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第13回本屋大賞 10位:火花/又吉直樹

火花 (203x290)
(あらすじ)
お笑い芸人二人。奇想の天才である一方で人間味溢れる神谷、彼を師と慕う後輩徳永。笑いの真髄について議論しながら、それぞれの道を歩んでいる。神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命令した。彼らの人生はどう変転していくのか。

answer.――― 75 点
賛否両論の評判からどんなKAGEROUなのかと思いきや、意外や意外、何とも「まとも」な作品に仕上がっている本作『火花』は、お笑いコンビ「ピース」の先生こと又吉のデビュー作であり、純文学における大天下の芥川龍之介賞をベストセラーの勢いそのまま受賞した話題作。その概要は、売れない芸人が売れない先輩芸人と出会い、その壊れたセンスに惹かれる、というもの。友人に純文学の書き方を訊いたとき、人に読ませようと思って書かないこと、という答えが返ってきて半ば感心したことがあったが、その大前提の上で「読ませる」工夫が出来ていると、その他大勢から抜け出せるのだろう―――とは手前味噌なレヴュー、『恋人といっしょになるでしょう』稿からの引用だが、その観点からすれば、本作は「読ませる」工夫がしっかり施されている。たとえば、それは著者の実体験を想起させる「お笑い芸人」を題材にしていることだったり、芸それ自体には関係のない色恋の要素、そして、何より「結」で提示される先輩芸人の壊れた「笑い」で確認出来る。純文学は《人間》を描くジャンルであり、そこで求められるのは《面白い》というより《興味深い》ことだ。本作では、お笑い芸人という特殊な職業(とそこへ就いた者たちの感性)に焦点を当てつつ、エンターテイメントとして先輩芸人の「壊れ」具合を披露しているのが素晴らしい。飛び抜けた技巧や無二のセンスこそ無いが、本作を純文学へ該当させるだけの《仕事》は為されている。目くじらを立てることはないのではないでそうか。というか、良作じゃん?これが駄目なら今の純文学、ほとんど駄目だろ。個人的には、先輩芸人の恋人が実話っぽくて興味深かったです。

第13回本屋大賞 10位:火花/又吉直樹

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 又吉直樹 本屋大賞

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第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

ユートピア (201x290)
(あらすじ)
地方の商店街に古くから続く仏具店の嫁・菜々子と、夫の転勤により社宅住まいをしている妻・光稀。そして移住してきた陶芸家・すみれ。美しい海辺の町で、三人の女性が出会う。自分の居場所を求めて、それぞれの理想郷を探すが……。

answer.――― 76 点
「美しい海辺の町」という何の変哲もない地方都市を題材にした本作は、視点を切り替えて複数の真実をあぶり出し、やがて事件の全貌を明かしていく“安心”の湊かなえ印の手法で描かれた作品。デビュー作の『告白』で提示してきたように、湊かなえは《善》であることを許さない。登場人物を徹底的に悪役に仕立て、その人生を嘆かせ、後悔させる―――そこに読み手は暗い安息を得るわけだが、Hateな輩がやはり揃う本作でもっとも口角上げさせてくれたのは、アートな志を持って町へ移住してきた陶芸家すみれ。これぞ凡才!という思考&行動を立ち去るその時まで披露してくれる。湊かなえの凄味はロールモデルが豊富なことだろう。ただ才能が無いだけでは偽者なり得ない。本当の偽者は何より己を知らず、虚栄、そして、虚勢を張るのだ。この辺の機微を登場人物にしっかり施せる故に、デビューよりベストセラー作家として驀進出来たわけである。がしかし、作家としていよいよ頭打ちの印象も。これしか出来ない!これしか書けない!はその実、その通りなわけだが、だからといって派手さに欠けてはいけない。寂れた地方都市の殺人事件とその解決なんて《キャラクター》でもいないかぎり読みたいとも思わない。大衆小説、その担い手であることを忘れてしまうと、後は筆も創造性も落ちていくだけだ。暗く地味な一冊、そうまとめられてしまえば元も子もない。

第29回山本周五郎賞 受賞作:ユートピア/湊かなえ

category: ま行の作家

tag: OPEN 70点 湊かなえ 山本周五郎賞

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第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

ラメルノエリキサ (201x290)
(あらすじ)
女子高生・小峰りなのモットーは、どんな些細な不愉快事でも必ず「復讐」でケリをつけること。そんな彼女がある日、夜道で何者かにナイフで切り付けられる。手がかりは、犯人が残した「ラメルノエリキサ」という謎の言葉のみ。復讐に燃えるりなは事件の真相を追うが……。

answer.――― 76 点
どんな些細な事でも必ず「復讐」でケリをつける女子高生が「ラメルノエリキサ」なる謎の言葉から自分を切りつけた通り魔を探すストーリーライン。《復讐》というおどろおどろしくも単純明快なテーマを女子高生が背負うというギャップ盛り込んだキャラクターメイクはライトノベル的で、実際、作品自体も躁なヒロインに負けず劣らずの登場人物たちが現れて混沌とした様相を楽しむものとなっている。作中のハイライトは、上述の「ラメルノエリキサ」の謎解き―――のわけなく、そのままズバリ、「復讐」に妄執するヒロインと張り合える歪んだ想いを抱える登場人物たちの遭遇&暴露。完璧なママ、たおやかな姉は、ヒロインの一人称だからこそのジェットコースター的演出を味わえる。とどのつもり、キャラクターが気に入れば好作となる受賞作。ストーリーを求めてはいけません。と書きつつ、著者の伸びしろは《物語》を用意出来るかどうかにかかっているので担当は求めたいところだろうね。

第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡辺優 小説すばる新人賞

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第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

砂漠の青がとける夜 (202x290)
(あらすじ)
溝端さんと会わなくなってから人肌の温度を深く味わう機会はほとんどなかった。準君の気配を感じようとすると、高校生の頃初めてできた彼氏の穏やかな声を思い出した。付き合いそうで付き合わず、何となく疎遠になった男の人たちの肌の記憶が、私の中で蘇る。けれどこの部屋には誰もいない。

answer.――― 45 点
別れを告げた不倫相手から「愛してる」と送り続けられる主人公(♀)がファンタジーなことを述べる中学生(♂)と出会い、というストーリーライン。率直に、退屈である。何が起きるわけでもなく、職を離れ、不毛な不倫から逃がれ、空虚な日々を送る主人公の心情が綴られているだけ。ただ、それだけの作品だ。仮に需要があるとすれば、主人公(の境遇その他)へ共感出来る可能性のある女性読者か。「言葉の使い方が繊細で行間が感じられる作品」と著者の筆が受賞へと繋がったようだが、無いものねだり―――自分が描けないアプローチを採られると無駄に評価してしまうもの。読み手でそれをエンターテイメント的に評価することはまず出来ないだろう。文章を積極的に評価させたい場合、《圧倒的》でなければならない。本作は当然、その域には達していない。

第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

category: な行の作家

tag: OPEN 40点 中村理聖 小説すばる新人賞

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第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

八月の青い蝶
(あらすじ)
急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学生のときに被爆していた。大日本帝国陸軍偵察機パイロットのひとり息子であった彼は、当時、広島市内に住んでいたのだ。妻と娘は、亮輔が大事にしている仏壇で、異様に古びた標本箱を発見する。そこには、前翅の一部が欠けた小さな青い蝶がピンでとめられていた。

answer.――― 65 点
「原爆」題材の振り返りモノ。と紹介されるだけで読む気を削がれる方もいらっしゃると思うが、かく云う私はその該当者の一人。この手の題材に触れる度に自分が読書に求めているのは結局、娯楽なのだと再確認させられるわけだが、実際、本作もWW2――リトルボーイによって引き裂かれた思春期がメインのストーリーライン。表題『八月の青い蝶』とあるように、「蝶」をキーワードにして父親の愛人へ「美貌」「儚さ」といった憧憬を重ねる演出。個人的に目を惹いたのは、愛人・希恵の昆虫学者の父の視線を《視姦》と喩えた点。《愛を分かちあってともに幸福になろうとも思わない愛。それが視姦する者のまなざし。残酷なまなざし。》なる言及は、成る程、と淡泊な感性を刺激してくれた。また、終盤も終盤に《何故、原爆を落とされて謝らねばならない!?》という日本人が忘れてはならない正論が繰り出されるのは痛快の一言。この部分は是非ともTeenagerに読んで頂きたいところ。が、やはり良くも悪くも、「原爆」題材の振り返りモノ。という範疇の作品であるのは間違いない。

第26回小説すばる新人賞 受賞作:八月の青い蝶/周防柳

category: さ行の作家

tag: OPEN 60点 周防柳 小説すばる新人賞

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

赤と白 (206x290)
(あらすじ)
冬はどこまでも白い雪が降り積もり、重い灰白色の雲に覆われる町に暮らす高校生の小柚子と弥子。同級生たちの前では明るく振舞う陰で、二人はそれぞれが周囲には打ち明けられない家庭の事情を抱えていた。そんな折、小学生の頃に転校していった友人の京香が現れ、日常がより一層の閉塞感を帯びていく。

answer.――― 69 点
雪国・新潟を舞台に、ボタンの掛け違えから女性特有の共同感覚的な友情が崩れ、バッドエンドへと突き進んでいく本作『赤と白』。失望、嫉妬、背徳……と、登場人物たちがそれぞれの形で抱く疑心は堂に入ったもので、そこへ過食症、ストーキングといった狂気垣間見させる設定をつけ、読み手へ何かが起こる予感(不安)をしっかりと与えてくれる。著者のデビュー作であり、シリーズにもなっている『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しているように、上述の予感は《ホラー》のそれに近い。もっとも、本作のエンタメの核は《人間関係の歪み》といったところだが、読み手にどんな感想を抱かせたかったのかが曖昧なのが残念なところ。用意したキャラクター、イベントは相応だったと思うが、《人間》へ迫りたかったのだとしたら大味過ぎる。ついでに、大衆小説でそこを目指してしまうと、退屈へ到ってしまう。本作に足りないのは、ズバリHero(Heroine)。それを確立させるだけで「あーあ……」で終わってしまう結末にあっても、意志ある何者かがスタートを切ったことでしょう。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:赤と白/櫛木理宇

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 櫛木理宇 小説すばる新人賞

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

名も無き世界のエンドロール (205x290)
(あらすじ)
ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?

answer.――― 74 点
過去と現在を織り交ぜつつ、「ドッキリスト」「ビビリスト」「プロポーズ大作戦」「一日あれば、世界が変わる」……と日常を《言葉》で彩り、いつの間にか非日常へと逸脱していく作風は、単刀直入に言って、伊坂幸太郎そのもの。一人の才人が道を切り拓けば、そこを通り(なぞり)、踏み固める者が現れるものだが、著者はその典型と言って差し障りない。そうなってくると、本家とのクオリティー勝負となるが、――やや劣勢、かなと。伊坂幸太郎の初期作品(ex.『重力ピエロ』)は、自分のそれまで生きていた日常(思い出&思春期に培った感性)を出し惜しみなくまぶしているが、本作ではそこまでのサービス精神を感じられないのが残念。フォロワー、という二番煎じ的扱いを無意識にしてしまうのもマイナスに働いてしまうだろう。それでも、いざ非日常パートへと突入する終盤は本家と伍する勧善懲悪のカタルシス。表題『名も無き世界のエンドロール』の言い得て妙な、哀しくも爽快感ある幕切れも何とも洒落て印象づけられる。昨今の伊坂幸太郎は持ちうる日常をすり減らし、退屈の域に達してしまったが、在りし日の伊坂幸太郎に出会いたい方にはお薦め出来る作品。ちなみに、「本当に何もかもが終わって、エンドロールが止まる時、あたしはようやく立ち上がれるようになる」なる作中の《台詞》が結末に響く構成。良くも悪くも、造りが丁寧なんだよね。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 行成薫 小説すばる新人賞

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第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

サラの柔らかな香車 (202x290)
(あらすじ)
プロ棋士の夢が破れた男と、金髪碧眼の不思議な美少女が出会う。彼女に将棋を教えると奇跡的な才能が開花する。厳しくも豊かな勝負の世界を描く傑作。

answer.――― 79 点
二十余年生きて真面目に人生を省みれば、どんな薄っぺらい過ごし方をしていようと、何かしらの真理、当人だけが導き出せる結論があると思う。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』か。ストーリーラインはプロ棋士になれず、パチンコで生計立てるくすぶった三十路男が発達障害を匂わせる金髪碧眼の美少女と出会い、女流棋士の新旧”天才”対決、その決着へ運ぶまで。作中、ひたすら「才能」について語られる。それは神聖視されたもので、日常、「才能」について考察する機会のない者にはその界隈の常識(ex.「難しい。非常に難しい質問だ。芥川名人は強い。本当に強い。どうしようもない。でもね、この世界では常に若い人が勝つんだよ」)が披露されるたびに新鮮に響き、刻まれる。本作で汲み取るべき醍醐味は著者が思春期を捧げて見出した「才能」なる不確かなものの輪郭で、登場人物たちの過去&現在はまさしくエンタメ的装飾でしかない。もっとも、上述の新旧”天才”対決は「才能」の他に、「覚悟」もスパイスとしてまぶしてあるため、+αが勝負の本当の分かれ目であることを示しているようで面白い。「才能」の連呼を一本調子に思えてしまう難こそあれ、情熱溢れる若書きが印象づけられるデビュー作。良質です。なお、将棋普及への貢献が認められ、本作は第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説として立派なお墨付きを得ている。

第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 橋本長道 小説すばる新人賞

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第23回小説すばる新人賞 受賞作:国道沿いのファミレス/畑野智美

国道沿いのファミレス (203x290)
(あらすじ)
勤め先で左遷され、6年ぶりに故郷に戻った25歳の善幸。職場、家族、友達、恋人……様々なしがらみが彼に降りかかる。現代の若者をリアルに描いた第23回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 73 点
郊外の、どこにでもあるファミリーレストランを舞台にした青春小説……と言っても、登場人物はほとんどが社会人で、主人公はあらぬ疑いで実質、左遷されてきた経緯を持つ。そのあらぬ疑いとは【アルバイトの高校生(♀)をやり捨てた】と来れば、自ずと作品の方向性も察せるというもの。本作のエンターテイメントの核は「痴情」。著者のアレンジは、ファミリーレストラン内に留めず、家族、友人と全方位にもつれを作ったところ。当然、作中にBitch!が現れるのは《お約束》。そのクオリティー次第で作品の評価が決まるわけだが、出会いから別れ、一連の過程含め十分に合格点なBitch!具合。ほぼ全ての登場人物にエピソード&エンドを設けているのもサービス精神溢れている演出。「痴情」故の《人間》模様は文学的と云えば文学的。本稿を書く前に見つけたYahoo!知恵袋での質問「怖い小説だと感じた」なる言及はその観点でのスイッチになると思うので、読了した方は表題で検索して頂きたい。個人的に興味を抱いたのは佐藤姓へのタイプ分け(相手が自分の好きなタイプだったら同じだねと言うが、嫌いなタイプだったら同じ苗字なのを懸命に忘れる)。何気ない言及だからこそ、こんなもんかもしれん、と思いました。

第23回小説すばる新人賞 受賞作:国道沿いのファミレス/畑野智美

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 畑野智美 小説すばる新人賞

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た行の作家一覧

 た行    

大楽絢太
多宇部貞人
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貴子潤一郎
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年見悟
土橋真二郎
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category: た行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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