ナマクラ!Reviews

03/1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30./05

第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

ラメルノエリキサ (201x290)
(あらすじ)
女子高生・小峰りなのモットーは、どんな些細な不愉快事でも必ず「復讐」でケリをつけること。そんな彼女がある日、夜道で何者かにナイフで切り付けられる。手がかりは、犯人が残した「ラメルノエリキサ」という謎の言葉のみ。復讐に燃えるりなは事件の真相を追うが……。

answer.――― 76 点
どんな些細な事でも必ず「復讐」でケリをつける女子高生が「ラメルノエリキサ」なる謎の言葉から自分を切りつけた通り魔を探すストーリーライン。《復讐》というおどろおどろしくも単純明快なテーマを女子高生が背負うというギャップ盛り込んだキャラクターメイクはライトノベル的で、実際、作品自体も躁なヒロインに負けず劣らずの登場人物たちが現れて混沌とした様相を楽しむものとなっている。作中のハイライトは、上述の「ラメルノエリキサ」の謎解き―――のわけなく、そのままズバリ、「復讐」に妄執するヒロインと張り合える歪んだ想いを抱える登場人物たちの遭遇&暴露。完璧なママ、たおやかな姉は、ヒロインの一人称だからこそのジェットコースター的演出を味わえる。とどのつもり、キャラクターが気に入れば好作となる受賞作。ストーリーを求めてはいけません。と書きつつ、著者の伸びしろは《物語》を用意出来るかどうかにかかっているので担当は求めたいところだろうね。

第28回小説すばる新人賞 受賞作:ラメルノエリキサ/渡辺優

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡辺優 小説すばる新人賞

[edit]

page top

第3回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 大賞:あやかしがたり/渡航

あやかしがたり (202x290)
1.水待人
2.煙々羅
3.勘定間諜
4.犬追われ物
5.騒ぐ刀
6.懐疑は踊る
7.山手騒動
8.あやかしがたり

answer.――― 70 点
ゲスト審査委員を務めた田中ロミオより「達者な筆致と高い完成度を誇り、作者の年齢を鑑みると同じ物書きとして「ちょっと今のうちにどうにかしておきたいな」と暗い情念を抱かせるものがありました」とその将来を嘱望された渡航のデビュー作。その概要は、あやかしなトラウマ持つ若侍・新之助が帰郷の道中に出会った珍奇な仲間と辿り着いた郷里であやかし関わる陰謀に挑む、というもの。本作の感想は上記の講評に尽きる印象―――とどのつまり、「巧い」である。語彙が豊富なことはそれこそ一頁目から察せられるだろうし、登場人物の台詞遣いも目垢のついていない言葉に「格」負けしていない。個人的に唸ったのは、一章「水待人」における相次ぐ出会い。第一の脇役である拝み屋ふくろうは、主人公も怪しむ存在ながら逆にそれが主人公自身の紹介へと繋がり、第二の脇役である謎の娘ましろは、まさしく「謎」そのものとなって舟へと飛び込んでくる。どこにでもありそうな、何気ないオープニング……ながら、よくよくその演出の意図に気づけば、ところがどっこい!の凡とは一線画す“仕事”だと解かる。もっとも、そんな唸らせられる第一章が“先”を期待してしまうピークとも云えるのが本作の難点。文章は所詮、物語を彩り、飾るものでしかない。巧ければ面白いのかと問われれば、やはり限界があるのである。そもそも、「主人公」新之助が常に自分を見つめているのは作品の、構造的な問題となっているようにも思う。「物語」のために主人公が要る、これが本来的な大前提だ。この逆、《主人公のために「物語」が要る》というアプローチで筆を執るならば、あやかし関わる故郷の藩の権力闘争という大風呂敷ではなく、もっと小さな事件を用意したほうが良かっただろう。《小説》としての出来は高いものの、……な「物語」の弱さ目立つアンバランスな一作。

第3回小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門) 大賞:あやかしがたり/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: 小学館ライトノベル大賞(ガガガ文庫部門)ガガガ大賞 OPEN 70点 渡航

[edit]

page top

わ行&数字の作家一覧

 わ行&数字    

和ヶ原聡司
渡瀬草一郎
渡辺球
渡辺由佳里
和田竜
渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 作家一覧

[edit]

page top

第11回本屋大賞 1位:村上海賊の娘/和田竜

村上海賊の娘 (201x290)
(あらすじ)
和睦が崩れ、信長に攻め立てられる大坂本願寺。海路からの支援を乞われた毛利は村上海賊に頼ろうとした。その娘、景は海賊働きに明け暮れ、地元では嫁の貰い手のない悍婦で醜女だった―――。

answer.――― 72 点
本作は、「海賊王」村上武吉の謎の実娘・景という史実からストーリーを編んだ歴史小説。「貰い手のない醜女」というレッテルを貼った上で、男勝りの怪力&胆力を持つヒロイン・景が、結婚相手を探しつつ、信長の侵攻を受ける本願寺に加勢するストーリーライン。読書中、そして、いざ読了してみても印象はついに変わらず―――本屋大賞第1位という評価に首をひねってしまったのが正味な話。やはりと言うべきか、「貰い手のない醜女」というヒロインに相応しからぬレッテル張りにその原因を見てしまう。当然といえば当然だが、景はいわゆるブサイクではない。戦国時代に生きる人々の美的感覚からズレているだけであり、作中では醜女の景の容姿を美しいと見做す者たちも少なくない……が、要所で醜女、醜女と連呼して刷り込み、そんな醜女が活躍する物語を楽しむのは難しい。どんな理由があろうとも、「醜い」容姿を主人公格に与えてはいけない。日本の海賊、村上水軍を題材として取り上げる作品は物珍しく、挿される“知識”は新鮮だったものの、歴史小説でありながら登場人物たちのキャラクターがかったコミカルな調子、「女性ヒロインが活劇する」という観点から、ライトノベルにも似た印象もあり、個人的にはそれが軽薄にも映った。キャラクターを重視するなら、今度は“知識”が邪魔だ。作品の質としては、著者自身初の本屋大賞ランクイン作品『のぼうの城』のほうがキャラクターと知識のバランスが取れているので、同作をお薦めしたい。

第11回本屋大賞 1位:村上海賊の娘/和田竜

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 和田竜 本屋大賞

[edit]

page top

電撃文庫:空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎

空ノ鐘の響く惑星で
(あらすじ)
毎年、ある季節になると、空から鐘に似た音が降ってくる世界。『御柱』と呼ばれる宙に浮く巨大な柱がある世界。そんな世界に生じたひとつの噂話―。“深夜をまわる頃、『御柱』の一部に、若い女の姿が浮く―”事実を確かめに行ったフェリオの前に現われたのは、御柱の中に浮かぶ異装の少女の姿だった……。

answer.――― 70 点

2005年から2007年の「このライトノベルがすごい!」にて連続TOP10入りを果たしたように、本編全12巻&外伝1巻の好評を博した渡瀬草一郎の代表作として扱われるシリーズ作、その第一巻。シリーズとしてのストーリーラインは、古より予言されていた異世界よりの侵入者によって突発的に生じた王位継承を巡る内紛、やがて国土さえ割る戦いを描く「末弟」主人公の英雄譚。あとがきにあるように編集部より依頼されての作品のため、元よりシリーズとしての構成がなされ、本作は起承転結で語れば、まさに「起」そのものを任されたプロローグな内容。故に冒頭からしばし起伏が乏しく、筆もデビュー作『陰陽ノ京』の労作具合から一転、肩の力を抜いた散文調が目立つ。それでも、人気を博せたのは登場人物たちのアクシデントな強さの不等号変化、そこからの秀逸な幕引きにある。読者は誰しもアクシデントを期待する。事故に遭えば事故だけをその日の出来事と記憶するように、〆に事故を起こせれば途端にそれまでの評価を覆す。本作における終盤の怒涛の呆気ない殺戮劇、その窮地を力足りずも救う主人公は、ブルー・ブラッド流れるライトノベラーたちにとって感情移入に足る器を示した。シリーズ作品に求められるのは、「……始まったよ!」と思わず空を仰ぎたくなる「起」なラスト。本作は、まさにそれを体現しているお手本のようなシリーズ第一巻。シリーズ作のヒットを狙うなら参考にしたい一作。「投稿作とは違うのだよ、投稿作とは」という草一郎ちゃんの二松学舎なつぶやきをラストの行間で聴いてみましょう。

電撃文庫:空ノ鐘の響く惑星で/渡瀬草一郎 (2003)

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡瀬草一郎

[edit]

page top

第7回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:ノーティアーズ/渡辺由佳里

ノーティアーズ
(あらすじ)
アメリカのネット業界は生き馬の目を抜く。そこではビジネスも恋も、泣き言は言いっこなし。日系女性の生き方をスラングを交えた切れのいい文章で描く快作。

answer.――― 69 点

主人公を日系と云えども異邦人とするのは、なかなか勇気が要る―――というよりも、個人的にはファンタジーでもないかぎりは賛成出来ないのだが、著者のプロフィール(アメリカ在住、翻訳業等)を見るかぎりでは、ジューン・ムラカミを主人公にするのはむしろ自然かとも思う。ここ一年、邦人作家ばかり読んでいただけに、翻訳文を思わせる文体は新鮮に映り、楽しく読めた。物語は、三十路過ぎのキャリアウーマン(バツイチ)が入れ替わりの激しいIT業界で心身ともに疲れ果てながら、キャリアと恋を手にする、というもの。男に舐められないために泣かないと決めた女が涙を流すラストといい、まあ、―――王道である。奇を衒ったのはM&Aが日常場面で執り行われるように、ビジネスをテーマにしていることくらいで、構成こそ起承転結揃えているものの、ストーリーに期待し過ぎると肩透かしをくらうだろう。そんなこんなで、本作のメインは文章表現、スラングだと思える。冒頭のフロイトのエディプス・コンプレックスから拝借しただろうペニス・エクステンダーの件は、なるほど、と思わせるものがあったし、若さに任せた向う見ずな→経験に裏打ちされた云々のラインのように、カウンター的な表現の切り返しは個人的趣向に合う。ただ、上述の通り、物語的には丁寧ではあるものの、サプライズ要素が希薄なのがマイナス。悪くはない、……が、そこから「推す」要素がね。おそらく「破綻」を嫌う癖が著者にあると思うが、それが作品をこじんまりとさせてしまうことを自覚すると化けるかもしれない。

第7回小説新潮長編小説新人賞 受賞作:ノーティアーズ/渡辺由佳里

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 60点 渡辺由佳里 小説新潮長編小説新人賞

[edit]

page top

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている
1.とにかく比企谷八幡はくさっている。
2.いつでも雪ノ下雪乃はつらぬいている。
3.つねに由比ヶ浜結衣はきょろきょろしている。
4.つまり材木座義輝はズレている。
5.それでもクラスはうまくやっている。
6.けれど戸塚彩加はついている。
7.たまにラブコメの神様はいいことをする。
8.そして比企谷八幡はかんがえる。

answer.――― 79 点
Twitterにて《最近のライトノベル》を叩いてたり、それを叩いてたりするのを時たま見掛けるが、その度に《最近のライトノベル》が結局、何の作品を指すのか期待を込めて眺めていると、……残念ながら挙がることはない。《最近のライトノベル》とは何か?2015年(理想は2014年)現在、私の考える《最近のライトノベル》が本作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』。中二病を罹患していた男子が高校進学を機に心機一転を図るものの、……というストーリーラインだが、内容についての言及はさて置いて、私が何を以って本作を《最近のライトノベル》と指定したのかと云えば、―――《文章》である。《リズムの踏襲》。様ざまな文章論において、「描写」「構成」「巧拙」が説かれるが、概して曖昧に、あるいは、読み手が首をひねる形で取り上げられるのが《リズム》についてである。小説における文章のリズム、それは俳句の「五七五」のような字数からの定型、語感揃えた韻踏み、お笑いにおける「天丼」のような繰り返し(and more!)を採用することで生ずるのかといえば、必ずしもそうとは言い切れない。何より、それらは書き手が《リズム》の生成を意図したならばもはや「技」であって、読み手が暗に求めている、本来的な《リズム》ではないのだ。では、本来的な《リズム》とは何なのか?

かの“世界の”村上春樹は『小澤征爾さんと、音楽について話をする』にてこんな指摘をしている。

新しい書き手が出てきて、この人は残るか、あるいは遠からず消えていくかというのは、その人の書く文章にリズム感があるかどうかで、大体見分けられます。でも、多くの文芸評論家は、ボクの見るところ、そういう部分にあまり目をやりません。文章の精緻さとか、言葉の新しさとか、物語の方向とか、テーマの質とか、手法の面白さなんかを主に取り上げます。でもリズムのない文章を書く人には、文章家としての資質はあまりないと思う。もちろん、ボクはそう思う、ということですが。

ここで指摘される《リズム》こそ《リズム》である。すなわち、今までの対人関係、そして、(主に思春期に)読書を通して培った語彙を駆使した文章、書き手にとってごく《自然》に浮かんでくる言葉故の「間」を持った文章である。考え、筆を「止めた」文章には理が宿ったとしても、《リズム》は自ずと狂い、果ては失われる。それが作品(中の文章)の色を褪せ、輪郭を消し、単なる文字の連なりとなって結局、退屈と成る。《リズム》とは、無形の文章の「型」なのである。そして、その「型」は書き手から書き手へ知らず《踏襲》され続けている。年を経ればノスタルジーを抱くようになる「お気に入り」の作品より、また、己の嗜好からでなく筆を執るときに「参考」に手を伸ばした作品より。私にとって、小説に関しての《最近》とは後者を汲み、そのジャンルにおいて知名度高く、それでいて技巧を称えられる―――読み手が書き手に回った際に最も「参考に手に取る」だろう作品のなかで、一番《新しい》作品が世に出た頃を指す。その観点から考えて《最近のライトノベル》と云えば、このマニアックなラノベ好き書店員大賞のランクインもさることながら、読み手が決める体の事実上の最高の販促賞「このライトノベルがすごい!」にて2013年度で6位、2014年度の1位、そして、直近の2015年度でも1位を獲り続けた本作になるかな、と。どこかの黒ヒゲではないが、「人の夢は!!!終わらねェ!!!!」と吠えるオジサン、どこかのキッドではないが、「始まるんだよォ!!!誰も見た事のねェ“新しい時代”が!!!」と猛る若人が、多かれ少なかれ《リズム》に影響を被りそうだな、と。具体的に言うと、「もちろん違うよね。知ってました。」などの「消しても通る」追尾な文章を中心にした、「そもそもお前の慎ましすぎる胸元なんか見てねえよ。……いや、ほんとだよ?ほんとほんと、マジで見てない」からの「ちょっと視界に入って一瞬気を取られただけ。」などの前振りを執拗に重箱にしての《吐露》である。この徹底した(《吐露》で斬る)「重箱」具合は圧巻で、故にその《リズムの踏襲》も図られてしまいそう。が、大前提で比企谷八幡という卑屈なキャラクターと合致して歓迎される文体なので、そこを咀嚼しないと、リズムを拗らせるだけの結果に終わるだろう。ナンヤカンヤと書いたが、要約すれば、ライトノベルというジャンルにおけるトレンドな《リズム》がここにある。そんな《流行りもの》な意味合いでも、本作に手を出して損と言うことはないでしょう。大衆小説に寄らず、「ライトノベル」を突き詰めたライトノベル。Very good!な快作です。

第1回ラノベ好き書店員大賞 2位:やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。/渡航

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 70点 渡航 ラノベ好き書店員大賞 このライトノベルがすごい!

[edit]

page top

第17回電撃小説大賞 銀賞:はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司

はたらく魔王さま!
1.魔王、生活のために労働に励む
2.魔王、新宿で後輩とデートする
3.魔王と勇者、笹塚に立つ

answer.――― 72 点
電撃小説大賞は《大賞》より、《金賞》より、《銀賞》のほうが面白い!と誰が言い始めたのかは定かでないが、この第17回より以前の《銀賞》受賞作をさかのぼると、目ぼしいところで、忘れちゃ困る『ウィザーズ・ブレイン』、ああアレか『先輩とぼく』、大本命『狼と香辛料』、萌え燃えキュン『ロウきゅーぶ!』と挙げられるが、概して通説は二例で実しやかにささやかれ、三例と数えられれば定説の如く謳われるもの。『狼と香辛料』、『ロウきゅーぶ!』とリーチが掛かってきたところで、本作『はたらく魔王さま!』の登場が本稿冒頭の言葉に鬼の首を獲ったかのような快哉をつけたのだと思う。ストーリーラインは、勇者に追い詰められた魔王が逃げた先はここ、現代NIPPON!頼りの魔力は失われ、生きていくためにはまずアルバイト!ここから、……正社員を目指すぞ!といったもの。三章仕立ての構成で、第1章は魔王とその従僕の《日常》を描いている。これがファーストフード店の接客&豆知識を絡めた実にコミカル且つ丁寧な出来で、魔王たちの現状、その紹介がてら読み手を作品世界に馴染ませてくれる。この第1章は展開も起伏に富み、好意寄せる後輩、因縁の女勇者の投入、何より章〆め間際のシリアスに、そして、ミステリアスに危機を迎え、先を「予告」させる演出が素晴らしい。流石のヒット作!と唸らされたところで、そこから先の展開を期待していると、第2章以降は「転」あれど、いわゆる想定通りで拍子抜けするものの、設定とキャラクターのギャップ、ナンダカンダの善性を楽しむものと思えば不満はない。ちょうどファンタジー求める時流もあってやや過大な評価を受けたようにも映るが、諸所に隙間突くライトノベル作家の素養を見せているので、今後も信頼おけるキャリアを築いて、良い中堅作家になってくれることでしょう。良作。

第17回電撃小説大賞 銀賞:はたらく魔王さま!/和ヶ原聡司

category: わ行&数字の作家

tag: 電撃小説大賞銀賞 OPEN 70点 和ヶ原聡司 このライトノベルがすごい!

[edit]

page top

第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

のぼうの城
周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍城。領主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれ、親しまれる人物であった。智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!

answer.――― 83 点

概して、登場人物を魅力的に描け、というと、その登場人物「自身」に焦点を絞って煮詰めてしまうものだが、「智も仁も勇もない。しかし抜群に人気はある。まったく新しい英傑、現る!」なるキャッチコピーを与えられた「のぼう様」こと成田長親を主人公にした本作は、登場人物を魅力的に描け、という課題がもはや難題化している作家(志望含む)に一石を投じてくれるだろう一作。上記のキャッチコピーからもお察しの通り、この成田長親は「のび太」だ。勿論、ただの「のび太」ではなく、劇場版「のび太」だ。ただ、―――まったく新しい英傑、現る!とおNewであることを大層謳われているのは何故かと云えば、実際問題、小説で劇場版「のび太」を再現する困難さ故。劇場版「のび太」を演出するためにはまず日常の「のび太」を演出しなければならない。が、いざ取り掛かってみて戸惑うだろうことは、「のび太」をそのまま描くと全く魅力的に描けない事実だろう。だからといって、小説特有の十八番的アレンジ―――心内文、地の文で(……馬鹿じゃないんですよ?)とカバーすればするほど、「のび太」らしくならない。むしろ、それではもはや「のび太」ではなくなってしまう矛盾。では、どうすればいいのか?本作に、その答えがあるように思う。本作は《視点》の工夫、及び歴史という裏付けを以って劇場版「のび太」を成立させた秀作。成田長親の表情は豊かだ。成田長親の行動は幼い。しかし、そんな「のび太」な彼を語っているのはそんな先入観持つ《視点》者だ。そうして、そこに絡んでくるのは読み手は開始数頁で結末まで知っている仕掛け。淡々とした書き口なる評も目立つが、それは歴史面から「劇場版」のび太を―――おNewな主人公を成立させるための弊害なので仕方がない。与えられていく「のび太」な先入観、しかし、すでに知っているただの「のび太」であるはずがない結末との齟齬。それを埋める頁捲りこそ本作の醍醐味と云える。新しい英傑、現る!というよりも、新しく「映る」工夫が随所に施された一作。テンプレ通りの登場人物しか作れない、と云う非難が向けられたなら、それは実は読み手に《先入観》を与えられる特技だと本作を読んで気づいてみよう。

第6回本屋大賞 2位:のぼうの城/和田竜

category: わ行&数字の作家

tag: OPEN 80点 和田竜

[edit]

page top

第15回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:象の棲む街/渡辺球

象の棲む街
1.地見屋襲撃の夜
2.饅頭と女と子守歌
3.狩人の眼
4.老年期の終わり
5.木偶興行
6.飢餓封鎖
7.鼠のように
8.象宮殿

answer.――― 81 点

アメリカと中国に統治&隔離され、荒廃する東京を舞台に、ドブネズミの如く這い回る日本人たちの終末を描いた全8章からなる連作短篇。章ごとに「上質」の視点切り替えを行いながら、(ホモによるアナル)強姦、毒饅頭の販売、臓器販売、過疎地での孤独死、身代り詐欺、スカトロ、児童買春、生体改造……このようなショッキングな題材を核にして、スマートなバッドエンドを迎えていく。視点切り替えを「上質」と飾ったのは、それぞれ視点を任される登場人物たちは何かしらで前章に関わっており、そうと分かると、ある種の偶然を作中で体験出来るからだ。例えば、二章の視点人物は一章で強姦された被害者であり、三章の視点人物は一章の視点人物のアパートの同僚といった具合である。どれも意外性があり、著者のセンスが光る。各章、どれも劣らずクオリティは高いが、敢えて取り上げるとするならば、空腹を満たす魔法の粉「ゴールデンパワー」が配給される、衝撃の第6章【飢餓封鎖】を挙げたい。作中、食糧不足が起こり、暴動の様相を呈するのだが、これを解決すべくアメリカより「ゴールデンパワー」、中国より「黄金粉」と呼ばれる粉末状の食糧が配給される。これが腹は不思議と満たされるものの、臭くて嚥下にも一苦労する代物だった。しかし、ある日、一人の配給者が叫んだ一言によって人間としての尊厳が試される―――お前ら、悔しくないのか!?俺らはコイツらの人糞を食わされているんだぞ!!……いや、終末である。空腹に勝てず、聞かなかったことにして食べる日本人の痛ましい姿よ。このように本作、どれも救いのない内容ながら、心地良ささえ感じるのは登場人物が絶望の中にあっても生きる意志を捨てていないためである。陰鬱なときに読めば、セラピーの効能もあるんじゃないだろうか?特異な快作、【推薦】させて頂きます。余談だが、本作では赤坂にいる(らしい)「象」という象徴を用いて、天皇制を肯定的に描いています。

第15回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:象の棲む街/渡辺球  【推薦】

category: わ行&数字の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 80点 渡辺球 推薦

[edit]

page top