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第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:鉄塔 武蔵野線/銀林みのる

鉄塔
(あらすじ)
夏休みも半ばを過ぎたある日のこと。5年生の見晴は近所の鉄塔で番号札を見つける。その名は「武蔵野線75‐1」。新発見に胸を躍らせた見晴は、2歳下のアキラを誘い、武蔵野線を遡る。「オレたちは鉄塔を辿っていけば、絶対に秘密の原子力発電所まで行けるんだ」―未知の世界を探検する子供心のときめきを見事に描き出した新・冒険小説。

answer.――― 65 点

「この作品は間違いなく空前絶後だろう。一作にして<鉄塔文学>というジャンルを創ってしまった」という日本ファンタジーノベル大賞の選考委員を長らく務めている荒俣宏の評が本作のすべてを物語る。鉄塔、鉄塔、鉄塔……!近所の鉄塔に「武蔵野線75-1」と表記されていると気づいた少年の、きっと在るはずの「1号鉄塔」へと向かう、夏のある一日の物語。出会う鉄塔の写真を一枚一枚掲載し、その形状などを記して行く<鉄塔文学>というより<鉄塔ルポルタージュ>な本作だが、読み物としての面白みはほぼ無い、と断言出来る。それでも、栄えある大賞、そして、映画化、時を超えて絶版からの他文庫での再版となったのには、「鉄塔」徹尾の1アイディアを貫いた作風にある。幼少時より「鉄塔」に興味を持っていた著者・銀林みのるが実質、本作以外に作家活動を果たしていないのも、これが著者の「魂」の一作だからだろう。「魂」ある作品には人が、金がついてくる典型だ。ちなみに本作には単行本、新潮文庫、ソフトバンク文庫の3ver.があるようだが、私が読んだのは「完全版」とされるソフトバンク文庫のもの。新興文庫だけに看板作品が欲しかったのだろう。著者の「鉄塔の写真、ぜーんぶ載せたーい!」なるキ○ガイな要求を呑み、まさに空前絶後の鉄塔小説が完成している。中古書店でよく見掛けるので、オチと「……こんな小説あるんだ(汗)」と体験してみるのも面白いかもしれない。

第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:鉄塔 武蔵野線/銀林みのる

category: か行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 60点 銀林みのる

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第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バガージマヌパナス ― わが島のはなし/池上永一

パガージ
(あらすじ)
仲宗根綾乃は高校卒業後、進学もせず、就職もせず、86歳の大親友オージャーガンマーとひたすらだらだらと過ごしていた。一生、このまま過ごしてやる!という強い決意のもとに……しかしこの数日、煩わしい夢が繰り返されていた。それは、『ユタにならなければ神罰が下る』という怠け者の綾乃には受け入れ難い内容。オージャーガンマーは、綾乃にユタになった方がよい、と諭すが……。

answer.――― 71 点

星の数ほどある読み物のうち、十にひとつ……あるいは、もっと大きな確率で頁の進まない小説と出会う。それは単純に「面白くない」という要因もあるだろうが、それと並ぶ要因に「話が見えない」ことも挙げられると思う。〇〇を倒す話、○×になる話、〇×△に帰る話……といった具合に、概要を一言でまとめられない話には見えない負荷が付きまとう。沖縄は石垣島を舞台にした本作もその手の問題を抱え、序盤から中盤まで物語の見えないウチナータイムに付き合わされる。ただ、本作が各所のレヴューサイトで評判高いのは、物語が定まる終盤―――主人公・綾乃がユタと呼ばれる巫女となり、社長となり、年の離れた唯一の友達オージャーガンマーを助手に、専務に宛てがって、小さな島を駆け回るところから。動いていく物語と陰ながら同時進行していくオジャーガンマーの変化が物語の終わりを予感させてくれる。そうして、―――綾乃は今日も島のどこかで拝んでいる。で〆られる本作は<綾乃がユタになる物語>ではなく、<オジャーガンマーがひっそりと息を引き取るまでの物語>だったことが分かる。本作の読了直後、目の前は類を見ないほど澄んだ景色になる。この景色に出会うために本作を読む価値があると思う。とりあえず、私は自分の先祖へ線香を立てたくなった。著者の出身地だけに、沖縄の、石垣島の文化をよく消化している。楽しい思い出の本質が哀しみと繋がっていることを教えてくれる作品。

第6回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:バガージマヌパナス ― わが島のはなし/池上永一

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 70点 OPEN 池上永一

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