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電撃文庫:タイム・リープ あしたはきのう/高畑京一郎

タイム・リープ
(あらすじ)
ごく普通の女子高生・鹿島翔香は、ある日、自分が『昨日の記憶』を喪失していることに気づく。そして、自分の日記を調べると、昨日の自分が書いたと思しき、見覚えのない文章があった―――「あなたは、今、混乱している……若松くんに相談しなさい。最初は冷たい人だと思うかもしれないけど、彼は頼りになる人だから」と。学校でも秀才の噂高い若松和彦は、翔香が一種の時間移動現象「タイム・リープ」に陥ったことを突き止め、時間のパズルと格闘していく。

answer.――― 80 点

理由は定かではないが、高畑京一郎が嫌いだ―――言葉にしてみて、霞がかっていた思いが晴れ、ますます嫌悪の念が募ったので間違いない。この辺、東野圭吾の『悪意』で言うところの<悪意>以外に思えない。ただ、嫌いなのだ。そんな個人的事情はさて置き、本作は電撃文庫のご意見番・高畑京一郎による一世一代の傑作。タイトルから察せられる通りのタイムトラベルもので、界隈では<90年代の時をかける少女>と持て囃された。本作の特徴として出し尽くされた感のある同ジャンルの作品のオマージュが散見され、そこにパズルを埋める構成の妙が求心力となって頁を進めさせてくれる。上述の通り、筒井康隆の名作『時をかける少女』を引き合いに出されるだけあって、ライトノベルの枠を超えての面白味がある。あくまで私見だが、本作はライトノベルの正しい在り方のように思える。昨今のライトノベルに見られるキャラクター性は無い。大衆小説に見られる地の文の力強さも無い。ただ、異常なまでに読みやすく、そして、簡易な文体を補って余りある構成の工夫が素晴らしい。セールス的な見地からして最大の勢力となった現在にあってもライトノベルは小説というジャンルにおいて、所詮、―――という風下な立ち位置にいる。それは様ざまな見地から「幼い」からだろうが、何より<構成>が拙いことに起因していると思う。極論すれば、構成が巧みなら作品に知性を感じるのだ。本作はその意味で「大人」なライトノベル。ライトノベルを読まない方も、物は試しに読んでみると良い。読書家なら、最低でもオマージュの部分に己のプライドをくすぐられるので損な気分にはならないだろう。ちなみに、この頁数で文庫版で上下巻に分かれているあたりが、―――どうかしてるぜっ!

電撃文庫:タイム・リープ あしたはきのう/高畑京一郎 (1995)  【推薦】

category: た行の作家

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