ナマクラ!Reviews

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第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

太陽戦士サンササン (205x290)
(あらすじ)
「太陽戦士サンササン、降臨ッ!」来間鉄斎が出会ったのは族メットに憑依した自称・異世界の勇者ジャバだった。彼は伝説の勇者となるため、自分を装着することを鉄斎に強要する。鉄斎は全面拒絶するが……!?

answer.――― 66 点
ライトノベルには《イラスト》があり、そして、一部(以上)の人にとってそれは紛れもない本編冒頭よりも大事な「顔」となっている。さて、本作の表紙をご覧あれ。ホットパンツの女の子はとりあえず可としても、その横にいるのは髑髏マーク入りの族メットをかぶった、何ともダサい……はいっ、(負けの方向で)勝負あり!である。がしかし、実際に読んでみれば、族メットに異世界から勇者が転生するという間抜けな設定ながら、まさかの真っ当に「熱い」ヒーローものであることに驚くだろう。そして、語彙豊富、描写力もあって真っ当に「巧い」と来たら、もはや苦笑いするしかない迷作決定である。詰まる/詰まらないで云えば、詰まる作品なのだが、……如何せん、《読みたい》と思わせる設定で描かなかったのが最大の敗因。テツ、ジャバ、詩菜、麻琴の主要登場人物は勿論、ラストでは敵方ニカ・カジにまで華を持たせようとする姿勢も意欲的。書き手としての実力は認めたいところなので、読み手にもっと真面目に寄り添ってみましょう。仮に「売れない」ままだったら、《売れ線》を真面目に研究していないだけなので同情の余地も無し。

第18回ファンタジア大賞 準入選:太陽戦士サンササン/坂照鉄平

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 坂照鉄平 ファンタジア大賞準入選(金賞)

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第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

サラの柔らかな香車 (202x290)
(あらすじ)
プロ棋士の夢が破れた男と、金髪碧眼の不思議な美少女が出会う。彼女に将棋を教えると奇跡的な才能が開花する。厳しくも豊かな勝負の世界を描く傑作。

answer.――― 79 点
二十余年生きて真面目に人生を省みれば、どんな薄っぺらい過ごし方をしていようと、何かしらの真理、当人だけが導き出せる結論があると思う。プロ棋士を目指して奨励会へ入るも、ついに辿り着けなかった著者が見出したのは越えられない壁――『才能』か。ストーリーラインはプロ棋士になれず、パチンコで生計立てるくすぶった三十路男が発達障害を匂わせる金髪碧眼の美少女と出会い、女流棋士の新旧”天才”対決、その決着へ運ぶまで。作中、ひたすら「才能」について語られる。それは神聖視されたもので、日常、「才能」について考察する機会のない者にはその界隈の常識(ex.「難しい。非常に難しい質問だ。芥川名人は強い。本当に強い。どうしようもない。でもね、この世界では常に若い人が勝つんだよ」)が披露されるたびに新鮮に響き、刻まれる。本作で汲み取るべき醍醐味は著者が思春期を捧げて見出した「才能」なる不確かなものの輪郭で、登場人物たちの過去&現在はまさしくエンタメ的装飾でしかない。もっとも、上述の新旧”天才”対決は「才能」の他に、「覚悟」もスパイスとしてまぶしてあるため、+αが勝負の本当の分かれ目であることを示しているようで面白い。「才能」の連呼を一本調子に思えてしまう難こそあれ、情熱溢れる若書きが印象づけられるデビュー作。良質です。なお、将棋普及への貢献が認められ、本作は第24回将棋ペンクラブ大賞(文芸部門)を受賞。将棋小説として立派なお墨付きを得ている。

第24回小説すばる新人賞 受賞作:サラの柔らかな香車/橋本長道

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 橋本長道 小説すばる新人賞

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第23回小説すばる新人賞 受賞作:国道沿いのファミレス/畑野智美

国道沿いのファミレス (203x290)
(あらすじ)
勤め先で左遷され、6年ぶりに故郷に戻った25歳の善幸。職場、家族、友達、恋人……様々なしがらみが彼に降りかかる。現代の若者をリアルに描いた第23回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 73 点
郊外の、どこにでもあるファミリーレストランを舞台にした青春小説……と言っても、登場人物はほとんどが社会人で、主人公はあらぬ疑いで実質、左遷されてきた経緯を持つ。そのあらぬ疑いとは【アルバイトの高校生(♀)をやり捨てた】と来れば、自ずと作品の方向性も察せるというもの。本作のエンターテイメントの核は「痴情」。著者のアレンジは、ファミリーレストラン内に留めず、家族、友人と全方位にもつれを作ったところ。当然、作中にBitch!が現れるのは《お約束》。そのクオリティー次第で作品の評価が決まるわけだが、出会いから別れ、一連の過程含め十分に合格点なBitch!具合。ほぼ全ての登場人物にエピソード&エンドを設けているのもサービス精神溢れている演出。「痴情」故の《人間》模様は文学的と云えば文学的。本稿を書く前に見つけたYahoo!知恵袋での質問「怖い小説だと感じた」なる言及はその観点でのスイッチになると思うので、読了した方は表題で検索して頂きたい。個人的に興味を抱いたのは佐藤姓へのタイプ分け(相手が自分の好きなタイプだったら同じだねと言うが、嫌いなタイプだったら同じ苗字なのを懸命に忘れる)。何気ない言及だからこそ、こんなもんかもしれん、と思いました。

第23回小説すばる新人賞 受賞作:国道沿いのファミレス/畑野智美

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 畑野智美 小説すばる新人賞

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は行の作家一覧

 は行    

橋本和也
橋本紡
ハセガワケイスケ
長谷川潤二
支倉凍砂
長谷敏司
長谷川昌史
畠中恵
八針来夏
葉月堅
葉月双
初美陽一
鳩島すた
花村萬月
羽根川牧人
帚木蓬生
浜崎達也
葉巡明治
原岳人
原田マハ
張間ミカ
東川篤哉
東野圭吾
東山彰良
氷川透
菱田愛日
ひびき遊
日野俊太郎
日昌晶
百田尚樹
平坂読
平山瑞穂
広沢サカキ
弘也英明
深緑野分
福井晴敏
福田政雄
藤谷治
藤田雅矢
籘真千歳
藤まる
伏見つかさ
藤水名子
藤本圭
冨士本由紀
船戸与一
古川日出男
古処誠二
古橋秀之
星野亮
窪美澄
穂邑正裕
堀川アサコ
誉田哲也
本田誠

category: は行の作家

tag: OPEN 作家一覧

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第7回小説すばる新人賞 受賞作:包帯をまいたイブ/冨士本由紀

包帯をまいたイブ_0001 (202x290)
(あらすじ)
バーに勤める男役レズビアンのケイ。でも本当に惚れているのは、店長でやはり男役の麻生で……。セクシュアリティを超えた「純愛」を描く、第7回小説すばる新人賞受賞作。

answer.――― 57 点
第7回小説すばる新人賞受賞作。内容としてはセクシャル・マイノリティ―――レズを題材にしたもので、属性として「タチ(性行為でいう能動的な側)」を主人公に担わせ、タチ同士の、ある種の変則的な純愛を描いていく。仕掛けとしての面白味は、表題でも採用されている《包帯》。ミスリードの形で、読み手は想定外の《イブ》を知ることになる。が、それ以外には特に言及したくなるような感想は浮かばず。ただ、金魚をマ♀コに突っ込んだプレイはなかなか衝撃的。実際にそういうプレイがあるのかしらん?

第7回小説すばる新人賞 受賞作:包帯をまいたイブ/冨士本由紀

category: は行の作家

tag: OPEN 50点 冨士本由紀 小説すばる新人賞

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第4回小説すばる新人賞 受賞作:涼州賦/藤水名子

涼州賦_0001 (202x290)
1.涼州賦
2.秘玉

answer.――― 69 点
唐代末期、うだつのあがらぬ三十男が武威郡県尉となって西域である涼州へ赴任するも、そこは賄賂横行する腐敗の地で―――というストーリーライン。賄賂を跳ね除け、勧善懲悪!という単純な図式かと思いきや、上述の通り、主人公である尚参は良識こそあれ、冴える頭も鎮める腕っぷしもない、いわゆる「ヘタレ」な設定。では、どうやって物語が展開していくのかと云えば、賞金稼ぎの豹狄、勝ち気な居酒屋の女将・小杏―――サブキャラクターの活躍に因る。尚参が早々に四面楚歌の状況に放り込まれるなか、二人だけが味方してくれるわけだが、中盤、終盤の活劇の敵役が二人の因縁ある「殺人、強姦、何でもござれ!」の巨漢の用心棒・史亥であるように、実質、本作の「物語」は豹狄と小杏のもので、二人が《前へ進む》ためのキッカケが尚参という部外者だったということが解かる。「王道」的な展開だけに、安易に豹狄を主人公にしなかったところに著者のセンスを感じられるだろう。個人的ハイライトは、豹狄と史亥の《強弱》の妙味。作中、強さの不等号が当事者たちの評も含めて良い意味で定まらない。悪の親玉・董公の「お前一人で、あれをやれるか、史亥?」と訊き、意気込む史亥を「いや、無理だ」と制す場面は、(……え?無理なの!?)と読み手も驚く問答。なかなか洒落ております。表題作の他、女怪盗の活躍光る「秘玉」収録。

第4回小説すばる新人賞 受賞作:涼州賦/藤水名子

category: は行の作家

tag: OPEN 60点 藤水名子 小説すばる新人賞

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第2回小説すばる新人賞 受賞作:ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

ゴッドブレイス物語 (201x290)
1.ゴッド・ブレイス物語
2.タチカワベース・ドラッグスター

answer.――― 30 点
時折り、私は本作を薦めることがある―――「鼻毛が出ている」小説として。勿論、作中の登場人物の誰それの鼻毛が出ているわけではないし、著者のたとえば顔写真が載っていて、そこで鼻毛を確認出来るわけでもない。あくまで「鼻毛が出ている」とは比喩である。女性Vo.が看板のバンド「ゴッド・ブレイス」が遠征した先で仲違いを起こした末にステージへ立つ、というストーリライン。奔放なヒロイン、雑然とした喧騒持つ世界から著者の個性がデビュー作である本作から刻まれているのが読み取れ、これが成熟して後に『皆月』で吉川英治文学新人賞、『ゲルマニウムの夜』で芥川龍之介賞を受賞したのが分かる。が、すらすら読める!なんて評も見かける文章は単純に拙いだけで、金を払うに値しない。《花村萬月の処女作を読む》という強い目的でも持たないかぎり、本作を手に取っても散財、そして、時間の無駄になってしまうだろう。読み逃すが吉、だ。さて、肝心の「鼻毛が出ている」だが、これは何を比喩しているかといえば、執筆中の著者である。作家にかぎらず、作り手は「見ろや、この筋肉ー!」とモスト・マスキュラーする瞬間(場面)がある。本作中でそれは間違いなく終盤も終盤、歌詞(ポエム)を載せちゃうライヴだろう。ここで花村萬月が(さあ、はち切れよ!!)とばかりに「見ろや、この筋肉ー!(俺、凄いだろー!)」と血管浮き出しポーズを決めている、……鼻毛が出ていることも気づかず。誰しも鼻毛が出ているなんて思いもしないものだ、特に自分が一番格好良い瞬間に。本作は「鏡」になりうる。その一点のみに本作の価値がある。表題作の他、短編『タチカワベース・ドラッグスター』収録。

第2回小説すばる新人賞 受賞作:ゴッド・ブレイス物語/花村萬月

category: は行の作家

tag: OPEN 30点 小説すばる新人賞 花村萬月

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第1回小説すばる新人賞 受賞作:こちらノーム/長谷川潤二

こちらノーム_0001 (201x290)
(あらすじ)
スーパー・コンピュータ設計技師のもとに突如現われたヘッド・ハンター!現代社会の人間像に挑む大型新人の意欲作。

answer.――― 36 点
時折り、レヴュー中で「賞味期限切れ」なる表現を使わせて頂いているが、本作はまさにその典型として挙げたい《賞味期限切れ》具合が印象的な一作。スーパー・コンピュータ設計技師に謎のヘッドハンティングが!お前は一体何者なんだ!?というストーリーラインなのだが、もはや(……誰が読むこともあるまい)という予想の下、先にネタバレさせて頂く。表題『こちらノーム』にあるノームとは、禿げ頭に刻まれた痣がトレードマーク、ソビエト連邦最後の指導者、初代にして最後の大統領ミハイル・セルゲーエヴィチ・ゴルバチョフその人である。最後も最後、ドアを開けたらご対面である。出版当時ならばエェエェエェエェエェエェエ(゚Д゚ノ)ノエェエェエェエェエェエェエェが適当なのだろうが、21世紀の序盤半ばまで来た今ならば( ´_ゝ`)フーンで済めば良いほうだろう。兎角、「コンピューター」を題材にしてしまうと、現実世界での技術革新によって《賞味期限》に早々に到ってしまう。その時、その場で消費されるエンターテイメント作品。読まなくてOKです。一応、添え物的な演出で「娘は、父親に愛されたいから、ライバルの母親の欠点を見ぬいて、母親とは逆に育つのよ」なんて切り口もございますが。表題作の他、「雨の踊り」収録。

第1回小説すばる新人賞 受賞作:こちらノーム/長谷川潤二

category: は行の作家

tag: OPEN 30点 小説すばる新人賞 長谷川潤二

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第21回電撃小説大賞 大賞:ひとつ海のパラスアテナ/鳩島すた

ひとつ海のパラスアテナ
(あらすじ)
世界の全てを二つの青が覆う時代「アフター」。14歳のアキは愛船パラス号で大海を渡り荷物を届ける『メッセンジャー』として暮らしていた。ある日、アキは航行中に恐るべき『白い嵐』に遭遇、船を失って浮島に取り残されてしまう。そこは、見渡す限り青い海が広がる孤立無援の島だった。

answer.――― 73 点
物語は14歳の少年(?)アキがペットのカエルとともに嵐によって遭難、無人の浮島に漂着するところから幕を上げる。そして、そんな過酷な第1章はペットを食料にして生き抜いたところで終わる。―――と、いきなりネタバレさせて頂いたが、これは本作を読了するための私の勝手な配慮である。読むも退屈で「あー、こりゃダメだ」と放り捨てたくなる第1章は名著『ロビンソン漂流記』の出来損ないでしかないが、盟友となる第二のヒロイン・タカと漂流する第2章以降は目くるめく海路を往く。どこまでも広がる海、ビフォアと呼ばれる文明の名残り、工夫凝らされた海生物、溢れる格言&造語……と、序盤こそ著者のオリジナリティへの拘りに忌避感を持ってしまうが、性格対照的なアキ&タカの陽性なやり取り、諍いを通してそれらは緩和され、イベントの解決とともに新たな設定の紹介を待ち望むようになる。巷で言及されているように百合と解る百合モノであるにもかかわらず、百合特有の過剰演出が無いのは《適性》ない読み手には有難いところ。こうなってくると、先の展開を読んで《初恋》のイベントが待ち遠しくなる。個人的ハイライトは、第二章「あるフッカーの漂流」でのゴミザメ用いた脱出劇。ここでの「そして今は十割が海。この世界はもう何度も終わっているのよ」というファンタジーは第1章での失地を回復させ、ゴミザメとともに動き出す船の姿には著者を書き手として信頼に足る人物と安心させてくれるだろう。返す返すも、第1章の遅々としたサバイバル劇は拙く勿体無いものの、読み終わってみれば爽快な海洋冒険譚。良質なライトノベルです。

第21回電撃小説大賞 大賞:ひとつ海のパラスアテナ/鳩島すた

category: は行の作家

tag: 電撃小説大賞大賞 OPEN 70点 鳩島すた

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第13回本屋大賞 7位:戦場のコックたち/深緑野分

戦場のコックたち (198x290)
(あらすじ)
誇り高き料理人だった祖母の影響で、コック兵となった19歳のティム。彼がかけがえのない仲間とともに過ごす、戦いと調理と謎解きの日々を連作形式で描く。

answer.――― 76 点
異国を舞台に“少女”関わる様ざまな謎を詰め込んだデビュー作『オーブランの少女』でミステリー界隈に留まらない支持を受けた深緑野分の「初」の長編作品。デビュー作同様、本作もノルマンディー上陸作戦に従事する合衆国軍兵士という異国、そして、異邦人を採用し、翻訳小説を思わせる重厚な―――ともすれば(ボリューム含め)読み疲れる筆致で、読み手を戦場ミステリーへ誘う。目を惹かれるのは「パラシュート」「粉末卵」といった見慣れない道具から始まるミステリー!と紹介したいところなのだが、それらが謎として絡む序盤の二編は正直、退屈に映る。戦場コックへと実質降格した、凡庸、あるいはそれ以下の能力の主人公ティムは傍観気味で成長も特に無く、提示される謎は盟友エドによって解かれるだけに過ぎない。本作の醍醐味は読み手が(……これは面白くない!)と覚悟を決めたそこから先―――銃弾、爆弾当たればサヨウナラの状況のなか、重苦しく惨禍が進み、登場人物たちの心が麻痺し、歪になっていく様だろう。ミステリー小説から戦争小説へ。本作において「嬉しい!」「楽しい!」「大好き!」といったポジティヴな感想を吐けることはない。戦場の“日常”を登場人物とともに歩み、本を閉じたとき、そこから“現実”へ還る―――そのトリップに価値見出す作品。個人的には、文字量を半分にして、主人公には主導的な立場を与えて欲しかった。もっとも、そんなエンタメなアレンジしちゃうと本作を支持する人が離れちゃうだろうけどね。

第13回本屋大賞 7位:戦場のコックたち/深緑野分

category: は行の作家

tag: OPEN 70点 深緑野分 本屋大賞

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