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第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

砂漠の青がとける夜 (202x290)
(あらすじ)
溝端さんと会わなくなってから人肌の温度を深く味わう機会はほとんどなかった。準君の気配を感じようとすると、高校生の頃初めてできた彼氏の穏やかな声を思い出した。付き合いそうで付き合わず、何となく疎遠になった男の人たちの肌の記憶が、私の中で蘇る。けれどこの部屋には誰もいない。

answer.――― 45 点
別れを告げた不倫相手から「愛してる」と送り続けられる主人公(♀)がファンタジーなことを述べる中学生(♂)と出会い、というストーリーライン。率直に、退屈である。何が起きるわけでもなく、職を離れ、不毛な不倫から逃がれ、空虚な日々を送る主人公の心情が綴られているだけ。ただ、それだけの作品だ。仮に需要があるとすれば、主人公(の境遇その他)へ共感出来る可能性のある女性読者か。「言葉の使い方が繊細で行間が感じられる作品」と著者の筆が受賞へと繋がったようだが、無いものねだり―――自分が描けないアプローチを採られると無駄に評価してしまうもの。読み手でそれをエンターテイメント的に評価することはまず出来ないだろう。文章を積極的に評価させたい場合、《圧倒的》でなければならない。本作は当然、その域には達していない。

第27回小説すばる新人賞 受賞作:砂漠の青がとける夜/中村理聖

category: な行の作家

tag: OPEN 40点 中村理聖 小説すばる新人賞

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category: な行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

パンの鳴る海、緋の舞う空
(あらすじ)
心に傷を抱えた男女の、切なく激情的な恋。恋人に失踪されたマヤは、愛することができなくなっていた。だが、友達募集の新聞広告でグレゴリーと出会って……熱情に揺れる南国の恋物語。

answer.――― 60 点
ブログ、そのプロフィールを開けば「作家」「イラストレーター」「翻訳家」と自らを紹介するように、多方面で活躍中の野中ともその《小説家》としてのデビュー作。その概要は、ニューヨークを舞台に、トリニダード・トバゴで再会を誓った男女の恋の行く末。一読してストーリーに必要な描写が少なく、本作が登場人物を含めた作品世界の《お洒落さ》に重点を置いているのが分かる。その点で先日の『恋人といっしょになるでしょう』とセールスポイントが近似と云えるが、同作が主人公「自身(趣味)」に《お洒落》を施していくのとは対照的に、本作は登場人物「自身」ではなく、その「周囲(環境)」に《お洒落》の焦点を当てていくのが特徴。舞台はニューヨーク、約束の地はトリニダード・トバゴ、黒人、日本人、クラブ、パーティー、スティール・パン―――そんな具合である。正味、(……都会の孤独は哀しいぜ、ベイベー)といった陶酔的な《お洒落さ》を求める心境でないと読み物としては退屈で、読み手を確実に選ぶ作品。個人的に、著者にはイラストレーターとしての才覚のほうが世間的な需要がある気がするが、その方面の方からすれば、著者は作家業のほうが向いているように見えるのか気になるところです。

第11回小説すばる新人賞 受賞作:パンの鳴る海、緋の舞う空/野中ともそ

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 野中ともそ 小説すばる新人賞

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第13回本屋大賞 4位:永い言い訳/西川美和

永い言い訳 (201x290)
(あらすじ)
人気作家の衣笠幸夫は、突然のバス事故により、長年連れ添った妻を失うが、妻の間にはすでに愛情と呼べるようなものは存在せず、妻を亡くして悲しみにくれる夫を演じることしかできなかった。そんなある時、幸夫は同じ事故で亡くなった妻の親友の遺族と出会い、……。

answer.――― 70 点
2016年、自らメガホンを取っての本作の映画化が決定したように、小説家と云うより映画監督として知名度高い西川美和の久方振りの長編小説。その概要は、妻を交通事故で亡くした男が、同じ事故で母親失った一家と触れ合い、初めて妻と向き合う、というもの。もっと端的に言ってしまえば、他人事から身内の不幸と自覚するまで―――「泣く」までのストーリーライン。文章は脚本まがいのソレを想像していると、過去作で三島由紀夫賞にノミネートされたように《文学》作品と提示されても違和感のない能弁な筆に驚くものの、……上述の通り、本作は「泣く」までのドキュメント。そこに説得力を持たせるために、悲しむ妻の親友の遺族、不倫相手やらを投入し、その上でも冷めたままの主人公の心情を淡々と綴っていくわけだが、これはやはり《小説》ではなく《映画》なのだと思う。文字の上でのエンターテイメントの要素が少な過ぎる。主人公が人気作家ならば自作&他作の批評、書き方のコツ、書き出しの悩み、独自の取材方法などの「作家」面の《知識》にもなり得るものを提示して欲しいし、不倫相手が編集者ならば主人公の「作家」面をもっとアピールして欲しい。結局、本作で見たいのは「画」だ。“演じている”と自覚している主人公の表情の機微を愉しみたい。本でそれを読もうとすると、表題の通り、ひたすらに「永い」。未読の方はそのまま手に取らず、「映画」で本作を愉しみましょう。

第13回本屋大賞 4位:永い言い訳/西川美和

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 西川美和 本屋大賞

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第1回ファンタジア大賞 準入選:リュカオーン/縄手秀幸

リュカオーン (206x290)
1.来訪者
2.闇の胎動
3.潜むもの
4.血の記憶
5.暗黒祭
6.魔神終焉

answer.――― 65 点
読んで早々に(……リュカオーンってこの肩に乗ってる女の子のほうなのね)と地味に驚かされた、記念すべき第1回ファンタジア大賞の《準入選》受賞作が本作『リュカオーン』。公募賞の第1回はナンダカンダで(後に)注目されるものだが、ファンタジア大賞の第1回と云えば、―――天下の『スレイヤーズ!』である。数多の公募賞の歴史のなか、第1回の受賞作として同作ほどレーベル、ジャンルを牽引した作品は無いのではなかろうか?そして、そんなBig Bang!的作品と肩を並べて同時受賞していたのが本作であり、故に読みはせずとも「題名だけ、表紙だけは知っている」という人も多いのではないかと思う。かく言う私もその一人だった。ストーリーラインは、人が人の姿を失ってしまった遥かな未来、バロスの街に訪れたのは奇妙な二人組……一人は機械の大男、もう一人は「……ノーマルだ!攫っちまえ!」というもの。出版当時、『スレイヤーズ!』ではなく、本作こそレーベルの本命だったというエピソードは知られているところだが、それも納得の、「ライト」SF……なのか?と首を捻りたくなるSFファンタジーで、水晶ドクロ、ニュートリノ、事象の地平線などノンフィクションな単語を散りばめる。序盤、中盤と広大な作中世界を披露しつつ、終盤にSEKAI NO OWARIを起こそうとするあたりはSFらしいダイナミックな展開。登場人物は誰もが強く、さじ加減で優劣逆転するカオスな様相も魅力的だ。独り善がりでない、読者を楽しませる視点がしっかりと設けられている。“重”のリュカオーン、“軽”のスレイヤーズ!と編集部が対比させたのも実際に頷ける、『スレイヤーズ!』とまさしく好対照な一作。今読んでしまえば「これ、……ライトノベル?」と疑問を呈されてしまうだろうが、そこにジャンルが確立する以前の混沌が覗ける。今あえて手に取るならば、“恐竜”を見つけた気持ちで読みましょう。

第1回ファンタジア大賞 準入選:リュカオーン/縄手秀幸

category: な行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 60点 縄手秀幸

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第6回ファンタジア大賞 佳作:海賊船ガルフストリーム/なつみどり

海賊船ガルフストリーム (205x290)

answer.――― 60 点
小説家、漫画原作者のみならず、一社会人としても活躍中!?である夏緑の原点、「なつみどり」名義のデビュー作が本作『海賊船ガルフストリーム』。その概要は、美しき女戦士シグル―ンが魔物乗り込む海賊船ガルフストリームと出くわし、成敗するも、彼らは実は良い奴らで……!といった、強いヒロインが陽性に大活躍するライトノベルらしいライトノベル。目新しいところは、やはり“僕らの”『ONE PIECE』がROMANCE DAWNする以前より、海賊―――ヴァイキングを題材にしているところだろうが、個人的にはヒロインであるシグル―ンが尋常ならざる怪力を頼りに無双する点を挙げたい。今現在、《ヒロインが強い》ことはエンターテイメントとして半ば《お約束》のように確立しているが、しかし「怪力」というともすれば敵キャラ、引き立ての仇役の専売特許を行使する様は未だ珍しいの一言に尽きる。見る人が見れば、そこにキャラクターメイクのある種のフロンティアが映るのではないだろうか。ライトノベル黎明期の作品のため、王子様への片思い、側近の陰謀、チャンチャン♪なエンディングなど、盛り沢山なイベントをライトに処理する「旧さ」は否めないが、その「旧さ」が新鮮に映る場合も(あるいは)あるかもしれない。ジャンルとして洗練される前のライトノベルな一作。4章「賞金首シグルーン」の愛を説くオカマの海賊ウーサーへ「あんたはいい女ね」と微笑むシグル―ンの台詞〆めなんてのは、お洒落よね。

第6回ファンタジア大賞 佳作:海賊船ガルフストリーム/なつみどり

category: な行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 OPEN 60点 夏緑

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第23回山本周五郎賞 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎

後悔と真実の色
(あらすじ)
“悪”を秘めた女は駆除する。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮地に立たされる。これは罠なのか?男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。

answer.――― 59 点
本作はデビュー以来、無冠のままキャリアを築いてきた貫井徳郎の悲願の山本周五郎賞“受賞”作。元は日本推理作家協会賞の“受賞”を「狙って」制作された背景を持っていたようだが、先に出版した『乱反射』が同賞を受賞(受賞理由:作家としての技量やミステリ界に対する貢献などが加味された。Wikipedia参照)したことで、棚ぼた式に山本周五郎賞を“受賞”出来たのは、著者にとっては嬉しい誤算だっただろう。がしかし、販促賞が作家の知名度を高めるためのツールであることを考慮してみると、本作の“受賞”は失敗だったと思う―――著者の他の本を読みたいと思わせられない故に。女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」の捜査が混迷するなか、主人公の不倫が暴露され……というスキャンダラスなストーリーライン。“受賞”を「狙って」制作されただけあって、男の嫉妬やらの《人間》を描くことに力を注いでいる印象を受けるが、序盤より愛人とパコっているエリートらしい主人公のナルシーな間抜け具合が披露されるように、何を「面白い」、誰を「格好良い」と見定めれば良いのか判断が付けられず、読み手は迷走。そんな迷走をほぼ放置されたまま、主人公は何者かに不倫を暴かれて、同僚、世間に軽蔑され、でも俺は正義を捨てられねえ!あっやべっ、愛人死んでもうた!事件は会議室で起こっているんじゃない!俺の周りで起こっているみたいだ!と、ホームレスになってまで事件解決に勤しむ。……とネタバレ気味に書いてしまったが、要するに、―――「長い」。出来事と受賞「狙い」の《人間》模様が重なり、著者のスペックを超える処理量になっている。何を一番《後悔》しているのか、突き詰めれば、読み手は主人公を通して何を《後悔》するべきだったのか。ご大層な表題『後悔と真実の色』が読書中は勿論、読了してみても霞んだまま。「すでに」不倫しているのではなく、「途中で」不倫を始めたほうが良かったのでは?もっとも、それくらいのアレンジじゃ望むレベルでシンプルにならないが。著者にとって悲願の“受賞”作のひとつなわけですが、間違いなく著者の“代表作”ではないでしょう。

第23回山本周五郎賞 受賞作:後悔と真実の色/貫井徳郎

category: な行の作家

tag: OPEN 50点 貫井徳郎 山本周五郎賞

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第14回山本周五郎賞 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂

白い薔薇の淵まで
(あらすじ)
ジャン・ジュネの再来とまで呼ばれる新人女性作家・塁と、平凡なOLの「わたし」はある雨の夜、書店で出会い、恋に落ちた。彼女との甘美で破滅的な性愛に溺れていく「わたし」。幾度も修羅場を繰り返し、別れてはまた求め合う二人だったが……。

answer.――― 66 点
荒木飛呂彦は代表作『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズ、その作中にて「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う」と御無体な設定を放言してくれたが、何の因果か、私は大学進学以降、メンヘラとよく知り合う。ついでに、そこそこに接触を図られる。理由は定かではない―――と言いたいが、流石に何度となく出遭っていくうちに気づいたのだが、彼女たちのプライドを知らず刺激していたのだと思われる。「大丈夫!」「死にたいなら手首じゃなくて首でしょ?」「俺、リスカするヤツ嫌いなんだわ」etc......と、本人の目の前で笑いながらdisるからだと思う(また、それはそれとして、別途「能力」について称賛していることも関係していると推測される)。公然とdisるこの男を「落としたい」―――そんな胸くそ悪い思考が働いて、何だったら股を開いて挑発してくるのである。くたばれ、Bitch!さて、本作は百合界隈では御用達の作家として名を馳せる中山可穂の例によってなビアンな逸品。平凡なOLが若き天才「女性」作家・塁と百合って別れて、旧知の男と結婚するもすれ違い、やっぱ百合しかねえわ!インドネシアへGo!Go!Heaven!というストーリーライン。塁を「猫」と重ね合わせる文学な手法もあるが、百合へ禁忌も感じなければ目新しさも感じない―――百合への《適性》が無い者からすると、メンヘラがメンヘラっている恋愛劇にしか読めない。たとえば、「わたしは彼のやさしさが少々物足りなかった。キスしたければ、すればいいのに。欲しければ塁のように、がむしゃらに血を流してでも奪えばいいのに」……この手の言及、ある種の「汚されたい」欲求を描いているのがリアリティーとして支持を集めるところなんだろうか?百合好きな方に、こんこんと本作の真髄を語られたい次第。

第14回山本周五郎賞 受賞作:白い薔薇の淵まで/中山可穂

category: な行の作家

tag: OPEN 60点 中山可穂 山本周五郎賞

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第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

教場
1.職質
2.牢門
3.蟻穴
4.調達
5.異物
6.背水

answer.――― 83 点
警察小説は数あれど、鶏が先か、卵が先か―――ではないが、その隙間を突いてくるまさかの《警察学校》を舞台にした異色の警察小説が本作『教場』。「警察学校は、優秀な警察官を育てるための機関ではなく、適性のない人間をふるい落とす場である」と煽るように、職質、取り調べ、スピードの取り締まり、変わったところで、医療&生物関連などの豆を含めた《知識》を交えながら、あの手この手の演出でSURVIVEする者、脱落していく者を描いていく。リアリティが在るのか無いのか、登場する教官&警察官候補生たちはもはや犯罪者予備軍のような底意地の悪さを強く押し出され、「……日本、大丈夫か?」と若干の失笑を禁じ得ないが、これに関してはいい年したヒヨっ子たちの失敗をそのまま描いても「つまらない」ことを著者は知っているということだろう。全話通して登場するのは「教官」風間だが、各話の視点人物はそれぞれ「癖」のある候補生たち。一部の例外を除き、警察学校という設定上、彼ら候補生は無知な「凡人」のために感情移入は捗らず、故に欺き、蹴落とす怨恨込みの脱落劇に著者は活路を見い出したのだろう。こうありたい俺!な感情移入が出来ないのはマイナスだが、各話で用意されている見知らぬ常識な《知識》はやはりスパイシーで、「読んで得をする」作品に仕上がっている。「教官」風間を主役にした続編が出ているようだが、個人的には本作でSURVIVE出来た視点人物たちが主役の作品を出すべきだと思うんだが、……話題待ちでもしているんだろうか?第三話「蟻穴」が幕の切り方を含め一番気に入りました。

第11回本屋大賞 6位:教場/長岡弘樹

category: な行の作家

tag: OPEN 80点 長岡弘樹

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第11回本屋大賞 10位:去年の冬、きみと別れ/中村文則

去年の冬、きみと別れ
(あらすじ)
ライターの「僕」は、ある猟奇殺人事件の被告に面会に行く。彼は、二人の女性を殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けていた。調べを進めるほど、事件の異様さにのみ込まれていく「僕」。そもそも、彼はなぜ事件を起こしたのか?それは本当に殺人だったのか?何かを隠し続ける被告、男の人生を破滅に導いてしまう被告の姉、大切な誰かを失くした人たちが群がる人形師。それぞれの狂気が暴走し、真相は迷宮入りするかに思われた。だが……!

answer.――― 76 点
“そんな平和を訴えたいなら日本じゃなくて中国でしてこい!!”大江健三郎が自身の作家生活50周年と講談社創業100周年を記念して創設した大江健三郎賞。その栄えある第4回の受賞作『掏摸<スリ>』が特典として英訳され、ウォール・ストリート・ジャーナル紙で、2012年のベスト10小説に選ばれ、次作『悪と仮面のルール』も同誌で2013年のベストミステリーの10作品に選ばれ、―――このビッグウェーブを俺は逃さない!とばかりに、主要登場人物をすべて倒錯者にした著者の意気込みを感じる本作。手記を交えた、“信頼できない語り手”風味の進行で、その都度、登場人物の《異常》な「(性)癖」が披露されていく。著者が文学畑の出自もあり、《人》というよりも《人間》を描くアプローチを取っている印象。それが個性的と云えば個性的なのだが、……ミステリじゃないわな。仕掛けそのものを楽しむというよりも、登場人物たちの道から逸れた嗜好を「―――狂気!」と受け取って楽しめるかが評価の分かれ目だろう。著者の考える《売れ線》を文学鍋で煮込んだ一作。個人的には、序盤に披露される蝶の写真の評と殺人を犯した写真家の憐れな"WANT TO BE"っぷりが気に入りました。

第11回本屋大賞 10位:去年の冬、きみと別れ/中村文則

category: な行の作家

tag: OPEN 70点 中村文則

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