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電撃文庫:Missing 神隠しの物語/甲田学人

Missing 神隠しの物語
(あらすじ)
物語は“感染”する―――。その少女に関わる者は全てが“異界”へ消え失せるという怪異なる都市伝説。恋愛否定主義者の“魔王陛下”こと空目恭一の『彼女』と称される少女。その少女が突如現れたのをきっかけに、空目が姿を消してしまった……。残された文芸部の面々は、空目を取り戻す事が出来るのか? この話は、現代の“神隠し”の物語。

answer.――― 57 点

『文章力ランキング(ライトノベル級)』を書くにあたって、Twitter上で推薦された作者の一冊PartⅡ。電撃文庫のホラー筆頭……とのことだが、1巻時点では「?」の印象。事実として、1巻の出来は悪いらしく、続刊でそのホラー具合を加速するようだ。とりあえず、今回は1巻のみをレヴューさせてもらえば、90年代の文体そのままに00年代初期より大流行した中二病(ex.「魔王陛下」「恭の字」と登場人物をさも当然のように呼ぶ)を導入するなど、非常にアンバランスで「拙い」。展開も冒頭から終始唐突で、ライトノベルというジャンルが成熟し始めた現在となっては出版当時は許せても、まともに読むことは難しいだろう。とりあえず、本作のWikipedia稿は著者本人、あるいは熱烈な信者が編集しているはずなので、誰か早急に訂正しに向かって頂きたい。内容的にはファンタジーを織り交ぜつつの、民俗学、オカルト論を導入した造りで、電撃小説大賞の第7回で佐藤ケイ第8回で有沢まみずが「萌え」枠で授賞させているように、この題材もまた当時のライトノベルにおいては先取りと云える。しかし残念ながら本作、本当に「拙い」。もっとも、著者にとって初の長編とのこと。そうなるとここから筆が向上すると思うので、どなたか一番「巧い」巻をご教授くださいませ。

電撃文庫:Missing 神隠しの物語/甲田学人 (2001)

category: か行の作家

tag: OPEN 60点 甲田学人

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AJICO SHOW/AJICO (2001)

ajico show
(内容)
2001年2月9日~3月20日に、全国14ヶ所で行われたツアー「2001年AJICOの旅」で演奏された全16曲を全て収録した大満足のライブアルバム。AJICOという異分子共同体バンドのエキサイティングな演奏が存分に楽しめる。バンドのエネルギーと、ライブの緊張感が生み出すAJICO独特の揺れを感じて欲しい。

Price Check.――― ¥ 150

スタジオアルバムでやりきれなかったジャムセッションを完全燃焼させるべく……なんて冷ややかな見解さえ抱いてしまうボリューミーな2枚組ライヴアルバム。Topチャートを賑わすUAと浅井健一が顔を揃えていることで、そのセットリストも気になるところだが、Disc 1にはUAの「悲しみジョニー」、Disc 2にはBLANKEY JET CITYの「ペピン」、UAの「歪んだ太陽」、「午後」……と入れるものをキッチリと入れて期待に応えてくれている。面白いのはスタジオ・ミュージシャンであるリズム隊のリクエストからか、デイヴ・ブルーベックの代表曲「Take Five」をカバーしているところだろう。ところで、UAが好きな人、BLANKEY JET CITYが好きな人に本作のハイライトを挙げさせるなら、ほぼ間違いなく「ペピン」に票が集まるだろう。UAが歌い、ベンジーが歌い、そうして、大サビでは二人が歌う―――そんなダブルVo.を存分に生かしたトラックは、まさにファンがこのバンドに望む姿だからだ。しかし、残念ながら本作はやはりジャムセッションの要素が強く、明らかに主役であるはずのベンジーの実力が足りていない。あのロカビリー調のギターがギラリと輝く瞬間はあるものの、根本的に彼は“ギターも弾ける”ロックスターであって専任のギタリストではない。ために、即興演奏になると手癖で対抗するしか手段がない。そこに私は興醒めしてしまい、このアルバムを高く評価することが出来ない。もちろん、「ペピン」や「歪んだ太陽」なんかの出来レースは最高で、そこには十分満足はしているのだが、……むしろ、それだけに。

AJICO SHOW/AJICO (2001)

category: A-G

tag: MUSIC 250円

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第13回ファンタジア大賞 準入選:風の聖痕/山門敬弘

風の聖痕
1.帰ってきた勘当息子
2.災厄は突然に
3.過去との対決
4.帰参、そして―――
5.救出
6.決戦
7.エピローグ

answer.――― 72 点

寂びれた中古書店でバイトしていたときのことだ。休憩中でもないのに、私は店長と雑談に耽っていた。店長は私より10ほど年齢が上の人で、いわゆる<ガンダム>の直撃世代。当然、「富野由悠季の原作作品こそガンダム!」を信条とする原理主義者だ。その日、何とはなしに「一番好きなMSは何か?」という話から、「どこの軍に入りたい?」という話になった。この展開に、私は少し驚いた。この手の話になると、私の周りでは次の話題は決まって「どのMSが一番強いか?」―――<強さの不等号>を付ける話になるからだ。発想が属することから出発する世代、発想が個から出発する世代。世代間の違いは、発想からさえあると知った瞬間だった。私もあの日からいつの間にか10年近く齢を重ねてしまったので、きっと新しい発想の齟齬があることでしょう。いとをかし。さて、本作。<強さ>について、よく設定が練られている。失踪していた主人公の帰還とともにお家騒動というストーリーそれ自体は在って無いようなものなのだが、主人公の絶対的にブレない<無敵>具合、そして、ライトノベルに珍しいアンチヒーローの型が目と気を惹いてくれる。核となる戦闘描写も不足なく、何より戦闘中の感情の揺れ動きが描けているのがポイント高い。<強さの不等号>を付ける楽しみが出来る人にはオススメだ。ただ、本巻では主人公の過去は暗号的に伏せられ、読み切り仕様とは言い難い。戦闘を通してのキャラクター紹介というのが本作の概要と云える。堅調に続刊し、メディアミックス化。そんな、これから―――という時を前に、著者は白血病を患い、09年に他界。遺稿が短編と合わせて、未完の最終巻として10年に刊行。Amazonレヴューでのファンの暖かいレヴューが泣ける。R.I.P.

第13回ファンタジア大賞 準入選:風の聖痕/山門敬弘

category: や行の作家

tag: ファンタジア大賞準入選(金賞) OPEN 70点 山門敬弘

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第13回ファンタジア大賞 佳作:西域剣士列伝 天山疾風記/松下寿治

天山疾風記
1.烏孫公主
2.赤谷城
3.虎狼相闘
4.詔旨
5.決戦前夜
6.天女散花

answer.――― 70 点

中国は前漢、西域を舞台にしている本作は、主人公を始め、脇役から敵役まで実在の人物を配する。前漢はまだしも、「西域」という単語で「陳湯」を連想出来る人はなかなかの歴史ヲタだと思うが、本作はその「陳湯」を主役に配し、「西匈奴」郅支単于を討つ史実を基にしたストーリー。史実を基にした、といっても脚色(ヒロインは創作、仲間は実在するも接点無し等)は当然してあり、あくまで基にしているだけ……なのだが、これを読めば教科書に載れども捉えきれない匈奴周辺(烏孫、大苑、大夏、大月氏等)がシナプスに引っ掛かるようになる意味で、ライトノベル好きの世界史専攻者(U-17)にはお薦めだ。文章を含め作品としてのクオリティは上々で、史実を織り交ぜながらの進行もスマート。ただ、そんなライトノベルらしくない本格派な事実も、西域というマイナーな題材、時代感じる表紙と重なって敬遠したくなるのも否定出来ない。本作における脚色はライトノベラーのために施されているのだが、故に歴史小説には成れず、しかし当のライトノベラーからは……と、シーズとニーズがイマイチ合致しないのが哀しい。本作の個人的MVPは、甘延寿。脇にも関わらず、終盤も終盤で挿し絵一枚、まるまる頂戴されるだけあるサプライズ的演出は、著者にJOKERの切り方を教えられた気分に陥る。何にせよ、ライトノベル的歴史小説、その脚色の限界/限度について考えさせられる一冊。ところで、巻末でどこかピントのズレた「解説」を披露してくれるファンタジア文庫編集部を、私は「ヤラカシ!ヤラカシ!」 と囃し立てているが、ナンダカンダで(……今回はどんなことをやらかすんだろう?)と楽しみにしているのだが、本作のあとがきは案外にまともで一抹の寂しさを覚えました。「解説」ってやっぱり、わざとああいう風に書いてたのかしらん?

第13回ファンタジア大賞 佳作:西域剣士列伝 天山疾風記/松下寿治

category: ま行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 OPEN 70点 松下寿治

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第13回ファンタジア大賞 佳作:ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!/風見周

ラッシュ・くらっしゅ
1.究極貧乏→犯罪スレスレ?
2.吸血鬼との日常→仲間になれる?
3.侵入作戦→コレって恋?
4.信じる心?→やがて通じる?
5.ヴァイス襲来→マナの裏切り?
6.秘密の約束→ヴァイス突入?
7.危機つぐ危機→大団円?

answer.――― 62 点

本作受賞時にはすでにライターとして生計を立てていた(らしい)風見周のデビュー作は、例によって出版当時の大流行、ヴァンパイアを導入するなど、あざとく仕上げてきた一作―――と切って捨てようと思うも躊躇してしまうのは、著者のあとがきの後に貼りつけられる名物“ヤラカシ”編集部の解説(ver.改稿顛末)を読んでしまったため。これを読めば、本作の異様なまでのボリューム、そして、「……ほへ?」と首傾げたくなる迷展開が何故に出来上がったのか解けるだろう。ストーリーラインは警備体制の穴を探す侵入屋トレスパスが相次ぐ失敗で経営難に陥り、一発逆転を賭けて、禁じられた怪物ヴァンパイアを復活させての立て直しを図る!というものなのだが、……そのはずだよね?と思わず確認を取りたくなる「……ほへ?」展開に呆然となることは必至だ。巷のレヴューでも言及されている終盤の「取って付けた」ような飛行機レース、同時進行の空賊乱入劇は、もはや読み手というよりも「作品」それ自体に対する背信にさえ映るが、上述の“ヤラカシ”による解説で真実の扉は開かれる。どうやら、マジで「取って付けた」らしい。それは《飛行機レース》なのか、《空賊乱入劇》なのかは解らない。あるいは、もっと根本的な部分を変更したのかも知れない。しかし、風見周がデビューすべく媚びに媚びまくったのは間違いないだろう。それくらい読んでいると「……ほへ?」ってしまう。序盤のコミカルな乱戦、団らん、そこから主人公マナへ絞っていく様は堂に入ったもので、雑多な情報を整理出来る筆力、侵入屋なる職業は隙間なアイディアとして評価したくなるところ。がしかし、如何せん、己の筆力を頼みに編集者の要求に応え過ぎると作品がパンクするという見本のような一作。あまりに従順過ぎて、(……編集も責任取れなくなったんだろうなぁ)と察せさせる「これで行きましょう!」という解説の一文が何気に本作で一番行間を読ませてくれる。

第13回ファンタジア大賞 佳作:ラッシュ・くらっしゅ・トレスパス!/風見周

category: か行の作家

tag: ファンタジア大賞佳作 OPEN 60点 風見周

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