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富士見ファンタジア文庫:ブートレガーズ 神仙酒コンチェルト/宇野耕平

神仙酒コンチェルト
1.無法者な人々
2.密造酒業者暗躍す
3.殺し屋
4.戦闘

answer.――― 71 点

盛者必衰の理に沈み始めた00年代の富士見ファンタジア文庫において、『Dクラッカーズ』、『BLACK BLOOD BROTHERS』と立て続けにヒットを飛ばし、文庫のエース格へと昇り詰めたあざの耕平―――と改名する前、宇野耕平名義のデビュー作。『BLACK BLOOD BROTHERS』のあとがきにて著者の友人が「酒、麻薬ときて、次は『児童虐待』か。さすがだな耕平。社会派だな」と評したように、本作は禁酒法敷かれるアメリカはシカゴを舞台に、「酒」を題材にしたギャング協奏曲!というと、成田良悟のデビュー作『バッカーノ!』が思い浮かんでしまうが、こちらのほうが出版に関しては5年も先に扱っている先達ノベル。そして、知識を交えたギャング界隈の演出もこちらのほうが格上だ。まず、単純に台詞回しが素晴らしい。主人公の一人、ギャングの会計士ギルバートの知性に溢れた洞察からして堂に入っている。物語はギルバートがギャンブルに大敗することを発端に、すでに出来上がっているマーケットに密造酒を売り捌き、命を狙われていくという流れなのだが、そこへ繋ぐまでの過程は絶品の出来。ギャングを扱う場合に必要なのは、退廃と恫喝を如何に描けるかだと思うが、ギルバートの理知的な面とギャンブル狂特有の自殺願望は、まさにそれ。ライトノベル特有の緩さを演出していくれるフォレスト一家の存在もあり、硬軟バランスのとれたライトノベルだ。時代背景の描写も不足ない。しかしながらイマイチ評判を呼べなかった原因は、終章の「戦闘」だろう。描写も上々、伏線も回収されている……が、どうにも盛り上がらない。これは作中のファンタジーな仕掛けに冷めたというよりも、そもそもの読み手の関心が<マーケットの奪取>、<違法取引>だったからだろう。よくある戦闘=暴力でなく、頭を使って解決して欲しかったのだ。もっとも、そう願うのは<描けていた>からに他ならない。ラストこそ物足りないものの、雰囲気は抜群。期待し過ぎずに読めば娯楽性は十分ある一作。ちなみに、第9回ファンタジア大賞の最終選考作品です。

富士見ファンタジア文庫:ブートレガーズ 神仙酒コンチェルト/宇野耕平 (1999)

category: あ行の作家

tag: OPEN 70点 あざの耕平

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