アクシデント」―――「継父による性的虐待(虚偽)」「小包爆弾」は、現実に根ざした本作の設定からすると破格の演出と言え、著者の思い切りの良さに素直に驚かされた。私は「中村」の発達障害に対して共感してしまったが、「あさぎ」の環境適合のほうに共感される方もいると思う。その場合は、ラストの実父の救済の過去&継父への吐露は感涙確定だろう。《ハートフル》という意味では満額回答にもなり得る好作。が、買って読むよりも借りて読むのをお薦め致します。途中で読み止める人もきっと多いだろう。

第22回小説すばる新人賞 受賞作:白い花と鳥たちの祈り/河原千恵子

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 河原千恵子 小説すばる新人賞

[edit]

page top

このライトノベルがすごい!(2017年版) 5位:ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも

ゴブリンスレイヤー (203x290)
(あらすじ)
「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」―――その辺境のギルドには、ゴブリン討伐だけで銀等級にまで上り詰めた稀有な存在がいるという。冒険者になって、初めて組んだパーティがピンチとなった女神官。彼女を助けた者こそ《ゴブリンスレイヤー》と呼ばれる男だった。

answer.――― 78 点
一定の売り上げが見込めるからか、Web小説として地固めされた作品の書籍化がライトノベル作家のデビューへの道、その王道にも思えてくる昨今―――やる夫スレの人気作品がついに書籍化!と新手の方角から現れた本作『ゴブリンスレイヤー』。その概要は、「俺は世界を救わない。ゴブリンを殺すだけだ」と辺境のギルドでゴブリンのみを狩って銀等級にまで上り詰めた孤高の冒険者、通称ゴブリンスレイヤーが『仲間』を得て……といったもの。さて、ご存知の通り、ライトノベルは隙間を突くジャンルである。著者は主人公を勇者ではなく、《ゴブリン》というゴキブリの如きザコモンスター専門の狩人に配して隙間を突いてきたわけだが、ザコ相手に俺YOEEEE!とせず、あくまで俺TUEEEE!(でも、ゴブリンもTUEEEE!)としてきたところが著者のセンス溢れる設定演出。如何にゴブリンを強敵に描けるか。その回答に著者は、ライトノベルでは禁じ手とも言える《レイプ》で応えた。作中、ゴブリンたちは(描写こそ省かれているが)女たちを蹂躙する。犯し、妊娠さえさせる。その背徳、ファンタジーでありながらも圧倒的「現実」を読み手に突きつける。本作を読めば《子供程度の知恵、力、体格しかない》ゴブリンが《子供と同じ程度には知恵が回り、力があり、すばしこい》という認識に変わり、その悪夢のような事実に恐れ慄くこと必至だ。ゴブリンスレイヤーの幼馴染、巨乳の牛飼娘は果たして処女(無事)なのか?ゴブリンにのみ執着し、憎悪するゴブリンスレイヤーの背負う過去とは?頁をめくるたびに明かされていく醜悪な生態をスパイスに、ゴブリンは人類の強敵へと変わっていく。《レイプ》の持つおぞましいエンターテイメント性をゴブリンという矮小な器へ注ぎ込んだ異形の一作。「無名」のゴブリンスレイヤーが一筋の光となって(ボクたちの)ヒロインを救います。レイプ、ダメ、ゼッタイ!

このライトノベルがすごい!(2017年版) 5位:ゴブリンスレイヤー/蝸牛くも

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 蝸牛くも このライトノベルがすごい!

[edit]

page top

第10回小説すばる新人賞 受賞作:ウエンカムイの爪/熊谷達也

ウェンカムイの爪 (200x290)
(あらすじ)
北海道でヒグマに襲われた動物写真家・吉本を救ったのは、クマを自在に操る能力を持つ謎の女だった。野生のヒグマと人間の壮絶な戦いを描く、第10回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 74 点
週刊少年マガジンで連載され、「キムンカムイ!キムンカムイ!」と、こうちゃん@へなちょこ大作戦Zにネタにされていた漫画『キムンカムイ』は、果たして現在でも読み継がれているのだろうか?「熊」が出てきて、人を襲ってつまらないとか有り得ません。本作は熊谷達也のデビュー作であり、熊谷達也と云えば!な《マタギ三部作》にこそ数えられないが、例によって「熊」が出現、人が食い散らかるアニマル・パニックな一作。各所で言及されているように後続の作品に比べて薄味、序盤の大学生たちの惨劇を除けば平坦な展開なのは否定出来ないところ。もっとも平坦と言っても、「主人公を不可思議に救った大学助教授」「熊対熊」のような仕掛けもあるにはあるが、それらを「ハイライト!」と挙げられないのが著者の伸び代であり、まだまだ作家として拙い部分。とりあえず、上述の大学生たちの恐慌が本作のメインディッシュなのは間違いないので、そこをまず楽しみましょう。「ウエンカムイ」「キムンカムイ」と善悪の熊の存在、アイヌのその“知識”有り。それが作品のちょっとした箔付けになっている。

第10回小説すばる新人賞 受賞作:ウエンカムイの爪/熊谷達也

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 熊谷達也 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第2回小説すばる新人賞 受賞作:草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉

草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉 (196x290)
(あらすじ)
京都の公家の末裔・草小路鷹麿は「東京にいる婚約者を探しに行け」という父の遺言に従い上京するも、婚約者探しの過程で鷹麿に襲いかかるミステリアスな事件。一体、真実とは何なのか。

answer.――― 73 点
《受賞作を読む》というコンセプトの上で読書を続けていくと、知名度低い(売上悪い)ながらも興味惹かれる、いわゆる拾い物に出くわすことが間々ある。これぞ、―――《試作品》!と称えたくなる本作は、生まれて26年間、広大な屋敷から一歩も外に出たことがなかった公家の末裔・草小路鷹麿が「東京にいる婚約者を探しに行け」という父の遺言に従い、キラキラとした眼で世間を渡っていく、というもの。善性溢れる「天才」草小路鷹麿に凡夫なフリーターである主人公が嫌味なく圧倒されていく様を目にして脳裡を過ぎるのは、大二病罹患者御用達の作家・森見登美彦である。天才が凡人へ真摯にリスペクトを払い続ける、ただそれだけでどうしてこんなに愉快になるのか。出版は90年、四半世紀も過去の作品ながら、森見登美彦と同質のユーモアを堪能出来るのは何ともオツだ。惜しむらくは《文章》。森見登美彦を森見登美彦足らしめる、つまらないものさえ面白げに魅せるあの文体が当然、本作にはない。それで作品としての差が出てしまうのは致し方ないところ。それでも、草小路鷹麿というキャラクター、そして、彼によって味付け、解体される日常は、森見登美彦が用意するソレよりも上等と云えるので時代を先駆けてしまった《試作品》として目を通してみても良いと思う。個人的に大いに気に入ったので、続編と云える鷹麿の妹が主役張る『草小路弥生子の西遊記』に手を出してしまった―――が、そちらは筆を怠けていたのでイマサンの出来。残念。

第2回小説すばる新人賞 受賞作:草小路鷹麿の東方見聞録/草薙渉

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 小説すばる新人賞 草薙渉

[edit]

page top

第20回電撃小説大賞 大賞:ゼロから始める魔法の書/虎走かける

ゼロから始める魔法の書
一章 魔女と獣堕ち
二章 【ゼロの書】
三章 ゼロの魔術師団
四章 十三番
五章 火刑
六章 禁呪
終章 魔法免許

answer.――― 72 点
時折り《何でも書ける》と謳いたがる輩がいるが、その「何でも」は多くの場合、多様な「題材」を扱うことを己の《何でも書ける》の論拠にしており、「何でも」の幅の狭さを披露してくれる(ついでに、その手の輩は「題材」自体、そもそも扱い切れていない)。己の筆を誇示したいのならば、《何でも書ける》より《〇×しか書けない》と謳うほうがよほど健全だ。踏み込めば、筆において《何でも書ける》とは超絶技巧的《調整力》であり、その意味するところは障りなく読み進められる文章、破綻ない展開の創出であり、それを貫くためならば、己さえ捨てるプロフェッショナルな判断を下す理性である。故に《何でも書ける》筆を持つ者は、物語を流れるように目通しさせるものの、結果的に「(なんとなく)つまらない」「(面白いけど)引っ掛かりの少ない」作品に仕上がってしまう因果に苛まれる。電撃小説大賞、その節目の第20回の栄えある《大賞》受賞作である本作は、そんな物珍しい《何でも書ける》筆で綴られたファンタジー。魔女狩り行われる世界を舞台に半人半獣の傭兵と魔女が出会い、物語の幕が……という冒頭を読めば何が新しいわけでもない、クラシックな作品だと解る。驚くべきは作中の設定の処理―――リーダビリティの高さで、台詞、地の文、魔女という「語る」先入観などを駆使して流麗に説いていく。既視感漂う設定にもかかわらず、「読めてしまう」のである。正直、目を瞠った―――こんなつまんなそうな設定なのにスゲエ!!と。 人間、ストレスなく「読める(読み切れる)」と一定の評価を下してしまうが、本作はその典型に挙げられると思う。本作は「つまらない」作品だ。しかし本作を「面白い」と感じたならば、その「面白い」の正体は「巧い」である。著者は《何でも書ける》。だからこそ伝えたい、貴方の筆は「面白い」人のためにある。存分に己(の筆)を使いこなしてくれるパートナーを見つけましょう。滅茶苦茶な設定を渡されても、貴方なら「巧く」処理出来る。大事なのはその設定が面白いか否かだ。

第20回電撃小説大賞 大賞:ゼロから始める魔法の書/虎走かける

category: か行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 70点 虎走かける

[edit]

page top

第3回ラノベ好き書店員大賞 6位:クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿

クロックワーク・プラネット (206x290)
(あらすじ)
落ちこぼれの高校生・見浦ナオトの家に、ある日突然黒い箱が墜落する。中にいたのは自動人形の少女リューズ。作り変えられた世界と変われない人類。理想と現実が悲鳴をあげる時、二つの出逢いが運命の歯車を回す!

answer.――― 70 点
たとえば村上春樹の作品を《文学》の軒に並べたくない人の論拠に「登場人物の台詞を日常で見掛けることがない」なる言があるように、《文学》とは《人間》を描くもの―――ある種のリアリティーを求めるジャンルだと思うが、ライトノベルではその逆、人非ざる《キャラクター》の伸長を追及している節がある。つまり、「登場人物の台詞が日常からかけ離れている」ほど喝采を浴びるのである。勿論、これは極端な解釈には違いないが、少なくともモブにビール瓶で殴られて台詞無く即死するような《人間》はライトノベルに登場してはいけないのである。さて、本作は『ノーゲーム・ノーライフ』で名を上げた榎宮祐が暇奈椿との「合作」という珍しい形式でリリースしたライトノベル。ストーリーラインは、寿命を迎えた地球を舞台に、落ちこぼれの高校生が超級の自動人形を手に入れたことで、進化の止まった人類に希望が……!というSF風味のもの。一読の印象は、画が視える、と表現したくなるキャラクターを全面に押し出してくる作風。画が視える、というのは描写が細緻で秀逸という意味ではない。むしろ、描写は他のライトノベル作品と比して少ない方だろう。が、文字量それ自体は比較的多い。このギャップの正体は、自動人形リューズの徹底したSなキャラクター台詞や“時計仕掛けの惑星”というコンセプトに合わせたポエミーな地の文にある。画が視える、それは表紙やイラストからの(イメージの)刷り込みを有効に活かした跡だ。本作にはおよそ《人間》がいない。故に、これがライトノベルだ!と押しつけられれば、腑に落ちてしまう部分がある。『ノーゲーム・ノーライフ』と実質、内容は変わらないが、共作者の分だけ作品の世界観が前に出てくるので、そこは+に。ただ、「これを読ませたいならエロゲー(ヴィジュアルノベル)にしてくれ」と要求したくなるあたり、もしかすると榎宮祐の作品を楽しむにはモダンな感性が要るのかもしれない。

第3回ラノベ好き書店員大賞 6位:クロックワーク・プラネット/榎宮祐&暇奈椿

category: か行の作家

tag: OPEN 70点 榎宮祐 ラノベ好き書店員大賞

[edit]

page top

第11回本屋大賞 2位:昨夜のカレー、明日のパン/木皿泉

昨夜のカレー、明日のパン (198x290)
(あらすじ)
悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ----7年前、25歳で死んだ一樹。遺された嫁のテツコと一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフの何気ない日々に鏤められたコトバが心をうつ連作長篇。

answer.――― 66 点
『野ブタ。をプロデュース』などで知られる脚本家・木皿泉―――和泉務と妻鹿年季子夫妻の《小説家》としてのデビュー作。その概要は、うら若い寡婦・徹子は義父と同棲しているために世間からはゴシップの的だが、そんなことは気にもせず、二人は日々をのらりくらりと生きている、というもの。夫&息子の一樹の喪失が周囲に散りばめられ、そこを埋めていくのが作品としての着地点となるが、……正味な話、十把一絡げな凡作な印象は拭えない。脚本家というのも納得の表現技巧少ない文章で、義父を「ギフ」、幼馴染を「ムムム」と呼ぶなど、《日常》を舞台にした小説としてのオーソドックスな工夫は見られるものの、だからこそ安易に映ってしまう。物語の進展で《解決》するにせよ、そんな《大事》にする仕掛けでもないだろう。ただ、ドラマ―――映像ある前提で考えてみると面白味が増す気もするので、この物語には表情演じてくれる「俳優」が画竜点睛のピースなのかもしれない。本作を“ゆるい”と称賛する向きがあるようだが、個人的には描き切れず、起伏に乏しい言葉の連なりにしか見えなかった。こういう“ゆるい”描き方をするなら、視点は人ではなく、故人と所縁のある猫や犬、鳥のような視点のほうが良かったと思う。

第11回本屋大賞 2位:昨夜のカレー、明日のパン/木皿泉

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 木皿泉 本屋大賞

[edit]

page top

第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

未完少女ラヴクラフト (202x290)
(あらすじ)
身心惰弱な少年カンナは、片思い中の女性の顔面に突如として開いた穴に吸い込まれ、異世界スウシャイへと迷い込む。そこで出会ったラヴと名乗る少女に救われたカンナは、少女が呪いによって「愛」に関する言葉を奪われていることを知る。クトゥルフ神話の祖・怪奇小説作家ラヴクラフトを美少女化!名状しがたき暗黒冒険ファンタジー。

answer.――― 69 点
《クトゥルフ神話》の創作者として著名なH・P・ラヴクラフトを美少女にして登場させ、氏の作品に関するキャラクター、町、etc...を自前のストーリーにコラージュしていく実験的な作品。この手のコラージュ作品で気になるのは、元ネタとなる作品(ここではラヴクラフトの作品群)の「読了」前提なのか否かだと思うが、余白が足りない!とばかりに挿される豆知識な脚注のお陰で、もはや一つの宇宙と化し、手を伸ばす気も失せている《クトゥルフ神話》未読者にとっては格好の予習ライトノベルとなっているのが嬉しい。当然、既読者は既読者で見解の相違を含め楽しめるだろう。難点は、一目見て解る当社比1.5倍の頁数。気弱な主人公が美少女ラヴクラフトと、化け物飛び交うコラージュな世界で「愛」を求めて驚いていく―――のは結構なのだが、やはり途中より情報過多となって集中力を削がれ、ストーリーを楽しめなくなる。この間延びな展開(場面)もコラージュの一環なのか?などと邪推してしまったのは、私だけではあるまい。クトゥルフ信者(著者)としては不満であってもコラージュを減らし、あくまで《ストーリー》がメインであって欲しかったのが正味な話。ただ、本作を読めば《クトゥルフ神話》への興味が高まるのは間違いないので、その用途でも手を伸ばす価値がある「物は試しに……」な作品。表紙のモノクロ具合は個性的でGood!黒史郎(くろしろう)と関係あるの、これ?

第3回ラノベ好き書店員大賞 7位:未完少女ラヴクラフト/黒史郎

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 黒史郎 ラノベ好き書店員大賞

[edit]

page top