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第9回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:ベイスボイル・ブック/井村恭一

ベイスボイルブック
1.初めから終わりまで
2.終わりから火山へ

「少なくとも連敗が一度もなかったということは、改めてここに記す価値がある」

answer.――― 50 点

あとがき、解説……頁の後ろに付いてくるソレは概して余談に近く、時に作品への汚点、蛇足となることもしばしば起こる。作品と作家は本来、別個のものと扱われてしかるべきで、そこを混同してしまうと作品本来の姿が見えなってしまう。喩えるなら、素晴らしい絵本の書き手が児童性虐待者だったとしたら、読み手は本に描かれているものを素直に受け止められるだろうか?何気ない場面も、作家の歪んだ心象風景に映ってしまうこともあるのではないだろうか?作家は<見えない>に越したことはない。少なくともファンタジーにおいては。「賞としての曲がり角」と揶揄された第七回以降、初めての大賞作となった本作「ベイスボイル・ブック」。数頁とめくって察せられる物語無き物語の予感はやはり間違いではなく、野球とよく似た<ベイスボイル>を行う2チームの戦いをハードボイルドな観察眼で読み手は観戦することとなる。上述の通り、作家は<見えない>に越したことはないが、物語無き物語の場合、<解説>は付いてしかるべきだろう。何を評価されての大賞受賞なのか? 文章/文体がどうのこうのと言うならば、選考委員は責任を持って同業の者として、著者の何が<特異>なのかを伝えるべきだし、創作においての着眼点が素晴らしいのならば、その部分を過去の名作なりと比して、あるいは引用して読み手に訴えるべきだ。個人的に、本作は選考委員の琴線に触れただけの作品に思える。同じ大賞作の『イラハイ』のような分かり易い文章としてエンターテイメントもなく、インテリによる<解説>も無い状態では、ハリウッド(で撮ったアマチュア)映画にしか思えない。

第9回日本ファンタジーノベル大賞 大賞:ベイスボイル・ブック/井村恭一

category: あ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞大賞 OPEN 50点 井村恭一

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第9回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:競漕海域/佐藤茂

競漕海域
1.果て浦
2.名残月
3.駿風
4.試漕
5.うねり
6.ナイフ
7.外洋
8.死霊
9.契り
10.父
etc...

answer.――― 69 点

三艘の舟と荒れる海な表紙、「競漕海域」なるズバリ!な表題から、ファンタジー世界で行われるカヌー競技を題材なのかと推測してみれば、あながち外れてもいなかった……が、予想外なまでのチャンポン・オリジナリティに面食らう本作。作品アイディアの着想は、競馬、競艇、競輪といった公営ギャンブルから発生しているようで、それを《神話》風に仕立てている、といった印象。概要としては、名前の無い主人公が僻地で育てられ、顔も名前も知らぬ父を探すため、王を決める「帝王戦」に参じようと試みるも、幾多の困難が……!というもの。兎にも角にも、ポッドと呼ばれるカヌーが人と一対の生き物で、サラブレッド的感覚で交尾を行い、より「速い」血統を作るというメイン設定が強烈で、その派生からフリー・セックスに近い価値観、しかしそこに矛盾する母親の行動、後の問題となってくる近親相姦の図がストーリーの大本になっている。設定(システム)から物語を編んでいるようで、そんな造りの物珍しさは日本ファンタジーノベル大賞の受賞作群を鑑みても随一と云えるかもしれない。ただ、上述で《神話》風と評したように、キャラクターの魅力が設定の付属品の域を出ていないのが残念。終盤手前にPCがさらりと出てきたことに驚くが、その驚く以上の感想が出て来ないので、殺人含むイヴェントはそこそこに配されているものの、やはり設定、ドン!な一作と云えるだろう。次作はどんなものを上梓してくるのかと調べれば、まさかの「∀ガンダム」シリーズを手掛けた模様。……ただただ驚きだよ!

第9回日本ファンタジーノベル大賞 優秀賞:競漕海域/佐藤茂

category: さ行の作家

tag: 日本ファンタジーノベル大賞優秀賞 OPEN 60点 佐藤茂

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