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電撃文庫:ダブル・キャスト/高畑京一郎

ダブル・キャスト
(あらすじ)
川崎涼介はビルの屋上から転落し意識を失った。見知らぬ家で目覚め自宅へと向うが、そこで目にしたものは、自分の葬式だった。浦和涼介は帰宅途中に見知らぬ若者の転落事故に遭遇する。惨事に直面し気を失う涼介。不可解な記憶喪失の、それが始まりであった。川崎亜季は、まるで亡き兄のように振る舞う見知らぬ少年に困惑していた。だが彼女は知ることになる。自分に迫る危機と、自分を守ろうとする心を……。

answer.――― 66 点

読み手から書き手に変ずるときに、意外に気づかないのが《視点》切り替えの効能である。一人の登場人物からの視点は確かに正しく、テーマをそのままダイレクトに消化、解決出来るまさに創作の上での《王道》なのだが、必ずしも「一」視点だけが正解と限らないのは幾多の年月を人の身で過ごす皆様ならお分かりでしょう。ろくな語彙を持たずとも、持ち前の構成力と政治力で作家としての能力以上の地位に居座るライトノベル界の十老頭が一人、高畑京一郎。本作は一大傑作『タイム・リープ あしたはきのう』の名声後、出版された労作であり、2012年現在、著者の作品において最後の完結作品である。その内容は転落事故により亡くなった不良高校生が、その事故に巻き込まれた文系高校生の身体に一時的に人格が乗り移るといったもの。一方の記憶が無いまま視点が切り替わり、事件を解決していく。途中でとんでもなくダサい暴走族と戦う辟易なアメコミ展開があるものの、それ以外は奇を衒うことなく進む。特段のオリジナリティはないにもかかわらず、案外なまでに「読める」不思議。その要因こそ本作の肝である《視点》切り替えの効果なのだ。高畑京一郎は基本が出来ているだけで本質的に大した作家ではない。しかし、逆に云えば、基本が出来ている=何が基本かを知っているために少ない語彙で戦えるのである。成田良悟のような視点切り替えオンパレードな群像劇には語彙が必要とされるが、それだから本作には要らないのである。書き手を目指す際、ストーリーに悩むくらいなら、《視点》を工夫したほうが効率良いことを教えてくれる一作。本作と『ラグナロク 黒き獣』『子ひつじは迷わない 走るひつじが1ぴき』あたりを読めば《視点》の効能に気づけるでしょう。最後に、表紙の主人公が持っている本は著者の次回作『Hyper Hybrid Organization』です。上下巻、合わせてのレヴューです。

電撃文庫:ダブル・キャスト/高畑京一郎 (1999)

category: た行の作家

tag: OPEN 60点 高畑京一郎

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