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第8回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:青猫屋/城戸光子

青猫屋
(あらすじ)
異界の扉が静かに開き始める。優れた歌を創ることが無上の名誉であり、人々が歌の呪力を恐れる不思議な町があった。その町で呪力を持つ歌を消すのが人形師「青猫屋」廉二郎の裏の仕事。48年前の歌仕合の勝敗の判定を依頼された彼は、消えた歌の探索の果てに摩訶不思議な事件に巻き込まれ―――。夏の一夜の見せ物小屋は夢か現か幻か。いつとも知れぬ懐かしい日本で男を惑わす妖しい生き物たちの謎。

answer.――― 64 点

幻想小説=ファンタジー……というと元も子もないのだが、私のなかでの<幻想小説>とは、長野まゆみの代表作「少年アリス」の冒頭を飾る美文「睡蓮の開く音がする夜だった。」に始まる耽美なフレーズで描かれた世界、その物語を指す。本作「青猫屋」はそんな私の思い描く<幻想小説>というジャンルにピタリと当て嵌まる、耽美な文章で綴られている。青猫屋、というタイトルから猫に関係したストーリーなのかと思いきや、内容はまったく関係なく、<歌が支配する街>で<歌を殺す>裏稼業を営む人形師の店が「青猫屋」という設定。物語は現当主・廉二郎が48年の時を経て、父の代より依頼されていた歌の優劣を下すというもの。しかし、これはひとつの幕開け、ラストに待つ大崩壊の序曲に過ぎなかった。そう、本作のラストは誰もが「スゲエな、オイ……」と思わずつぶやいてしまうほどの大量殺戮が待つ。幻想小説特有の有るんだか無いんだかの、もやもやした感覚はカテゴリー5のスーパー・タイフーンに遭遇したかの如く吹き飛ばされ、後には手にさえ残る虚無感と対峙することとなる。どうして、……こうなった?は幻想小説には禁句なのだろうが、耽美主義の行き着く先はやはり、この疑問を呈したくなる結末にある気がしてならない。一言、<美しい>作品だが、その美的感覚に沿えないと厳しい感想が出てきてしまうかもしれない。作中挿入される<歌>は行数稼ぎにも思えなくはないが、独特のリズムで創作されているため、不快感は無い。耽美主義に傾倒している方にお薦め出来る作品。

第8回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:青猫屋/城戸光子

category: か行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 60点 城戸光子

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第8回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:アイランド/葉月堅

アイランド
1.クルーソーの島
2.フライデーの島

answer.――― 66 点

本作の概要をMARCより引用させて貰おう―――ロビンソン・クルーソーが漂着した島に今も暮らす忠僕フライデーの末裔。私は一体何者なのか、どこから来たのか? 虚実が巧妙に絡み合うミステリアスな物語。とのことなのだが、実はこの紹介文、その通りなのだが、前半はこの紹介文はまったく当て嵌まらない。本作は二部構成。紹介文は本作の核心である後半、第二部「フライデーの島」のものだ。早い話、ファンタジー要素を絡めた自分探しの物語なのだが、「前半は、……実は劇中劇!」というサプライズに、事実として驚かされる。そして、前半と後半……第一部と第二部は、本当に「話」が違う。そこを「面白い!」と感じるには、単なる読み手であるうちは無理だろう。本作はリーダー(Reader)へ向けたものではなく、どちらかといえば同業者、ライター(Writer)へ向けた作品と云える。それでも、第一部の「ロビンソン・クルーソーの日記」は(何か読んだことがある気がするので、もしかたしたら原文引用しているのかもしれないが)やはり面白いし、そのクルーソーをまさに黒人の視点から語る「フライデーの物語」は膝を打つ面白さがあった。お陰さまで私のなかのロビンソン・クルーソー、本当に嫌な奴になっちゃったよ。よくぞ授賞させたな、と下読み、選考委員たちを誉めてやりたい絶対に「売れない」一作。

第8回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:アイランド/葉月堅

category: は行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 60点 葉月堅

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