ナマクラ!Reviews

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第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

名も無き世界のエンドロール (205x290)
(あらすじ)
ドッキリを仕掛けるのが生き甲斐のマコトと、それに引っかかってばかりの俺は、小学校時代からの腐れ縁だ。30歳になり、社長になった「ドッキリスト」のマコトは「ビビリスト」の俺を巻き込んで、史上最大の「プロポーズ大作戦」を決行すると言い出した。一日あれば、世界は変わる。男たちの命がけの情熱は、彼女に届くのか?

answer.――― 74 点
過去と現在を織り交ぜつつ、「ドッキリスト」「ビビリスト」「プロポーズ大作戦」「一日あれば、世界が変わる」……と日常を《言葉》で彩り、いつの間にか非日常へと逸脱していく作風は、単刀直入に言って、伊坂幸太郎そのもの。一人の才人が道を切り拓けば、そこを通り(なぞり)、踏み固める者が現れるものだが、著者はその典型と言って差し障りない。そうなってくると、本家とのクオリティー勝負となるが、――やや劣勢、かなと。伊坂幸太郎の初期作品(ex.『重力ピエロ』)は、自分のそれまで生きていた日常(思い出&思春期に培った感性)を出し惜しみなくまぶしているが、本作ではそこまでのサービス精神を感じられないのが残念。フォロワー、という二番煎じ的扱いを無意識にしてしまうのもマイナスに働いてしまうだろう。それでも、いざ非日常パートへと突入する終盤は本家と伍する勧善懲悪のカタルシス。表題『名も無き世界のエンドロール』の言い得て妙な、哀しくも爽快感ある幕切れも何とも洒落て印象づけられる。昨今の伊坂幸太郎は持ちうる日常をすり減らし、退屈の域に達してしまったが、在りし日の伊坂幸太郎に出会いたい方にはお薦め出来る作品。ちなみに、「本当に何もかもが終わって、エンドロールが止まる時、あたしはようやく立ち上がれるようになる」なる作中の《台詞》が結末に響く構成。良くも悪くも、造りが丁寧なんだよね。

第25回小説すばる新人賞 受賞作:名も無き世界のエンドロール/行成薫

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 行成薫 小説すばる新人賞

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や行の作家一覧

 や行    

安井健太郎
安田依央
柳広司
八薙玉造
柳実冬貴
柳田狐狗狸
矢野隆
矢作俊彦
山形石雄
山口泉
山口幸三郎
山門敬弘
山田宗樹
山田太一
山之口洋
山原ユキ
山本修一
山本幸久
弥生翔太
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結城充考
遊歩新夢
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雪野静
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弓弦イズル
横山忠
横山秀夫
吉田修一
吉田直
吉富有
吉村夜
よしもとばなな
米澤穂信
米村圭伍

category: や行の作家

tag: 作家一覧 OPEN

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第23回小説すばる新人賞 受賞作:たぶらかし/安田依央

たぶらかし
(あらすじ)
マキは、市井の人々の中で誰かの「代役」を演ずる役者。花嫁や母親の代行から、果ては死体役まで。依頼人たちの身勝手さに苛立ちながらも、淡々と仕事をこなしていたマキの前に、ある日、謎の男が現れて……。

answer.――― 72 点
How-Toとは、何らかの作業をする方法や手順に関する非形式的な記述のこと―――と、Wikipediaから引用させて貰ったが、情報溢れる現代社会だからこそ《正確な情報》を集約したハウツー本は、《知識》を得られる手段として以前にも増して歓迎される。昨今では飽くなき娯楽追及からか、ハウツー本にも《ストーリー》、そして、《キャラクター》の導入を求めている印象もある。もっとも、需要があるからといって《知識》ばかり挿していると、形骸化するのはお約束。《ストーリー》や《キャラクター》用いるハウツー本もどきを制作したいならば、書き手は《知識》もさることながら、それを扱えるだけの《知性》を作品に―――有り体に言えば、登場人物に施さなければならない。セレブ母、新妻、時には死体……依頼のままに、あらゆる人物の「代役」を派遣する会社に勤めるマキ(39)を主人公にした本作『たぶらかし』。設定の目新しさこそあれ、連作短編での優等生な起伏が読み手の想像を上回らないのが残念だが、上述の死体役やら、年齢的にも枯れたマキへホの字を書く若者の出現など、トリッキーさは目を惹くし、トントン拍子な「ドラマ化」も納得出来るところ。個人的には、《知識》出すことなく、《知性》感じさせる作風は好印象。《知性》とは何か?という話になるが、それは登場人物が《キャラクター》ではなく、《人》ないし《人間》である瞬間があることだと思う。《キャラクター》求められる現在だからこそ、《人》&《人間》を(キャラクターのなかに)垣間見せる「技」は必須でしょう。

第23回小説すばる新人賞 受賞作:たぶらかし/安田依央

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 安田依央 小説すばる新人賞

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第21回小説すばる新人賞 受賞作:蛇衆/矢野隆

蛇衆  (200x290)
(あらすじ)
戦国の気運高まる室町末期、自らの力だけを頼りに各地を転戦する傭兵集団がいた。その名は「蛇衆」。頭目の朽縄をはじめ、6人は宗衛門老人の手引きで雇い主を替え、銭を稼いでいた。

answer.――― 40 点
第21回小説すばる新人賞受賞作。室町時代末期を舞台に、傭兵集団「蛇衆」が運命の悪戯から反駁し合い、雇われ先の家督争いへと巻き込まれるストーリーライン。諸所で言及されているように、まず目につくのが改行多い文章スタイル。余白多い小説はリーダビリティを持つものの、ともすれば「稚拙」と捉えられ、無駄に評価を落としてしまうジレンマに陥る。本作は、まさにそれに該当してしまった形。もっとも、正味なところ、「稚拙」である。改行多い文体から《ライトノベル》と揶揄されているが、金棒使い、弓使い、槍使い、etc…と「蛇衆」、7人の解かり易いキャラクター設定は実際にライトノベル的……が、描き切れていないのが残念&無念。挿し絵でもあればともかく、読み手には登場人物たちが「見えない」のだ。これでは楽しめようもない。この文章スタイルを採るなら、描写を増やすのではなく、もっと登場人物の(過去を交えた)「吐露」がなければならないだろう。血肉を通わせないといかんってことだね。設定は楽しませようという意図を感じるものの、個人的にあまり作家(小説家)に向いていない印象を抱きました。ゲームやらアニメやらのシナリオライターのほうが向いているのでは?

第21回小説すばる新人賞 受賞作:蛇衆/矢野隆

category: や行の作家

tag: OPEN 40点 矢野隆 小説すばる新人賞

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第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

笑う招き猫 (199x290)
(あらすじ)
オトコより、お金より、あなたの笑いがほしい!新人女漫才コンビ、アカコとヒトミ。彼氏もいない、お金もない、だけど夢は忘れない2人に、テレビ出演のチャンスが……。

answer.――― 69 点
(第何次なのかは不明だが)お笑いブームの最中に投下された、女漫才師コンビを主人公にした第16回小説すばる新人賞受賞作。漫才師ということで、物語の焦点は芸が鈍っても売れるTVタレントとなるか、売れなくてもライブで沸かせる漫才師にこだわるのかという二択にコンビそれぞれが思い悩み、衝突するところに置かれている。王道と云えば聞こえはいいが、ありがちと云えばありがちな焦点なだけに、女漫才師を如何に才人に描けるかがキーポイントとなる。が、可もなく不可もなく……なために及第点に到らず。もっとも、文字に起こしての「漫才」披露は著者のチャレンジ精神を買いたいところ。笑いの本質は「間」なのだろうから、それを実質封じられる文章で「つまらなくはない」と思わせる仕上がりは好印象を抱いた次第。題材を変えた著者の「次」の作品に興味を持てる。作中で個人的に興味惹かれたのは、先輩芸人の妻である元アイドルのユキユメノを巡る痴情。結局、ゴシップ(そして、それに巻き込まれること)が一番面白いのは二次元でも、三次元でも変わらない。漫才師たちの「悩み」、選んだ「答え」なんて、現在進行形でTVで汗掻きながら映っているので、そのライブ感と比すれば、本作の内容では霞んでしまう。ユキユメノというゴシップをもっとクローズアップしても良かったと思う。なお、千葉近辺の書店員・出版社営業が催した酒飲み書店員大賞の第2回の受賞作でもあります。

第16回小説すばる新人賞 受賞作:笑う招き猫/山本幸久

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山本幸久 小説すばる新人賞 酒飲み書店員大賞

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第5回小説すばる新人賞 受賞作:砂時計/吉富有

砂時計_0001 (201x290)
1.砂時計
2.アサンブラージュ
3.地図上の海

answer.――― 59 点
かつて母と蒸発した父の同僚から届く「母を見舞って欲しい」という手紙―――ローオフィスで働くヒロインは両親たちの過去を知ってなおCoolに、そして、ポエムのように綴る。作中、マドンナ、グロリア・エステファン、アニタ・ベイカーという《記号》を持ち出して作品世界を飾っていく“お洒落”な作風だが、今なお売上的に“現役”である例外中の例外のマドンナを除けば、その効能は推して知るべし。アニタ・ベイカーの歌を引用されたところで、(……誰?)とならなければ良いほうだろう。出版は93年とバブル崩壊の時期ながら、世界でも稀な、かつてない好況を謳歌した世で思春期―――己の感性を育んだのが解かる作品。そういう意味では、貴重と云えば貴重。ここには“Cool”だった文章があるのだ。表題作の他、中編を二編収録。

第5回小説すばる新人賞 受賞作:砂時計/吉富有

category: や行の作家

tag: OPEN 50点 吉富有 小説すばる新人賞

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第1回小説すばる新人賞 受賞作:川の声/山本修一

川の声_0001 (203x290)
(あらすじ)
1.川の声
2.寒菊に自転車
3.青梅の雨

answer.――― 55 点
誰が呼んだか、集英社出版四賞のなかでジャンル不問のエンターテイメント小説の公募賞と云えば、小説すばる新人賞。本作はその記念すべき第1回の受賞作……といっても、第1回という手探りの回らしく受賞作は二作あり、もう一つの受賞作『こちらノーム』と比すれば本作『川の声』は《文学》寄りの一作となっている。その概要は、忙しい都会よりうらぶれて地元に戻った主人公に、元クラスメイトの女に銀行強盗の計画を持ちかけられる、というもの。銀行強盗、という田舎を舞台にした非現実的な計画がエンターテイメントとなっているわけだが、淡々と進み、さらりと決行されれば、失恋―――という着地で、特段の面白味というものはない。唯一印象に残るのはその〆め方で、後日、女より届けられた手紙を燃やし、それを「遺灰」と称したことか。《楽しませる》という視点が致命的に欠けているものの、そういう叙情性は拾ってあげても良いと思う。受賞作である表題作の他、短編が二編収録されている。

第1回小説すばる新人賞 受賞作:川の声/山本修一

category: や行の作家

tag: OPEN 50点 小説すばる新人賞 山本修一

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第10回本屋大賞 9位:百年法/山田宗樹

百年法 (205x290)
(あらすじ)
6発の原爆が投下され終戦を迎えた日本で、ある法律が制定された。通称「百年法」。新技術で不老を与えるかわりに、100年後に死ななければならないというが!?

answer.――― 74 点
「民主主義は最悪の政治といえる。これまで試みられてきた、民主主義以外の全ての政治体制を除けばだが」とは英国の名相ウィンストン・チャーチルの言だが、実際、先日の国民投票によるEUからの英国脱退―――Brexitはものの見事に衆愚を見せつけてくれただけに、兎角、大衆はその場の情動で奈落へ落ちていくことを再認識した次第。本作はそんな現代の問題を先読みしたか、《国民投票》をキーワードに社会の混乱を描いたSFな一作。「原爆を六発落とされた日本」「不老技術により“永遠の若さ”を手に入れた日本国民」「世代交代のための“生存制限法”による死の強制」と、その舞台、敷かれた設定はスケール大きく目を惹く。が、何と言っても不老からもたらされる経済衰退、少子化の解決を図る死の強制の是非を問う国民投票は作中世界の解かり易い分岐点で、そこを目の当たりにすれば本作が稀に見る大作であることを実感出来る。同時に、その分岐点に辿り着くまでが読み手へ強いられる試練となる。文庫本で「上」「下」巻の構成で、事実上、「上」巻まるまる一冊が登場人物を介しての社会紹介となっている。読み手をその社会の一員に浸透させたい意図は解かるが、流石に退屈だ。しかしながら、最後まで《国民投票》が活かされる仕掛けは大掛かりで楽しめるのは間違いないところ。大作、大歓迎!なプログレッシヴな方はどうぞ。

第10回本屋大賞 9位:百年法/山田宗樹

category: や行の作家

tag: OPEN 70点 山田宗樹 本屋大賞

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第19回電撃小説大賞 メディアワークス文庫賞:路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店/行田尚希

路地裏のあやかしたち (203x290)
1.人間の話
2.天狗の話
3.狸の話
4.猫又の話
5.狐の話

answer.――― 69 点
「職業」「職人」のような現実社会に根ざした1テーマにスポットを当てると、キャラクターではなく、人と面と接するかの如く《知識》挿され、自ずと大衆小説の匂いをまとうものだ。年重ねるライトノベラー、そして、隙あらばライトノベルのコーナーに寄りつかない層を取り込むべく創設されたMW文庫。そこへ配属された本作は掛け軸、屏風等を扱う『表具師』を題材にしたライトノベル。5つの短編連作で、各章の表題で察せるように表具に「妖怪」というファンタジーを絡めるのがエンターテイメントとしての味付けとなっている。全体の印象を述べれば、無難、その一言に尽きる。1章「人間の話」を読めば、以降はゲストキャラクター、表具を変えただけの金太郎飴的展開で、5章「狐の話」でようやく変化をつけてくるが、時すでに遅し。「悪くはないけど、……」と語尾濁され、イマイチの烙印を押されてしまうことだろう。金太郎飴と切ったが、《怪異(表具)が持ち込まれる→解決》という展開自体が悪いわけではなく、根本の問題は「主人公がどの章でも傍観的」なことにある。これを改善するだけで金太郎飴の印象は払拭されるが、果たして著者は気づける―――もとい、気づけたかな?文章含めソツのない仕事っぷりに伸びしろを感じるので、ここは絶筆するつもりで入魂の一作を創って頂きたい。結婚詐欺師の狸は、次巻以降の化け具合が気になるキャラクターでした。

第19回電撃小説大賞 メディアワークス文庫賞:路地裏のあやかしたち 綾櫛横丁加納表具店/行田尚希

category: や行の作家

tag: OPEN 60点 行田尚希 メディアワークス文庫賞

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第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

本屋さんのダイアナ (201x290)
(あらすじ)
私の呪いを解けるのは、私だけ。「大穴」という名前、金色に染められたパサパサの髪、行方知れずの父親。自分の全てを否定していた孤独なダイアナに、本の世界と同級生の彩子だけが光を与えてくれた。正反対の二人は一瞬で親友になった。そう、“腹心の友”に……。

answer.――― 85 点
作家の文章力を量るとするならば、解かり易いところで「とりあえず」語彙の多寡だろう。言葉を知らなければ、そもそも「文章」を綴れない。しかし語彙が豊富であっても、文章力の高低が定まるわけではないのは御存知の通り。起承転結に始まる構成、内面/外面の描写、完成された(色褪せない)ユーモア、今を楽しむ時事ネタなど、総合的な観点で《文章力》の有無は判定される。そして、人によって各項目の配点が変わるのも《文章力》なるものが曖昧となる理由だろう(個人的に、構成が出来ていると「巧い」と見做される傾向にあると思う。同時に、詩的な散文は駄文と見做される傾向にある。これは《文章力》に、エンターテイメント的な観点が設けられている証左でもある)。そんな中、あまり論点にならない、書き手のセンス問われる項目を一つ紹介したい。作中の時間経過をどうやって表すか?である。一例を引く。司馬遼太郎の代表作『竜馬がゆく』の主人公・坂本龍馬は全国を行脚したことでも知られている。当然、ただ移動しているだけの経過が幾度もあるわけだが、そこは省略するのが常道で、実際、司馬遼太郎も多くを省略している。が、敢えて書いているページがある。そこを目にしたとき、読み手は書き手の遊び心を感じざるを得ないはずだ。その描き方とは、渋谷、原宿、代々木、……といった地名をいちいち改行しての羅列である。地名を並べることで、移動時間を表現しているのである―――たっぷりの余白をユーモアと添えて。時間経過は、それが唐突で大胆であるほど、読み手を作中世界へと巻き込む―――あるいは、作中世界から突き放す。ただ時間を飛ばすだけでもセンスが要る。そこに遊び心を加えられるか否かは、まさしく作家としての《余裕》が無ければ出来ないのである。さて、本作必見のハイライトを挙げる―――Wヒロイン(大穴&彩子)の外見が変わる。それは劇的なもので、幼少期の互いへの憧憬をそのまま己へ転写。時間経過を作品のエンターテイメントの核として採用しているのが解かる。そこに絡ませてくるのが著者である柚木麻子の十八番“イタさ”で、後半の主役である彩子の迷走はまさしく《悲劇のヒロイン》。幼さ故に思考を停止する人間の弱さを堪能出来る。全ての登場人物を関係者にしてしまうご都合はいかがなものか……と眉をひそめてしまうものの、“イタさ”にしっかりと向き合うエンディングは実に清々しい。大衆を楽しませる視覚要素溢れる一作。上流から下流までの家庭の書き分けも面白かったです。

第12回本屋大賞 4位:本屋さんのダイアナ/柚木麻子

category: や行の作家

tag: OPEN 80点 柚木麻子 本屋大賞

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